-
トップ
>
-
らうぜき
襖障子が
縱横に
入亂れ、
雜式家具の
狼藉として、
化性の
如く、
地の
震ふたびに
立ち
跳る、
誰も
居ない、
我が
二階家を、
狹い
町の、
正面に
熟と
見て、
塀越のよその
立樹を
廂に
五ツの座敷ブチ抜きたる
大筵席は既に入り乱れて
盃盤狼藉、歌ふもあれば
跳ねるもあり、腕を
撫して高論するもの、
妓を擁して
喃語するもの、
彼方に調子外れの
浄瑠璃に合はして
祝義のやうになりて大に
流行しゆゑ、
壻に
恨ある者事を水祝ひによせてさま/″\の
狼籍をなす人もまゝありて、人の
死亡にもおよびし事しば/\なりしゆゑ、正徳の頃
国禁ありて事
絶たり。