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捩
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ね
ふりがな文庫
“
捩
(
ね
)” の例文
「家は自分のものだつて。」重役は自分の大きな鼻を
他人
(
ひと
)
の持ちものだと言つて、指でこつぴどく
捩
(
ね
)
ぢ曲げられたやうにびつくりした。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そこで巡査は躍り出て、その者を捕えにかかると、はげしく抵抗したので
捩
(
ね
)
じ伏せたが、別に誰も追いかけて来る様子はなかった。
呪われの家
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
中婆さんはいつも手近に落ちている銅貨をたくみに膝頭に敷き込んでは、ふくら脛のあたりへ手をやっては、袂へ
捩
(
ね
)
じ込んでいた。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
同じ気持の渡辺に何か話しかけようと思って
捩
(
ね
)
じ向くと、遙か向うの方から怪しい人影が見えた。彼はブラ/\とこっちへ向って来る。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
紀久子はそう言いながら、洋服のポケットに
捩
(
ね
)
じ込んでおいた幾枚かの紙幣を掴み出して、それを正勝の洋服のポケットに押し込んだ。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
其板に触れた響は、深い高い音を、打たれた時に「無」が発する戦慄すべき音を、陰々と反響した。それから彼は柩の蓋を
捩
(
ね
)
ぢはなした。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
このとき
若
(
も
)
し地下室を
覗
(
のぞ
)
いていた者があったとしたら、
隅
(
すみ
)
に
積
(
つ
)
んだ
空樽
(
あきだる
)
の山がすこし変に
捩
(
ね
)
じれているのに気がついたであろう。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
婆芸者が土色した
薄
(
うすっ
)
ぺらな唇を
捩
(
ね
)
じ曲げてチュウッチュウッと音高く虫歯を吸う。請負師が
大叭
(
おおあくび
)
の後でウーイと一ツ
噯
(
おくび
)
をする。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ここを「
捩
(
ね
)
じれ
窪
(
くぼ
)
」というそうだ。霧は、頻に、頭の上を飛ぶ。空気も、その重さに堪えないで、雨を、パラパラ落して来る。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
そしてそれを
捩
(
ね
)
ぢ、叩き、ひつかき、
鑢
(
やすり
)
をかける。絹糸は一つ一つに負けて擦りきれてゆく。穴が出来る。蝶は外に出るのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
そうかと思えば今度は、わたくしに向っている葛岡の心を、反対に
捩
(
ね
)
じひしぐような仕方で葛岡に自分との結婚を強いました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
君達が頼まれもしないおチヨツカイを出したばかりに、彦六め、又ぞろ尻を据へて
捩
(
ね
)
ぢ〈れ〉て来出したら、あの約束も
切
(
ママ
)
角だが取消しだよ。
彦六大いに笑ふ
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
少女は
鏽
(
さ
)
びたる針金の先きを
捩
(
ね
)
ぢ曲げたるに、手を掛けて強く引きしに、中には
咳枯
(
しはが
)
れたる
老媼
(
おうな
)
の声して、「
誰
(
た
)
ぞ」と問ふ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
友の
挨拶
(
あいさつ
)
はどの
辺
(
へん
)
に落ちたのだろうと、こそばゆくも首を
捩
(
ね
)
じ向けて、
斜
(
なな
)
めに三段ばかり上を見ると、たちまち目つかった。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは細君の手にしている
剃刀
(
かみそり
)
であった。細君の右の下唇には血があった。章一はいきなりその手を
捩
(
ね
)
じあげてくるりと細君の体を前向にした。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
唇を噛んだと覚しく下唇に多少の出血があるのは、これも両手を背後に廻して床上に
捩
(
ね
)
じ伏せられた時、被害者が抵抗して生じたものであろうと
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「でなにかえ伊助どん。そう追っかけてまで
捩
(
ね
)
じ込んできたんだから、
此家
(
ここ
)
で、お前さん
立会
(
たちえ
)
えのうえで、改めて身柄しらべをしたろうのう、え?」
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
下女は盥の中の
単衣
(
ひとえ
)
を
絞
(
しぼ
)
ってお婆さんに見せた。それが絞られる
度
(
たび
)
に
捩
(
ね
)
じれた着物の間から濁った
藍色
(
あいいろ
)
の水が流れた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
でも若し喰べ物が無くなると困ると思つたから、牛の鑵詰と福神漬の鑵詰の口の明けたのを
懷
(
ふところ
)
に
捩
(
ね
)
ぢ込んで出たの。
梅龍の話
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
骨髄に徹する憎悪を右腕一つにこめて繰出したエビルの突きは二倍の力で撥ね返され、敵の横腹を
抓
(
つね
)
ろうとする彼女の手首は造作なく
捩
(
ね
)
じ上げられた。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
呉は、左の腕を
捩
(
ね
)
じ曲げるように、顎の下に、も一方の手で抱き上げ、額にいっぱい
小皺
(
こじわ
)
をよせてはいってきた。
国境
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
榎の大木が根を張っているところを
少時
(
しばらく
)
の間押しつ押されつしたが、私は到頭相手を
捩
(
ね
)
じ伏せて馬乗りになった。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
しかしながら、狼犬が狂い立った場合に、その鎖を絶ち格子を
捩
(
ね
)
じ曲げることは困難でないと断定された。いわんやその部屋には鍵をかける設備がなかった。
日本に於けるクリップン事件
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
渠はついにその責任のために石を巻き、鉄を
捩
(
ね
)
じ、屈すべからざる節を屈して、勤倹小心の婦人となりぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この日は
茜染
(
あかねぞめ
)
の單衣若々しく、背中を往來に見せて坐つてゐたが、人が表を通る毎に、細い首を
捩
(
ね
)
ぢ向けて、眼の光りを投げかけることは、一人々々に怠らなかつた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
廊下の前の横長い手洗場で折折医員や看護婦さんが水道栓を
捩
(
ね
)
ぢて手を浄める音と、何処かで看護婦達の私語する声と、看護婦の溜で鳴る時計の音と、其れ位のものである。
産褥の記
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
二人は無二無三に半七を
捩
(
ね
)
じ伏せようとするのである。もう云い訳をしている暇もないので、半七は迷惑ながら相手になるのほかはなかった。それでも続けてまた呶鳴った。
半七捕物帳:64 廻り灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は学校を休み松林にねて悲しみに胸がはりさけ死ぬときがあり、私の魂は荒々しく戸を蹴倒して我家へ帰る時があっても、私も亦、母の鼻すら
捩
(
ね
)
じあげはしないであろう。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
跳びかかって、一人は城太郎の腕くびを
捩
(
ね
)
じ
取
(
と
)
り、一人は
柄
(
つか
)
をにぎって、斬る構えを見せた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ルパンは咄嗟の場合品物を
検
(
あらた
)
めもせずそのまま
懐中
(
ポケット
)
へ
捩
(
ね
)
じ込んだ。ジルベールは咡く様に
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
「
何
(
なに
)
爲
(
す
)
んだな、おとつゝあ」おつぎは
慌
(
あわ
)
てゝ
顏
(
かほ
)
を
捩
(
ね
)
ぢ
向
(
む
)
けて
少
(
すこ
)
し
泣
(
な
)
き
聲
(
ごゑ
)
で
寧
(
むし
)
ろ
鋭
(
するど
)
くいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「どうだい。あれを見ろ。
綺麗
(
きれい
)
じゃないか。あの水の上に日の差しているところは。それからあそこを見ろ。」こう云いながら男は階段の横の方へ
捩
(
ね
)
じ向いて反対の方角を見た。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
鳩の首を
捩
(
ね
)
ぢようが、孔雀の雛を殺さうが、犬を
嗾
(
けしか
)
けて羊を追ひ𢌞さうが、温室の葡萄の
果
(
み
)
をちぎらうが、一番大事な花の
莟
(
つぼみ
)
を
毮
(
むし
)
らうが、誰ひとりとして、邪魔するものもなければ
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
こんなことをして楽しんでいる男だった。或る日
切
(
しき
)
りにエピクテータスが足を引っ張り
捩
(
ね
)
じまわしては喜でいる。でエピクテータスはちと痛いので「そうなさると私の
脚
(
あし
)
は折れますよ」
イエスキリストの友誼
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
大工とか左官とかそういった連中が溪のなかで不可思議な酒盛りをしていて、その高笑いがワッハッハ、ワッハッハときこえて来るような気のすることがある。心が
捩
(
ね
)
じ切れそうになる。
闇の絵巻
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
遭難者の身にとっては
堪
(
たま
)
ったものではない。
禿
(
はげ
)
頭に
捩
(
ね
)
じ鉢巻で、血眼になって家財道具を運ぶ
老爺
(
おやじ
)
もあれば、尻も
臍
(
へそ
)
もあらわに着物を
掀
(
まく
)
り上げ、濁流中で
狂気
(
きちがい
)
のように立騒いでいる女も見える。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
そして急に腹痛でも起つたやうに、顔中皺にしてぎゆうと首を
捩
(
ね
)
ぢつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
そこを閉めると余計に小暗くなつてしまふ板の間に、おくみはどんよりした戸棚から煮物の砂糖の入れものを出したりして、うつたうしくこゞんで、アルミニュームの手鍋の下の瓦斯を
捩
(
ね
)
ぢた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
やつちよいやつちよい訳なしだと
捩
(
ね
)
ぢ鉢巻をする
男子
(
おとこ
)
のそばから、それでは私たちがつまらない、
皆
(
みんな
)
が騒ぐを見るばかりでは美登利さんだとて面白くはあるまい、何でもお前の好い物におしよと
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
全川の水は
捩
(
ね
)
じ
曲
(
ま
)
げられた様に左に折れて、また
滔々
(
とう/\
)
と流して
行
(
ゆ
)
く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
捩
(
ね
)
じ込み釘に捩じ止め釘」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お婆さんは大きな膝を夫人の方へ
捩
(
ね
)
ぢ向けた。椅子はその重みに溜らぬやうに、お婆さんの腰の下で
蛙
(
かはづ
)
のやうに泣き声を立てた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私も人々の間にまじって
一臂
(
いちび
)
の力を
揮
(
ふる
)
い一人の悪漢を
捩
(
ね
)
じあげましたが、よく見るとそれは皮肉にも竹内だったのです。
暗夜の格闘
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「なるほど好い
景色
(
けしき
)
だ」と甲野さんは例の長身を
捩
(
ね
)
じ向けて、
際
(
きわ
)
どく六十度の
勾配
(
こうばい
)
に擦り落ちもせず立ち留っている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
侍等が出て白酒を飲んで価を償わずに花道へ入る。小団次の黒手組助六が一人の侍の手を
捩
(
ね
)
じ上げて花道から出て侍等を
懲
(
こら
)
す。侍等は花道を逃げ入る。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その男の首を
捩
(
ね
)
じ切って、会場の正面へ
曝
(
さら
)
したいくらいに思う。インチキ発見のときは厳罰に処すべきである。
麻雀インチキ物語
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのとき、かれは緋鯉の丸っこい胴体が
捩
(
ね
)
じられて、
彎曲
(
わんきょく
)
されて滑らかに
露
(
あら
)
われたのをみた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
雲水の僧は
矢庭
(
やにわ
)
に躍りかかって、弁兆の口中へ燠を
捩
(
ね
)
じ込むところであった。弁兆は飛鳥の如くに身をひるがえして逃げていた。そのまま
逐電
(
ちくでん
)
して、再び
行方
(
ゆくえ
)
は知れなかった。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私の耳を打ち、鼻を
捩
(
ね
)
じつつ、いま、その渦が乗っては飛び、
掠
(
かす
)
めては走るんです。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
早川から
黒河内
(
くろこうち
)
、
榛
(
はん
)
の河原、それから
白剥
(
しらはぎ
)
山と、前年の路を
辿
(
たど
)
ったときに、洪水からの荒廃は一層甚だしかった、まるで変っている、川筋はもとより、山腹の道などは、
捩
(
ね
)
じり切って
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
捩
漢検1級
部首:⼿
10画
“捩”を含む語句
捩上
逆捩
捩込
捩向
捩子
引捩
捩放
捩伏
捩取
捩斷
觀世捩
豆捩
観世捩
襞襀捩
紙捩
棒捩
一捩
関捩
捩螺
捩曲
...