鈴木君はこいつ、この様子では、ことによるとやり損なうなと疳づいたと見えて、主人にも判断の出来そうな方面へと話頭を移す。
その日はそのまま別れて帰ったが、なんだか疳が昂ぶって半七はその晩おちおち寝付かれなかった。明くる朝はひどく寒かった。
「着物を着るのがいやなんですって。妙な癖で、着物を着せてもすぐ脱いで、ああしてはだかで寝るんです。疳の虫のせいでしょうよ。」
“疳(疳の虫)”の解説
疳の虫(かんのむし)とは乳児の異常行動を指していう俗称。特に夜泣き、かんしゃく、ひきつけなどを指す。「癇の虫」「勘の虫」などの表記もあるが正しくない。疳とは漢方医学で脾疳(ひかん)のことで乳児の腹部膨満や異常食欲などをいったが、日本では乳児の異常行動は疳の虫によって起きていると信じられ、民間の呪医(まじない師)によって虫切り、虫封じ、疳封じなどの施術が行われた。施術の概要は乳児の手のひらに真言、梵字などを書き、粗塩で手のひらをもみ洗いして、しばらく置いてみると指先から細かい糸状のものが出ているのが見えるといい、これが虫であるとされた。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)