トップ
>
尤
>
もっとも
ふりがな文庫
“
尤
(
もっとも
)” の例文
屹
(
きっ
)
となりてばたばたと内に
這入
(
はい
)
り、金包みを官左衛門に打ち附けんとして心附き、坐り直して
叮寧
(
ていねい
)
に返す処いづれも
尤
(
もっとも
)
の仕打なり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
只今
(
ただいま
)
のご質問はいかにもご
尤
(
もっとも
)
であります。多少御実験などもお話になりましたが実は
遺憾
(
いかん
)
乍
(
なが
)
らそれはみな実験になって居りません。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
尤
(
もっとも
)
此十年
許
(
ばか
)
りは余程中風めきて危く見え、
且
(
かつ
)
耳も遠くなり居られ候故、長くは持つまじと思ひ/\
是迄
(
これまで
)
無事なりしは不幸中の幸なりき。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
成功せぬ事を予期して十余年の径路を一朝に転じたのを無謀だと云って驚くなら
尤
(
もっとも
)
である。かく申す本人すら其の点に
就
(
つい
)
ては驚いて居る。
入社の辞
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
代匠記には「中大兄ハ天智天皇ナレバ
尊
(
みこと
)
トカ
皇子
(
みこ
)
トカ
有
(
あり
)
ヌベキニヤ。傍例ニヨルニ
尤
(
もっとも
)
有
(
ある
)
ベシ。三山ノ下ニ目録ニハ御ノ字アリ。脱セルカ」
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
▼ もっと見る
今の
御姿
(
おすがた
)
はもう一里先か、エヽせめては
一日路
(
いちにちじ
)
程も
見透
(
みとお
)
したきを役
立
(
たた
)
ぬ此眼の腹
立
(
だた
)
しやと
門辺
(
かどべ
)
に伸び
上
(
あが
)
りての
甲斐
(
かい
)
なき
繰言
(
くりごと
)
それも
尤
(
もっとも
)
なりき。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
誠にこの勧工場というものは、明治時代の感じをあらわす一つの
尤
(
もっとも
)
なるものであって、私共にとっては忘れられない懐かしいものの一つである。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
これは一応
尤
(
もっとも
)
らしいが、また
強
(
あなが
)
ちそうも言われぬかと思う。ファウストがえらい物だと云うことは事実だとして好かろう。
訳本ファウストについて
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
あの
円満
(
うま
)
し
人
(
びと
)
が、どうしてこんな顔つきになるだろう、と思われる表情をすることがある。其
面
(
おも
)
もちそっくりだ、と
尤
(
もっとも
)
らしい言い分なのである。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「これは
尤
(
もっとも
)
だ。ロシアに
十月
(
オクチャーブリ
)
があったのは。そして、この沢山な十字架と鷲との上に今日一片の赤旗が高くひるがえらなければならなかったのは」
モスクワ印象記
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
かかるところにあっては蛇の姿を嫌がるどころにあらず、諸邦でこれを家の祖霊、耕地の護神とせるは
尤
(
もっとも
)
千万
(
せんばん
)
と悟った。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
まことに
尤
(
もっとも
)
もなことである。しかし世田谷はなかなか家が手に入らない。誰しも安全地帯と思っているせいであろう。
海野十三敗戦日記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「いや、来るときには来るよ、やつ等にしてみれば、それも
尤
(
もっとも
)
なはなしだ、浪人どもが乗り込んできたら、おれはいつでもいさぎよく斬られてやる」
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
尤
(
もっとも
)
咯血したりとて必ず死すとも限らねど
或
(
あるい
)
は先日
腫物
(
はれもの
)
云々の報知ありしころの事にはあらずやなど存じ候。秘し居るにはあらずやなど存じ候、いかゞ
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
三蔵 そりゃ
尤
(
もっとも
)
なことだが、なあおきぬ。親分がお召捕りになってから落目の上に落目となった中ノ川一家、今じゃ身内てのは俺がたった一人なのだ。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
やがて少々、とろりとなって、「さてそこへ立っていちゃ、ああ成程——風紀上、
尤
(
もっとも
)
です……と、従って杯は。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私も
尤
(
もっとも
)
のことと思い、何分ともよろしくと申し、この上はこの人の丹精によって師匠の一命を取り止めるより道もないことと観念致しおった次第であった。
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
実にその
志操
(
こゝろざし
)
に傳次や
尚
(
なお
)
惚
(
ほれ
)
るじゃアねえかと
斯
(
こ
)
ういう旦那の心持で、誠に
尤
(
もっとも
)
だからそう云う事ならせめて盃の一つも
献酬
(
とりやり
)
して、
眤近
(
ちかづき
)
に成りたいと云うので
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
前者は女的男を他の男が評する事
故
(
ゆえ
)
至極
(
しごく
)
尤
(
もっとも
)
と思はるれど、この歌の如きは男的男を他の男が評する事故余り変にして何だかいやな気味の悪い心持になるなり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
土方人足の村で恐れられるも
尤
(
もっとも
)
である。然しながら何ものも有たぬ彼等も、まだ
生命
(
いのち
)
と云うものを有って居る。彼等は生命を
惜
(
おし
)
む。此れが彼等の弱点である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
元来歴史上の現象は単に或る一ツの思想があり、之が社会に具体化されて初めて歴史の進動があるように考えられておりますが、これは如何にも
尤
(
もっとも
)
であります。
流れ行く歴史の動力
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
前田等
尤
(
もっとも
)
千万なる志であるとして、途中長浜の伊賀守勝豊をも同道し、宝寺に至って、秀吉に対面した。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
特に女子に限りて教訓するが如きは至極
尤
(
もっとも
)
に聞ゆれども、男女共に犯す可らざる不徳を書並べ、男女共に守る可き徳義を示して、女ばかりを責るとは
可笑
(
おか
)
しからずや。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
有名な作家、有名な俳書に佳句が多いということは、常識的に一応
尤
(
もっとも
)
な話ではあるが、その故を以て
爾余
(
じよ
)
の作家
乃至
(
ないし
)
俳書を看過するのは、どう考えても道に忠なる
所以
(
ゆえん
)
ではない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
それは男に
活写
(
いきうつ
)
し、
判
(
はん
)
は
手札
(
てふだ
)
形とやらの
光沢消
(
つやけし
)
で、生地から思うと
少許
(
すこし
)
尤
(
もっとも
)
らしく
撮
(
と
)
れてはいましたが、根が
愛嬌
(
あいきょう
)
のある
容貌
(
おもばせ
)
の人で、写真顔が又た引立って美しく見えるのですから
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
戦
(
いくさ
)
は今度ばかりでなく、これからもいくらもあるのだし、まして今度は戦は、味方が勝つにきまっておることではあり、だから君のような素晴らしい、剣道の天才の力を
藉
(
か
)
りずとも……
尤
(
もっとも
)
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
仕立や浜さんが
袴
(
はかま
)
をはいて、三級選出区会議員を望んだのは
尤
(
もっとも
)
な向上である。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
第二にかれを囚となしてたすけ置るる事は中策也(此事易きに似て
尤
(
もっとも
)
難し)
地球図
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
尤
(
もっとも
)
も、その教授法に種々の改善や変更の施されることが、
殊
(
こと
)
に現今に於いては甚だしく、これは主として、その寄宿学校を経営してござる女の校長先生の常識と伎倆によって左右されるものである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
成
(
な
)
、
成
(
な
)
、それで……それならそうと早く一言云えばいいのに……なンだろう大方かく申す拙者
奴
(
め
)
に……ウ……ウと云ッたような訳なンだろう?
大蛤
(
おおはまぐり
)
の前じゃア口が
開
(
あ
)
きかねる、——これやア
尤
(
もっとも
)
だ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
尤
(
もっとも
)
千万なことだと思はずにゐられない。
枯淡の風格を排す
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
尤
(
もっとも
)
、これでも文学士なんで、学問よりはラグビーの方が出来がよかったが、そんなに三下でもありません。まア、時々呼んで可愛がってやって下さい。当人は中世紀のナイトのような気で居るんですから、発奮の足しになりますよ」
流行作家の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
悉
(
つく
)
ス故ニ画図ノ此学ニ必要ヤ
尤
(
もっとも
)
大ナリ
然而
(
しかりしこうして
)
植物学者自ラ図ヲ製スル能ハザル者ハ
毎
(
つね
)
ニ他人ヲ
倩
(
やとう
)
テ之ヲ図セシメザルヲ得ズ是レ大ニ易シトスル所ニ非ザルナリ既ニ自ラ製図スルコト能ハズ且加フルニ不文ヲ以テスレバ如何シテ其
蘊
(
うん
)
ヲ発スルコトヲ得ルヤ決シテ能クセザルナリ自ラ之ヲ製スルモノニ在テハ一木ヲ得ル此ニ
摹
(
も
)
シ一草ヲ
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「うん。
尤
(
もっとも
)
ぢゃ。なれども他人は恨むものではないぞよ。みな
自
(
みづか
)
らがもとなのぢゃ。恨みの心は
修羅
(
しゅら
)
となる。かけても他人は恨むでない。」
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
君江は易者のいう事を至極
尤
(
もっとも
)
だと思うと、自分ながらつまらない事を気に掛けていたと、
忽
(
たちま
)
ち心丈夫な気になってしまった。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
其から其間を縫うて、
尤
(
もっとも
)
らしい儀式・信仰にしあげる為に、民俗民俗にはたらいた内存・外来の高等な学の智慧である。
山越しの阿弥陀像の画因
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
さなくとも長きもの神馬の尾髪、神子の袖、上臈のかもじと『
尤
(
もっとも
)
の草紙』に見る通り、昔は神の乗り物として社内に飼う馬の毛を一切截らなんだ。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
尤
(
もっとも
)
高橋君のは昔発表せられた時
瞥見
(
べっけん
)
して、舞台に上すには適していぬと云うことだけは知っていた。そう云うわけで、私は両君の影響を受けてはいない。
不苦心談
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
深い桜色になるところ、私がおかげさまというのも
尤
(
もっとも
)
とお思いになるでしょう。非常に工合ようございます。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
権太の悪棍となりしは隠し女に
嵌
(
はま
)
り、親には勘当せられ、賭事に掛りしためなれば、この道行は
尤
(
もっとも
)
なれど、善心に復りしを
維盛
(
これもり
)
の大事を聞きたるためとしながら
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
なさるのは、
尤
(
もっとも
)
と思いますわ。でも貴君
迄
(
まで
)
が、それに
感化
(
かぶ
)
れると云うことはないじゃありませんか。縁起などと、云う言葉は、現代人の辞書にはない字ですわね。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この句を評して趣味に乏しいとあるのは
尤
(
もっとも
)
な説である。しかし余自身にはちよつと捨て難い処がある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
代助の
尤
(
もっとも
)
も
応
(
こた
)
えるのは
親爺
(
おやじ
)
である。
好
(
い
)
い年をして、若い
妾
(
めかけ
)
を持っているが、それは構わない。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
是
(
これ
)
より三十銭の安西洋料理食う時もケーク
丈
(
だけ
)
はポッケットに入れて
土産
(
みやげ
)
となす様になる者ぞ、ゆめ/\美妙なる天の配剤に不足
云
(
い
)
うべからずと
或人
(
あるひと
)
仰せられしは
尤
(
もっとも
)
なりけり。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は、博士のことを、そんな人物だとは思わないが、ロッセ氏から、のろのろ砲弾についての討論を聞いているうちに、だんだんと氏のいうところも
尤
(
もっとも
)
だと思うようになった。
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
芸術は貴族的(無論思想上の意味でいう)のものだという
考
(
かんがえ
)
もここから起り、「俗物(多数人)に何がわかるか」という高踏的態度もここから生ずる。なるほど、それは
尤
(
もっとも
)
である。
偶言
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
縁日は植木もさる事ながらあの赤や白色とり/″\に美しいほおずき屋の店はカンテラの光や油煙とともに誠に旧日本の美の
尤
(
もっとも
)
なる一つであるといってもまあそう過言でもあるまい。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
柳亭種彦は昔の杓子の
柄
(
え
)
はいたく曲っていたものだという考証をして、『
尤
(
もっとも
)
の
草紙
(
そうし
)
』のまがれる物品々の段に「大工のかねや、蔵のかぎ、
檜物屋
(
ひものや
)
の仕事、なべのつる、おたがじやく」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
おやまア誠に
暫
(
しばら
)
く、まア、めっきり
尤
(
もっとも
)
らしくおなりなすったね、勘藏さんも
然
(
そ
)
う云って居なすった、
彼
(
あれ
)
も女房を持ちまして、
児
(
こ
)
が出来て、何月が産月だって、指を折って
楽
(
たのし
)
みにして
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
尤
(
もっとも
)
だと思ってまかせたら、
奴
(
やっこ
)
さんその間に、すたこら、自分で始末して、棺に入れてしょって、
火葬揚
(
やきば
)
へもってってしまったんで——おばさん死ぬまで、重宝な権助をつかまえといたもんだ。
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
“尤”の解説
尤(ゆう)は漢姓の一つ。『百家姓』の19番目の姓である。中国の福建省と台湾に多い。2020年の中華人民共和国の統計では人数順の上位100姓に入っていないが、台湾の2018年の統計では85番目に多い姓で、32,176人がいる。
現在の多くは王審知が閩の王となった時、閩国内の「沈」姓が同音の「審」を忌避するために改姓したものだと見られる。
(出典:Wikipedia)
尤
漢検準1級
部首:⼪
4画
“尤”を含む語句
尤物
御尤
尤至極
見尤
不尤
尤之次第
尤千万
尤様
尤異
御尤様
御無理御尤
罪尤
至極尤
蚩尤