)” の例文
「音楽が正しくなり、しょうもそれぞれその所を得て誤用されないようになったのは、私が衛から魯に帰って来たあとのことだ。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「僕さ、僕がつけてやったんだ。元来坊主のつける戒名ほど俗なものは無いからな」と天然居士はよほどな名のように自慢する。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
〔譯〕雅事がじ多くは是れきよなり、之をと謂うて之にふけること勿れ。俗事却て是れ實なり、之を俗と謂うて之をゆるがせにすること勿れ。
隣宿りんしゆく六日町の俳友天吉老人のはなしに、妻有庄つまありのしやうにあそびしころきゝしに、千隈ちくま川のほとり人、初雪しよせつより(天保五年をいふ)十二月廿五日までのあひだ
「倅が上海に行つて居りますので、いつも取り寄せて貰ひますがな、香にしろ、筆墨にしろ、何に限らず日本のものはどうもでありません。」
新帰朝者日記 拾遺 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
土地の感じは京都から伏見へくのと似て居る。昔の城や王政時代の離宮の跡などがある。ふるい街だけ何処どこか落着いて光沢つや消しをした様なおもむきが漂うてる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この年六月七日に成善は名をたもつと改めた。これは母をおもうが故に改めたので、母は五百いお字面じめんならざるがために、常に伊保と署していたのだそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのさびといひ、といひ、幽玄ゆうげんといひ、ほそみといひ、以て美の極となす者、ことごとく消極的ならざるはなし。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
親父おやぢにも、せがれにも、風景にも、ぼくにしてを破らざること、もろこしのもちの如き味はひありと言ふべし。その手際てぎはあざやかなるは恐らくは九月小説中の第一ならん
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こういう男は随分世間にもあるもので、のようで俗で、俗のようで物好ものずきでもあって、愚のようで怜悧りこうで、怜悧のようで畢竟ひっきょうは愚のようでもある。不才の才子である。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
金をかけて、茶座敷を営むより、此の思ひつき至つて妙、にして而して優である。
玉川の草 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
有難ありがたぞんじます……大仏餅だいぶつもちまうすものはがありまして
……むかしはすべてこうなことをいったものです。
「この墓銘ぼめい沢庵石たくあんいしり付けて本堂の裏手へ力石ちからいしのようにほうり出して置くんだね。でいいや、天然居士も浮かばれる訳だ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みやことほきよりみつぎたれば塩引しほびきならん。頭骨かしらのほね澄徹すきとほるところを氷頭ひづとてなます也。子をはらゝごといふ、これをしほにしたるも美味びみ也。
言ひ難きを言ふは老練の上の事なれど、そは多く俗事物じぶつを詠じて、ならしむる者のみ。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
客座にどっしりと構えて鷹揚おうようにまださほどは居ぬ吾家うちからげた大きな団扇うちわゆるはらいながら、せまらぬ気味合きみあいで眼のまわりにしわたたえつつも、何か話すところは実に堂々として
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
西片町は学者町か知らないがな家は無論の事、落ちついた土の色さえ見られないくらい近頃は住宅が多くなった。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どもをやしな主人あるじもこゝにきたて、したがへたる料理人にしたる魚菜ぎよさい調味ていみさせてさらにえんひらく。是主人このあるじ俗中ぞくちゆうさしはさんつね文人ぶんじん推慕したふゆゑに、この日もこゝにきたりて面識めんしきするを岩居がんきよやくせしとぞ。
「ほんにねえ」は到底とうてい吾輩のうちなどで聞かれる言葉ではない。やはり天璋院てんしょういん様の何とかの何とかでなくては使えない、はなはだであると感心した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どもをやしな主人あるじもこゝにきたて、したがへたる料理人にしたる魚菜ぎよさい調味ていみさせてさらにえんひらく。是主人このあるじ俗中ぞくちゆうさしはさんつね文人ぶんじん推慕したふゆゑに、この日もこゝにきたりて面識めんしきするを岩居がんきよやくせしとぞ。
それが部屋の大きさにくらべると、丸でり合が取れないから、敷物しきものとしていたといふよりは、色のい、模様のな織物としてほうりだした様に見える。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まず日本の昔に流行はやった牛車うしぐるまの小ぢんまりしたものと思えば差支さしつかえないが、見たところは牛車よりもかえってである。その代り乗ってる人間は苦しいそうだ。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨日きのうの雨をみの着てりし人のなさけをとこながむるつぼみは一輪、巻葉は二つ。その葉を去る三寸ばかりの上に、天井から白金しろがねの糸を長く引いて一匹の蜘蛛くもが——すこぶるだ。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども惜しい事に本文は挿画ほどに行かなかった。中には欲のかたまり羽化うかしたような俗な仙人もあった。それでも読んで行くうちには多少気に入ったのもできてきた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二階が荷主のへやだと云うんで、二階へあがって見ると、なるほど室がたくさん並んでいる。そのうちの一つでは四人よつたり博奕ばくちを打っていた。博奕の道具はすこぶるなものであった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
名は日本橋だけれどもその実は純然たる洋式で、しかも欧洲の中心でなければ見られそうもないほどに、にも丈夫じょうぶにもできている。三人は橋の手前にある一棟ひとむね煉瓦造れんがづくりに這入はいった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
芭蕉ばしょうと云う男は枕元まくらもとへ馬が尿いばりするのをさえな事と見立てて発句ほっくにした。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうする方が詩的でいい。何となくでいい」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)