時勢じせい)” の例文
さて、この立国立政府の公道を行わんとするに当り、平時にありてはしたる艱難かんなんもなしといえども、時勢じせい変遷へんせんしたがって国の盛衰せいすいなきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あるいは西洋イチゴといってもよかろうが、いっそ英語のストローベリ(Strawberry)で呼ぶかな、それがご時勢じせい向きかもしれない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
授業じゅぎょうやす時間じかんに、廊下ろうかると、かべには少年工募集しょうねんこうぼしゅう工場こうじょうのビラがられていました。時勢じせいは、いまや少年群しょうねんぐん進出しんしゅつけているのでした。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
貴殿きでん尊奉そんぽうなさる越後えちご天鼓流てんこりゅうでは、まだ作事さくじ築工ちっこう時勢じせいおくれのところがあるゆえ、それを逆法と思われるかも知らぬが、自分のしんずる越前えちぜん……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
エーテルの世界には毎晩のようにJOAKの音楽やらラジオドラマが其の強力な電波勢力をほこりがおに夜更けまでも暴れているような時勢じせいになりました。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところ御維新ごゐつしんかた時勢じせい変遷へんせんで次第に家運かうんの傾いて来たをりをり火事にあつて質屋はそれなりつぶれてしまつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その中には多少時勢じせいに通じたるものもあらんなれども、多数に無勢ぶぜい、一般の挙動はかくのごとくにして、局外よりながむるときは、ただこれ攘夷じょうい一偏の壮士輩そうしはいと認めざるを得ず。
時勢じせい変化へんかはこちらからるとじつによくわかります。神霊しんれいるか、いかもあやふやな人達ひとたちから、たん形式的けいしきてきあたまげてもらいましても、ドーにも致方いたしかたがございませぬ。
給料きふれうむさぼつてゐるにぎん……さうしてれば不正直ふしやうぢきつみは、あへ自分計じぶんばかりぢやい、時勢じせいるのだ、もう二百ねんおそ自分じぶんうまれたなら、全然まるでべつ人間にんげんつたかもれぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
槍先やりさき功名こうみやうよつ長年ながねん大禄たいろく頂戴ちやうだいしてつたが、これから追々おひ/\なかひらけてるにしたがつて時勢じせい段々だん/\変化へんくわしてまゐるから、なにに一のうそなへたいと考へて、人知ひとしれず医学いがくを研究したよ。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ひとあるひはわがはいのこの意見いけんもつて、つまらぬ些事さじ拘泥こうでいするものとしあるひは時勢じせいつうぜざる固陋ころう僻見へきけんとするものあらば、わがはいあまんじてそのそしりけたい。そしてつゝしんでそのをしへをけたい。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
いまのところ、まだ五、六にんですが、なにしろこんな時勢じせいで、それさえおもすぎ、ときどき途方とほうにくれますよ。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ給料きゅうりょうむさぼっているにぎん……そうしてれば不正直ふしょうじきつみは、あえ自分じぶんばかりじゃい、時勢じせいにあるのだ、もう二百ねんおそ自分じぶんうまれたなら、まるでべつ人間にんげんであったかもれぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
事々物々秩序ちつじょを存して動かすべからざるの時勢じせいなれば、ただその時勢に制せられて平生へいぜい疑念ぎねん憤怒ふんどを外形に発することあたわず、或は忘るるがごとくにしてこれを発することを知らざりしのみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
……それと、今日のわれらの身をよいおしえとして、ひとたび誓うた節義をえるな。時勢じせいのゆくてを見誤るなよ。わしの滅亡は若年のためその先見がなかったに依るのだ。小三郎がよいかがみであるぞ
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ナニ横着わうちやくな事があるものか、イエあれはほんの心ばかりのいはひなんで、如何いかにもめづらしい物を旧主人きゆうしゆじんからもらひましたんでね、じつ御存知ごぞんぢとほり、ぼく蘭科らんくわはう不得手ふえてぢやけれど、時勢じせいに追はれてむを
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
時勢じせいしからしむるところとは申しながら、そもそも勝氏が一身を以て東西の間に奔走ほんそう周旋しゅうせんし、内外の困難こんなんあた円滑えんかつに事をまとめたるがためにして、その苦心くしん尋常じんじょうならざると、その功徳こうとくだいなるとは
矢張やは時勢じせいうとい女の事でたちま云淀いひよどんでしまつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いいおかんがえですね。時勢じせいがこんなですから、衣服いふくのほうもはたらきいいように改良かいりょうされましょうし、わたしなど、こうおばあさんになっては、あたらしい研究けんきゅうほねがおれますし、わかひとにやってもらわなければ。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)