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巾
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きれ
ふりがな文庫
“
巾
(
きれ
)” の例文
しばらくたって署長は自分があの奥の
室
(
へや
)
の中に入れられてゐるのを気がついた。頭には冷たい
巾
(
きれ
)
がのせてあったし毛布もかけてあった。
税務署長の冒険
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ヱルレトリの少女の群は、頭に環かざりを戴き、美しき肩、圓き乳房の
露
(
あらは
)
るゝやうに着たる衣に、襟の
邊
(
あたり
)
より、
彩
(
いろど
)
りたる
巾
(
きれ
)
を下げたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
先刻
(
さっき
)
見た裏口とは反対の方、奥の主人の部屋の前の板塀の上に、忍び返しが少し損じて、古
釘
(
くぎ
)
に新しい
巾
(
きれ
)
が少し引っかかっていたのです。
銭形平次捕物控:094 死相の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、一番先にいろんな
巾
(
きれ
)
がかけられてある、死骸らしいものに眼がとまると、彼の瞳はそこからはなれようとしなかった。
惨事のあと
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
お棺のまわりの
巾
(
きれ
)
は小さくさかれて、これもみなお守りにとて取合いをした。まるでお祭のようであった。きっと母は喜んだことであろう。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
▼ もっと見る
初め張角が、常に、結髪を黄色い
巾
(
きれ
)
でつつんでいたので、その
風
(
ふう
)
が全軍にひろまって、いつか党員の
徽章
(
きしょう
)
となったものである。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あゝ、
其
(
それ
)
がため足場を取つては、
取替
(
とりか
)
へては、手を伸ばす、が
爪立
(
つまだ
)
つても、青い
巾
(
きれ
)
を巻いた、其の
振分髪
(
ふりわけがみ
)
、まろが
丈
(
たけ
)
は……
筒井筒
(
つついづつ
)
其の
半
(
なかば
)
にも届くまい。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
年は十六、七なるべし、
被
(
かぶ
)
りし
巾
(
きれ
)
を
洩
(
も
)
れたる髪の色は、薄きこがね色にて、着たる衣は
垢
(
あか
)
つき汚れたりとも見えず。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
竿の先を
巾
(
きれ
)
で拭いているところを見ると、二寸ばかりの鋭利なる穂先が
菱
(
ひし
)
のように立てられてあるのでありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
母は
括
(
くく
)
り枕の上へ、
櫛巻
(
くしま
)
きの頭を横にしていた。その顔が
巾
(
きれ
)
をかけた電燈の光に、さっきよりも一層
窶
(
やつ
)
れて見えた。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
主人とお嬢さんとの膝に掛ける
巾
(
きれ
)
が、
鵠
(
こう
)
の
鳥
(
とり
)
の形に畳んである、その嘴のところに、薄赤の莟を一つづつ挾んだ。
薔薇
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
間もなくべったら
市
(
いち
)
の日が来て、昼間から赤い
巾
(
きれ
)
をかけた小さな屋台店がならんだ。こんどはお其があたしの後について、肩上げをつまんで離れずにいた。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それは生前そのままの愛卿の姿であったが、ただ首のまわりに黒い
巾
(
きれ
)
を巻いているだけが違っていた。
愛卿伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
子は
反
(
そ
)
り返つて両手でお
祖母
(
ば
)
あさんの
領
(
えり
)
に巻いてゐる
巾
(
きれ
)
を引つ張つてゐた。パシエンカは語を継いだ。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
厚ぼたい衣を著て、頭には水色の
巾
(
きれ
)
をかぶっている。その女の前には鍋に何か煮てあり、それから白い
蒸気
(
いき
)
が立ち、鍋の下に赤い火の燃えているところが画いてある。
リギ山上の一夜
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
カワカミはいずれも後手に縛られ、頸のまわりに番号を書いた赤い
巾
(
きれ
)
をまきつけてあった。まるで猫の頸っ玉のようだ。半裸体のもおれば、洋服を着ているのもいる。
浮かぶ飛行島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
白い
巾
(
きれ
)
を
頚
(
くび
)
に巻いた女と一緒に歩いている、
金縁眼鏡
(
きんぶちめがね
)
の男の姿などが、ちらほら目についた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
漁師は持ち古した、時代が附いて赤くなつた肩掛の
巾
(
きれ
)
を撥ね上げて、咳をしながら云つた。
センツアマニ
(新字旧仮名)
/
マクシム・ゴーリキー
(著)
卓の上には清潔な
巾
(
きれ
)
が掛けて、その上にサモワルといふ茶道具が火に掛けずに置いてある。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
半分
(
はんぶん
)
と立たぬ
間
(
ま
)
に余の右側を
掠
(
かす
)
めるごとく過ぎ去ったのを見ると——
蜜柑箱
(
みかんばこ
)
のようなものに白い
巾
(
きれ
)
をかけて、黒い着物をきた男が二人、棒を通して前後から
担
(
かつ
)
いで行くのである。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
土耳古帽
(
トルコぼう
)
は
堤畔
(
ていはん
)
の草に腰を下して休んだ。二合余も入りそうな瓢にスカリのかかっているのを傍に置き、
袂
(
たもと
)
から白い
巾
(
きれ
)
に
包
(
くる
)
んだ
赤楽
(
あからく
)
の
馬上杯
(
ばじょうはい
)
を取出し、一度
拭
(
ぬぐ
)
ってから落ちついて
独酌
(
どくしゃく
)
した。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
手前
覚
(
おぼえ
)
があらう、それおれがまだすつぺかしたての時分よ、親父の
云付
(
いいつけ
)
で、
御所
(
ごぜ
)
の町へ鮨を商ひにいつたらう、その時は手前も振袖かなんか着込んで、赤い
巾
(
きれ
)
を頭へかけ、今たあちがつて
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
その
周囲
(
まわり
)
の広い庭には、ほとんど
明
(
あかり
)
も
点
(
つ
)
けて無い。
巾
(
きれ
)
を覆わない
卓
(
つくえ
)
が並べてある。
椅子
(
いす
)
がそれに寄せ掛けてある。その
傍
(
そば
)
に、緑色に塗った、ひょろ長い柱の上に、円い
硝子
(
がらす
)
の明りが
点
(
とも
)
してある。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
左の手で生首の
髻
(
もとどり
)
を掴み右の手の
鬱金
(
うこん
)
の
巾
(
きれ
)
で、その生首を洗っていた。
鸚鵡蔵代首伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
眼に入るものといへば何時も眼に馴れたものばかりだ………
北側
(
きたがは
)
のスリガラスの天井、
其所
(
そこ
)
から
射込
(
さしこ
)
む弱い光線、
薄
(
うす
)
い
小豆色
(
あづきいろ
)
の
壁
(
かべ
)
の色と同じやうな色の
絨繵
(
じうたん
)
、今は
休息
(
きうそく
)
してゐる
煖爐
(
だんろ
)
、バツクの
巾
(
きれ
)
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
吉里は用事をつけてここ十日ばかり店を
退
(
ひ
)
いているのである。病気ではないが、頬に
痩
(
や
)
せが見えるのに、
化粧
(
みじまい
)
をしないので、顔の生地は荒れ色は
蒼白
(
あおざめ
)
ている。髪も
櫛巻
(
くしま
)
きにして
巾
(
きれ
)
も掛けずにいる。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
裁
(
た
)
ちて縫はさむかこの
巾
(
きれ
)
を、
宴
(
うたげ
)
のをりの
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
あいつの胸に触れたことのある
巾
(
きれ
)
でも
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
それは、茶いろの少しぼろぼろの
外套
(
がいとう
)
を着て、白い
巾
(
きれ
)
でつつんだ荷物を、二つに分けて肩に
掛
(
か
)
けた、
赤髯
(
あかひげ
)
のせなかのかがんだ人でした。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
木綿の怪し氣な品で、それに何んかの
彈
(
はず
)
みに裾がまくれた時氣が付くと、裏に
縞物
(
しまもの
)
の
双子
(
ふたこ
)
の
巾
(
きれ
)
が當ててあつたやうで御座います
銭形平次捕物控:181 頬の疵
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ああ、それがため足場を取っては、取替えては、手を伸ばす、が爪立っても、青い
巾
(
きれ
)
を巻いた、その振分髪、まろが丈は……
筒井筒
(
つついづつ
)
その
半
(
なかば
)
にも届くまい。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
褐
(
かち
)
色なる
方巾
(
はうきん
)
偏肩
(
へんけん
)
より垂れたるが、
巾
(
きれ
)
を
纏
(
まと
)
はざる
方
(
かた
)
の胸と
臂
(
ひぢ
)
とは悉く現はれたり。雙脚には何物をも着けざりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
それらの悪鬼は皆、
結髪
(
けっぱつ
)
のうしろに、黄色の
巾
(
きれ
)
をかりているのだ。黄巾賊の名は、そこから起ったものである。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真鍮
(
しんちゅう
)
の耳盥へ、黒い
巾
(
きれ
)
を
浸
(
ひた
)
しては、しきりに眼のところへ持って行って、そこを叩いているのでありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
妻になったという優勝の地位の象徴ででもあるように、大きい
巾
(
きれ
)
を頭に巻き附けた夫人グンヒルドが、扉の外で立聞をして、恐ろしい幻のように、現れて又消える。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
音を立てているのは、腕に青い遊戯室係りの
巾
(
きれ
)
を捲いた男だった。彼は活動函をしきりに解体しているのであった。その傍には、それを熱心に見守っている二人の男女があった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
漁師は肩掛の
巾
(
きれ
)
を脱ぎ棄てた。そしてすばやく立ち上がつて、その儘見えなくなつた。
センツアマニ
(新字旧仮名)
/
マクシム・ゴーリキー
(著)
それから帽子の下に巻いてゐた
刺繍
(
ぬひとり
)
のある
巾
(
きれ
)
を
除
(
の
)
けた。女は窓の外へ来た時、実はそんなに濡れてはゐなかつた。さも濡れたらしい様子をして、草庵に入れて貰はうとしたのである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
楯井さんは黙って、前の方に進み出ると、うす暗いランプの光りで、なんとなく夢のような荘厳な心持になりながら、いろんな
巾
(
きれ
)
で蔽うてある死体らしいものゝ
巾
(
きれ
)
を半分ほど
除
(
の
)
けて見た。
惨事のあと
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
主人は
硝子戸
(
ガラスど
)
のはまった、明い事務室で、椅子に腰かけて、青い
巾
(
きれ
)
の張られた大きな
卓子
(
テーブル
)
に
倚
(
よっ
)
かかって、眼鏡をかけて、その日の新聞の相場づけに眼を通していたが、壮太郎の方へ笑顔を向けると
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この卓の上に
巾
(
きれ
)
を綺麗にひろげさせ
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
それは、茶いろの少しぼろぼろの
外套
(
がいとう
)
を
着
(
き
)
て、白い
巾
(
きれ
)
でつつんだ
荷物
(
にもつ
)
を、二つに分けて
肩
(
かた
)
に
掛
(
か
)
けた、
赤髯
(
あかひげ
)
のせなかのかがんだ人でした。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「どんなに切りきざんでも、模樣か縞を合せると、元の袷になるだらう、そこで、切り取つてなくなつてゐる
巾
(
きれ
)
があれば——」
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
身体
(
からだ
)
は
漆
(
うるし
)
のように黒く、眼ばかり光って、唇が
拵
(
こしら
)
えたように厚く、唇の色が塗ったように
朱
(
あか
)
い、頭の毛は
散切
(
ざんぎり
)
で
縮
(
ちぢ
)
れている、腰の
周囲
(
まわり
)
には
更紗
(
さらさ
)
のような
巾
(
きれ
)
を巻いている
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「では、歩き歩き、通ったしるしを残して行きましょう」と、甘洪は、
廟
(
びょう
)
の壁に何か書き残したが、半里も歩くとまた、道ばたの木の枝に、黄色の
巾
(
きれ
)
を結びつけて行く——
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
被
(
かむ
)
りし
巾
(
きれ
)
を洩れたる髪の色は、薄きこがね色にて、着たる衣は垢つき汚れたりとも見えず。我足音に驚かされてかへりみたる
面
(
おもて
)
、余に詩人の筆なければこれを写すべくもあらず。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
我は殆ど歌ふところのものゝ即ち神の
御聲
(
みこゑ
)
にして、我身の唯だ此聲を發する器具に過ぎざるを覺えき。時に廣座の間
寂
(
せき
)
として人なきが如く、處々に
巾
(
きれ
)
もて涙を拭ふものあるを見る。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
楯井さんは殆ど無意識に、これが嫁さんの死体だと思うと、
巾
(
きれ
)
をまくって見た。
惨事のあと
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
巾
(
きれ
)
をもて、紐をもて
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
鳴子屋の塀の釘に残った
巾
(
きれ
)
は平次の懐から出ました。当ててみると、大きさも、色合も、寸分の
隙
(
すき
)
もなくピタリと合います。
銭形平次捕物控:094 死相の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
巾
常用漢字
中学
部首:⼱
3画
“巾”を含む語句
手巾
頭巾
半巾
巾着
巾着切
肩巾
頭巾帽
雑巾
金巾
領巾
黄巾
巾幗
雑巾掛
大巾
角頭巾
緋金巾
絹手巾
白巾
領巾振山
高祖頭巾
...