里人さとびと)” の例文
「今日はこの辺の地頭や里人さとびとどもが、帝のお慰みにと、さまざまな催しを設けて、お待ちしておりますれば、どうぞ御遊ぎょゆうのお身支度を」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬に乗って里人さとびとが通っていると思えば、自動車は路をそれて行くことが出来るのである。そんなところが二里も三里もつづいておるのである。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
巻中の画、老人が稿本かうほん艸画さうぐわしんにし、あるひは京水が越地にうつし真景しんけい、或里人さとびとはなしきゝに作りたるもあり、其地にてらしてあやまりせむることなかれ。
薪とる里人さとびとの話によれば、庵の中には玉をまろばす如きやさしき聲して、讀經どきやう響絶ひゞきたゆる時なく、折々をり/\閼伽あか水汲みづくみに、谷川に下りし姿見たる人は
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
巻中の画、老人が稿本かうほん艸画さうぐわしんにし、あるひは京水が越地にうつし真景しんけい、或里人さとびとはなしきゝに作りたるもあり、其地にてらしてあやまりせむることなかれ。
里人さとびとが社会の進歩と共に風俗なども変って行くのに伴わずして、永く固有の習慣を存しておりましたから、いつしか変った者の様に思われて参ります。
里人さとびとからそんなにまでしたってもらいましたわたくしが、やがてやまいめにたおれましたものでございますから、そのめに一そう人気にんきたとでももうしましょうか
或人自ら屑屋くずやと名のり「屑籠くずかごの中よりふとたけ里人さとびとの歌論を見つけ出してこれを読むにイヤハヤ御高論……」
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
業平橋の名もそれゆえに起りましたそうでございますが、都へお帰りの時船がくつがえって溺死できしされましたにより、里人さとびとあわれと思って業平村につかを建てゝ祭りました
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
赤児はなさけぶかい里人さとびとに養はれて生長ののちに久圓寺の僧となつた。久圓寺はこの峠にある古い寺である。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
その寂寞せきばくやぶる、跫音あしおとが高いので、夜更よふけ里人さとびと懐疑うたがいを受けはしないかという懸念から、たれとがめはせぬのに、抜足ぬきあし差足さしあし、音は立てまいと思うほど、なお下駄げたひびきが胸を打って、耳をつらぬく。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨風祭の折は一部落の中にて頭屋とうやえらび定め、里人さとびと集まりて酒を飲みてのち、一同笛太鼓ふえたいこにてこれを道の辻まで送り行くなり。笛の中にはきりの木にて作りたるホラなどあり。これを高く吹く。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
里人さとびともそんなに騷がないでください。
桑を摘み、麻を織る里人さとびと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
物売りや掛茶屋などの賑わいは、峰よりは下の方がさかんで、人間臭い暮色が、里人さとびとたちに、ひでりの憂いも忘れさせている。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みん万暦ばんれきはじめ閩中みんちゆう連江といふ所の人蛤をわりて玉をたれども不識みしらずこれをる、たまかまの中にあり跳躍をどりあがりしてさだまらず、火光くわくわうそらもゆ里人さとびと火事くわじならんとおどろき来りてこれを救ふ。
ところが意外いがいにもこの墓参ぼさんたいへんに里人さとびと感激かんげき種子たねとなったのでございます。
寂寞せきばくやぶる、跫音あしおとたかいので、夜更よふけ里人さとびと懷疑うたがひけはしないかといふ懸念けねんから、たれとがめはせぬのに、拔足ぬきあし差足さしあしおとてまいとおもふほど、なほ下駄げたひゞきむねつて、みゝつらぬく。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
先年里人さとびと妻その夫といさかいておおいにいかりしがこの熱湯に身をなげけるに、やがて身はただれさけて、その髪ばかりうかいず。豊後風土記いわく速見はやみ赤湯泉せきとうせん。この温泉も穴郡あなごうりの西北竈門山かまどもんやまあり
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
正月の十五日には小字中こあざじゅうの人々この家に集まりたりてこれを祭る。またオシラサマという神あり。この神の像もまた同じようにして造りもうけ、これも正月の十五日に里人さとびと集まりてこれを祭る。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
所謂山人やまびとの一種で、里人さとびととは大分様子の違ったものであったらしい。応神天皇の十九年に吉野離宮に行幸のあった時、彼ら来朝して醴酒を献じた。日本紀には正に「来朝」という文字を使っている。
国栖の名義 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
民部はいさみ立ったさまをみせて、郎党ろうどうたちを八ぽうへ走らせた。まもなく、地理にあかるい土着どちゃく里人さとびとが、何十人となくここへ召集されてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みん万暦ばんれきはじめ閩中みんちゆう連江といふ所の人蛤をわりて玉をたれども不識みしらずこれをる、たまかまの中にあり跳躍をどりあがりしてさだまらず、火光くわくわうそらもゆ里人さとびと火事くわじならんとおどろき来りてこれを救ふ。
二度目には右の肩よりげたるが、これにてもなお死絶しにたえずしてあるところへ、里人さとびとら驚きてせつけ倅をおさえ直に警察官をびてわたしたり。警官がまだ棒を持ちてある時代のことなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
里人さとびとの噂をきいて、いつはやく、時親の門をたたいたのは、ここから遠からぬ赤坂の水分みくまりに住む楠木家の一冠者かじゃだった。つまり正季の兄、正成である。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ではさきごろ、日吉ひよし五重塔ごじゅうのとうへ登っていたのも居士ではなかったか、はじをもうせば、里人さとびとの望みにまかせてたところが、一さぎとなって逃げうせた」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「素扇では売れませぬまま、人のすすめで、里人さとびとのなぐさみばかりに、恥をひさいでいるだけでございまする」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お目がねの通りです」と、頼春が答え——「これはいつの頃か、近くの漁師が海から拾い上げた物のよしで、里人さとびとのあいだでは、網引き地蔵と呼んでおるやに聞きました」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、里人さとびとはにわかにほッと安心したばかりか、日ごろの欝憤うっぷんをはらしたようにどよみ立った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
途々みちみち、家康のために、たかを放って、終日ひねもす、野に鷹狩をして遊んだり、夜は、里人さとびと俚謡りようや土俗舞を客舎に演じさせて酒宴したり、いかにもただ旅を楽しむための旅としか見えなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
噂によれば、僧正そうじょうだにや、貴船きぶね里人さとびとどもも、もてあましている暴れン坊とか
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学問好きで、書物ばかり読んでいるという風にばかり聞いていた里人さとびと
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はて。里人さとびとのことばでは、たしかにおいでだといっていたが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから附近の牧童や里人さとびとも今にそれを俚謡りようとして歌う。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)