)” の例文
足の甲がれあがって指の股がひっついてしまった。たいした怪我ではなかったが、私は足を引摺らずには歩くことが出来なかった。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
ついては、槌屋つちやから暇をとって早速帰って来いという話が来たために、治郎吉の立つ四、五日まえから、お仙は、眼をらしていた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところが、弥助の額は、黒血も溜らず、れもせず、それに、皮が破れているのに、血が出ていないのは、どうしたわけでしょう」
若いお上さんが、眼を泣きらして病院から帰って来たところだった。少しばかり出来上っている品物をもらってお金を置いて帰る。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
泣きらした眼をしばたたきながら相手をそっと見あげると、酔いのだんだんに醒めかかって来た男の顔は輝くように光って見えた。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
僕はそれをつぶして臓腑ざうふをかぶれかかつてゐる腕になすりつけたけれども、赤くれて汁の出て来たところは今度は結痂けつかして行つた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
頬の垂れることをれるといったところに太祇的の修辞法があるのであります。元禄ではみることの出来ない人事の写生であります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
老婆の顔は平生の二倍ほどにも見えたくらい一面にれ上って、目も鼻もなくなったようになり、口ばかりが片方にゆがみ寄っていた。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そうして、なおも念入りにそこを撫でまわしてみると、気のせいか少しふくらんでいるようであるが、しかしれ物ではないようである。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
凍傷のために紫いろにれて肉さえ裂けて見えた手足が、黒いしみを残したままもとどおりになって、脂肪がうっすらと皮膚にのって
(新字新仮名) / 島木健作(著)
そのおさんが昨日きのう足の裏をとがめたのを気にしないでいたらば、熱が出てれあがったのを診察して、養生にかえすようにと言った。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
片方の眼がれ塞がり片方の眼があらぬ方を向いて、眉毛もなければ鼻もなく、のっぺらぼうの顔にポツンと真っ黒な穴があいて
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
れ」がして足がガクつき、どうしても機械についていられない。それを後から靴でられながら働いていることを話した。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
その湯に毒があって、ひと夜のうちに眼がれ塞がり、治療もしてもらったが、十日と経たぬうちに、まったく失明してしまった。
わたくしはその好もしさに身体がふくれるほど夜景の情趣を吸い取りました。凝滞していた気分は飛沫ひまつを揚げて流れ始めました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
れぼったいまぶたのあいだに、茶ッぽい瞳がいつもの通りはさまれていたが、それはそれなりに、びい玉のようにぎらぎら光っていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「張る」「ふえる」「るる」などもhまたはfにrの結合したものである。full, voll, πλέως なども連想される。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私だからこそ、これに菓子を与え、おかゆを作り、荒い言葉一つかけるではなし、れものにさわるように鄭重ていちょうにもてなしてあげたのだ。
これも調子が狂っているにちがいない。下駄ばきの足をひどくらした老人が、連れの老人にむかって何か力なく話しかけていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
まぶたれあがり、眼は真赤に充血し、顔の色は土のように色を失い、血か泥かわからぬようなものが、あっちこっちに附着ふちゃくしていました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
順作はしかたなしにそう云って父親の小さなきいろな顔を見た時、その左の眼の上瞼うわまぶたの青黒くれあがっているのに気がいた。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
先生病院のベッドの上で気がついたときの様子はというと、顔が二倍ぐらいにれあがっていて、人相は四谷よつやお岩をむくましたようだった。
スラビナがわめいている、三人の外国人の腕の中で、アフガニスタンの山脈のような胴体をつねられて悲しみは赤くれあがってしまった。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
御覧の通り堀尾君の右のお目がれ上っています。これは花嫁さんへ御注意までに申上げて置きますが、普段決してこんなむずかしいお顔を
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
または泥にはまり込んで腰から下が水気でれた毎夜の乞食が、どこからどう消えてゆくか分らないが、集まっては消え失せてゆくのを見た。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
岡は何とはなく今にでもものにさわられるかのようにそわそわしていた。会話は少しもいつものようにははずまなかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しばらくして石の巻に着す。それより運河に添うて野蒜のびるに向いぬ。足はまたれ上りて、ひとあしごとに剣をふむごとし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
清ちやんは、或る秋雨あきさめの降る夕方、一人の男につれられてこの新龜へ來た。彼女は泣きらした目を伏せて、臺所の板の間にぢつと坐つてゐた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
「何を、ふざけたことをかしゃアがる、れたのれたのと、そ、そんな——聞きたくもねえや。やい、どけッ! 退かなきゃ蹴殺けころすぞッ!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
予これを信ぜなんだところ、七、八、九年前の毎春引き続き逆上して頭れ、奇南香また山羊にやや似た異香液不断出た。
長い亂れ髮や、れ上つた黒い顏や、大げさに高い身長などは想像が作り出したもの、夢にうなされて出來たものですよ。
「ドンナニナルッテ、ソリャヒドイノヨ。足ノ趾ニ全部胼胝たこガ出来チャッテ、レ上ッテ爪モ何モナクナッチマウノヨ」
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
死体を岸へ引っぱって来るのに漁夫たちは綱を結びつけたが、その擦り傷はどれもそのためにできたのではなかった。くびの肉はひどくれていた。
顔のどの部分と言わずかゆい吹出ものがして、み、れあがり、そこから血が流れて来た。おさえがたく若々しい青春のうしおは身体中をけめぐった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大きい方の姉は腕の動脈のところがぽつりとれて、大学で見てもらっても、初めははっきりしたことがわからなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そのはず、今朝江戸を出て来たものとすれば、子供の足で七里の道、足がれ上って動けないらしい、そこを悪者どもにおびやかされたものと見えます。
だが、その日のうちにもう千代さんは、泣いてれぼったくなった顔に白粉おしろいをつけて盛装して四、五人の知合いに村外れまで送られて嫁に行った。
咽喉のどが脂肪ぶくれにれふさがったせいだろうが、彼は声変りがして、ほそい甲高い声になった。性格も一変して、気むずかしい癇癪もちになった。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
百姓ひやくしやうにしては比較的ひかくてきちひさなれたかとおもほどぽつりとふくれて、どれほどかしつかんでもけつして肉刺まめしやうずべきでないことをあきらかにしめしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
娼妓がまだ髪もあげず、泣きれた顔もなおらぬ位なのに、店へ出すとすぐ売れますとさ。不思議ではありませんか。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
目も鼻もれぼったいほど肥りに太った大女、芸といっては土俵入りに手振りあやしき相撲甚句ぐらいで、総身に知恵の回らぬらしいももっとも千万。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
婦人の手首は一寸れ上つて熱を持つてるやうだつた。医者はろくすつぽ診ようともしないで、ぶつきら棒に訊いた。
そんな顔の署長しょちょうに、だらけのれあがった顔のケンプ博士はくしが、ぐずぐずしてはいられないと、せきこんで言った。
母の肩はむらさきれて荷を負うことができない、チビ公は睡眠すいみんの不足と過度の労働のために頭が大盤石だいばんじゃくのごとく重くなり動悸どうきが高まり息苦しくなってきた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
女は自分の体が外の庭に出て腰を掛けていて、その顔が青ざめ、目が泣きれているのを見るように思う。しかしこの悲哀のしるしはただ上辺ばかりである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
朝起きたら、歯の痛みが昨夜ゆうべよりひどくなった。鏡に向って見ると、左の頬が大分だいぶれている。いびつになった顔は、たしかにあまり体裁ていさいいものじゃない。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
姫君は歩行らしい歩行もできずに、しかもいろいろな方法で足を運ばせて来たが、もう足の裏がれて動かせない状態になって椿市で休息をしたのである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と云ったが、脊中の刺青がれましてしゝ滅茶めっちゃになりましたから、直ぐ帰りに刺青師ほりものしへ寄って熊にほりかえて貰い、これからくまの亥太郎と云われました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れぼったいまぶたはヒタとおっかぶさって、浅葱縞あさぎじまの単衣のわきがすう/\息つく毎に高くなり低くなりして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
眼千両と言われた眼は眼蓋まぶたれて赤くなり、紅粉おしろいはあわれ涙に洗い去られて、一時間前の吉里とは見えぬ。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)