ばな)” の例文
神樂囃子かぐらばやし踊屋臺をどりやたい町々まち/\山車だしかざり、つくりもの、人形にんぎやう、いけばな造花ざうくわは、さくら牡丹ぼたんふぢ、つゝじ。いけばなは、あやめ、姫百合ひめゆり青楓あをかへで
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞ何事なにごとはづかしうのみありけるに、しもあさ水仙すいせんつくばな格子門かうしもんそとよりさしきしものありけり、れの仕業しわざるよしけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
作りばなの様に生気を失つて居る事と、もう一つは、美に対する趣味の低いために化粧の下手へたなのとに原因して居るのでは無いか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
まっすぐに伸びたミズナラの大木を撰んでその幹にけずばなを下げ、パウチを追い出してくれれば山の神様にたんまりお礼をいたしますと祈って
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
墓地には、ひがんばなが、赤いきれのようにさきつづいていました。と、村の方から、カーン、カーン、と、かねが鳴って来ました。葬式の出る合図あいずです。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
殊に女の教養は、貧苦窮乏の冬日をこえて来た風雪の薫香くんこうでなければ、まことに根のないばなのそれにひとしい。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浜町二丁目五徳庵といふ鳥料理の近くなる小待合こまちあいに上りし時、あがばな持出る女中をふと見れば、まがふ方なくかの琉球屋敷へ出入の女なりしぞ奇遇なる。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なつのはじめのころに、一ぽんのばらに、しろゆきのようなはなきました。そのはなは、さちが、草花屋くさばなやで、ばなったときのはなよりも大輪だいりんで、香気こうきたかかったのであります。
花と少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
涼しく水を打った店さきに、早くもばな(塩)がしてあって、あけ放った入口に、短い紺のれんが出してある。店はもうあけていたのだが、この時刻では客はまだはいっていない様子だ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「はぎの花をばな葛花くずばな瞿麦なでしこの花、をみなへし又藤袴ふぢばかま朝貌あさがほの花」である。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
さくらばなまぼしけれどもやはらかく春のこころに咲きとほりたり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
おしろいばなのさくほとり、しんねこのかすかなる
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
またみそめたばな
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
この大きい絵看板ゑかんばんおほ屋根形やねがたのきには、花車だしにつけるやうなつくばなが美しく飾りつけてあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その下から、泰子は、めずらしい乱菊らんぎくばなを、一枝とって。——これは、内親王さまからいただいたのではあるが、瑠璃子さまから、そなたへ贈ってくださるという。
そのばらのはなは、のついていないばなにしかすぎませんでした。けれど、そのはなからはなにおいは、このなかのすべてのはなからはっするにおいよりは、ずっとたかく、よかったのであります。
花と少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まづ學問がくもんといふたところおんな大底たいていあんなもの、理化學政法りくわがくせいはうなどヽびられては、およめさまのくちにいよ/\とほざかるべし、だい皮相ひさう學問がくもん枯木かれきつくばなしたもおなじにて眞心まことひとよろこはぬもの
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
淺草邊あさくさへん病人びやうにん見舞みまひに、あさのうちかけた家内かないが、四時頃よじごろ、うすぼんやりして、唯今たゞいまかへつた、見舞みまひつてた、病人びやうにんきさうな重詰ぢうづめものと、いけばなが、そのまゝすわつたまへかけのそばにある。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さくらばな咲きに咲きたり諸立もろだちの棕梠しゆろ春光しゆんくわうにかがやくかたへ
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
君江は俯向いたまま黙って膝の上にハンケチをもてあそんでいる。女中があがばなを運んで来て
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
けれど、たいてい、この花屋はなやまえひとは、ほかのあかや、あおや、しろや、むらさきばなをとめて、みずなかに、つつましやかにいている自分じぶん注意ちゅういしてくれるひとはありませんでした。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
室咲むろざきの西洋ばなや春寒し
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)