陸奥むつ)” の例文
旧字:陸奧
蠅の事に就いて今挙げた片倉小十郎や伊達政宗に関聯かんれんして、天正十八年、陸奥むつ出羽でわの鎮護の大任を負わされた蒲生氏郷がもううじさとを中心とする。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
相手の陸奥むつはなもそんなに細かい力士ではないが出羽に向つて仕切ると四階見物より『小さいのーイ、しつかりしろ』と怒鳴られる。
文字がよく示しますように、日本の一番奥のはては陸奥むつの国であります。県庁は青森市に在りますが、津軽つがる氏の居城は弘前ひろさきでありました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
明治になっても、陸奥むつ宗光むねみつを出し、大逆だいぎゃく事件じけんにも此処から犠牲ぎせい一人ひとりを出した。安達君は此不穏の気の漂う国に生れたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
若い時分から陸奥むつなどという京からはるかな国に行っていたから、声などもそうした地方の人と同じようななまり声の濁りを帯びたものになり
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「いよいよ、永年憧れていた恋人が、やって来たぞ」そういったのは、旗艦きかん陸奥むつ士官室ガン・ルームに、其の人ありと聞えた剽軽ひょうきん千手せんじゅ大尉であった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
輔佐ほさには、顕家の弟、顕信あきのぶ陸奥むつの鎮守府将軍にのぼせ、また、結城ゆうき宗広をも付き添わせて、ここに、東下の軍勢が、再編成されたのだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大仏鋳造終ってなお塗金不足だったとき、陸奥むつの国から黄金を献上したことは、大伴家持おおとものやかもちの長歌によって有名である。その折どんなに御喜びになったか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
木のあるタイは特にニタイという。陸中胆沢いさわ郡姉体村または陸奥むつ二戸にのへ郡姉帯村などのアネタイなども、狭い傾斜地を意味するアイヌ語と解せらるるという。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
長崎のひとをして陸奥むつの方言を聞かせたとしても、十に七八は通じるであろう、ましてイタリヤと阿蘭陀とは、私が万国の図を見てしらべたところに依ると
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
慶応四年の春の夜ふけの遅い月が、陸奥むつ二本松の十万石をそのひと色に塗りこめて陰火のように青白かった。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
東国の出羽でわ陸奥むつもその伝で二つに分れたと聞いている、昔、実方さねかた中将が、奥州へ流され、この国の名所、阿古屋あこやの松を見ようと尋ね歩いたが見つからなかった。
男の父は今度の除目ぢもくに、陸奥むつかみに任ぜられた。男もその為に雪の深い奥へ、一しよに下らねばならなかつた。勿論姫君と別れるのは、何よりも男には悲しかつた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
父という人は三十三ヵ所の観音もうでを思い立って、一人で遠い旅へ迷い出ると、陸奥むつ松島の掃部かもんという男と道中で路連れになった。掃部も観音詣での一人旅であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
新田義貞は上野こうずけに、赤松則村のりむら播磨はりまの国に、結城ゆうき宗広は陸奥むつの国に、土居、得能とくのうは四国の地に、名和長年は伯耆ほうきの国に、菊池武時は九州の地に、そうして足利高氏さえ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
柿色の篠懸すずかけに初夏の風をなびかせて、最上川の緑を縫った棧道をさかのぼり、陸奥むつの藤原領へ越える峠の一夜、足をとどめた生月いけづきの村の方からくる源遠き峡水であるから
姫柚子の讃 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
元禄の頃の陸奥むつ千鳥には——木川村入口に鐙摺あぶみずりの岩あり、一騎だちの細道なり、少しきて右のかたに寺あり、小高き所、堂一宇いちう、継信、忠信の両妻、軍立いくさだちの姿にて相双あいならび立つ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
永承年間陸奥むつの安倍頼時父子が叛いたとき鎮守府将軍源頼義、子義家が征討のみちすがらこの社に参籠して戦勝の祈願をこめ、凱旋のをり御礼参りをして欅の苗千株を植ゑた。
府中のけやき (新字旧仮名) / 中勘助(著)
「もし、こんなやつが本当に出て来るんだったら、『陸奥むつ』『長門ながと』だって危いぞッ。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
陸奥むつの賤民数のいぬを具して山に入り大木の洞中に夜を過す、夜更けて狗ども皆伏せたが、年来飼ったすぐれて賢い狗一つ急に起きて主に向って吠えやまず、後には踊り掛かって吠ゆ。
吉原遊里の話も、ピンヘッド、ゴールデンバット、パイレートの煙草の香も、負ぐせのついた若鶏の話も、陸奥むつから出京した少年の心には同様の力を以て働きかけたものに相違ない。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
石垣の金光坊は浄土の奥に至っているということを法然からめられていた人であるが、嘉禄三年に法然の門弟と国々へ流された時陸奥むつの国へ下ったが遂にそこで亡くなられたから
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
U何号がテレスコープを波に沈めんとする刹那せつな、その発射、黒い煙幕のグロテスク、巡洋艦のスピード、ことに戦闘艦においては、近代の陸奥むつの如く、そのマストが奇怪なる形に積まれ
皇太子恒良つねなが親王、皇子尊良たかなが親王を奉ぜしめて、北陸経営に当らしめ、又陸奥むつの北畠顕家あきいへを西上せしめて、京都の恢復を計り給うたが、顕家は延元三年五月、摂津の石津いしづで戦死し、新田義貞は
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
これを人身にたとうれば、陸奥むつ出羽でわはその首なり。甲斐かい信濃しなのはその背なり。関東八州および東海諸国はその胸腹、しかして京畿けいきはその腰臀ようでんなり。山陽南海より西に至ってはのみ、けいのみ
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
伊勢国(山田、松阪、津、一身田、四日市、桑名) 尾張国(名古屋、熱田、津島、大野、半田) 三河国(豊橋、岡崎、北大浜、西尾、蒲郡、豊川) 遠江とおとうみ国(掛川、浜松、平田、中泉) 駿河するが国(静岡、小川、清水、藤枝) 相模さがみ国(大磯) 武蔵国(忍) 上総かずさ国(千葉、茂原) 近江おうみ国(大津、豊蒲、五ヶ荘、愛知川、八幡、彦根、長浜) 美濃国(岐阜) 上野こうずけ国(安中、松井田、里見、高崎、八幡) 岩代いわしろ国(福島) 陸前国(築館、一迫) 陸中国(盛岡、花巻) 陸奥むつ国(弘前、黒石、板屋野木、鰺ヶ沢、木造、五所川原、青森、野辺地) 羽前うぜん国(米沢、山形、寒河江、天童、楯岡、新庄、鶴岡) 羽後うご国(酒田、松嶺、湯沢、十文字、横手、沼館、六郷、大曲、秋田、土崎、五十目、能代、鷹巣、大館、扇田) 越後国(新井、高田、直江津、岡田、安塚、坂井、代石、梶、新潟、沼垂、葛塚、新発田、亀田、新津、田上、加茂、白根、三条、見附、浦村、片貝、千手、六日町、塩沢、小出、小千谷、長岡、大面、寺泊、地蔵堂、新町、加納、野田、柏崎) 丹波国(亀岡、福知山) 丹後国(舞鶴、宮津、峰山) 但馬たじま国(出石、豊岡) 因幡いなば国(鳥取) 伯耆国(長瀬、倉吉、米子) 出雲国(松江、平田、今市、杵築) 石見いわみ国(波根、太田、大森、大国、宅野、大河内、温泉津、郷田、浜田、益田、津和野) 播磨はりま国(龍野) 備前びぜん国(閑谷) 備後びんご国(尾道) 安芸国(広島、呉) 周防すおう国(山口、西岐波、宮市、徳山、花岡、下松、室積、岩国) 長門ながと国(馬関、豊浦、田辺、吉田、王喜、生田、舟木、厚東、萩、秋吉、太田、正明市、黄波戸、人丸峠、川尻、川棚) 紀伊国(高野山、和歌山) 淡路国(市村、須本、志筑) 阿波国(徳島、川島、脇町、池田、撫養) 讃岐さぬき国(丸亀、高松、長尾) 伊予国(松山、宇和島、今治) 土佐国(高知、国分寺、安芸、田野、山田、須崎) 筑前国(福岡、若松) 筑後国(久留米、吉井) 豊前ぶぜん国(小倉、中津、椎田) 豊後ぶんご国(日田) 肥前ひぜん国(長崎、佐賀) 肥後ひご国(熊本) 渡島おしま国(函館、森) 後志しりべし国(江差、寿都、歌棄、磯谷、岩内、余市、古平、美国、小樽、手宮) 石狩国(札幌、岩見沢) 天塩てしお国(増毛) 胆振いぶり国(室蘭)
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そのあとで常陸さんはあちらこちらと伴われて行った良人おっとの任国の話をし、陸奥むつ浮嶋うきしまの身にしむ景色けしきなども聞かせた。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
国の名で申しますと、陸奥むつ陸中りくちゅう陸前りくぜん羽後うご羽前うぜん磐城いわき岩代いわしろの七ヵ国となります。昔の「みちのく」即ち道の奥と呼んだ国のはてであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「見ちゃいられんな」陸奥むつの艦上三千メートルの上空に、戦闘機を操縦し、防戦につとめている千手大尉が舌打ちした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
津軽半島だけの広さでも尨大ぼうだいなものだったが、半島の背ぼねには陸奥むつ山脈が横になり、西もまた、山地ばかりで、その間にある津軽平野の何十里というものも
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
陸奥むつ宇曾利うそり山の登路にも、湖の岸は大ツクシ・小ツクシの二小峯がある。これまた夫婦めおと岩の類である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
奥羽とは奥州、出羽の併称で、奥州とは陸奥むつ州の略称である。陸奥とは、もと白河、勿来の二関以北の総称であつた。名義は『道の奥』で、略されて『みちのく』となつた。
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
わたしは唯、平親王へいしんのう将門の忘れ形見という系図を持った若い美しい一人の尼僧が、陸奥むつの秋風に法衣ころもの袖を吹かせながら、この坂の中程に立っていたと云うことを想像したい。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
陸奥むつ伯の父伊達自得翁この田辺に久しく囚われたうち筆した『余身帰り』に
戦艦『長門ながと』『陸奥むつ』『日向ひゅうが』『伊勢いせ』『山城やましろ』『扶桑ふそう』『榛名はるな』『金剛こんごう』『霧島きりしま』。『比叡ひえい』も水雷戦隊にかこまれているぞ。『山城』『扶桑』は大改造したので、すっかり形が変っている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
これは即ち高望王亡き後の一族の長者として、勢威を有してゐたに相違無い。良兼は陸奥むつ大掾、下総介しもふさのすけ、従五位上、常陸平氏の祖である。次に良将は鎮守府将軍、従四位下或は従五位下とある。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
陸奥むつ物語の終りに来ましたから、最後にこの国の一番北はずれにある珍らしい手仕事の話でこの一章を結びましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
旗艦陸奥むつ以下長門ながと日向ひゅうが伊勢いせ山城やましろ扶桑ふそうが、千七百噸級の駆逐艦八隻と航空母艦加賀かが赤城あかぎとを前隊として堂々たる陣を進めて行くのであった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし陸奥むつではこの木をヒバといい、美濃でもいまだアテの称のあるを知らない。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
東京の医者の子であったが、若い頃フランスに渡り、ルノアルという巨匠に師事して洋画を学び、帰朝して日本の画壇に於いて、かなりの地位を得る事が出来た。夫人は陸奥むつの産である。
花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
陸奥むつの十郎殿か」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この窯が順調に進捗しんちょくすれば陸奥むつの窯藝史に輝かしい一章が加わるであろう。私は同君の為人ひととなりをよく知っている。何を目指して努力の数年を送ってきたかを知っている。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
三年前に張之洞ちょうしどうの著した有名な勧学篇などにも、大いに日本留学の必要が力説されていて、日本は小国のみ、しかるに何ぞおこるのにわかなるや、伊藤、山県やまがた榎本えのもと陸奥むつの諸人は、みな二十年前
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
なあに、日本艦隊がいかに強くとも、東京湾の防備が、いかにかたくとも、あの怪力線砲をぶっとばせば、陸奥むつ長門ながともないからねえ。いわんや敵の空軍など、まあ、蠅をたたきおとすようなものだ
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わけて陸奥むつ屯軍とんぐん
次に多いのは盃紋さかずきもんである。いつも中央に置く。矢絣の模様は陸奥むつ、陸中、羽前、羽後の蓑類によく見かける。これらの模様の系統をアイヌの仕事に関係させて考えるのが至当かどうか。
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「そうサ。今頃は、小笠原の辺で砲火を交えている日米の主力艦隊の運命が決っている頃だろうが、きっと陸奥むつ長門ながとは、ウエストバージニアやコロラドを滅茶滅茶めちゃめちゃにやっつけているだろうと思うよ」
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)