白山はくさん)” の例文
国境の山、赤く、黄に、峰岳みねたけを重ねてただれた奥に、白蓮の花、玉のたなそこほどに白くそびえたのは、四時しじに雪を頂いて幾万年の白山はくさんじゃ。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うごめかして白山はくさんの祭禮に勇を振ひて女連をんなづれの敵を驚かせしこと親父に追出されて信州の友を尋ね矢鱈やたら婦人に思ひ付かれしこと智計を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
□安田皐月さつきさんが白山はくさん前町三八に水菓子店を開業なさいました。皐月さんの愛嬌がいゝ為めか繁昌してゐます。果物もたいへん結構です。
「そら、あの真白い、おごそかな山が、北の方に高くそびえておりましょう、御存じですかね、あれが加賀の白山はくさんでございますよ」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白山はくさんに芸者家が出来たって云うはなしだがあの辺はどうだ。矢張やっぱり芸者家のある土地の方が仕出屋しだしやや何かの便利がきくからね。」
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中央部の日本では越前と飛騨と今は隠れたが美濃の北部とに、おのおの一つの大野郡があって、ほとんと白山はくさん連峯の四周を取り囲んでいる。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
別れて出たては至極しごくおだやかで、白山はくさんあたりから通つて來る、或大工だいくと懇意になつて、其大工が始終長火鉢のそばに頑張つてゐた。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
章一は白山はくさんに住む老婦人のもとへ往くところであった。こうした場合に章一の往く処はその女の許をいて他にはなかった。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
当時食を土蔵に運びなどした女が現存して、白山はくさん御殿町に住んでゐるが、氏名を公にすることを欲せぬと云ふことである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この頃は有力の佛者が諸所の山々を開いた時代で、小角をつぬが芳野を開き、泰澄たいちよう白山はくさんを開いたのなどは先蹤せんしようをなしてゐる。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
小石川こいしかわ白山はくさん神社の坂を下りて登った処は本郷で、その辺を白山うえといいます。今残っている高崎屋の傍から曲って来て、板橋いたばしへ行く道になります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
白山はくさんの裏とか、芝公園の中とか、銀座何丁目とか今までに名前を聞いたのは二三軒あるが、むやみに流行はやるのは山師やましらしくって行く気にならず、と云って
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その後、大峰に三度、葛城かつらぎに二度、高野こうや粉川こがわ金峰山きんぷせん白山はくさん、立山、富士のたけ、伊豆、箱根、信濃の戸隠とがくし、出羽の羽黒など、日本全国くまなく廻り修行した。
この事があってから三十年、天保初年頃には表具師幸吉加賀の白山はくさんに籠り、益々飛行機の研究を積んで、鼓翼飛行から滑翔飛行機にまで発見を進めて居たのです。
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ここでは丈の高い枯れた雑草のかげなどに深く積もったものはかさが高くなるばかりでこし白山はくさんをそこに置いた気がする庭を、今はもうだれ一人出入りする下男もなかった。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
帰り、カゴ町の広い草っぱらでほたるが飛んでいた。かえり十二時。白山はくさんまで長駆して歩いてかえる。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
佐々成政さっさなりまさが、北国すじの地侍じざむらいへたのんで、白山はくさんの黒百合を取りよせて、北の政所へ献上した。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは駒込白山はくさんに住む山路宗庵やまじそうあんと申す町医の娘を奥方から勧めて進ぜられたので、其の頃諸侯の側室めかけは奥様から進ぜらるゝ事でございますが、今はういう事はないことで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ただし白山はくさん月山がっさんはそのままに取る。またシラブルの終わりのnは除外することにする。
火山の名について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
本郷巣鴨すがも行や本郷白山はくさん行の電車が、勢よく響を立てて赤門の方へ走つて行くのが見えたけれども、さうしてあれにさへ乗つて了へば、直ぐ木村の家へ行けるのだと思つたけれど
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
それは水野十郎左衛門が幡随長兵衛を小石川白山はくさんの屋敷へ呼び寄せて、湯殿でだまし討にしたのが根となって、長兵衛の子分どもは唐犬権兵衛や放駒の四郎兵衛等を頭にいただいて
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あの遠く一塊の白い雲の下にあたる真白いのが立山たてやまである事、遥かな西方に淡く浮びあがったのが加賀の白山はくさんである事や、長い尾根続きの端に飛びあがったような嶺が笠ヶ岳である事や
案内人風景 (新字新仮名) / 百瀬慎太郎黒部溯郎(著)
これに附和するもの漸く多きを致す傾向あるはすこぶる吾人の意をたり、しかも邦人のやや山岳を識るといふ人も、富士、立山たてやま白山はくさん御嶽おんたけなど、三、四登りやすきを上下したるに過ぎず
山を讃する文 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
また、さす町にある白山はくさん神社、これは小石川の総鎮守で神領三十石、神主由井氏ゆいし奉祀ほうしす。祭るところの神は、加賀かが白山はくさんに同じ、九月の二十一日がおまつりで、諸人群集、さかんなものである。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おとと、また白山はくさんが見える!」
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
小石川白山はくさん、心光寺。
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
国境の山、赤く、黄に、みねたけを重ねてただれた奥に、白蓮びゃくれんの花、玉のたなそこほどに白くそびえたのは、四時しじに雪を頂いて幾万年いくまんねん白山はくさんぢや。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
陸中石巻の白山はくさん神社、磐城いわき倉石山の水分みくまり神社、九州では薩摩串木野の冠岳かんむりだけ(西)神社など、何れも旧来卯月八日を以て祭日としているのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
白山はくさんから来たと云って、わかしゅが手紙を持って、迎いに来ましたよ。あっしが取次いだんだから、間違いはありません」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
およそ白山はくさん、白水谷を越えて、飛騨の国から、加賀へなり、越中へなり、出ようとする道は、道であって道でない。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんなに手軽に雇っても、調べが行届いていて、割合に間違などはないのでした。その頃は曙町に住んでいましたので、請宿は白山はくさん坂の中途にありました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
われ小石川白山はくさんのあたりを過る時は、かならず本念寺に入りて北山ほくざん南畆両儒の墓を弔ひ、また南畆が後裔こうえいにしてわれらが友たりし南岳なんがくの墓に香華こうげ手向たむくるを常となせり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
よしこれからはもう少し下品になってやろう。とくだらぬ事を考えながら柳町の橋の上まで来ると、水道橋の方から一りょうの人力車が勇ましく白山はくさんの方へけ抜ける。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白山はくさんの有朋堂で、模範原稿用紙を売り出しました。気のきいた中型の使ひいゝ原稿用紙です。
そこからはるかに見渡すと、ばくとした雲の海に加賀の白山はくさん群巒ぐんらんをぬいて望まれる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孝助は新五兵衞と同道にて水道端を立出たちい切支丹坂きりしたんざかから小石川にかゝり、白山はくさんから団子坂だんござかりて谷中の新幡随院へ参り、玄関へかゝると、お寺にはうより孝助の来るのを待っていて
石川の邸は水道橋外で、今白山はくさんから来る電車が、お茶の水を降りて来る電車と行き逢うあたり角屋敷かどやしきになっていた。しかし伊織は番町ばんちょうに住んでいたので、上役とは詰所で落ち合うのみであった。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
夕食後E君と白山はくさんへ行って蝋燭ろうそくを買って来る。TM氏が来て大学の様子を知らせてくれた。夜になってから大学へ様子を見に行く。図書館の書庫の中の燃えているさまが窓外からよく見えた。
震災日記より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
まして鵜川は、加賀国にその由緒ゆいしょも古い、白山はくさん神社の末寺なのだ。
白山はくさん泰澄たいちょう臥行者がぎょうしゃも立派な魔法使らしい。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
矢張やっぱ白山はくさんが見える!」
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
なんぢおとにもきつらん、白山はくさん狩倉かりくらに、大熊おほくま撲殺うちころした黒坂備中くろさかびつちうはういま自分じぶんちからためさん、いざふれなんぢ力競ちからくらべをしてやうか。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
加賀では白山はくさんふもと大道谷だいどうだにの峠の頂上に、また二本杉と呼ばるる大木があって、これは有名なる泰澄たいちょう大師が、昼飯に用いた箸を地にさしたといっております。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
宇津木兵馬と福松との道行みちゆきが如く、白山はくさんに上ろうとして上れず、畜生谷へ落ち込まんとして落ち込むこともなく、峻山難路をたどって、その行程は洒々落々しゃしゃらくらく
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
近くの白山はくさん神社の群から離れたのかも知れません。それがよくれて、卵をかえしたり、ひなをはぐくんだりします。それを見せるといって、類さんを連れて来ました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
白山はくさんの方にいるでしょう」ともう大丈夫と思ったから言い放って、老人の気色けしきを伺うと
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頭の子音 Bh と B をドロップさせるのがおもしろい。一方でわが国に Buson という消火山のあるのはなおおもしろい。白山はくさんの一峰を Bessan というのもこれに類する。
火山の名について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ちょうど十月の十五日の日でございます、浅草の観音へ参詣を致して、れから下谷へ出まして本郷へあがり、それから白山はくさんへ出て、白山を流して御殿坂ごてんざかり、小石川極楽水自証院こいしかわごくらくみずじしょういんの和尚に逢って
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
みちみち可懐なつかし白山はくさんにわかれ、日野ひのみねに迎えられ、やがて、越前の御嶽みたけ山懐やまふところかれた事はいうまでもなかろう。——武生は昔の府中ふちゅうである。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はや白山はくさんと字音に呼ぶことになっており、これを菊理媛くくりひめの神の故事に結びつけた神道家の説も新らしいものではないが、今までの常識者はむしろ春深くまで
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)