後悔こうかい)” の例文
私は今言った自分の言葉を後悔こうかいした。心配やら、腹立たしいやらで、お巻さんに断って帰ろうと、私はその家の外から声高に叫んだ。
満月の夜だったことをハッキリと後悔こうかいしました。せめて月が無ければ、こんなにまで荒涼こうりょうたる風光ふうこう戦慄せんりつすることはなかったでしょう。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けんちゃん、うまくすれば、つくかもしれないよ。」と、清次せいじは、自分じぶんが、手荒てあらにしたのをべつに後悔こうかいするふうもなかったのです。
僕のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
頼長よりながはまさかとおもった夜討ようちがはじまったものですから、今更いまさらのようにあわてて、為朝ためとものいうことをかなかったことを後悔こうかいしました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そういう彼女の打ちしおれたような様子は私にはたまらないほどいじらしく見えた。突然とつぜん後悔こうかいのようなもので私の胸は一ぱいになった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そのとき、お妃さまのむねのなかにすくっていた思いあがりのあついこおりがとけて、お妃さまは心のそこから後悔こうかいしました。そして
『およしなさい新之助さん、おまえさんはここのお高と、仲がいいって噂だが、あんな親父おやじを持って御覧じ、今に後悔こうかいしますぜ』
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だけど、それよりさきに、ほんとうにうちへ帰りたくないのかどうか、よく考えてごらんなさい。あとで、後悔こうかいするかもしれませんよ。」
ひそかに思うにわたくしの父と母とはわたくしを産んだことを後悔こうかいしておられたであろう。後悔しなければならないはずである。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
マントルも、——(一生懸命に)いや、空手からてでも助けて見せる。その時に後悔こうかいしないようにしろ。(気違いのように酒場を飛び出してしまう。)
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「柳君!」と千三は光一のうでをとった。「きみは後悔こうかいするぞ、きみはぼくをそんな人間だと思っていたのか、きみは……」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
言ってしまってから、太郎は、とんだことを言ったと、後悔こうかいしました。が、もう取り返しがつきませんでした。相手の子供は突っ込んできました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
正三君はさっきにくらしかった照彦てるひこ様がおかわいそうになった。こんなに後悔こうかいしているところを見るとふみとどまって忠義をつくさなければならない。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
はいてこなければよかったと後悔こうかいするほど恥ずかしかった。女のほうでは小ツルがひとりだった。靴は、足をかわすたびにぶかぶかとぬげそうになった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ちと遣り過ぎたようだわい——あの後すぐ、軽い後悔こうかいを感じたように、玄蕃は未だにそう思っているのだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
人のいいおかみさんは、これを聞くと、たちまち、この男をあやしんだり、いやがったりしたことを後悔こうかいして
「神様のばちだ」とかれはさけんだ。「おれは後悔こうかいする。おれは後悔する。もしここから出られたら、おれはいままでした悪事のつぐないをすることをちかう。 ...
彼は小父おじをどんなに見違みちがえていたことかと考えた。自分じぶんから見違えられていたために、小父はかなしんでいるのだと考えた。彼は後悔こうかいねんにうたれた。こうさけびたい気がした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そこで主人は、これは不思議ふしぎだと、二人のお客にまでつけつけと言ったことを後悔こうかいしながら、その掛け布団だけを自分の部屋へ持って来て、そしてそれを掛けててみました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
今となっては後悔こうかい先に立たずでございます、若いうちに御勉強をなさらなくてはなりません
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
学問を楽しむの意味が現われてるでないか、だから君、楽しみつつゆっくり学問するんだよ。準備ばかりでおしまいになってもはなはだしい後悔こうかいのないように準備を楽しむのさ。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「たとへ法然上人ほうねんしょうにんにすかされまゐらせて念仏して地獄じごくにおちたりとも、さらに後悔こうかいすべからずさふらふ」という親鸞しんらんの言葉と、一脈いちみゃく相通あいつうずるところがあるからなのかもしれない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そんな母親を蝶子はみっともないともあわれとも思った。それで、母親をだまして買食いの金をせしめたり、天婦羅の売上箱から小銭をぬすんだりして来たことが、ちょっと後悔こうかいされた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
今ここにしるすまでもなきことなり、直ちに重井と泉に向かってその不徳を詰責きっせきせしに、重井は益〻その不徳の本性ほんしょうを現わしたりけれど、泉は女だけにさすがに後悔こうかいせしにやあらん
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
僕は、無意味な壁ばかりを見て歩いた事をひどく後悔こうかいした。人の住まっていない無数の壁を警護するために、彼女と離れて別れてまでくらす心はない。では、どうして食って行くのだ。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
もう堪忍してやつたらいゝぢやないの! お父さんは自分が悪かつたことをきつと後悔こうかいしてゐるに違ひないんだから——さあ、兄さん、そんなにかんを上げると病気になつてしまふから
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
ものめずらしがり、それはいつでも心をひく、かるいたのしみですが、いちど、それがみたされると、もうすぐ後悔こうかいが、代ってやってきて、そのため高い代価だいかを払わなくてはなりません。
青ひげ (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
恐れさえしなければ安全なんだ。おれは少しも後悔こうかいしていない。股野みたいなやつは殺されるのが当然だ。多くの人が喜んでいる。だから、おれは良心に責められることは全くないのだ。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
手前のわるい事は悪るかったと言ってしまわないうちは罪は消えないもんだ。わるい事は、手前達におぼえがあるだろう。本来なら寝てから後悔こうかいしてあしたの朝でもあやまりに来るのが本筋だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
倶楽部長くらぶちょうのフランクに、ふと冗談じょうだんにいったのを、とても後悔こうかいしたが、もういまのような大評判になっては、追いつかない。食堂へいくたびに、ブルはブルで、ぼくの小指ばかり、にらんでる。
小指一本の大試合 (新字新仮名) / 山中峯太郎(著)
わたくし自分じぶんながらへたなことをいたとすぐ後悔こうかいしましたが、しかしこれで妖精ようせいとすらすら談話はなしのできることがわかって、うれしくてなりませんでした。わたくしはつづいて、いろいろはなしかけました。——
東海さんの困却こんきゃくをまのあたりみせられ、いささ後悔こうかいの念にられ、良心の苛責かしゃくもひどかったときなので、ともすれば見失いそうな自分の姿をつかまえるため、すっかり茫然ぼうぜんとしていて、近くにあった
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
こがねまる (後悔こうかいして)……もう死んじまった。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
こうなると知ったら、むりをしてでもネッドたちを箱自動車のうしろにでも別の車にのせて引張ってきてやるのだったと後悔こうかいした。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なるほど、へびというようなおそろしいものが、やぶのなかんでいることにがつかなかったと、としちゃんは後悔こうかいをしました。
もののいえないもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところが、王さまは、まえにした約束のことを後悔こうかいして、どうしたらこの豪傑ごうけついはらえるだろうかと、またまた考えていたところでした。
正直しょうじきおとうとうたぐっていたことがわかると、にいさんはたいそう後悔こうかいして、んだおとうとからだをしっかりきしめて、なみだながしながらいていました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「それは仕方ありません。けれども僕が帰るというとすぐに後悔こうかいします。僕にあやまることもあるくらいです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼は肩をそびやかし、しばらくはなんとも言わなかった。僕は後悔こうかいに近いものを感じた。のみならず気まずさをまぎらすために何か言わなければならぬことも感じた。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
親方がしかたがなかったと言ったとき、こういう考えになっていたのはたしかであった。そのうえこのことばの中には後悔こうかいた心持ちがふくまれていたように思われた。
つまり、ズルスケは復讐心ふくしゅうしんをおさえることができないで、アッカとそのむれに、こんなふうにして近づこうとしたことを、これから一生のあいだ、後悔こうかいしなければならないのです。
わしらも、後悔こうかいしておる。ちと悪ふざけの度が過ぎました。それも、仲間なかまうち——と思えばこそ、まったく、貴殿のことは、拙者せっしゃなど、失礼ながら、弟のように思っておりましたからな。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは後悔こうかいでもあり、自嘲じちょうでもあり、いかりでもあった。かれは浴室に立ちこめた湯気ゆげの中にじっと裸身らしんえ、ながいこと、だれの眼にも見えない孤独こどく狂乱きょうらんを演じていたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
下宿のばあさんの言葉を借りて云えば、正に大違いの勘五郎かんごろうである。生徒があやまったのはしんから後悔こうかいしてあやまったのではない。ただ校長から、命令されて、形式的に頭を下げたのである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「きみは後悔こうかいするよ、生蕃はなにをするか知れないからね」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「うぬ! 血まよって、後悔こうかいいたすなよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
素六そろくなんざ、お前が散々さんざん甘やかせていなさるようだが、今の中学生時代からしっかりしつけをして置かねえと、あとで後悔こうかいするよ
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ああ、おかねがなにになろう?」と、おばあさんは、せっかくおじいさんの丹精たんせいしたはなを、かねのためにったことにたいして後悔こうかいしました。
花と人間の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの時の悲しさを考えると、——白は今では帰って来たことを後悔こうかいする気さえ起りました。するとその途端とたんです。坊ちゃんは突然飛び上ると、大声にこう叫びました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしはかれがおそかれ早かれ後悔こうかいして帰って来て、刑罰けいばつを受けるだろうと思っていた。