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罵倒
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ばとう
ふりがな文庫
“
罵倒
(
ばとう
)” の例文
「わあ、ひでえなあ」と
罵倒
(
ばとう
)
すると、いそいで立ち上って首を垂れ、閉口したようにこそこそ縁の下にもぐりこんでしまうのである。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そして、庄左衛門が満座の中で諸士から
罵倒
(
ばとう
)
されるのを聞いていた時、まあまあ自分でなくってよかったというような安心を覚えた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「不届者」「不忠者」「露助の真似する売国奴」そう
罵倒
(
ばとう
)
されて、代表の九人が銃剣を擬されたまま、駆逐艦に護送されてしまった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
その叔父が
苦
(
にが
)
りきって、
罵倒
(
ばとう
)
するのだから、拙者もちょッと面食らった。——で理由を
糺
(
ただ
)
すと、法月弦之丞は決して死んではおるまい。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、だん/\読んで行く
裡
(
うち
)
に、唐沢家に対する荘田の迫害の原因が、荘田に対する自分の
罵倒
(
ばとう
)
であったことが、マザ/\と分って来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
「いったい君に
画
(
え
)
を論ずる資格はないはずだ」と私はついに彼を
罵倒
(
ばとう
)
した。するとこの
一言
(
いちごん
)
が
本
(
もと
)
になって、彼は芸術一元論を主張し出した。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
愚かにも気早な
嫉妬
(
しっと
)
から、彼ら同士の関係や内情はおろか、当人の人物さえよくも知らずに、婚約の夫を
罵倒
(
ばとう
)
したことである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
父は母の
歿後
(
ぼつご
)
、後妻も
貰
(
もら
)
わないで不自由を
忍
(
しの
)
んで来たのであったが、
蔭
(
かげ
)
では田舎者と
罵倒
(
ばとう
)
している貝原から
妾
(
めかけ
)
に要求され
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だが誤解する
勿
(
なか
)
れ、著者は民衆に
諂
(
へつ
)
らうところの民衆主義者でなく、逆に彼等を
罵倒
(
ばとう
)
し、軽蔑するところの民衆主義者だ。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
これを
罵倒
(
ばとう
)
する時は、ただ自己を罵倒するのである。今の世に美術無し、というが、これが責めを負うべき者はたれぞ。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
世間ではかえってその人を非常に
罵倒
(
ばとう
)
し「彼は
外道
(
げどう
)
である。大罪悪人である。ラマに対して悪口をいうとは
不届
(
ふとどき
)
である」
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
その代りに、今度は珠子を非難し、君の脚を売ることを望むような女性は
外面
(
がいめん
)
如
(
にょ
)
菩薩
(
ぼさつ
)
内心
(
ないしん
)
如
(
にょ
)
夜叉
(
やしゃ
)
だといって
罵倒
(
ばとう
)
した。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
飛び付くように抱き起したガラッ八、これはあまり酔っていない上、どんなに
罵倒
(
ばとう
)
されても、親分の平次に向って腹を立てるような男ではありません。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
喜兵衛は決して反抗はしない、
罵倒
(
ばとう
)
されても殴られても、黙って頭を垂れているが、そのときは父がひどく怒って
雨の山吹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ケチなお客だなァ」と、一行を見送りつついつまでも口を
尖
(
とが
)
らしている。こっちがケチなのではない。山男のくせに欲張るからとんだ
罵倒
(
ばとう
)
を受けたのだ。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
それ、持参の昼提灯、土の下からさぞ、半間だと
罵倒
(
ばとう
)
しようが、白く
据
(
すわ
)
って、ぼっと包んだ線香の煙が
靡
(
なび
)
いて、裸
蝋燭
(
ろうそく
)
の灯が、静寂な風に、ちらちらする。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「インド
猿
(
ざる
)
」によく似てると、むきつけて、そうであることが、不都合きわまることのようにほんきに、彼女を
罵倒
(
ばとう
)
し、そして恥ずかしい目にからかった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
ところが、世の中は妙なもので、その時博士の
家
(
うち
)
へは激励の投書が降るように来るにひきかえ、××大学へは
罵倒
(
ばとう
)
、脅迫の投書が続々舞いこんできたそうだ。
或る探訪記者の話
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
母は三言目には
喧嘩腰
(
けんかごし
)
、妻は
罵倒
(
ばとう
)
されて
蒼
(
あお
)
くなって小さくなる。女でもこれほど
異
(
ちが
)
うものかと怪しまれる位。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そうすると、父が時としては烈火の如く
憤
(
いきどお
)
って、自分を叱責したり、
罵倒
(
ばとう
)
したりする、それが腕力沙汰にまでなった時、軽蔑が変じて反抗となってしまった。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
音楽の方面では、世の定説に少しも従わず、当代の偉人らがほしいままにしてる名声を、
狡猾
(
こうかつ
)
に
罵倒
(
ばとう
)
することもできた。女も彼からさらに容赦されなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
復讐と同時に、ネネの歓心を
購
(
か
)
ったと信じ、必ず帰って来ると高言し哄笑した春日の尖った顔が、ざまァ見ろ、とばかり、私の胸の中で快よく
罵倒
(
ばとう
)
され尽すのだ。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
なぜ親爺は単に「馬鹿野郎。」という
放胆
(
ほうたん
)
な
罵倒
(
ばとう
)
の言葉をえらばなかったのであろう。それならば私は或いは親愛の表現と思い違いをしたかも知れないではないか。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
ところで、ボル派のアナ攻撃は、プレカアノフなんかからの
直伝
(
じきでん
)
のその理窟などより、理窟もクソもない頭からの
罵倒
(
ばとう
)
が、実は俺たちをもっとも怒らせていたのだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
処女にして文学者たるの危険などを
縷々
(
るる
)
として説いて、幾らか
罵倒
(
ばとう
)
的の文辞をも
陳
(
なら
)
べて、これならもう
愛想
(
あいそ
)
をつかして
断念
(
あきら
)
めて
了
(
しま
)
うであろうと時雄は思って微笑した。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
周はますます怒って村役人を
罵倒
(
ばとう
)
した。村役人は
慚
(
は
)
じると共に
恚
(
いか
)
って周を捕縛して監獄へ
繋
(
つな
)
いだ。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
自分から、父や叔父のところに乗り込んで行って思いきり
罵倒
(
ばとう
)
してやりたいような気にもなった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
クールフェーラックはアンジョーラの
傍
(
そば
)
の
舗石
(
しきいし
)
の上にすわって、大砲をなお
罵倒
(
ばとう
)
し続けていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
怨恨
(
えんこん
)
の毒気のようなものもあった、勝利を
矜
(
ほこ
)
るようなものもあった、冷やかなものもあった、甚だしい
軽蔑
(
けいべつ
)
もあった、軽蔑し
罵倒
(
ばとう
)
し去っての哀れみのようなものもあった
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ショペンハウエルが、満身の力をこめて
罵倒
(
ばとう
)
した欧羅巴の女どもといえども、どうしても僕の妻よりも器量が好い。けれどもそれを逆にいえば、僕は黄顔細鼻の男に過ぎぬ。
妻
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
彼らはその仮装が同じばかりでなく、同じような
昂奮
(
こうふん
)
で語り、同じ声で叫び、そしてときどき彼らは労働歌を合唱した。ある者は工場主を
罵倒
(
ばとう
)
し、ある者は皮肉を投げつけた。
仮装観桜会
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
いたる所で
嘲笑
(
ちょうしょう
)
され、細君には
罵倒
(
ばとう
)
され、神の栄光を呪いに呪い、ついに窮余の一策、後光の消失を願うのあまり、神の怒りを買うことを考える。つまり罪悪を行うのである。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
で、「右の頬を打たれたら左の頬も向けよう」彼はしきりにこうした気持を
煽
(
あお
)
りたてて出かけて行ったのだが、
舅
(
しゅうと
)
には、今さら彼を眼前に引据えて
罵倒
(
ばとう
)
する張合も出ないのであった。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
月評を書いたのはまだその頃文名を馳せていたN氏である。N氏はさんざん
罵倒
(
ばとう
)
した
後
(
のち
)
、こう保吉に
止
(
とど
)
めを刺していた。——「海軍××学校教官の余技は全然文壇には不必要である」
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
否
(
い
)
な宿したのもあるようです、それがすぐ形式の差は内容の差を伴うべきものだと
呼
(
さけ
)
び俳調俳歌
厭
(
いと
)
うべしと
罵倒
(
ばとう
)
して仕舞われたのです、吾々もそう思うですなあ、同じく詩であっても
子規と和歌
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
罵倒
(
ばとう
)
してみても、撲ってみても心が安まらなかった。安二郎は五十面下げて
嫉妬
(
しっと
)
に狂いだしていた。お君がこっそり山谷に会わないだろうかと心配して、市場へ行くのにもあとを
尾行
(
つけ
)
た。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
それを見当違に
罵倒
(
ばとう
)
したりなんかせずに置いてくれれば好いと思うのである。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
……と同時に洪水のように
迸
(
ほとばし
)
り出る
罵倒
(
ばとう
)
の言葉が、口の中で戸惑いし初めた。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
借問
(
しゃもん
)
す君はどうだ。菓子を食って老人組を
罵倒
(
ばとう
)
するは、けだしわが輩
士官次室
(
ガンルーム
)
の英雄の特権じゃないか。——どうだい、諸君、兵はみんな
明日
(
あす
)
を待ちわびて、目がさえて困るといってるぞ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
先頃始めて神に関する一書を出して
大
(
おおい
)
に
基督教
(
キリストきょう
)
を
罵倒
(
ばとう
)
し、基督教の教ゆる神は論理上承認し難い、しかして自分の信ずる神、
寧
(
むし
)
ろ自分の発見した神は各自の心に存在し、各自と生命を共にし
自由の真髄
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ブロックは弁護士の言うことをすっかりのみこみ、悪意のこもった
眼差
(
まなざし
)
でKをじろじろながめ、彼に対して激しく頭を振った。この動作を言葉に翻訳すれば、乱暴な
罵倒
(
ばとう
)
だったにちがいない。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
しきりに五右衛門を
罵倒
(
ばとう
)
していましたが、しかし、こればっかりは事件のほうで起きてこないかぎり、いかなおしゃべり屋の伝六がしゃちほこ立ちをしたとて、どうにもならないことでしたから
右門捕物帖:14 曲芸三人娘
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その長官たる私が、昭和十年の始め頃からある種の新聞で
乱臣賊子
(
らんしんぞくし
)
と大がかりに
罵倒
(
ばとう
)
された。在郷軍人会も大挙してこれに
共鳴
(
きょうめい
)
した。そして四方八方から、目を光らせて私を
眺
(
なが
)
めるようになった。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
最敬礼のもっともきらいなのは生蕃であった、生蕃はいつもかれを
罵倒
(
ばとう
)
した。生蕃は大沢一等卒が
牙山
(
がざん
)
の戦いで一生懸命に逃げてアンペラを頭からかぶって
雪隠
(
せっちん
)
でお念仏をとなえていたといった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
氏は物語の合間合間、自分の正しいことを力説したが、今から考えてみると、その
無闇
(
むやみ
)
な
激昂
(
げっこう
)
や他に対する
嫌味
(
いやみ
)
なまでの
罵倒
(
ばとう
)
も、皆自殺する前の悲しい叫びとして、私には充分理解できる気がする。
地図にない街
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
先生のこころにはそれが絶対のものであったので、当時世間でもてはやされていた歌などには、まるでその価値を認めずに
罵倒
(
ばとう
)
された。その議論に熱烈であったことはまことに驚くべきほどである。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
漸くいらいらして来た居士は何かにつけて余らを
罵倒
(
ばとう
)
し始めた。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
と、平馬は、憎々しげに、雪之丞を
罵倒
(
ばとう
)
しつづけて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、プンプン
怒
(
おこ
)
って沼南を
罵倒
(
ばとう
)
した事があった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
忽
(
たちま
)
ち面と向って諸君を
罵倒
(
ばとう
)
するのだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
“罵倒”の意味
《名詞》
情け容赦なく罵ること。
(出典:Wiktionary)
罵
常用漢字
中学
部首:⽹
15画
倒
常用漢字
中学
部首:⼈
10画
“罵”で始まる語句
罵
罵詈
罵声
罵詈讒謗
罵言
罵詈雑言
罵殺
罵詈悪口
罵刃
罵評