)” の例文
そんな事を云い合っているうちに一人がマッチをって葉巻に火をけたようなの。間もなくい匂いがプンプンして来たから……。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何といっても、あの方はい男ね、あんな美い男は、ちょっとありませんね。それに比べると田山白雲先生は美い男とはいえないわ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうだろう、そうなくちゃアお艶さんじゃアねえ。わしもそれで大きに安心をしました。だがヨ、見れば見るほどい女ッぷりだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、靜子が次の間へ立つた時、『どうだ、仲々いだらう?』と低い聲で言つたのが襖越しに聞こえた。靜子は心にいきどほつてゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
何を言うのさ、お前さんなんかはどうせつらいだけのことで、この暑いのにどんなに働いたところで大した出世は出来るわけはない。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「ゆうべ、この千吉の妹のやつが、殺されたんです。いつぞやお話し申し上げた、柳橋から雛妓おしゃくに出ていたおはんというです」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『よく見えるね、岸本のお爺さん——猫のお婆さんはい人だね、私はほんとに、お婆さんのやうに思うてくれるとうれしいよ』
△「えへゝゝ殿様なんざア男がくって扮装なりだからもてやすが、わっちどもはもてた事はなく振られてばかり居ても行きえから別段で」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
値の高い楽器からは、がするものだと思ひ込んでるらしい音楽好きは、その日になると吾れ勝ちに会場に押しかけて来た。
い着物が着られてお金があるから大きな呉服屋さんへお嫁に行きたいですト——それを聞いた時は、私はゾーとしましたネ
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
美音で思い出したが、十軒店じっけんだなにも治郎公なぞと呼んでいた鮨屋が、これもい声で淫猥な唄ばかり歌って、好く稲荷鮨いなりずしを売りに来たものだった。
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
「そいつが切り髪の女なのか?」「へい、さようでございます。滅法めっぽうあだっぽいい女で、阪東しゅうかの弟子だそうです」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は始めて見たのであるが、森本は二十七八の色の白いい男であつた。金縁の眼鏡をかけ、髪を綺麗に分けて居た。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
ちと気がれて血相変り、取乱してはいるけれど、すらっとして中肉中脊、戦慄ぞっとするほどい女さ。と空嘯そらうそぶいて毛脛けずねの蚊をびしゃりと叩く憎体面にくていづら
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
阿母さんの名は知らないが、年の頃は五十ぐらいで、色の白い、痩形で背のたかい、若いときにはまずい女の部であったらしく思われる人であった。
ゆず湯 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
阿母かあさん阿母さん」、と雪江さんは私が眼へ入らぬように挨拶もせず、華やかな若いつやのあるい声で、「矢張やっぱり私の言ったとおりだわ。明日あしたらくだわ。」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
三重吉が聞いたらさぞ喜ぶだろうと思うほどない声で千代と云った。三重吉は今にれると千代と鳴きますよ、きっと鳴きますよ、と受合って帰って行った。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白粉つけて衣類きものきて迷ふて來る人を誰れかれなしに丸めるが彼の人達が商賣、あゝれが貧乏に成つたから構いつけて呉れぬなと思へば何の事なく濟ましよう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「若奴さん、ほんとにい芸妓さんになったなあ」と私はまたつくづくとその容姿すがたに見入りながら
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
引ッぱずされて、よろめく足をふみこたえて、ビュッ、ビュッと、切ってかかるのを、すっと隙につけ入って、き腕を逆に取った、白い顔、匂いのい女装の男性。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「まさかそんなこともあるまい。俺達おれたちい声で唄つてやりさへすればよろこんでゐるのだから……」
漁師の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
さてこの三つをことごとく長所にしてしまおうとしくも覚悟を定めてしまったことなのです。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
茂兵衛 その時は二十三、四、色の白い、い女でしたが——ご存じござんせんか。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
その代り買う方でもロースをくれとかビフテキをくれとか肉の名を指して注文します。東京辺ではまだ買う方も売る方も曖昧あいまいとしていて折角せっかくい味を持っている肉も不適当の料理にされています。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
浜を誰かうなって通る。あの節廻ふしまわしは吉次きちじだ。彼奴きゃつ声は全たくいよ。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ちつとも人ずれしないほんたうにい綺縹のお喜乃
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
「今の若いひとは、なかなか、い女ですネ」
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでもい声は出る。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「まあい女だわね。」
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
覗き込む様子に『もしお前さん、まさか身投げじやありますまいね』『知れた事さ。今時分、こんな所で、死ぬ奴があるものか』『でもお茶の水の一件から、何だかこの辺は不気味でね』『さうさ、女もお前のやうなのだと、どこであつても大丈夫だが。い女は凄いものさ』
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
いやだ。いやだ。イケナイイケナイ。私から先だ私から先だ。私は香気においぎたい。花だの香木だのの芳香においが嗅ぎたい。早く早く」
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そして、静子が次の間へ立つた時、『どうだ、仲々いだらう?』と低い声で言つたのが襖越しに聞こえた。静子は心にいきどほつてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
仙台てところには、い女は生れて来ねえんだそうだ、というのはそれ、昔、仙台様のうちの誰かが、高尾というすてきないい女を
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おらが、月ヶ瀬を通るたんびにい声して啼くうぐいすがいるんで、眼をつけといて捕まえたんさ。お通さんにやろうと思って——」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丙「どうもい女だなア、あの後姿のいこと、桜の花より美くしいや、ちょっとねえさん、此方こちらを向いて顔を見せておくれ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「三軒長屋の取っ付きが按摩あんまの竹の市で、その隣は女がい癖に、無口で無愛嬌で、町内の嫌われ者になっているおめかけのお糸、一番奥が空家で——」
かれの提げている重箱の中にはすしや駄菓子のたぐいを入れてあるが、それを売るばかりが彼等の目的ではなかった。勿論、い女などは決していない。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あの娘は本当にい女だ。聚楽中にもないくらいだ。で、ご愛妾の一人が死んだ。お前も知って居る京極のお方だ。
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水あぶらのばちさきが、ぱらっと散って、蒼味の走った面長な顔、職人にしてはけんのある、切れ長な眼——人もなげな微笑をふくんだ、いおとこである。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
狭い一室ひとまに、束髪たばねがみひっかけおびで、ふつくりしたい女が、糸車を廻して居たが、燭台につけた蝋燭ろうそく灯影ほかげに、横顔で、旅商人たびあきうど、私の其の縁続きの美男を見向みむいて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白粉おしろいつけて衣類きものきて迷ふて来る人をれかれなしに丸めるがあの人達が商売、ああれが貧乏に成つたからかまいつけてくれぬなと思へば何の事なくすみましよう
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「どうどす。お江戸は将軍家のお膝下ひざもとやさうどすが、まさかこんない景色はたんとおすまい。」
いや、こりゃあ、い女の前で、つまらねえことをしゃべってしまったものだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
熟々しみじみ奥様があの巡礼の口唇を見つめてい声に聞惚れた御様子から、根彫葉刻ねほりはほり御尋ねなすった御話の前後あとさきを考えれば、あんな落魄おちぶれた女をすら、まだしもと御うらやみなさる程に御思召すのでした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
仙蔵と次郎作は、巨人達から、とう/\虫と見られて、そのうちにつれていかれました。孫の巨人は、これは本当に悧巧で、い声の虫だから、今晩は抱いてねるのだと、二人を寝床の中に入れました。
漁師の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
二階の青年は大声で「いところ! 」と叫ぶ。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
オーという例のつやのあるい声が聞える。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しくも今松はこう覚悟した。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「……とすれば、い女などは、あめした、二人に限ったものではない。またさほど、女ひでりにかわいている道誉でもなかろうが」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
由「それ、お前さんが桃山を呼びに行ったら、其の時幸兵衛さんが来たんだよ、御新造がい男だと云って、それ、あの」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)