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小皺
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こじわ
ふりがな文庫
“
小皺
(
こじわ
)” の例文
有閑好色紳士めいた鼻のわきの
小皺
(
こじわ
)
とが、イギリス人らしいあっけない群集のなかを、映画用微笑とともにゆるくドライヴして行った。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「ねえ、君」と検事が鼻に
小皺
(
こじわ
)
をよせて
囁
(
ささや
)
くように云った。「これはどうも俺たちの手にはおえないようだよ。第一、知識が足りない」
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして、彼はまたふと阿賀妻の存在に気づくのだ。彼のひろい顔は、あぐらをかいている大きな鼻のまわりに不快げな
小皺
(
こじわ
)
を集めていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
大きな、笑うと目元に
小皺
(
こじわ
)
の寄る、
豊頬
(
ふっくり
)
した
如何
(
いか
)
にも愛嬌のある円顔で、
形
(
なり
)
も大柄だったが、何処か円味が有り、心も其通り
角
(
かど
)
が無かった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「…………」
小皺
(
こじわ
)
の中の眼をこらして、いつまでもいつまでも性善坊の顔を見つめ、一転して、その側にきちんと坐っている範宴の姿を見て
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
伊豆は小笠原の暗示したところのものを万事深く呑み込んだという形に、ふむふむと
大袈裟
(
おおげさ
)
に頷き、快心の
小皺
(
こじわ
)
を鼻に刻んで上機嫌に帰宅した。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「ああ。わしにかまわずにやすみなさい」忠相の眼じりに優しい
小皺
(
こじわ
)
がよる。「わしはまだ調べ物もあるし読書もしたい……だがな、大作——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
大戸の中をやや離れて
覗
(
のぞ
)
き込むようにしていたが、その額に畳んだ
小皺
(
こじわ
)
のあたりに雲がかかって、その眼つきさえ米友としてはやや
嶮
(
けわ
)
しいくらいです。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
呉は、左の腕を
捩
(
ね
)
じ曲げるように、顎の下に、も一方の手で抱き上げ、額にいっぱい
小皺
(
こじわ
)
をよせてはいってきた。
国境
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
茶をすゝむる妻の
小皺
(
こじわ
)
著
(
いちじるし
)
き顔をテカ/\と磨きて、
忌
(
いまは
)
しき迄
艶装
(
わかづくり
)
せる姿をジロリ/\とながめつゝ「ぢやア、お
加女
(
かめ
)
、つまり
何
(
どう
)
するツて云ふんだ、梅の
望
(
のぞみ
)
は」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
けれども目の前へ来たのを見ると、
小皺
(
こじわ
)
のある上に醜い顔をしていた。のみならず妊娠しているらしかった。僕は思わず顔をそむけ、広い横町を曲って行った。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
小波は
小皺
(
こじわ
)
の寄った今日でも秀麗閑雅を
偲
(
しの
)
ばせる美男だから、少年時代はさこそと
推量
(
おしはか
)
られるので
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
この
溌剌
(
はつらつ
)
たる青春の美も、三十という年配になれば、その調和は失われ、そろそろ下り坂になって、顔の皮膚はたるみ、眼のまわりや額にはいちはやく
小皺
(
こじわ
)
が寄って
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
機織
(
はたおり
)
から、近所の
養蚕
(
ようさん
)
の手つだいまでやって、かいがいしく働いているおのぶの顔は浅黒く陽にやけてはいたが、三十五の今日にいたるまで
小皺
(
こじわ
)
ひとつうかんでいない。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
挘
(
むし
)
り取ったように捻切られたうえ、最初の半分ほどは滅茶苦茶になって、所々破けたところもあり、よじられて
小皺
(
こじわ
)
が寄って、見る影もなく痛んだところもあるのです。
銭形平次捕物控:244 凧の糸目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
客の私が、却って浮寝鳥に枯柳の腰模様の着物の
小皺
(
こじわ
)
もない娘の
膝
(
ひざ
)
の上にハンケチを
宛
(
あ
)
てがい、それから、鮨を小皿に取分けて、笹の葉を
剥
(
む
)
いてやらねばならなかった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
道の右側は、
甘蔗畑
(
かんしょばたけ
)
が緑の緩やかな起伏を見せてずっと北迄続き、その果には、燃上る
濃藍色
(
のうらんしょく
)
の太平洋が
雲母末
(
うんもまつ
)
のような
小皺
(
こじわ
)
を畳みながら、円く大きく膨れ上っていた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
眼の
縁
(
ふち
)
の
小皺
(
こじわ
)
と
雀斑
(
そばかす
)
とが白粉で塗りつぶされ、血色のよくない
唇
(
くちびる
)
が
紅
(
べに
)
で色どられると、くくり
顎
(
あご
)
の
円顔
(
まるがお
)
は、眼がぱっちりしているので、一層晴れやかに見えて来るばかりか
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「おや、お庄ちゃん来たの。」というような調子で、細い
寝呆
(
ねぼ
)
たような目尻に
小皺
(
こじわ
)
を寄せた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
額
(
ひたい
)
がすこし
禿
(
は
)
げあがり、頬の両側には
小皺
(
こじわ
)
が寄って、どうもその顔いろはいわゆる痔もちらしい……しかし、これはどうも仕方がない! 罪はペテルブルグの気候にあるのだから。
外套
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
オリヴィエはジャックリーヌの
濡
(
ぬ
)
れた髪に
接吻
(
せっぷん
)
した。彼女は彼のほうに顔をあげた。そして彼は初めて、恋に燃えてる
唇
(
くちびる
)
を、若い娘の
小皺
(
こじわ
)
のある熱い唇を、自分の唇の上に感じた。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
顔の
小皺
(
こじわ
)
の一本まで、生けるが如き生々しさ。生人形とはよくも名づけたものである。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それに
合槌
(
あいづち
)
を打っているもう一人の婦人は、汗のため厚化粧のお
白粉
(
しろい
)
がぶちになって、ところどころに
小皺
(
こじわ
)
のある、荒れた地肌が出ているのから察すると、恐らく四十近いのでしょう。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自分たちもこの画中の人に加わって欄に倚って月を眺めていると、月は
緩
(
ゆ
)
るやかに流るる水面に澄んで映っている。
羽虫
(
はむし
)
が水を
摶
(
う
)
つごとに細紋起きてしばらく月の
面
(
おも
)
に
小皺
(
こじわ
)
がよるばかり。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
母親は自分で出かけて清三の好きな田舎
饅頭
(
まんじゅう
)
を買ってきて茶を
煎
(
い
)
れてくれた。母親の
小皺
(
こじわ
)
の多いにこにこした顔と息子の青白い弱々しい淋しい笑顔とは久しく長火鉢に相対してすわった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
藤次郎は小声に力をこめて答えたが、その額には不安らしい
小皺
(
こじわ
)
が見えた。
真鬼偽鬼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いたずらに
増
(
ふ
)
えた髪の
霜
(
しも
)
でもなく、
欠伸
(
あくび
)
をしてつくった
小皺
(
こじわ
)
でもない。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お峯は
苦笑
(
にがわらひ
)
しつ。
明
(
あきらか
)
なる障子の
日脚
(
ひざし
)
はその
面
(
おもて
)
の
小皺
(
こじわ
)
の読まれぬは無きまでに照しぬ。髪は薄けれど、
櫛
(
くし
)
の歯通りて、
一髪
(
いつぱつ
)
を乱さず
円髷
(
まるわげ
)
に結ひて顔の色は赤き
方
(
かた
)
なれど、いと好く
磨
(
みが
)
きて
清
(
きよら
)
に
滑
(
なめらか
)
なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「いや、その
儘
(
まま
)
、居て下さい。」と、ウラスマルは掌と掌をこすり合せながら、右方の
眼尻
(
めじり
)
へだけ
小皺
(
こじわ
)
を寄せて、私に納得させ、それから次に、英語でもつて、外の客人へ、カムインと呼びかけた。
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
その流れのなかに、飛躍もあれば墜落もある。だが、昔の女は何の変化もなく
太々
(
ふてぶて
)
しくそこに坐っている。田部はじいっときんの眼をみつめた。眼をかこむ
小皺
(
こじわ
)
も昔のままだ。輪郭も
崩
(
くず
)
れてはいない。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
鬢
(
びん
)
などには白毛が多く、眼の縁などにも
小皺
(
こじわ
)
が多かった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と女は笑って、
眼尻
(
めじり
)
に
小皺
(
こじわ
)
のさざなみを立てながら
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
直接に先方に射込むようなよく
徹
(
とお
)
る声でまッ直ぐに云った。よろこびが彼の顔にみなぎった。
小皺
(
こじわ
)
にかこまれた瞳がしっとりと湿って来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
磯五のことをいうときは、さざなみのような
小皺
(
こじわ
)
の寄っている眼のまわりに、
桜
(
さくら
)
いろのはじらいがのぼるのだ。うれしさを隠そうともしないのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
許攸は鼻の上に皮肉な
小皺
(
こじわ
)
をよせて云った。それは先に曹操から都の
荀彧
(
じゅんいく
)
へ宛てて、兵糧の窮迫を告げ、早速な処置をうながした直筆のものであった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども目の前へ来たのを見ると、
小皺
(
こじわ
)
のある上に醜い顔をしてゐた。のみならず妊娠してゐるらしかつた。僕は思はず顔をそむけ、広い横町を曲つて行つた。
歯車
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
小皺
(
こじわ
)
ほどの波も立たず、打見たところでは真黒ですが、掌を入れてみると血だということがわかる、その血がベトベトとして生温かいものであることを感得する。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
中央の椅子に
懸
(
かゝ
)
りたる年既に五十にも近からんと思はるゝ麦沢教授、
小皺
(
こじわ
)
見ゆる
頬辺
(
ほゝのあたり
)
に
笑
(
ゑみ
)
の波寄せつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
もう三十七八ともみえる女は、その時も綺麗に
小皺
(
こじわ
)
の寄った
荒
(
すさ
)
んだ顔に薄化粧などをして、古いお召の
被布姿
(
ひふすがた
)
で来ていたが、お島の権幕に
怯
(
お
)
じおそれたように、
悄々
(
すごすご
)
出ていった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
六十に近い
小皺
(
こじわ
)
を品格と雄弁で目立たなくし、三十代の夫と不釣合には見え無い。服装は今の身分伯爵夫人に
相応
(
ふさわ
)
しい第二帝政時代風のローブ・ド・ステールで絵扇を持って居る。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それはまるで
小皺
(
こじわ
)
のよった年増女のサーヴィスのように、気味のわるいものだった。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ウロンスキーは成る程子供好きらしい、柔和な、何となく気の弱そうなところのある
淋
(
さび
)
しい眼元に微笑を含んで、
眼尻
(
めじり
)
に
小皺
(
こじわ
)
を寄せながら、自分が
噂
(
うわさ
)
されているのを黙って聞いていた。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
多分、彼も、何かリーザが喜びそうなものを買って持って行っているのに違いない。武石は、
小皺
(
こじわ
)
のよった、人のよさそうな、吉永の顔を思い浮べた。そして、自から、ほほ笑ましくなった。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
悲鳴をあげたのは、
白粉
(
おしろい
)
の濃い大年増、これは後で、玄々斎の女房のお
弁
(
べん
)
と知れましたが、三十五六の
小皺
(
こじわ
)
を、厚化粧で塗りつぶし、真っ赤に口紅を塗った——その当時にしては物凄い女です。
銭形平次捕物控:094 死相の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
青い
木綿
(
もめん
)
の洋服が、しっくり身について、それの
小皺
(
こじわ
)
の一つ一つにさえ
豊
(
ゆたか
)
な肉体のうねりが、
艶
(
なまめ
)
かしく現れているのだし、青春の肌の
薫
(
かお
)
りが、木綿を通してムッと男の鼻をくすぐるのだし、そして
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それは腰の曲がった、非常に足の弱い、背の低い人で、まだやっと六十五にしかならないのに、病弱のため、ずっと——少なくとも十くらいは
老
(
ふ
)
けて見える。顔はひどく
萎
(
しな
)
びて
小皺
(
こじわ
)
に埋もれている。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そして、金吾がじッと睨むのを、
小皺
(
こじわ
)
をよせた目で見返しながら、ぽつぽつこんな言い草をならべたものです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、黒い垢すりの
甲斐絹
(
かいき
)
が何度となく上をこすっても、
脂気
(
あぶらけ
)
の抜けた、
小皺
(
こじわ
)
の多い皮膚からは、垢というほどの垢も出て来ない。それがふと秋らしい寂しい気を起させたのであろう。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
第一に写真では分らなかったけれども、髪の毛が、
禿
(
は
)
げてはいないが、半分以上白髪で、一面に薄く、ちぢれて、もじゃもじゃと、ひどく汚らしく生えていて、顔は非常に
小皺
(
こじわ
)
が多い。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
半日でも一日でも、新吉が口を利けば、例の目尻や口元に
小皺
(
こじわ
)
を寄せた。人のよさそうな笑顔を向けながら、素直に受答えをするほか、自分からは
熟
(
う
)
んだ柿が
潰
(
つぶ
)
れたとも言い出せなかった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
小
常用漢字
小1
部首:⼩
3画
皺
漢検1級
部首:⽪
15画
“小”で始まる語句
小
小児
小径
小鳥
小僧
小言
小路
小遣
小刀
小父