いたゞき)” の例文
谷の周囲は一マイルの四分の一位である。四方には景色の好い丘陵がある。市に住んでゐる人に、誰一人敢て丘陵のいたゞきに登つたものが無い。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
是故に疑ひは眞理の根より芽の如くに生ず、しかしてこは峰より峰にわれらを促しいたゞきにいたらしむる自然の途なり 一三〇—一三二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
よる燭火ともしびきて、うれしげなあしためが霧立きりたやまいたゞきにもうあし爪立つまだてゝゐる。はやぬればいのちたすかり、とゞまればなねばならぬ。
ナポリへと志し給はゞ、明後日は旭日あさひのまだサンテルモ城(ナポリ府を横斷する丘陵あり、其いたゞきの城を「カステル、サンテルモ」といふ)
四軒茶屋あり。(此まで廿四丁也。)蕨粉わらび餅を売る、妙なり。又上ること一里きよ、山少くおもむろに石も亦少し。路傍は草莽さうもうにて、いたゞき禿とくせり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かさなやまつゞいたゞきそびゆるみねるにつけて、すさまじき大濤おほなみゆき風情ふぜいおもひながら、たびこゝろみて通過とほりすぎました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これはアパラツチエン山の幹から出た小枝で、遙に西に向つて、仰いで見れば、麓は河のほとりに垂れて、いたゞきは空に聳え、自づと近隣の地を支配して居ます。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
これを奇なりとおもふに、此田の中にかへる蛗螽いなごもありて常の田にかはる事なし、又いかなる日てりにも田水てんすゐかれずとぞ。二里のいたゞきに此奇跡きせきること甚不思議ふしぎ灵山れいざんなり。
思ひ煩へる事さへも心自ら知らず、例へば夢の中に伏床ふしどを拔け出でて終夜よもすがらやまいたゞき、水のほとりを迷ひつくしたらん人こそ、さながら瀧口が今の有樣に似たりとも見るべけれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
而してその少年が高山のいたゞきに沈み行く夕日の影を仰ぎ見て、山の彼方かなたなるめづらしき國々にあくがるゝ段は、ことに全篇の骨子として皆な人の唱道しやうだうするところ、あゝこの木曾山中
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
しまひには野も岡も暮れ、影は暗く谷から谷へ拡つて、最後の日の光は山のいたゞきにばかり輝くやうになつた。丁度天空の一角にあたつて、黄ばんで燃える灰色の雲のやうなは、浅間の煙のなびいたのであらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いたゞきの裏行く低き冬の雲榛名はるなうみは山のうへのうみ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いたゞききんの照しと白雪しらゆきと蹈み轟かし
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
石山いしやまいたゞきぢ登り
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
今まではパルナーゾの一のいたゞきにてりしかど、今は二つながら求めて殘りの馬場に入らざるべからず 一六—一八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あなたとわたくしとの登つてゐるいたゞきはヘルセツゲンといふ山の巓でございます。雲隠山くもがくれやまといふ仇名が付いてゐます。ちよつと伸び上がつて御覧なさいまし。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
岩石のはざまよりは、青き迷迭香まんねんらふ(ロスマリヌス)、赤き紫羅欄花あらせいとうなどのぼりたるが、そのいたゞきにはチウダレイクスが廢城の殘壁ありて、猶巍々ぎゞとして雲をしのげり。
これを奇なりとおもふに、此田の中にかへる蛗螽いなごもありて常の田にかはる事なし、又いかなる日てりにも田水てんすゐかれずとぞ。二里のいたゞきに此奇跡きせきること甚不思議ふしぎ灵山れいざんなり。
見送みおくるとちいさくなつて、一大山おほやま背後うしろへかくれたとおもふと、油旱あぶらでりけるやうなそらに、やまいたゞきから、すく/\とくもた、たきおとしづまるばかり殷々ゐん/\としてらいひゞき
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白雪いたゞきを覆ふ。轎夫けうふいふ。御嶽山上に塩ありと。所謂いはゆる崖塩なるべし。一里半藪原駅。二里宮越駅。若松屋善兵衛の家に宿やどる。此日暑甚し。三更のとき雨降。眠中しらず。行程九里きよ
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
まして、秋の初の清く澄みたる空氣は明かに、山々のいたゞき白旗はくきを飜したらんごとき雲の長くおもしろくなびけるなど誰かつく/″\と眺入りて、秋の姿のさびしさに旅思を惱まさぬものかあらん。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
二人で丁度一番高い岩山のいたゞきまで登つた。老人は数分間は余り草臥くたびれて物を云ふことが出来なかつた。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
絶頂ぜつてう天然てんねん苗田なへたあり、依て昔より山の名によぶなり。峻岳じゆんがくいたゞきに苗田ある事甚奇なり。
家によりては異樣に高き梯のいたゞきに門口を開けるあり。その内を望めば、繅車いとぐるまの前に坐せる老女あり。側なる石垣の上よりは黄に熟したる木の實の重げにりたる枝さし出でたるべし。
てんいまだくらし。東方とうはう臥龍山ぐわりうざんいたゞきすこしくしらみて、旭日きよくじつ一帶いつたいこうてうせり。昧爽まいさうきよく、しんみて、街衢がいく縱横じうわう地平線ちへいせんみな眼眸がんぼううちにあり。しかして國主こくしゆ掌中しやうちうたみ十萬じふまんいまはたなにをなしつゝあるか。
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
絶頂ぜつてう天然てんねん苗田なへたあり、依て昔より山の名によぶなり。峻岳じゆんがくいたゞきに苗田ある事甚奇なり。
飛騨ひだから信州しんしうえる深山しんざん間道かんだうで、丁度ちやうど立休たちやすらはうといふ一本いつぽん樹立こだちい、みぎひだりやまばかりぢや、ばすととゞきさうなみねがあると、みねみねいたゞきかぶさつて、とりえず
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
又我国の八海山はつかいさんいたゞきに八ツの池あり、依て山の名とす。絶頂ぜつちように八海大明神の社あり、八月朔日を縁日とし山にのぼる人多し。此夜にかぎりて竜燈りうとうあり、其来る所を見たる人なしといふ。
又我国の八海山はつかいさんいたゞきに八ツの池あり、依て山の名とす。絶頂ぜつちように八海大明神の社あり、八月朔日を縁日とし山にのぼる人多し。此夜にかぎりて竜燈りうとうあり、其来る所を見たる人なしといふ。