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卍
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まんじ
ふりがな文庫
“
卍
(
まんじ
)” の例文
この邸の屋根瓦には、
卍
(
まんじ
)
の紋が
苔
(
こけ
)
さびてあろう。遠祖
源頼政
(
みなもとよりまさ
)
公が、義兵をあげられた時、高倉宮より賜った家紋と伝え聞いておる。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あのようにめいめい右乳下へ
卍
(
まんじ
)
のいれずみすらしておいた身にかかわらず、つい仲間の者にそむいて、長崎奉行に密告したのでござります。
右門捕物帖:08 卍のいれずみ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それはもちろんブラマプトラに注いで居る川でその川の名を後で聞いて見るとチェマ・ユンズン・ギチュ(
卍
(
まんじ
)
の砂の川という意味)という。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
二を引いて上から落ちて来た。
卍
(
まんじ
)
を
描
(
えが
)
いて花火のごとく地に近く廻転した。最後に穂先を逆に返して
帝座
(
ていざ
)
の真中を貫けとばかり
抛
(
な
)
げ上げた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すぐに、
卍
(
まんじ
)
が
出
(
で
)
て、ふつと
前
(
まへ
)
へ
通
(
とほ
)
つて
行
(
ゆ
)
きます。
最
(
も
)
う、
其
(
それ
)
を
見
(
み
)
ると、
口惜
(
くや
)
しさが
胸
(
むね
)
を
縛
(
しば
)
つて、
咽喉
(
のど
)
を
詰
(
つ
)
めて、
主人
(
あるじ
)
は
口
(
くち
)
も
利
(
き
)
けなかつたさうなんですよ。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
みんな土葬で
棺
(
ひつぎ
)
は三尺程高い箱棺で、それに
蓮台
(
れんだい
)
と
天蓋
(
てんがい
)
とはお寺に備えつけのものを借りて来て、天蓋には白紙を張り、それに銀紙で
卍
(
まんじ
)
をきざんで張りつけ
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
現にこの
卍
(
まんじ
)
の形がそうなんだが、いつぞやの黒死館で、クリヴォフの死体の上に何があったと思うね。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「さあさあみんないつもの手だ!
卍
(
まんじ
)
廻わりに押し廻わり、突き破って行こう、切り抜けて行こう!」
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鐘楼があり、多宝塔があり、そして、正面、石段による適当な高さをもつた本堂には“寂光殿”とした額が
懸
(
かゝ
)
り、その下に、マルに
卍
(
まんじ
)
の、浅黄いろの幕が張つてあつた。
にはかへんろ記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
その途中吊台の
被
(
おおい
)
の
隙
(
すき
)
から外の方を見ると、
寒詣
(
かんまい
)
りらしい
白衣
(
びゃくえ
)
の一面に
卍
(
まんじ
)
を書いた行者らしい男が、手にした
提灯
(
ちょうちん
)
をぶらぶらさせながら後になり前になりして歩いていた。
天井裏の妖婆
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
谷崎潤一郎氏の「
卍
(
まんじ
)
」もやはり、大阪の女が自分の恋物語を大阪弁で語っている形式である。
大阪の可能性
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
たまたま
卍
(
まんじ
)
つなぎとか
巴
(
ともえ
)
とかの幾何学的模様があるけれどそれらは皆支那から来たのである。近頃
鍬形蕙斎
(
くわがたけいさい
)
の略画を見るにその幾何学的の直線を利用した者がいくらもある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
これはつい先ごろ谷崎さんの
卍
(
まんじ
)
の値段(一〇〇〇円)が問題になつたことゝ思ひ合はせられ、モノの値上りの比率が、このさきもこの割で時の経過と正比例してひろがつて行けば
東京の風俗
(新字旧仮名)
/
木村荘八
(著)
それから蓋の上に
卍
(
まんじ
)
を書き、さらにまた矢の根を伏せた
後
(
のち
)
、こう家康に返事をした。
古千屋
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私たちはすぐ目の前にユンクフラウの本体を仰ぎながら、富士より三九〇米高く、新高より二一六米高いその俊峰を
卍
(
まんじ
)
巴の雪花の中に見失い、しばらく償われない気持で立ちつくした。
吹雪のユンクフラウ
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
森田草平
(
もりたそうへい
)
氏の四十八人目と云うのや、
谷崎潤一郎
(
たにざきじゅんいちろう
)
氏の
卍
(
まんじ
)
、川端康成氏の温泉宿、
野上弥生子
(
のがみやえこ
)
氏の燃ゆる薔薇、
里見弴
(
さとみとん
)
氏の大地、
岩藤雪夫
(
いわとうゆきお
)
氏の闘いを
襲
(
つ
)
ぐもの、この七篇の華々しい小説が
文学的自叙伝
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
土蔵破
(
むすめやぶ
)
りで江戸中を騒がし長い草鞋を穿いていた
卍
(
まんじ
)
の富五郎という
荒事
(
あらごと
)
の
稼人
(
かせぎて
)
、相州鎌倉は
扇
(
おうぎ
)
が
谷
(
やつ
)
在
(
ざい
)
の
刀鍛冶
(
かたなかじ
)
不動坊祐貞
(
ふどうぼうすけさだ
)
方
(
かた
)
へ押し入って召捕られ、伝馬町へ差立てということになったのが
釘抜藤吉捕物覚書:04 槍祭夏の夜話
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
卍
(
まんじ
)
くずしの
紗綾形
(
さやがた
)
模様のついた
白綾子
(
しろりんず
)
なぞに比べると、彼の目にあるものはそれほど特色がきわだたないかわりに、いかにも旧庄屋
風情
(
ふぜい
)
の娘にふさわしい。色は
清楚
(
せいそ
)
に、情は青春をしのばせる。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
雪霙いよよ
卍
(
まんじ
)
とふるなかにあなかうがうし
明
(
あ
)
けの
白鶴
(
しらつる
)
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
卍
(
まんじ
)
地獄
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
阿波守の乗っている卍丸——その
舷
(
ふなべり
)
に立てつらねた船印の
差物
(
さしもの
)
には、桐のかげ紋と
卍
(
まんじ
)
の紋、朝の潮風をうけてへんぽんとひるがえった。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
事の
勃発
(
ぼっぱつ
)
いたしましたのは、前回の
卍
(
まんじ
)
事件がめでたく落着いたしまして、しばらく間をおいた九月下旬のことでありました。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
顔はかくれて、両手は十ウの
爪紅
(
つまべに
)
は、世に散る
卍
(
まんじ
)
の白い
痙攣
(
けいれん
)
を起した、お雪は乳首を
噛切
(
かみき
)
ったのである。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
刻々と
逼
(
せま
)
る暮色のなかに、嵐は
卍
(
まんじ
)
に吹きすさむ。
噴火孔
(
ふんかこう
)
から吹き出す
幾万斛
(
いくまんごく
)
の煙りは卍のなかに
万遍
(
まんべん
)
なく
捲
(
ま
)
き込まれて、嵐の世界を尽くして、どす黒く
漲
(
みなぎ
)
り渡る。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お浜の頭の中で
卍
(
まんじ
)
となり
巴
(
ともえ
)
となって入り乱れておりますが、ここでもやはり
勝目
(
かちめ
)
は竜之助にあって、憎い憎いと思いつつも、その憎さは勝ち誇った男らしい憎さで
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そう云って、検事が指差したところを見ると、その前後二様の流血で
作
(
な
)
された形が、なんとなく
卍
(
まんじ
)
に似ていて、そこに真紅の表章が表われているように思われたからである。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それは川が流れて池となり池また流れて川となるで、その池の配合で川の流れ
塩梅
(
あんばい
)
が
卍
(
まんじ
)
のようになって居るのかも知れません。で、その川でわが生命を失うかどうかという困難が起って来た。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
卍
(
まんじ
)
頭巾の男はもう、卓に
酒肴
(
さけさかな
)
を並べさせて待っていた。そして、
銀子
(
ぎんす
)
二十両ずつ、二た山にして、彼らの卓の鼻先においてある。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それがさ、妙なところに妙なものがあるのでな。実は、てまえもいぶかしく思うておるが、右乳の下に
卍
(
まんじ
)
のほりものがありましたんですよ」
右門捕物帖:08 卍のいれずみ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
と
呆
(
あき
)
れたやうに
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けると、
卍
(
まんじ
)
を
頬張
(
ほゝば
)
つたらしい、
上顎
(
うはあご
)
一杯
(
いつぱい
)
、
眞黒
(
まつくろ
)
に
見
(
み
)
えたさうです。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
卍
(
まんじ
)
が聯想されてくるのでして、また、そこに憶測が加わると云うのは、毎夜八住が外出するのが、
払暁
(
あけがた
)
の五時を跨ぎ、さらに今日の事件が、やはり同じ時刻に行われているからです。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
いちめんに河は
飛沫
(
しぶき
)
となり、その真っ白な水煙のなかで、武者と武者、足軽隊と足軽隊とが
卍
(
まんじ
)
になって、合戦をしはじめた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最後の八番てがらの
卍
(
まんじ
)
騒動のときなどは、せっぱつまって腹までも切ろうとしたところを、右門の情けと
義侠
(
ぎきょう
)
であやうく救い出されているんですから、いかに厚顔無恥でも
右門捕物帖:12 毒色のくちびる
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
……
動悸
(
どうき
)
に波を打たし、ぐたりと手をつきそうになった時は、
二河白道
(
にがびゃくどう
)
のそれではないが——石段は幻に白く浮いた、
卍
(
まんじ
)
の馬の、
片鐙
(
かたあぶみ
)
をはずして
倒
(
さかさま
)
に落ちそうにさえ思われた。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「折もよし、四、五日のうちに太守の御帰国
卍
(
まんじ
)
丸の船出! どうにでも隠す工夫をしてそなたを連れてゆく所存。もう
否応
(
いやおう
)
はあるまいのう……」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
又
(
また
)
……
後
(
あと
)
で
主人
(
あるじ
)
に
聞
(
き
)
きますと……
釣臺
(
つりだい
)
が
出
(
で
)
ますと、それへ
着
(
つ
)
いた
提灯
(
ちやうちん
)
の四五
尺
(
しやく
)
前
(
まへ
)
へ、
早
(
は
)
や、あの、
卍
(
まんじ
)
をかいたのが、
重
(
かさな
)
つて
點
(
とも
)
れて、すつ/\と
先
(
さき
)
を
切
(
き
)
つて
歩行
(
ある
)
いたんださうです。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と同時に、右門のまなこを最初にはげしく射たものは、その胸の右乳下に見えるあの
卍
(
まんじ
)
のいれずみ——たしかに破牢罪人の同じ右乳下にもあったはずの、あのいぶかしき卍の朱彫りでありました。
右門捕物帖:08 卍のいれずみ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「
卍
(
まんじ
)
丸御用意のため、川口の脇船へ何かの
諜
(
しめ
)
しあわせにおいでになり、只今、お
船蔵
(
ふなぐら
)
にはおいでがないそうでござります」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
焚
(
た
)
いてありました松の枝が、煙も立たずに白い炎で、小さな
卍
(
まんじ
)
に燃えていて、そこに、ただ御新造の黒髪ばかり、お顔ばかり、お姿ばかり、お顔はもとより、
衣紋
(
えもん
)
も、肩も、袖も
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まっ黒な人影が、
卍
(
まんじ
)
になった。隊の後方の者は、通ろうとしたが、通れないのである。もう合戦は、始まっていたのだ。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
微紅
(
うすあか
)
い光る雨に、花吹雪を浮かせたように、羽が透き、身が染って、数限りもない赤蜻蛉の、大流れを
漲
(
みなぎ
)
らして飛ぶのが、行違ったり、
卍
(
まんじ
)
に舞乱れたりするんじゃあない、上へ
斜
(
ななめ
)
、下へ斜、右へ斜
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
広場をえらんで、双方の馬と馬、
卍
(
まんじ
)
にもつれた。花栄の
閃々
(
せんせん
)
たる
白槍
(
びゃくそう
)
、秦明の風を呼ぶがごとき
仙人掌棒
(
さぼてんぼう
)
、およそ四、五十合の大接戦だったが勝負はつかない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俊吉は、
卍
(
まんじ
)
の中を雪に
漾
(
ただよ
)
う、黒髪のみだれを思った。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多くは、灌木帯を目がけて跳び降り、その上にまた跳び降り、跳び降り、青葉をかすめる槍の光や
差物
(
さしもの
)
が、山つつじの花と共に、一瞬、あらゆる色彩の
卍
(
まんじ
)
を描いた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
影を沈めて六ツの花、
巴
(
ともえ
)
に乱れ、
卍
(
まんじ
)
と飛交う。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
侍臣が止めるつもりでかれの
轡
(
くつわ
)
を
阻
(
はば
)
めたが、ふり飛ばされて、あッと、起きあがってみた時は、もう主君のすがたは、白と黒の
卍
(
まんじ
)
のなかに、魔人のような
馳駆
(
ちく
)
を見せていた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭上にきたかと思うと、あなたこなたの
鯨幕
(
くじらまく
)
は一せい風をはらみ、地上の
紅葉
(
こうよう
)
は
逆
(
さか
)
しまに
吹
(
ふ
)
きあげられて、さんさんと黒く、さんさんと
紅
(
あか
)
く、
卍
(
まんじ
)
をえがき、
旋風
(
つむじ
)
となって狂う。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武行者は、
肘
(
ひじ
)
を蹴られて、かえって相手の力量の程度をすぐ察知したかのようだった。戒刀にはおよばない。そして敢て、素手を示しつつ身をすすませた。ばッと格闘の
卍
(
まんじ
)
がおこる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして本尊に、御自身の
念持仏
(
ねんじぶつ
)
——胸に
卍
(
まんじ
)
の彫ってある
阿弥陀如来
(
あみだにょらい
)
像をおさめて——今生の
衆生
(
しゅじょう
)
の
結縁
(
けちえん
)
と、来世の
仏果
(
ぶっか
)
のために施与せんというのが、安楽寿院創建の
御願
(
ぎょがん
)
とされるところらしい。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪と馬、雪と戟、雪と兵、雪と旗、
卍
(
まんじ
)
となって、早くも混戦になった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“卍”の解説
卍(まんじ、sa: swastika スヴァスティカ、スワスティカ、bo: g.yung drung ユンドゥン)は、幾何学的な紋章や意匠・記号・文字の一つ。世界の多くの文化や宗教でシンボルとして使用されており、ヒンドゥー教や仏教などの宗教的象徴、アメリカ州の先住民族、西洋では太陽十字からの派生などの例が存在している。日本では家紋や漢字としても使用されている。
(出典:Wikipedia)
卍
漢検1級
部首:⼗
6画
“卍”を含む語句
卍巴
卍字
卍形
卍丸
両捨一用卍
卍字格子
卍組
卍頭巾
向卍
巴卍