見定みさだ)” の例文
かへるにくべにはちをくはへてはうんできますが、そのちひさなかへるにくについたかみきれ行衛ゆくゑ見定みさだめるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
青か赤かむらさきか? なんとも見定みさだめのつかない火の色、燿々ようようとめぐる火焔車かえんぐるまのように、虚空に円をえがいてけだしてきた!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雷が落ちるのを見定みさだめれば、どれが一番高い山だかすぐにわかるし、またそれで、今まで嘘をついた山の霊を、罰するわけにもなるのです。
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その中であやしいくろくもがいつどこからわいてるか、それを見定みさだめるのはなかなかむずかしいことでした。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見定みさだめざりしは殘念ざんねんなれども江戸の中にさへ居らば尋ぬるにも便たよりよしさりながら彼奴かやつ惡漢しれものなれば其方とおもて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二郎じろうはふいにひらいて、そのひとたちがどんなようすをしたりかおつきをしているか、自分じぶんが、たいてい想像そうぞうしたとおりであるかと、見定みさだめようといたしました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
我口より申すは如何いかゞなものなれども、二十を越えてはや三歳にもなりたれば、家に洒掃の妻なくてはよろづことけてこゝろよからず、幸ひ時頼見定みさだめ置きし女子をなご有れば
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
左右さいう見定みさだめて、なべ片手かたてらうとすると、青森行あをもりゆき——二等室とうしつと、れいあをしろいたふだほかに、踏壇ふみだん附着くつゝいたわきに、一まい思懸おもひがけない真新まあたらし木札きふだかゝつてる……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝは湯気ゆげが一ぱいもつてゐて、にはか這入はひつてると、しかともの見定みさだめることも出來できくらゐである。その灰色はひいろなかおほきいかまどが三つあつて、どれにものこつたまき眞赤まつかえてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
やうや見定みさだめると、龕燈がんどうひかり奧壁おくかべ突當つきあたつて、朧月おぼろつきごとうつるのである。
産土神様うぶすながみさまからお届出とどけいでがありますと、大国主命様おおくにぬしのみことさまほうでは、すぐに死者ししゃくべきところ見定みさだめ、そしてそれぞれ適当てきとう指導役しどうやくをおけくださいますので……。指導役しどうやく矢張やは竜神様りゅうじんさまでございます。
が、どう云う顔をしたか、生憎あいにくもう今では忘れている。いや、当時もそんなことは見定みさだめる余裕を持たなかったのであろう。彼は「しまった」と思うが早いか、たちまち耳の火照ほてり出すのを感じた。
お時儀 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
家族には近い知人の二階屋に避難すべきを命じ置き、自分は若い者三人をしっして乳牛の避難にかかった。かねてここと見定みさだめて置いた高架鉄道の線路に添うた高地こうちに向って牛を引き出す手筈である。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それから四五ねんたつた今日こんにち母親はゝおやはかるのかいのかわからないとおもふと、なにやらきふ見定みさだめてきたいがして、道子みちこいた夜具やぐもそのまゝにして、めしはず、けたまどめるととも
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
それと見定みさだめたうえで、虎船長は、こえをはりあげていった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仕たく思ふなり太儀たいぎながら天氣を見定みさだめ遠く江戸廻えどまはりしてもらひたしといふ杢右衞門はかしらをかき是迄の海上かいじやう深淺しんせんよくぞんじたれば水差みづさしも入らざりしが是から江戸への海上かいじやう當所たうしよにて水差を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
暗憺あんたんたる闇いくさ、ただものすごい太刀音と、やりの折れる音や人のうめきがあったのみで、敵味方の見定みさだめもつかなかったが、勝負は瞬間に決したと見えて、前の蛇形陣だぎょうじんは、ふたたび一みだれず
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その顔は——生憎あいにく横向きになっているので、見定みさだめがたい!
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
殺たるはわたくしにて馬士を殺し候は平四郎なりと申故シテ松葉屋へ金を預けんとせしは如何なる故ぞと有に源八其儀そのぎは私し共を確實たしかに見せ置松葉屋の案内あんない大方見定みさだめ候間同家の金銀奪取うばひとらん爲故と金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)