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つづ
ふりがな文庫
“
綴
(
つづ
)” の例文
なにごとも上ッ面だけを
綴
(
つづ
)
くり、いい加減に辻褄を合わしてすまして置くという不誠実な性情は、すでにこの頃に養われたのである。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
自分の親しく経歴したことを
綴
(
つづ
)
ったら、人によったらあるいは一生涯に一つ二つ、吾々の想うようなものが出来るかも知れぬけれど
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
なぜならば、その文章が、まるでアメリカ人の書きそうな俗語の英語で、けっして外国人の
綴
(
つづ
)
ったものとは思考されないからである。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
明日
(
あした
)
から引っ込んでるがいい。店へなんぞ出られると、かえって家業の邪魔になる。奥でおん
襤褸
(
ぼろ
)
でも
綴
(
つづ
)
くッてる方がまだしも
優
(
まし
)
だ。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼の父は
洋筆
(
ペン
)
や万年筆でだらしなく
綴
(
つづ
)
られた言文一致の手紙などを、自分の
伜
(
せがれ
)
から受け取る事は
平生
(
ひごろ
)
からあまり喜こんでいなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
兄も、私も、その人ごみのうしろに永いこと立ちどまり、繰り返し繰り返し
綴
(
つづ
)
られる同じ文章を、何度でも飽きずに読むのである。
一灯
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あの人はそれから、椅子に腰をかけて、
抽斗
(
ひきだし
)
から
錐
(
きり
)
と
紙撚
(
こより
)
をとり出し、レター・ペーパーの隅っこに穴をあけてそれを
綴
(
つづ
)
りこんだ。
オパール色の手紙:――ある女の日記――
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
私は其の手紙をもう焼いてしまったので今日貴方にお見せするわけには行きませんが、大体こんな意味のことが書き
綴
(
つづ
)
られていました。
三角形の恐怖
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
“Fire”“Conflagration”“Nonsense”などいろいろの英語が頭脳の中に黒く
綴
(
つづ
)
られながら現われた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
沖縄固有の和歌には
仮令
(
たとい
)
拙
(
つたな
)
い所があっても純粋なのです。それに
綴
(
つづ
)
る歌と唱う歌とが一つなのです。このことは驚くべきことでしょう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
私のお話は、まことに他愛のないことですが、若い頃聴いた話を
綴
(
つづ
)
り合せて、仏像に恋をした話を
纏
(
まと
)
め上げて見たいと思います。
奇談クラブ〔戦後版〕:07 観音様の頬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
よく見ると簑は主に
紅葉
(
もみじ
)
の葉の切れはしや
葉柄
(
ようへい
)
を
綴
(
つづ
)
り集めたものらしかったが、その中に一本図抜けて長い小枝が交じっていて
小さな出来事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
饅頭、焼豆腐を取ってわざわざこれを三十一文字に
綴
(
つづ
)
る者、曙覧の安心ありて始めてこれあるべし。あら面白の饅頭、焼豆腐や。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
いつかそこらは、しとどに夜露が
綴
(
つづ
)
っている。眉に似た月は、杉林の陰を離れ、そこから風の落ちてくるたびに、虫の音はみな息をひく。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
以上私は裁判長ソルフ・マーラ判事の勧めによって、自分の書こうと思い定めたことだけは充分に書き
綴
(
つづ
)
ってきたつもりである。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そして彼女は一語一語にもったいをつけた。どの語も強調された。
綴
(
つづ
)
りが鉛の
靴底
(
くつぞこ
)
をつけて進んでゆき、各文句に一つの悲劇がこもっていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれども、さすがの私も、後にはとうとう隠忍しきれなくなって、
焦立
(
いらだ
)
つ心持をそのまま文字に書き
綴
(
つづ
)
ってやったのである。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
町はすっかりさっきの通りに下でたくさんの灯を
綴
(
つづ
)
ってはいましたがその光はなんだかさっきよりは熱したという風でした。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
これは三年の前、小畑と
優
(
ゆう
)
なる
歌
(
うた
)
記
(
しる
)
さんと
企
(
くわだ
)
てて
綴
(
つづ
)
りたるが、その白きままにて今日まで捨てられたるを取り出でて、今年の日記書きて行く。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
同じものは町奉行所にもあるが、それは報告する必要のある件だけで、こちらはその原本であるため、記事は
煩瑣
(
はんさ
)
なくらい詳細に
綴
(
つづ
)
られていた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
手紙は重吉といねに
宛
(
あ
)
てたもので、病身でも充分に気をつけるから八重と結婚をしたいという、坂田の若者らしい熱情で
綴
(
つづ
)
られたものであった。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
背と腰には木葉を
綴
(
つづ
)
りたるものを
纏
(
まと
)
ひたり。横の方を
振向
(
ふりむ
)
きたる
面構
(
つらがま
)
へは、色黒く眼円く鼻ひしげ
蓬頭
(
ほうとう
)
にして
鬚
(
ひげ
)
延びたり。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
宮はそれ等を
汚
(
けがら
)
はしとて一切用ること無く、後には夫の机にだに向はずなりけり。かく怠らず
綴
(
つづ
)
られし文は、又
六日
(
むゆか
)
を経て貫一の
許
(
もと
)
に送られぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その会社の専務とかいう人に会った時に、この製鉄事件に関した文書の
綴
(
つづ
)
りを見せられたが、厚さ三
寸
(
ずん
)
ばかりも
溜
(
たま
)
っていたのにはちょっと驚いた。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
暫らくしてS・S・Sというは一人の名でなくて、赤門の若い才人の盟社たる新声社の羅馬字
綴
(
つづ
)
りの冠字で、軍医
森林太郎
(
もりりんたろう
)
が頭目であると知られた。
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
びしよぬれになつてゐた日本紙で
綴
(
つづ
)
つた帳面を一枚一枚火鉢の火で乾かしながら、僕は実に強い不思議を感じてゐた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
もて
頭
(
アタマ
)
くだしに評し去るは
豈
(
あに
)
に心なきの極ならずや我友二葉亭の
大人
(
うし
)
このたび思い寄る所ありて浮雲という小説を
綴
(
つづ
)
りはじめて数ならぬ主人にも
一臂
(
いっぴ
)
を
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それで、
年
(
とし
)
ちゃんの
学校
(
がっこう
)
でお
点
(
てん
)
をつけていただいた、
綴
(
つづ
)
り
方
(
かた
)
や、
書
(
か
)
き
方
(
かた
)
の
答案
(
とうあん
)
などを
入
(
い
)
れておくものにされました。
古いてさげかご
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
綴
(
つづ
)
っていたてる女が覚えているのに「
春鶯囀
(
しゅんのうでん
)
」と「六の花」の二曲があり先日聞かしてもらったが独創性に富み作曲家としての天分を
窺知
(
きち
)
するに足りる
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は机の上の
燭台
(
しょくだい
)
に火をともして、
夜更
(
よふ
)
けまで読書をしたり、奇妙な感想文を書き
綴
(
つづ
)
ったりすることもあったが、多くの夜は、土蔵の入口に錠を卸して
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ついに怨みを買って
蟄居
(
ちっきょ
)
のあいだに死んだが、自分の経験を一冊の
書
(
しょ
)
に
綴
(
つづ
)
りて『
桜花物語
(
おうかものがたり
)
』と題して子孫に
遺
(
のこ
)
したが、その人は常に左の古歌を
愛吟
(
あいぎん
)
した。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
尤も我々の原稿用紙もいったんこれに小説が書き
綴
(
つづ
)
られたときには、これは又農民の土にもまさるいのちが籠るのであるが、我々の小説は一応無限であり
土の中からの話
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
家は
絨帳
(
じゅうちょう
)
穹盧
(
きゅうろ
)
、食物は
羶肉
(
せんにく
)
、飲物は
酪漿
(
らくしょう
)
と獣乳と
乳醋酒
(
にゅうさくしゅ
)
。着物は
狼
(
おおかみ
)
や羊や
熊
(
くま
)
の皮を
綴
(
つづ
)
り合わせた
旃裘
(
せんきゅう
)
。牧畜と狩猟と
寇掠
(
こうりゃく
)
と、このほかに彼らの生活はない。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
文学上の事でも研究すると
直
(
ただ
)
ちに俺は文学者になろうの新聞記者雑誌記者になろうのという考えを起し、小説の一つも書いてみたり論文の一つも
綴
(
つづ
)
ってみて
青年の新活動方面
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
好いことはいつも
他
(
ひと
)
に
奪
(
と
)
られ年中嬉しからぬ
生活
(
くらし
)
かたに日を送り月を迎うる味気なさ、
膝頭
(
ひざがしら
)
の抜けたを辛くも埋め
綴
(
つづ
)
った
股引
(
ももひき
)
ばかりわが夫にはかせおくこと
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「持っていたのは巻き奉書だ! そうして糸で
綴
(
つづ
)
った紙だ! ……そうだろうがな? その爺はどうした?」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それからフォーというのには Faux, Fauq, Faoucq の三とおりの
綴
(
つづ
)
り方があります。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そして、木の葉を
綴
(
つづ
)
った着物が脱ぎ捨ててあって、その上に
握
(
にぎ
)
り飯が一つちょんと乗っかっていました。
泥坊
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
ふと母親のことを思ったそんな豹一の心は紀代子にはわからず、
綿々
(
めんめん
)
たる情を書き
綴
(
つづ
)
った手紙を豹一に送った。豹一はそれを教室へ持参し、クラスの者に見せた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
と、いうような意味の言葉を、
一言
(
ひとこと
)
ずつ、
綴
(
つづ
)
るように言った。とはいえ、解けあわぬ
兄妹
(
きょうだい
)
でも、遺骨は墓地に納めさせてくれてあったのを、その人々も知っている。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ランプの光で、書きものの今日のページを
綴
(
つづ
)
っていると、
微
(
かす
)
かな物音が聞えてくる。書く手を休めると、物音もやむ。紙をごそごそやり始めると、また聞えて来る。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
文士の筆として世間という奴という如き文字を
綴
(
つづ
)
るのは心の礼がないばかりでなく筆の礼も知らない。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
むかし、むかし、大むかし、この木は
山谷
(
やまたに
)
を
掩
(
おお
)
った枝に、
累々
(
るいるい
)
と実を
綴
(
つづ
)
ったまま、静かに日の光りに浴していた。一万年に一度結んだ実は一千年の間は地へ落ちない。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その踏破録を、シトロエン文化部の発表に先だって、これから物語風に書き
綴
(
つづ
)
ろうとするのである。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
或る人は一つの言葉にも或る特殊な意味を
盛
(
も
)
り、雑多な意味を除去することなしには用いることを
肯
(
がえ
)
んじない。散文を
綴
(
つづ
)
る人は前者であり、詩に行く人は後者である。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
足袋
(
たび
)
行縢を取り出し、洗濯衣、古肌着など取り出でて、
綻
(
ほころ
)
びを縫い破れを
綴
(
つづ
)
り、かいがいしく立ち働く、その間に村人は二人の
首途
(
かどで
)
を送らんと、濁酒鶏肉の用意に急ぎぬ
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
自分に欠けているものを身に着けるために勉強する便宜も得られますし、また月が私に語ってくれた話をそれこそゆっくり楽しみながら
綴
(
つづ
)
ることも出来ようというものです。
聖アンデルセン
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
この一篇を
綴
(
つづ
)
るに先だち断わり置くは単に兎と書いたのと
熟兎
(
なんきん
)
と書いた物との区別である。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ただの恋愛談を技巧だけで
綴
(
つづ
)
ってあるような小説に
業平朝臣
(
なりひらあそん
)
を負けさせてなるものですか
源氏物語:17 絵合
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それまでは学校教育もろくに受けておらず、物を書くのにも
綴
(
つづ
)
りがまちがいだらけというありさまであったが、このコリンの助力のおかげで学校へも行けるようになったのである。
絵のない絵本:02 解説
(新字新仮名)
/
矢崎源九郎
(著)
綴
漢検準1級
部首:⽷
14画
“綴”を含む語句
補綴
綴込
点綴
横綴
綴合
仮綴
綴糸
直綴
綴字
一綴
綴錦
洋綴
綴織
綴目
綴文
綴音
菊綴
合綴
羅馬字綴
綴本
...