單純たんじゆん)” の例文
新字:単純
單純たんじゆんなレウマチスせい頭痛づつうではあつたが、りよ平生へいぜいからすこ神經質しんけいしつであつたので、かりつけ醫者いしやくすりんでもなか/\なほらない。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
所詮つまり周三がお房をよろこぶ意味が違つて、一ぶつ體が一にんの婦となり、單純たんじゆんは、併し價値かちある製作の資れうが、意味の深い心のかてとなつて了つた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たゞおい益々ます/\其教育事業そのけういくじげふたのしみ、その單純たんじゆん質素しつそ生活せいくわつたのしんでらるゝのをてはぼく今更いまさら崇高すうかうねんうたれたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この見かけの極めて單純たんじゆんな事件が、思ひも寄らぬ複雜なものにならうとは、錢形平次も思ひ及ばなかつたでせう。
彼等かれらはそれから茶碗ちやわんはしもべたりとむしろうへいて、單純たんじゆんみづ醤油しようゆした液汁したぢひたして騷々敷さう/″\しく饂飩うどんすゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だから苦痛くつう輕蔑けいべつしたり、何事なにごとにもおどろかんなどとつてゐられる。れははなは單純たんじゆん原因げんいんるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それをもの單純たんじゆんかんがへるひとは、悲觀的ひかんてき涙脆なみだもろ氣持きもちだといつて、いけないものとしてゐるが、人間にんげんはいつもにこ/\わらつてゐるものばかりのものではありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
いへ引取ひきとつた小六ころくさへはらそこではあに敬意けいいはらつてゐなかつた。二人ふたり東京とうきやうたてには、單純たんじゆん小供こどもあたまから、正直しやうぢき御米およねにくんでゐた。御米およねにも宗助そうすけにもそれがわかつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
問題もんだいけつしてしかく單純たんじゆんなものではなくして、べつふか精神的理由せいしんてきりゆうがあるとおもふ。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
一般いつぱんかたち模樣もよう單純たんじゆんであつて、まへのものほど複雜ふくざつでないといふことが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そして、いろいろ迷つた末にその題を單純たんじゆんに「修道院の秋」とつけて、一づとぢ上げてみた。然し、私の心にはまだほんたうの滿足は來なかつた。しつくりした安心は得られなかつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
きはめて重大ぢゆうだいなるまた單純たんじゆんなるものをのぞいては、萬國ばんこく共通けうつうのものはいのである。
其處そこ學校がくかうたて決心けつしんかれこゝろわいたのです、諸君しよくんかれ決心けつしんあま露骨むきだしで、單純たんじゆんなことをわらはれるかもれませんが、しかし元來ぐわんらい教育けういくのない一個いつこ百姓ひやくしやうです
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
だがわたしは、まへほういとおもひます。なぜなれば、『おほぎみの御笠みかさやま』といふところに、ひとあたまが、もつれをかんじます。純粹じゆんすい單純たんじゆんにすっきりとはひつてないのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そのなかに、かれとしはしては複雜ふくざつ實用じつようてきしないあたまつてゐながら、としよりもわか單純たんじゆん性情せいじやう平氣へいきあらはす子供こどもぢやないかといふ質問しつもんがあつた。宗助そうすけはすぐそれを首肯うけがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
到底たうてい單純たんじゆん理屈りくつぺんりつすることが出來できない。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
短歌たんか出來できるまでには、いろんなかたちをとほつててゐます。第一だいゝちに、世間せけんひとは、みじか單純たんじゆんなものがはじめで、それがひろがつて、なが複雜ふくざつなものとなるといふかんがかたの、くせつてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)