狼藉らうぜき)” の例文
黒く多き髪の毛を最惜いとをしげもなく引つめて、銀杏返いてうがへしのこはれたるやうに折返し折返し髷形まげなりに畳みこみたるが、大方横に成りて狼藉らうぜきの姿なれども
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二つには家主の不穿索ふせんさくと、さん/″\の惡口を云ひつのるのみか、長屋の駕籠かき權三助十の兩人もその腰押しをいたして、理不盡の亂暴狼藉らうぜきをはたらき……。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ふすま障子しやうじ縱横じうわう入亂いりみだれ、雜式家具ざふしきかぐ狼藉らうぜきとして、化性けしやうごとく、ふるふたびにをどる、たれない、二階家にかいやを、せままちの、正面しやうめんじつて、塀越へいごしのよその立樹たちきひさし
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五ツの座敷ブチ抜きたる大筵席だいえんせきは既に入り乱れて盃盤はいばん狼藉らうぜき、歌ふもあればねるもあり、腕をして高論するもの、を擁して喃語なんごするもの、彼方かなたに調子外れの浄瑠璃じやうるりに合はして
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
狼藉らうぜきを御心のまゝにし給ひしが、七月八日高野山へ上り給ふて、うきめを見給ひけり、同十五日北野にて盲者をころし給ひしが、其刀にて介錯かいしやくせられし也、まことに昔は因果の程をつゝしめよ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
うちの中は区役所の出張員しゆつちやういん硫黄いわうの煙と石炭酸せきたんさんで消毒したあと、まるで煤掃すゝはきか引越ひつこしの時のやうな狼藉らうぜきに、丁度ちやうど人気ひとけのないさびしさを加へて、葬式さうしき棺桶くわんおけ送出おくりだしたあとと同じやうな心持こゝろもちである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
●さて一人の哥妓げいしや梯上はしごのうへにいでゝしきりに岩居がんきよぶ、よばれてろうにのぼれり。は京水とゝもに此よくす、楼上ろうしやうにははや三弦さみせんをひゞかせり。ゆあみしをはりて楼にのぼれば、すで杯盤はいばん狼藉らうぜきたり。
も一いきに飮終りてコレ若いもの狼藉らうぜき飮逃のみにげなどは致さぬぞ某がしが身形みなりの惡きゆゑ大方其所そこあたりの狡猾あぶれものか盜賊とでも見込だであらう代錢は殘らずはらひ遣はすぞコレ路用ろようの金は此通り澤山所持して居ると懷中くわいちう胴卷どうまき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あらくれどもの狼藉らうぜき
自動車づれの狼藉らうぜきさ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
くろおほかみ最惜いとをしげもなくひきつめて、銀杏返いてうがへしのこはれたるやうに折返をりかへ折返をりかへ髷形まげなりたゝみこみたるが、大方おほかたよこりて狼藉らうぜき姿すがたなれども
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
屋根やねをはがれたトタンいたと、屋根板やねいたが、がたん、ばり/\と、かけつたり、りみだれたり、ぐる/\と、をどさわぐと、石瓦いしかはらこそばないが、狼藉らうぜきとした罐詰くわんづめのあきがらが、カラカランと
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
●さて一人の哥妓げいしや梯上はしごのうへにいでゝしきりに岩居がんきよぶ、よばれてろうにのぼれり。は京水とゝもに此よくす、楼上ろうしやうにははや三弦さみせんをひゞかせり。ゆあみしをはりて楼にのぼれば、すで杯盤はいばん狼藉らうぜきたり。
関白家の罪は関白の例を引き行はるきの事、もつとも理の正当なるべきに、平人へいにんの妻子などのやうに、今日の狼藉らうぜき甚だ以て自由なり、行末ゆくすゑめでたかるべき政道にあらず、あゝ、因果のほど御用心候へ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それ兄様あにさまのお帰りと言へば、いもとどもこわがりてれ物のやうに障るものなく、何事も言ふなりの通るに一段と我がままをつのらして、炬燵こたつに両足、ゑひざめの水を水をと狼藉らうぜきはこれにとどめをさしぬ
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それ兄樣あにさまのおかへりとへば、いもとどもこわがりてもののやうにさわるものなく、何事なにごとふなりのとほるに一だんがまゝをつのらして、炬燵こたつ兩足りやうあしゑひざめのみづみづをと狼藉らうぜきはこれにとゞめをさしぬ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
筆屋が軒の掛提燈は苦もなくたたき落されて、釣りらんぷ危なし店先の喧嘩なりませぬと女房がわめきも聞かばこそ、人数にんず大凡おほよそ十四五人、ねぢ鉢巻に大万燈ふりたてて、当るがままの乱暴狼藉らうぜき
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さはへどりがたきがなかなれば令孃ひめにもわろむしなどありて、其身そのみきたくおやりたけれど嫁入よめいりのせき落花らつくわ狼藉らうぜき萬一もしづかへば、むすめはぢはぢ流石さすが子爵ししやくどのくして
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)