蒙古もうこ)” の例文
小六ころくから坂井の弟、それから満洲、蒙古もうこ、出京、安井、——こう談話のあと辿たどれば辿るほど、偶然の度はあまりにはなはだしかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
北は、北狄ほくてきとよぶ蒙古もうこに境し、東は、夷狄いてきと称する熱河の山東方面に隣するまで——旧袁紹治下の全土を完全に把握してしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ときにその兄が「どうもあの方の様子ようすを見ると非常に色が白い。蒙古もうこ人の色の白さとは少し変って居る。西洋人ではあるまいか知らん」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この習慣は現今チベット人および蒙古もうこ種族の間に行なわれていて、彼らはこれらの混合物で一種の妙なシロップを造るのである。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
弘安四年に日本に襲来した蒙古もうこの軍船が折からの颱風のために覆没ふくぼつしてそのために国難を免れたのはあまりに有名な話である。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
日本の国防を完全にするには、満州から蒙古もうこあたりまで注目していなくてはならない。そのためには魯西亜ロシアと提携すべしだ。
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
玄王は打ち負けたらしい……というだけで、なにしろ蒙古もうこの山奥のことですから、はっきりしたことはわかりません。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
蒙古もうこ退治の注進状ちゅうしんじょうの中に、確か此人このひと連名れんみょうもあったかと思いますが……。いや、それは調べればすぐに判ります。何しろ、面白いものを掘出ほりだしましたよ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
クリミアその他の蒙古もうこ地方もトルコ国の領分にして、その欧州大陸にある所有地は一万五四五四方英里あり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「あのなあ、蒙古もうこ人がやってきはって、ピダホヤグラガルチュトゴリジアガバラちゅうのや。あははは。」
女百貨店 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
蒙古もうこの大軍が兵船を連ねて日本に攻めてきたときには、はからずも暴風雨にって、海底の藻屑もくずになってしまったが、今日ではお天気の調べがついているから
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は白い寝台しんだいの上に朦朧もうろうとした目を開いたまま、蒙古もうこの春を運んで来る黄沙こうさすさまじさを眺めたりしていた。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「何んですね、将来、蒙古もうこの王様になる人が、そんないくぢなしで、どうしますか。さあ、わたしが、あの入口まで送つてあげますから、一つ探見していらつしやい」
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
城内と云はず郊外と云はず空一面、蒙古もうこ砂漠さばくからのあの灰いろのほこりに包まれてしまつた。これがこの都会の名物なのだ。静かだが霖雨りんうのやうに際限なく欝陶うつたうしい。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
弟はすでに、蒙古もうこで戦死した。にわかに荒々しいものが、疾風しっぷうのように私の心を満たした。此のような犠牲をはらって、日本という国が一体何をなしとげたのだろう。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
あとで解ったのだけれども、朝鮮から満洲にかけては一年に大抵一度位はこのような日がある。つまり蒙古もうこのゴビ砂漠に風が立って、その砂塵が遠く運ばれてくるのだ。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
また満洲帝国は武装して立ち、勇敢な蒙古もうこ民族は、「われ等のからだには成吉思汗ジンギスカンの血が流れているのだッ。」と叫んで、ゴビの沙漠さばくの中で、赤軍の騎兵集団を監視している。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
現に当の匈奴にしてからが、蒙古もうこ系とする説とトルコ系とする説とがあつて、はつきりした結論は出てゐないといふではないか。いや、そんな詮議だてはどうでもいいことだつた。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
各方面から入れまじって来た、各人種の心理的特徴をも、併せて現わしておりますので、一口に日本と申しましても、その骨相と性格の中には、蒙古もうこ印度インド馬来マレイ猶太ユダヤ拉甸ラテン、アイヌ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
蒙古もうこのことをモンゴロワといい、モンゴロワをフォンゴロワと読み、フォンゴロワをファンガラワ、それをまた転じてハンガリヤと化して来ているくちびるの作用から考えると、あるいはここもまた
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
蒙古もうこでいつ完成するともつかない仕事をしている同じ画家の夫を持って、長い孤独な生活をしている深沢さんは、私の話を聞きながら、何度となく大きな目をみひらいては、深くうなずいていた。
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
戸外で蒙古もうこ馬がいなないた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
それからあとわたしうしたからなかつたんですが、其後そののちやうやいてると、おどろきましたね。蒙古もうこ這入はいつて漂浪うろついてゐるんです。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
忽然こつぜんと、蒙古もうこ高原にあらわれて、胡夷えびすの猛兵をしたがえ、隴西ろうせい甘粛省かんしゅくしょう)の州郡をたちまちり奪って、日に日に旗を増している一軍があった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
チベットの財源 は蒙古もうこの方から余程来た。その金は蒙古人がただ物を買いに来るよりかラマに上げに来たのが多い。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
私、その猫に、一心いっしんに祈った。そして、金目銀目きんめぎんめの猫、見つかった。それで、私、なお祈った。無事に蒙古もうこへ帰られるかどうか、赤土で猫を作って、うらないした。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
不幸にして十三世紀蒙古もうこ種族の突如として起こるにあい、元朝げんちょうの暴政によってシナはついに劫掠こうりゃく征服せられ、宋代そうだい文化の所産はことごとく破壊せらるるに至った。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
自由の恩恵は蒙古もうこ人種にもなお及ぶことを得るや否やと疑惑し、黄人種の朋友をもって任ずる義侠ぎきょうの白人は日本の将来ははたして独立国たるを得るや否やと掛念し
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「考えて見ろ。ブレツといや、キャラ侯のうまやのうちばかりでねえ、北満洲きたまんしう蒙古もうこきつての名馬だぞ」
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
これは一体何のために誰のつけたしるしであろう? 保吉は幻燈げんとうの中にうつ蒙古もうこ大沙漠だいさばくを思い出した。二すじの線はその大沙漠にもやはり細ぼそとつづいている。………
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
hが消えたりvが母音化するとギリシアの oro や蒙古もうこの oola も一つになって来る。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今から六百余年ぜん弘安年中こうあんねんじゅうに、げん蒙古もうこ大軍だいぐんが我が九州に襲って来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
各新聞社の蹶起けっきを先頭として続々大仕掛けの捜査隊が派遣せられ、およそ一年半近くも蒙古もうこ新疆しんきょう西蔵チベット印度インドを始め、北極の方まで探し廻ったが、皆目かいもく消息がしれなかった、というのでしたね。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それからあとわたしもどうしたかよく知らなかったんですが、そののちようやく聞いて見ると、驚ろきましたね。蒙古もうこへ這入って漂浪うろついているんです。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蒙古もうこ襲来のさい、人的や経済的にもさんざんな消耗に疲弊ひへいしたあげく、なんの恩賞もうけず、逆に、鎌倉幕府でうけのいい大名が受領ずりょうにあずかって
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ペルシアの春は bahár, 蒙古もうこ(カルカ)語では h'abor である。ドイツ語の Frühling は früh から来たとすればこれはfとrである。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一二八一年蒙古もうこ襲来に当たってわが国は首尾よくこれを撃退したために、シナ本国においては蛮族侵入のため不幸に断たれた宋の文化運動をわれわれは続行することができた。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
満州まんしゅうに近い蒙古もうこの山奥に、玄王げんおうという偉い人がいました。その地方を平和に治めて、立派な国をうち建てようと思っていました。その玄王げんおうに、ひとりの小さなむすめがありました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
勁敵きょうてき英領インド政府の防御ぼうぎょ どうしようかと煩悶はんもんして居る折柄おりがら、うまくツァンニー・ケンボ(蒙古もうこ人にして露国の秘密探偵)に誘われて露国にるに至ったのではあるまいかと思う。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
当日ははげしい黄塵こうじんだった。黄塵とは蒙古もうこ春風しゅんぷう北京ペキンへ運んで来る砂埃すなほこりである。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「これはたしか蒙古もうこの字です。僕には全部は判りませんが、所々はおぼろげにその意味が推察されます。」と、忠一は手帳をしまいながら、「これによって考えると、の𤢖なるものはげんの蒙古の子孫らしい。 ...
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
フム、蒙古もうこの王子が馬にのることが下手では困つたものだね。よし/\、わしに考へがあるから、ぢや、今日はお前ひとりで行つてもよろしい。だが近頃ちかごろ、馬賊がこのへんの山にはいつて来たといふことだから、よく気を
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
その取始とつぱじめつかまつたのはわたくしだが、いくら蒙古王もうこわうだつて、いくらひろ土地とち抵當ていたうにするつたつて、蒙古もうこ東京とうきやうぢや催促さいそくさへ出來できやしませんもの。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たとえ魔の軍たりとも、御楯みたての王軍が行くところ、なにほどの抗戦あらがいをなしえようぞ。——かつては襲来しゅうらい蒙古もうこの外兵十万を、博多ノ浜にほうむッたためしさえある。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蒙古もうこカルカ語の tologai はタミール語の taläi に通じる。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
まあそんな手紙てがみだけですから、——そりあかねことつてますが、なに東京とうきやう蒙古もうこだから打遣うちやつてけば夫迄それまでです。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
公孫瓚が、白い馬をたくさん持っていることは、先年、蒙古もうことの戦に、白馬一色の騎馬隊を編制して、北の胡族えびすを打破ったので、それ以来、彼の「白馬陣」といえば、天下に有名になっていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
マライを手始めに、アイヌや、蒙古もうこ、シナ、台湾たいわんなどと当たってみると、もちろんかなり関係のありそうな形跡は見えるが常識的に予期されるほどに密接とも思われないのをかえって不思議に思った。
これは蒙古もうこよりチャーレス二世に献上けんじょうになったものだとビーフ・イーターが説明をしてくれる。余は三たびうなずく。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蒙古もうこつべし)
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)