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うちかけ
ふりがな文庫
“
裲襠
(
うちかけ
)” の例文
総縫の
裲襠
(
うちかけ
)
に、三つ葉葵の紋を散らした
手筥
(
てばこ
)
、相沢半助思わずハッと頭を下げるはずみに、乗物の扉はピシンと閉ってしまいました。
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そう云いながら自分の手で
裲襠
(
うちかけ
)
をぬいでしずかに立った。誰にも言葉をさしはさむ余地のない、きっぱりと心のきまった姿勢だった。
日本婦道記:藪の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ホステスのスエスリング夫人は長い立派な緑色のお召物の上に
錦襴
(
きんらん
)
の
裲襠
(
うちかけ
)
を着て、それはそれは鮮やかな姿でお待ちしているところへ
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
向った
襖
(
ふすま
)
がするすると左右へ開くと、下げ髪にして
裲襠
(
うちかけ
)
を
捌
(
さば
)
いた、年三十ばかりの奥方らしいのに、腰元大勢、ずらりとついて
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
裲襠
(
うちかけ
)
のすそを音もなく曳いて、鏡のまえに一度坐る。髪の毛、一すじの乱れも、良人を暗くするであろう。
臙脂
(
べに
)
も、
褪
(
あ
)
せていてはならぬ。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
米友はこう言って
罵
(
ののし
)
って、欄干にひっかかっている
裲襠
(
うちかけ
)
を蹴飛ばしたが、それでも提灯をずっと下げて川の中を見下ろし
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
茶屋
(
ちやゝ
)
が
廻女
(
まわし
)
の
雪駄
(
せつた
)
のおとに
響
(
ひゞ
)
き
通
(
かよ
)
へる
歌舞音曲
(
かぶおんぎよく
)
うかれうかれて
入込
(
いりこ
)
む
人
(
ひと
)
の
何
(
なに
)
を
目當
(
めあて
)
と
言問
(
ことゝ
)
はゞ、
赤
(
あか
)
ゑり
赭熊
(
しやぐま
)
に
裲襠
(
うちかけ
)
の
裾
(
すそ
)
ながく、につと
笑
(
わら
)
ふ
口元
(
くちもと
)
目
(
め
)
もと
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
裲襠
(
うちかけ
)
すがたの優しい女が懐ろ紙を門にあてて押すというところに、こういう狂言の興味は含まれているものを、写実の女武者にいでたって現われては
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
裲襠
(
うちかけ
)
、眼も眩ゆく、白く小さき素足痛々しげに
荒莚
(
あらむしろ
)
を踏みて、真鍮の
木履
(
ぼくり
)
に似たる踏絵の一列に近付き来りしが、小さき唇をそと噛みしめて其の前に
立佇
(
たちと
)
まり
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その正次の眼の前に、——だから正次の背後横に、髪は垂髪、衣裳は緋綸子、白に菊水の模様を染めた、
裲襠
(
うちかけ
)
を羽織った二十一二の、
臈
(
ろう
)
たけた美女が端坐していた。
弓道中祖伝
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのおさらいの日にお遊さんは髪をおすべらかしにして
裲襠
(
うちかけ
)
を着て
香
(
こう
)
をたいて「
熊野
(
ゆや
)
」を
弾
(
ひ
)
きました。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
櫛
(
くし
)
、こうがい、
裲襠
(
うちかけ
)
姿のままで吉三郎が真ん中、先を成田屋、うしろに主水之介がつづいて、
木挽町
(
こびきちょう
)
の楽屋を出た三
挺
(
ちょう
)
の
列
(
つら
)
ね駕籠は、ひたひたと深川を目ざしました。
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
やがて、
裲襠
(
うちかけ
)
を羽織ったとき、その重い着物は、黄金と朱の、激流を作って波打ち崩れるのだった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
雪のやうに白い白紋綸子の振袖の上に目を覚むるやうな唐織錦の
裲襠
(
うちかけ
)
を
被
(
き
)
た瑠璃子の姿を見ると、彼は生れて初めて感じたやうな気高さと美しさに、打たれてしまつて
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
小町の描出を普通の人物に扱ったものですから、画面の小町は壺織の
裲襠
(
うちかけ
)
に緋の大口を
穿
(
うが
)
っているのは、能楽同様な気持ですけれども、その顔には
面
(
おもて
)
を着けてはおりません。
「草紙洗」を描いて
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
それでも葛籠を明けて中から出る品物がえらい紋付や
熨斗目
(
のしめ
)
や
縫
(
ぬい
)
の
裲襠
(
うちかけ
)
でもあると、
斯
(
こ
)
う云う貧乏長屋に有る物でないと云う処から、
偶然
(
ひょっと
)
して足を附けられてはならんから
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夜桜がゆめのやうに白く咲き、往来の人々が影絵のやう格子先へ群り、格子の中の小白い遊女の顔と絢やかなる
裲襠
(
うちかけ
)
の姿とが、煌々たる燈火の下に世にも美しく浮きだしてゐた。
異版 浅草灯籠
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
雪之丞は、そんな予感に、心を暗くしながら、
滝夜叉
(
たきやしゃ
)
の変身、
清滝
(
きよたき
)
という遊女すがたになって、何本となく差した
笄
(
こうがい
)
も重たげに、華麗な
裲襠
(
うちかけ
)
をまとい、三幕目の出をまっていた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
忽然
(
こつぜん
)
川岸づたいに
駈
(
か
)
け来る一人の女がハタとわが足許に
躓
(
つまず
)
いて倒れる。
抱
(
いだ
)
き起しながら
見遣
(
みや
)
れば金銀の
繍取
(
ぬいとり
)
ある
裲襠
(
うちかけ
)
を着
横兵庫
(
よこひょうご
)
に結った黒髪をば
鼈甲
(
べっこう
)
の
櫛笄
(
くしこうがい
)
に
飾尽
(
かざりつく
)
した
傾城
(
けいせい
)
である。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お糸というあやしげな
欠込女
(
かけこみおんな
)
が押原右内の娘と偽って寝所の
裀褥
(
おしとね
)
へ入り込み、薄毛の鬢を片はずしに結い、大模様の
裲襠
(
うちかけ
)
を
絆纏
(
はんてん
)
のように着崩す飛んだ御
中﨟
(
ちゅうろう
)
ぶりで、呼出し茶屋の女房やら
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
金糸銀糸の
刺繍
(
ぬひとり
)
をほどこした
裲襠
(
うちかけ
)
、天地紅の
玉章
(
たまづさ
)
を、サツと流して、象の背に横樣に乘つた
立兵庫
(
たてひやうご
)
、お妙の美しさは、人間離れのしたものでした。
銭形平次捕物控:315 毒矢
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
のびのびと横たわっている大きな四
肢
(
し
)
には、登子の
裲襠
(
うちかけ
)
が掛けてある。——ふと、
鼾声
(
いびき
)
がやんだのは、少しは酔いがさめかけているのかもしれない。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
横手の
衝立
(
ついたて
)
が
稲塚
(
いなづか
)
で、火鉢の
茶釜
(
ちゃがま
)
は竹の子笠、と見ると
暖麺
(
ぬくめん
)
蚯蚓
(
みみず
)
のごとし。
惟
(
おもんみ
)
れば
嘴
(
くちばし
)
の
尖
(
とが
)
った白面の
狐
(
コンコン
)
が、
古蓑
(
ふるみの
)
を
裲襠
(
うちかけ
)
で、尻尾の
褄
(
つま
)
を取って
顕
(
あらわ
)
れそう。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その女の人は長い
裲襠
(
うちかけ
)
の
裳裾
(
もすそ
)
を引いて、さながら
長局
(
ながつぼね
)
の廊下を歩むような足どりで、
悠々寛々
(
ゆうゆうかんかん
)
と足を運んでいることは、尋常の沙汰とは思われません。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
正覚寺にある政岡の墓地には、比翼塚ほどの
参詣人
(
さんけいにん
)
を見ないようであるが、近年その寺内に
裲襠
(
うちかけ
)
姿の大きい銅像が建立されて、人の注意を
惹
(
ひ
)
くようになった。
目黒の寺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
初め「あずまや」と申しまして某家の御秘蔵品を模した唐織好みの草色の
裲襠
(
うちかけ
)
を着て出て来るのですが、琴にかかる前にうしろ向きになって、その裲襠を脱いで
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
下髪にした黒髪が頬に
項
(
うなじ
)
に乱れているのも憐れを誘って
艶
(
なまめ
)
かしく、蜀江錦の
裲襠
(
うちかけ
)
の下、藤紫の衣裳を洩れてろうがましく見ゆる
脛
(
はぎ
)
の肌は玉のようにも滑らかである。
紅白縮緬組
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雪のように白い白紋
綸子
(
りんず
)
の
振袖
(
ふりそで
)
の上に目も覚むるような唐織
錦
(
にしき
)
の
裲襠
(
うちかけ
)
を
被
(
き
)
た瑠璃子の姿を見ると、彼は生れて初めて感じたような気高さと美しさに、打たれてしまって
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
赤ゑり
赭熊
(
しやぐま
)
に
裲襠
(
うちかけ
)
の裾ながく、につと笑ふ口元目もと、何處が
美
(
よ
)
いとも申がたけれど
華魁衆
(
おいらんしゆ
)
とて此處にての敬ひ、立はなれては知るによしなし、かゝる中にて朝夕を過ごせば
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
きんぎん五しきの浮き模様のあるからおりの
裲襠
(
うちかけ
)
をおひきなされていらしったと申します。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかし、夜になると、二人は抱き合って、
裲襠
(
うちかけ
)
の下で互いに暖め合うのであるが、そうした抱擁の中で、ややもすると性の
掟
(
おきて
)
を忘れようとする、異様の愛着が育てられていった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ひとりの
裲襠
(
うちかけ
)
姿であるのを見ると無論の事に、それが丁字太夫であるに相違なく、他のお部屋姿であるのを見ると、これまたお杉の方である事は言う迄もなく、よりもっと驚いた事は
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
快
(
こころよ
)
げに昼寝している武蔵のからだの上には、誰がそっとかけて行ったのか、桃山
刺繍
(
ぬい
)
の重そうな
裲襠
(
うちかけ
)
が着せてあった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と言ってがんりきが、苦い顔をしている七兵衛の眼の前へ突きつけたのは、やや身分の高かるべき女の人の着る一領の
裲襠
(
うちかけ
)
と、別に何かの包みでありました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
正覚寺にある政岡の墓地には、比翼塚ほどの参詣人を見ないようであるが、近年その寺内に
裲襠
(
うちかけ
)
姿の大きい銅像が
建立
(
こんりゅう
)
されて、人の注意を惹くようになった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
おしずとおゆうさんとの違いは何よりもおしずにそういう芝居気のないところにあったと申しますのでござりまして
裲襠
(
うちかけ
)
を着て琴をひいたり
小袖幕
(
こそでまく
)
のかげにすわって腰元に酌を
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
若い綺麗な女達で、厚化粧をして
裲襠
(
うちかけ
)
姿、金屏まばゆい大広間に並び、三曲を奏しているんでさあ。と一人舞い出しました。ひどく古風な舞いでしてね、悠長ったらありませんや。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白い
腮
(
あぎと
)
を三日月のように
反向
(
そむ
)
けて、眉一つ動かさず。見返りもせずに、
裲襠
(
うちかけ
)
の背中をクルリと見せながら、シャナリシャナリと人垣の間を遠ざかって行った。あとから続く三味太鼓の音。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
うかれうかれて
入込
(
いりこ
)
む人の何を目当と
言問
(
ことと
)
はば、赤ゑり
赭熊
(
しやぐま
)
に
裲襠
(
うちかけ
)
の
裾
(
すそ
)
ながく、につと笑ふ口元目もと、何処が
美
(
よ
)
いとも申がたけれど
華魁衆
(
おいらんしゆ
)
とて此処にての敬ひ、立はなれては知るによしなし
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
冗談ぢやない。紅白粉で、
裲襠
(
うちかけ
)
を
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
化粧も日ごろよりはやや
濃目
(
こいめ
)
である。また
裲襠
(
うちかけ
)
は彼女がこの家に
嫁
(
とつ
)
いだときの物で、もちろん派手になりすぎてはいる。が、意識してそれも用いたらしい。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
皮を剥いだもののように、一枚の
裲襠
(
うちかけ
)
が塀に張りつけてありました。その上に刀の
小柄
(
こづか
)
を突き刺して、それに錦の袋に入れた守り刀様のものがぶらさげてありました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何かごわ/\した
裲襠
(
うちかけ
)
めいた物を
纏
(
まと
)
って、
猫背
(
ねこぜ
)
の肩をかゞめて、引きずった裾が寝ている人に触らぬように、そして、衣ずれの音を少しでも殺すように、両手で
褄
(
つま
)
を取っていた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
当年流行の新月色に、眼も
眩
(
まば
)
ゆい春霞と、五葉の松の刺繍を浮き出させた
裲襠
(
うちかけ
)
。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この日は大店の内儀風に、その躰を装っていたが、櫛巻に絞りの
浴衣
(
ゆかた
)
、そういう伝法の姿をしても、金糸銀糸で
刺繍
(
ししゅう
)
をした
裲襠
(
うちかけ
)
、そういうもので飾っても、どっちも似合いそうな女であった。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
(乗物の戸をあけて澁川の後室眞弓、五十余歳、
裲襠
(
うちかけ
)
すがたにて出づ。)
番町皿屋敷
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
冗談じゃない。紅白粉で、
裲襠
(
うちかけ
)
を
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
寝所の次の部屋には、片隅に、
蒔絵
(
まきえ
)
の
衣桁
(
いこう
)
がみえ、それに、
青金摺
(
あおきんずり
)
の
裲襠
(
うちかけ
)
と、
褪紅色
(
たいこうしょく
)
の小袖が掛けてあった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
元禄模様の派手な
裲襠
(
うちかけ
)
を長く畳に引いて、右の手には鈴を持ち、左の手では
御幣
(
ごへい
)
を高く掲げながら、例の
般若
(
はんにゃ
)
の
面
(
めん
)
を
冠
(
かぶ
)
って座敷の中をしきりに踊っているところでありました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いきな女よりも品のよい
上﨟
(
じょうろう
)
型の人、
裲襠
(
うちかけ
)
を着せて、
几帳
(
きちょう
)
のかげにでもすわらせて
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“裲襠”の解説
裲襠(りょうとう、うちかけ)とは、古来、儀式の時に武官が礼服の上に着用した貫頭衣型の衣服。中央にある穴に頭・首を通す形となり、胸部と背部に当てて着用し、上から帯を締める。類似した衣装を舞楽でも使用し、舞楽装束の一つも指す。
(出典:Wikipedia)
裲
漢検1級
部首:⾐
13画
襠
漢検1級
部首:⾐
18画
“裲襠”で始まる語句
裲襠姿
裲襠姿振袖