トップ
>
跟
>
つ
ふりがな文庫
“
跟
(
つ
)” の例文
それをとりまく少年たちは、いずれも真面目な心配を顔に現して、惨めな靴をのぞき込みつつ、大股に
跟
(
つ
)
いて歩いて来るのであった。
石油の都バクーへ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
物干場へ上がると、
手摺
(
てすり
)
が外れてゐて、屋根へ轉げ落ちさうになつたり、夜なんか外へ出ると、誰かきつと後ろから
跟
(
つ
)
いて來たり——
銭形平次捕物控:161 酒屋忠僕
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そんなつもりでもないけれど、わたしも実は本道が
怖
(
こわ
)
いからね。七兵衛のような気味の悪い男に
跟
(
つ
)
けられたり、人を見ては
敵呼
(
かたきよば
)
わりを
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どう考えても怪しい気がしてなりませんので取敢えず閣下に
彼奴
(
きゃつ
)
の
写真
(
スナップ
)
をお送りしておいて、ここまでアトを
跟
(
つ
)
けて来た訳ですが……
人間レコード
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「なにが荒神さまだ」と彼は昂軒のあとを
跟
(
つ
)
けてゆきながら首をひねった、「こんなところへなんのために荒神さまが出てくるんだ」
ひとごろし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
振返って見ると誰も居ませんで、ただざあざッという雨に紛れて、
轍
(
わだち
)
の音は聞えませぬが、一名の車夫が
跟
(
つ
)
いて来たのでありました。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
余はただ案内者の
後
(
あと
)
に
跟
(
つ
)
いて何の気なしに這入った。その案内者もまた好い加減に這入った。案内者は
青林館
(
せいりんかん
)
と云う宿の主人である。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
四ツばかり年下である私が、後を追っかけて
跟
(
つ
)
けて行きたがると、兵さんは、
田圃
(
たんぼ
)
の稲のかげなどにかくれて、すぐ私をまいて
終
(
しま
)
った。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
軈
(
やが
)
て健は二階の教室に上つて行く。すると、校長の妻は
密乎
(
こつそり
)
と其後を
跟
(
つ
)
けて行つて、教室の外から我が子の叱られてゐるのを
立聞
(
たちぎき
)
する。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
小女
(
こむすめ
)
は
頷
(
うな
)
ずくようにしながら歩いた。山西も
跟
(
つ
)
いて歩いた。歩きながら、彼は……今晩こそ逃さないぞ、と、女に眼をはなさなかった。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ようし、それならば明日は私も、兄の後を
跟
(
つ
)
けて行こうと決心しました。別段兄の女なぞを、見たいと思ったわけではありません。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
極端なことには五十に近い鄒七嫂まで人のあとに
跟
(
つ
)
いて潜り込み、その上十一になる女の
児
(
こ
)
を喚び入れた。阿Qは不思議でたまらない。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
「よくやる手ですが、私達が跡を
跟
(
つ
)
けてると思ふんで、足跡をくらますつもりで
態
(
わざ
)
と大浦の方へ曲つたやうな風でした。へツへ。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
果して永住の地となるかどうか、人々の気持はまだきまっていなかった。官庁のおこぼれを拾って
跟
(
つ
)
いて歩く一連の人民たちであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
白は屠所の羊の歩みで、牽かれてようやく
跟
(
つ
)
いて来た。停車場前の茶屋で、
駄菓子
(
だがし
)
を買うてやったが、白は
食
(
く
)
おうともしなかった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
新太郎君は感激して引き下ると共に、帽子を
被
(
かぶ
)
って部屋から出て来た。未だ何か言い聞かせたくて
跟
(
つ
)
いて行った母親は出合い頭に
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と、鼻をひょこつかせるようにしながら、この
磊落
(
らいらく
)
な大泥棒は、そのままいいほどの間合をおいて、雪之丞の乗物を
跟
(
つ
)
けはじめた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「そんだが、
旦那
(
だんな
)
はたいしたもんでがすね、
旦那
(
だんな
)
書
(
か
)
いたんだつて
云
(
ゆ
)
つたらなあ」と
彼
(
かれ
)
は
更
(
さら
)
に
跟
(
つ
)
いて
行
(
い
)
つた
近所
(
きんじよ
)
の
者
(
もの
)
を
顧
(
かへり
)
みていつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
長作は、爺の後に
跟
(
つ
)
いて家の中へ這入りながら、こんなことを言った。この言い草は、すでに、爺は幾度も幾度も繰り返して聞かされた。
山茶花
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
若者はようやく立上って体を
拭
(
ふ
)
いて行ってしまおうとするのをお婆様がたって頼んだので、黙ったまま私たちのあとから
跟
(
つ
)
いて来ました。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
蹄の痕に
跟
(
つ
)
いて崩れ易い側崖の縁を、偃松や
岳樺
(
だけかんば
)
の枝から枝へと手を伸して、引き上げるように足を運ぶ。やっと雪田の上の崩れへ出た。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
行儀悪く両足を前に投げ出して、先へ立って行く嘉門次に、うしろを振り向かせた、私の後からは、荷かつぎが一人
跟
(
つ
)
いて来る
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
リツプが村境に這入ると、識らない小供の一群が、跡から
跟
(
つ
)
いて来て、白い鬚に指をさして笑ひ、また声を立てゝ叫びます。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
その時私は
広間
(
サロン
)
を抜けて、廊下をこの室の方に歩いてまいりましたが、その私の後を
跟
(
つ
)
けて、レヴェズ様も同様歩んでお出でになるのでした。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「偶然だなんて皆嘘なんです。私が停車場で省線電車を降りた時から、私の後を
跟
(
つ
)
け
覗
(
ねら
)
って来たんです。そして探偵だの刑事などと云って……」
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
けれど私は、母が私を縁先の家へ連れて行こうとしたときにはいやと言った。ただ無理に言われるので
跟
(
つ
)
いて行ってみた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
余はその車に
跟
(
つ
)
いて行きながら万一を心配したが、それも無事であった。黄塔君と三人で静に半日を語り明して帰った。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「うむ!」と言ったまま、小平太はもう一度振返って、後を
跟
(
つ
)
けるものの
有無
(
うむ
)
を見定めてから、始めて座敷へ上った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
白河以北破駅荒涼トシテ村落ノ如シ。
駄
(
だ
)
ハ多ク牝馬ヲ用ユ。往往
駒
(
く
)
ノ尾ニ
跟
(
つ
)
キ乳ヲ
索
(
もと
)
ムルヲ見ル。
須賀川
(
すかがわ
)
ノ駅ニ宿ス。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は団十郎に
跟
(
つ
)
いて行かなかつた。活歴は演劇史上の邪道といふことになつてゐるが、私は世間の人のいふよりは、この活歴に面白いものを感じてゐる。
役者の一生
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
室内
寂
(
せき
)
として声無し。窓の外に死のヴァイオリンを
弾
(
たん
)
じつつ過ぎ行くを見る。その跡に
跟
(
つ
)
きて主人の母
行
(
ゆ
)
き、娘
行
(
ゆ
)
き、それに引添いて
主人
(
しゅじん
)
に似たる影
行
(
ゆ
)
く。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
それゆえ、その翌日から三日も続けて、上本町六丁目から小橋西之町への鋪道を豹一に
跟
(
つ
)
けられると、半分はうるさいという気持から、いきなり振り向いて
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
友は斯く語りつゝ我を促し立てゝ出で行かんとせり。嗚呼、我にも猶此の如く慰め呉るゝ友あるこそ嬉しけれ。我は默して帽を戴き、友の後に
跟
(
つ
)
きて出でぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
鶴見は例によって学校なんぞへ行くのをおっくうがって、あまり気がすすまない。しかしそうばかりもいっていられぬので、曾乃刀自に
跟
(
つ
)
いて学校へ出向いてみた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
婦人は内に入れば、貫一も渋々
跟
(
つ
)
いて入るに、
長椅子
(
ソオフワア
)
に
掛
(
かく
)
れば、止む無くその
側
(
そば
)
に座を占めたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
万歳の尻には子供は勿論大供も
跟
(
つ
)
いて行った。才蔵は随分しつこく戯れたもので、そこに居る若い女などにからかい、逃げ出すと勝手向までも追掛けて行くこともあった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
且
(
かつ
)
は吾輩の膝栗毛も
頻
(
しき
)
りに跳ね出したい様子なので、ままよ
後
(
あと
)
の要務は徹夜しても片付けろと、八溝山をこえて
那須野
(
なすの
)
ヶ
原
(
はら
)
まで、一行の尻馬に
跟
(
つ
)
いてお伴をする事に相成った。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
主
(
しゆ
)
はあたしに
下
(
くだ
)
さらなかつたので、
主
(
しゆ
)
に
属
(
ぞく
)
する
者
(
もの
)
を
捉
(
つかま
)
へたくなつて
堪
(
たま
)
らない。さてこそ、あたしは、ヷンドオムの
地
(
ち
)
から、このロアアルの
森
(
もり
)
へ
下
(
お
)
りて
来
(
く
)
る
幼児
(
をさなご
)
たちを
跟
(
つ
)
けて
来
(
き
)
た。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
二列に並んだ他の生徒達のやうに互に手と手を
繋
(
つな
)
いで
怡
(
たの
)
しく語り合ふことは出來ず、辨當袋を背負つて彼は獨りちよこ/\と列の尻つぽに小走り乍ら
跟
(
つ
)
いて行く味氣なさはなかつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
あまりに近寄って無遠慮に傘のうちを覗くことも
憚
(
はばか
)
られるので、西岡は後になり先になって小半町ほども黙って
跟
(
つ
)
いてゆくと、娘は近江屋という
暖簾
(
のれん
)
をかけた刀屋の店先に足をとめて
離魂病
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
勿論、それはさう大してすぐれた渓流でもなく、岩石などにもさう大してめづらしいものもなかつたけれども、それでも一日沿つて
跟
(
つ
)
いて来た渓声だと思ふと何となくなつかしかつた。
水源を思ふ
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
そういって丘田医師は立った、帆村は私に
跟
(
つ
)
いてゆくようにと、目で合図をした。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「実際なんといふ惨らしいことでせう。敵は自分の体の内部に棲んでゐて、どこへでも
跟
(
つ
)
いて来るのです。それを殺すためには自分も死なねばならぬのです。自分も死なねばならぬのです。」
間木老人
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
お
爺
(
じい
)
さんの
方
(
ほう
)
では、
何処
(
どこ
)
に
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
くと
言
(
い
)
った
面持
(
おももち
)
で、
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
きもせず、ずんずん
先
(
さ
)
きへ
立
(
た
)
って
歩
(
あ
)
るき
出
(
だ
)
されましたので、
私
(
わたくし
)
も
黙
(
だま
)
ってその
後
(
あと
)
に
跟
(
つ
)
いてまいりますと、いつしか
道
(
みち
)
が
下
(
くだ
)
り
坂
(
さか
)
になり
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
すすまないのを、
跟
(
つ
)
いて行った。許生員は女にはとんと自信がなかった。いもがおをずうずうしくおしてゆくほどの勇気もなかったが、女の方からもてたためしもなく、忙しいいじけた半生だった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
修繕中で皆は暇さうにデッキの上にごろ/\してゐた。嘉吉は知つた露助を見附けて握手した。露助は笑ひながら何か分らぬ言葉で機関室の方を嘉吉に指さした。丸田は嘉吉の行く方へ
跟
(
つ
)
いて行つた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
後
(
あと
)
に
跟
(
つ
)
いて縁側を
折曲
(
おれまが
)
って行くと、同じ庭に面して三ツ四ツの装飾も何もない
空室
(
あきま
)
があって、縁の戸は光線を通ずるためばかりに三
寸
(
ずん
)
か四寸位ずつすかしてあるに過ぎぬので、中はもう
大
(
おおい
)
に暗かった。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そうして彼へも
跟
(
つ
)
いて来るようにと、その身振りで示した。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
そして、自分の後方を
跟
(
つ
)
けて来ている侍が、何うするか?
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その後から忠太郎が見え隠れに
跟
(
つ
)
いて来ている。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
跟
漢検1級
部首:⾜
13画
“跟”を含む語句
跟随
蹌跟
其跟
刀跟
後跟
血跟
跟尾
跟跡
跟蹌