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真鍮
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しんちゅう
ふりがな文庫
“
真鍮
(
しんちゅう
)” の例文
旧字:
眞鍮
少女は自働車のまん中にある
真鍮
(
しんちゅう
)
の柱につかまったまま、両側の席を見まわした。が、
生憎
(
あいにく
)
どちら側にも
空
(
あ
)
いている席は一つもない。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見込み「
明
(
あ
)
けつ
放
(
ぱな
)
してだれも居ねえのか、この開帳で人の出るのに」とかます
烟草入
(
たばこいれ
)
と
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
を出し「何だ火もねえや」といひ
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
トムは、ポケットをさぐって、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
貨幣
(
ダラ
)
を出してみせた。貨幣の両面には、
淫媚
(
いんび
)
な清国人の笑い顔がポンチ絵風に浮かしてあった。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鍍金
(
めっき
)
を
金
(
きん
)
に通用させようとする切ない工面より、
真鍮
(
しんちゅう
)
を真鍮で通して、真鍮相当の
侮蔑
(
ぶべつ
)
を我慢する方が楽である。と今は考えている。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
障子が
段々
(
だんだん
)
眩
(
まぶ
)
しくなって、時々
吃驚
(
びっくり
)
する様な大きな
響
(
おと
)
をさしてドサリ
撞
(
どう
)
と雪が落ちる。机の
傍
(
そば
)
では
真鍮
(
しんちゅう
)
の
薬鑵
(
やかん
)
がチン/\云って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
紺
(
こん
)
看板に
梵天帯
(
ぼんてんおび
)
、
真鍮
(
しんちゅう
)
巻きの木刀を差した
仲間奴
(
ちゅうげんやっこ
)
、お供先からぐれ出して抜け遊びとでも
洒落
(
しゃれ
)
たらしいのが、
人浪
(
ひとなみ
)
を分けて追いついた。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
真鍮
(
しんちゅう
)
の小判だの肖像入の黄財布だのを福の縁起だといって見物に売るという噂を耳にした、お蘭は立っても居てもいられなかった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
真鍮
(
しんちゅう
)
の燭台で打ちかかるものや飛附いてくるものを、父は黒骨の扇——丁度他家からおくられた、
熊谷直実
(
くまがいなおざね
)
の軍扇を摸したのだという
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
飾り立てた
真鍮
(
しんちゅう
)
や銅の自在、
丸輪五徳
(
まるわごとく
)
や吉原五徳、さては火箸、灰均など。中で北の国だけのものと思われるのは「
炉金
(
ろがね
)
」であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
柄のついたパイプ型
真鍮
(
しんちゅう
)
製の小容器でコーヒーを濃く煮ている光景にぶつかるが、そういうコーヒーの飲みかたは日本に伝わらなかった。
カフェー
(新字新仮名)
/
勝本清一郎
(著)
或日彼は、アンティフォンという男に向って、
真鍮
(
しんちゅう
)
はどこから出るのが一番いいかとたずねました。すると、アンティフォンは
デイモンとピシアス
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
或る日、私の父が、私のために小さな竜を彫った
真鍮
(
しんちゅう
)
の
迷子札
(
まいごふだ
)
を手ずからこしらえてくれた。それが私にはいかにも
嬉
(
うれ
)
しかったのだろう。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
しかも手すりの
真鍮
(
しんちゅう
)
をつかまりながらいるので、手はだらりと冷たく凍えあがったように垂れていた。そのとき番人はあわてて
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
背後から、あいにくとこの日は看護婦が言って、
真鍮
(
しんちゅう
)
ののう盆を出した。固くなった俺のヨシコを見て、看護婦は顔をそむけた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
上には、
筆硯
(
ひっけん
)
は片隅で、
真鍮
(
しんちゅう
)
の細長い
卦算
(
けいさん
)
が二、三本と、
合匙
(
ごうひ
)
といいますか、薬を量る金属の
杓子形
(
しゃくしがた
)
のが大小幾本もありました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
……『
真鍮
(
しんちゅう
)
の城の
眷族
(
けんぞく
)
ども』に迫害されるという事も、こういう意味から云う時は、肉身刑罰の一つとして
甘受
(
かんじゅ
)
すべきものかもしれません
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
丸の内の一
郭
(
かく
)
、
赤煉瓦
(
あかれんが
)
貸事務所街のとある入口に、宗像研究室の
真鍮
(
しんちゅう
)
看板が光っている。赤煉瓦建ての一階三室が博士の探偵事務所なのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
もとの
真鍮
(
しんちゅう
)
の振り子の蔭に消え込んでしまうと、彼女は頭を使い切ってしまった人のように、両手を顔に当ててグッタリとなってしまった。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鉄や
真鍮
(
しんちゅう
)
でできた門を通り、鉄石の壁をこえ、城の本丸に入りこみ、意中の女がとじこめられているところに行けばよかった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
私と向い合うと、立掛けてあった鉄砲——あれは何とかいう猟銃さ——それを縦に取って、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
蓋
(
ふた
)
を、コツコツ開けたり、はめたりする。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十吉は退屈まぎれに、木蔦のいつぱいに絡みついてゐる古びた石の門柱へ歩み寄つて、それに掛けてある横ながの
真鍮
(
しんちゅう
)
の標札を眺めはじめた。
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
伸子と秋山宇一、内海と素子と前後二列になって、座席の角についている
真鍮
(
しんちゅう
)
のつかまりにつかまって立っているのだった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その室内に神棚があって、その棚の上に
厨子
(
ずし
)
があり、その中に五十銭銀貨大の霊鏡をかけ、その前に相馬焼の湯飲みと
真鍮
(
しんちゅう
)
製の灯明台がある。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
葭簀
(
よしず
)
を立掛けた水茶屋の
床几
(
しょうぎ
)
には
徒
(
いたずら
)
に
磨込
(
すりこ
)
んだ
真鍮
(
しんちゅう
)
の
茶釜
(
ちゃがま
)
にばかり梢を
漏
(
もれ
)
る初秋の薄日のきらきらと反射するのがいい知れず
物淋
(
ものさび
)
しく見えた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と言って山崎譲が、七兵衛の手に
抓
(
つま
)
み上げたものを見ると、それは径一寸ばかりの
真鍮
(
しんちゅう
)
の輪にとおした、
五箇
(
いつつ
)
ほどの小さな合鍵でありました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
バーゲルス
街
(
ガーデ
)
角
(
かど
)
の時計店ナアゲルで、伯爵夫人イェルヴァが、自分で身分柄にも似ず、縦十
吋
(
インチ
)
幅八
吋
(
インチ
)
くらいの
真鍮
(
しんちゅう
)
の安物の
歌い
(
オルゴール
)
時計を買った。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その下は押入れになっている。煖炉があるのに、
枕元
(
まくらもと
)
に
真鍮
(
しんちゅう
)
の火鉢を置いて、湯沸かしが掛けてある。その
傍
(
そば
)
に
九谷
(
くたに
)
焼の
煎茶
(
せんちゃ
)
道具が置いてある。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
宗平は
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
キセル
)
に
莨
(
たばこ
)
をつめつつ語る、さして興味ある物語でもないが、こうした時こうした場所では、それも
趣
(
おもむ
)
きふかくきかれたのであった。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
真鍮
(
しんちゅう
)
のボタンのべたべたと附いた、サフラン色の軍服のような服を着て、真黒な濃い髪の毛を頭のまん中から分けて居る。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と
真鍮
(
しんちゅう
)
の潰れた
煙管
(
きせる
)
を出して行燈の戸を上げて火をつけようと思うが、酔って居て手が
慄
(
ふる
)
えておりますから
灯
(
ひ
)
が消えそう
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
狐はだまって今度は
真鍮
(
しんちゅう
)
のてすりのついた立派なはしごをのぼりはじめました。どうして狐さんはあゝうまくのぼるんだらうと仔牛は思ひました。
黒ぶだう
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その街並は、皆大きな
陰鬱
(
いんうつ
)
な
煉瓦建
(
れんがだて
)
でした。その一つの家の、正面の扉の上に、
真鍮
(
しんちゅう
)
の名札が輝いていました。そこに黒でこう彫ってありました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
銃口にはめた
真鍮
(
しんちゅう
)
の蓋のようなものを注意して見ているうちに、自分が中学生のとき、エンピール銃に鉛玉を込めて
射的
(
しゃてき
)
をやった事を想い出した。
雑記(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
新吉は黒い
指頭
(
ゆびさき
)
に、臭い莨を
摘
(
つま
)
んで、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
に詰めて、炭の粉を
埋
(
い
)
けた
鉄瓶
(
てつびん
)
の下で火を
点
(
つ
)
けると、思案深い
目容
(
めつき
)
をして、濃い煙を
噴
(
ふ
)
いていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
で、もし、この粉を
真鍮
(
しんちゅう
)
か鉄の筒にうまく詰めてやると、それは恐ろしい力と速さで遠くへ飛ばすことができるのです。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
「はてな。これは何だろう」刑事の一人が寝台の下から、
真鍮
(
しんちゅう
)
の小さな鈴を拾いあげた。この刑事は、荒広介という部長で、県内きっての探偵だ。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
しまった大きな門の傍に、灰色の兵隊外套を着てアキレスめいた
真鍮
(
しんちゅう
)
のかぶとをかぶった小がらな男が、一方の肩で門にもたれながら立っていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
すなわち水晶管の頭にそれにきっちり合う
真鍮
(
しんちゅう
)
の
冠
(
かんむり
)
をかぶせ、その冠の
孔
(
あな
)
から導線を引き出して、はんだでつける。
実験室の記憶
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
今日まで三年の間余は為事を
援
(
たす
)
け余と苦心を分って来たペンが紛失した。余はがっかりした。今日は書きにくい
真鍮
(
しんちゅう
)
のペンで「裸婦」十五枚程書いた。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
アンドレア李旦の船は三
桅
(
き
)
二段帆のさよ
船
(
ぶね
)
(和蘭造りの黒船)で、
和船
(
わせん
)
の
前敷
(
まえしき
)
にあたるところに
筒丈
(
つつだけ
)
、八尺ばかりの
真鍮
(
しんちゅう
)
の大筒を二梃据えつけてあった。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼女はそこに置いてある火鉢から細い
真鍮
(
しんちゅう
)
の
火箸
(
ひばし
)
を取って見て、曲げるつもりもなくそれを弓なりに折り曲げた。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
入口は扉式になっていて、握りの代りに
真鍮
(
しんちゅう
)
の
手摺
(
てすり
)
のようなものがとりつけてあった。酔客が掴まえて開くのに便利なように考案したものなのかも知れない。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
平次が帳場格子の前にしゃがむと、品吉は埋み火の煙草盆を押しやって、自分も
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
きせる
)
を取上げました。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
またインドから銀塊、銅、鉄、
真鍮
(
しんちゅう
)
の類が沢山輸入され、このほかに西洋小間物と日本
燐寸
(
マッチ
)
も多く入るです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ぼくをよく知っている工場の人たちなら、それがたいへん質のいい
真鍮
(
しんちゅう
)
であることを一目でいいあてる。実際ぼくの身体はぴかぴか光ってうつくしいのである。
もくねじ
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
煤
(
すす
)
けた、かびの臭いとも、
埃
(
ほこり
)
の臭いともつかないような、妙な臭いのしている部屋の中にお
盆灯籠
(
ぼんどうろう
)
のような、
真鍮
(
しんちゅう
)
の吊ランプが一つ、ほの暗い光をなげていた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
仏壇には
灯
(
あかり
)
がついていて、
蓮
(
はす
)
の葉の上に
供
(
そな
)
えた団子だの、
茄子
(
なす
)
や白瓜でつくった牛馬だの、
真鍮
(
しんちゅう
)
の花立てにさしたみそ萩などが
額縁
(
がくぶち
)
に入れた絵のように見える。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「うなり」は鯨を第一とし、次ぎは
籐
(
とう
)
であるが、その音がさすがに違うのである。また
真鍮
(
しんちゅう
)
で造ったものもあったが、値も高いし、重くもあるので
廃
(
すた
)
ってしまった。
凧の話
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
借金はずいぶん昔からの泥沼で、ラテン人たちはこれを aes alienum「他人の
真鍮
(
しんちゅう
)
」という。かれらの貨幣のあるものは真鍮でできていたからである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
それをあの子は知らなんだ。昼間も大抵一人でいた。盆栽の花に水を遣ったり、布団の
塵
(
ちり
)
を
掃
(
はら
)
ったり、扉の
撮
(
つまみ
)
の
真鍮
(
しんちゅう
)
を磨いたりする内に、つい日は
経
(
た
)
ってしもうた。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
“真鍮”の意味
《名詞》
真 鍮(しんちゅう)
黄銅のこと。
(出典:Wiktionary)
“真鍮(
黄銅
)”の解説
黄銅(おうどう、en: brass)は、銅と亜鉛の合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいう。真鍮(しんちゅう)とも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
鍮
漢検1級
部首:⾦
17画
“真鍮”で始まる語句
真鍮巻
真鍮鐺
真鍮色
真鍮張
真鍮製
真鍮台
真鍮鍋
真鍮器
真鍮札
真鍮環