トップ
>
栄
>
は
ふりがな文庫
“
栄
(
は
)” の例文
旧字:
榮
彼女は彼の
許
(
もと
)
に、あまり
栄
(
は
)
えもしない詩人生活をした。彼が巡業を主としてゐたので、従つて彼女の生活は放浪的なものであつた。
デボルド―ヷルモオル
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
わけて義貞は
栄
(
は
)
えを好む。見得を大事に思う。で、大将の気を映して、軍は
破竹
(
はちく
)
の勢いをしめし、次の日もさらに南下をつづけていた。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
気にしながら
栄
(
は
)
えぬものは浮世の義理と
辛防
(
しんぼう
)
したるがわが前に余念なき小春が
歳
(
とし
)
十六ばかり色ぽッてりと白き丸顔の
愛敬
(
あいきょう
)
溢
(
こぼ
)
るるを
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
突き出されてできている一軒の部屋から華やかな燈火の
橙黄色
(
だいだいいろ
)
の光が、雨戸を閉ててない障子一面に、
栄
(
は
)
えて鈴江の眼に
映
(
うつ
)
った。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
実は、この甲野八十助は探偵小説家に籍を置いてはいるものの、一向に
栄
(
は
)
えない万年新進作家だった。およそ小説を書くにはタネが
要
(
い
)
った。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
俗に金平糖というポツポツの頭髪でありますが、これをどうやっていいか、丸太を使った日には重くなって仕事が
栄
(
は
)
えず、板では仕様もない。
佐竹の原へ大仏をこしらえたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
見得も
栄
(
は
)
えもなくステッキの前にうなだれてしまった。この間、酔っ払った勢いでナグリ倒した救世軍士官の顔が、眼の前にチラ付いて来た。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それも然し
何
(
ど
)
うやら
斯
(
か
)
うやら収りがついた。が、
眇目
(
かため
)
の教師はそれなり余り口を利かなかつた。従つて肝腎の授業の批評は一向
栄
(
は
)
えなかつた。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
狭苦しい置屋の店も
縁起棚
(
えんぎだな
)
に燈明の光が
明々
(
あかあか
)
と照り
栄
(
は
)
えて、お勝手で煮る香ばしいおせちの
臭
(
にお
)
いが入口の方まで臭うている。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
悦
(
よろこ
)
びに声を
潜
(
ひそ
)
めた彼の顔は、
髯
(
ひげ
)
の中で彼女の衣の射る絹の光を受けて薄紅に
栄
(
は
)
えていた。部屋の中で訶和郎の死体が反絵の腕を
辷
(
すべ
)
って倒れる音がした。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
お芝居としちゃあ結構な
愁嘆場
(
しゅうたんば
)
かも知れねえが、
生
(
しょう
)
で見せられると根っから
栄
(
は
)
えねえものなんだぜ……お前さんも、そこをよく心得ていなくちゃいけねえ。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
たゞお客の間に評判がいゝというだけで、甲部座員とはいえ、いたってまだ楽屋では
栄
(
は
)
えない身分だった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
食卓で彼のそばにすわって、ぎこちない
栄
(
は
)
えない様子をして、口を開いて話そうともほとんどしなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
頸
(
ゑり
)
もとばかりの白粉も
栄
(
は
)
えなく見ゆる天然の色白をこれみよがしに
乳
(
ち
)
のあたりまで胸くつろげて、
烟草
(
たばこ
)
すぱすぱ
長烟管
(
ながぎせる
)
に
立膝
(
たてひざ
)
の
無沙法
(
ぶさはう
)
さも
咎
(
とが
)
める人のなきこそよけれ
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
が、それにも拘らず、鶴子にはやはり野田の云つたやうに美しさのどうも
栄
(
は
)
えないところがあつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
主客は
暫
(
しばら
)
くぐずぐずしていたが、それからはどうした事か、話が
栄
(
は
)
えない。とうとう一同寝ると云うことになって、客を二階へ案内させるために、上さんが女中を呼んだ。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
余り
栄
(
は
)
えな過ぎると思ったが、——
先刻
(
さっき
)
から言った通り——
三輪坊
(
みいぼう
)
がしたお照さんのその話を聞いてからは、自分だけかも知れないが、何とも言われないほど胸が
鬱
(
ふさ
)
いだよ。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ローヤル・コーラル・ソサイティは『ハレルヤ・コーラス』(JB三三)と『天地創造』の「もろもろの天の神の
栄
(
は
)
えを
顕
(
あらわ
)
し」「
御業
(
みわざ
)
は成れり」(JB五四)を入れている。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
最近移ったばかりの
信濃町
(
しなのまち
)
の雪枝の
家
(
うち
)
の少し手前で、タキシイを乗り
棄
(
す
)
て、白いレイスの
衿飾
(
えりかざ
)
りのある黒いサテンの洋服を着た葉子は、和装の時ほど顔も姿も
栄
(
は
)
えないので
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
まるきり型や
振事
(
ふりごと
)
の心得のない二葉亭では舞台に飛出しても根ッから
栄
(
は
)
えなかったろうが、
沈惟敬
(
しんいけい
)
もどきの何とかいう男がクロンボを勤めてるよりも舞台を引緊めたであろう。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
先程からぱっと
射
(
さ
)
して色と云う色を
栄
(
は
)
えさして居た日は、雲の
瞼
(
まぶた
)
の下に隠れて、眼に見る限りの物は
沈欝
(
ちんうつ
)
な
相
(
そう
)
をとった。松の下の大分黄ばんだ芝生に立って、墓地の
銀杏
(
いちょう
)
を見る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
錦花氏のいわれた通り、亀山の仇討は元禄曾我と唄われながらもその割に
栄
(
は
)
えないのは、石井兄弟のために少しく気の毒でもある。しかもそういう意味の幸不幸は他にいくらもある。
かたき討雑感
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
子供は泣き
歇
(
や
)
み、舟中ではことに美しく
栄
(
は
)
える人形を抱きよせた。この女らしい優しい思いつきは舟中の客の胸に、いしくも温かい
思
(
おもい
)
をかもさせ、牛を乗せた船頭は感動していった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
お
力
(
りき
)
と呼ばれたるは中肉の
背恰好
(
せかっこう
)
すらりつとして洗ひ髪の
大嶋田
(
おおしまだ
)
に新わらのさわやかさ、
頸元
(
えりもと
)
ばかりの白粉も
栄
(
は
)
なく見ゆる天然の色白をこれみよがしに
乳
(
ち
)
のあたりまで胸くつろげて
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
先まで見渡すと、鉄色の筋が二本
栄
(
は
)
えない草の中を
真直
(
まっすぐ
)
に
貫
(
つら
)
ぬいている。しかし細い筋が草に隠れて、
行方知
(
ゆきがたし
)
れずになるまで眺め尽しても、建物らしいものは一軒も見当らなかった。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
世界のひとかけにすぎない、この船が、
厖大
(
ぼうだい
)
な人間社会にもどろうとして船路をいそいでいるすがたはなんとおもしろいではないか。船はまさに人間の発明力の
栄
(
は
)
えある記念塔ではないか。
船旅
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
珍しくうららかに
浅碧
(
あさみどり
)
をのべし初春の空は、四枚の障子に立て隔てられたれど、
悠々
(
ゆうゆう
)
たる日の光くまなく紙障に
栄
(
は
)
えて、余りの光は紙を透かして浪子が仰ぎ
臥
(
ふ
)
しつつ黒スコッチの
韈
(
くつした
)
を編める手先と
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
名匠はわれわれの知らぬ調べを呼び起こす。長く忘れていた追憶はすべて新しい意味をもってかえって来る。恐怖におさえられていた希望や、認める勇気のなかった
憧憬
(
どうけい
)
が、
栄
(
は
)
えばえと現われて来る。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
はた
旅
(
たび
)
の夕まぐれ、
栄
(
は
)
えのこる
雲
(
くも
)
の
湿
(
しめり
)
に
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
しかしダミアはどうにも
栄
(
は
)
えなかった。
巴里の唄うたい
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あなたのイデオロギーに
栄
(
は
)
えあれ。
小熊秀雄全集-12:詩集(11)文壇諷刺詩篇
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
娘
(
みやらび
)
たちの前に踊り
栄
(
は
)
えたであらう
首里城
(新字旧仮名)
/
世礼国男
(著)
義貞自身も、はや他日の将軍の
栄
(
は
)
えを身に擬して半ば鎌倉を呑んでいた。一日ごとに地位の一階段をのぼってゆく自分に思えた。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俗に
金平糖
(
こんぺいとう
)
というポツポツの頭髪でありますが、これをどうやって
好
(
い
)
いか、丸太を使った日には重くなって仕事が
栄
(
は
)
えず、板ではしようもない。
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
閉めて置いたと思った窓の雨戸がすっかり明いていて、障子の上にはあかあかと朝日が照り
栄
(
は
)
えているのだった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
中身をパックリと自分の
頤
(
おとがい
)
の上へもって行ったところを見ると、色男も食い気に廻って、さっぱり
栄
(
は
)
えない。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
燈明の火が明るく輝き、紫の幕が、華やかに
栄
(
は
)
え、その奥から、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
鋲
(
びょう
)
を持った
祠
(
ほこら
)
の、
扉
(
とぼそ
)
が覗いていた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
たとえば山崎長之輔扮するところの仕事師と河原市松扮するところの芸妓とが
相合傘
(
あいあいがさ
)
で雨の中を出て来る底の色もようの道具位にしかつかわれず
栄
(
は
)
えないことおびただしい。
上野界隈
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
真夏の太陽の光りを受けて
真赤
(
まっか
)
に
栄
(
は
)
えた赤土の断崖を仰ぎ、突然に現れた激流を見下して、そうして、馬車が高い
崖路
(
がけみち
)
の高低でかたかたときしみ出す音を聞いてもまだ続いた。
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
常見てはありとも見えぬ
辺
(
あたり
)
に、春来れば
李
(
すもも
)
や梅が白く、桃が紅く、夏来れば栗の花が黄白く、秋は其処此処に柿紅葉、
白膠木
(
ぬるで
)
紅葉
(
もみじ
)
、山紅葉が眼ざましく
栄
(
は
)
える。雪も好い。月も好い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
もちろん
俄仕込
(
にわかじこ
)
みで、
粒揃
(
つぶぞろ
)
いの新橋では座敷の
栄
(
は
)
えるはずもなく、借金が
殖
(
ふ
)
える一方なので、
河岸
(
かし
)
をかえて北海道へと飛び、
函館
(
はこだて
)
から
小樽
(
おたる
)
、
室蘭
(
むろらん
)
とせいぜい一年か二年かで
御輿
(
みこし
)
をあげ
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
同じ団体のバッハの『クリスマス聖譚曲』の「神に
栄
(
は
)
えあれ」と「感謝に充ちて」(JH六三)も逸するわけに行かない。この大曲の一部分ではあるが、宗教楽に興味を持つものには尊いレコードだ。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
栄
(
は
)
えしぶく麝香の
真珠
(
またま
)
、——
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「実は表へまわって見ると、御大名の御屋敷のお迎いが辻駕籠もめずらしい。奥女中の指には撥胝がある。どうもこれじゃあ芝居にならねえ。おめえは一体どこから化けて来たんだ。偽迎いも偽上使もいいが、役者の好い割にゃあ舞台がちっとも
栄
(
は
)
えねえじゃあねえか」
半七捕物帳:07 奥女中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
長篠
(
ながしの
)
の
大捷
(
たいしょう
)
を博してからまだ一ヵ月、人生最高な会心事とゆるし、
密
(
ひそ
)
かに男児の胸に四隣を圧しる武威を大列に
耀
(
かがや
)
かして、しかも京都への
栄
(
は
)
えある途中にあるのである。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其が朝露を
帯
(
お
)
びる時、夕日に
栄
(
は
)
えて白金色に光る時、人は雲雀と
歌声
(
うたごえ
)
を
競
(
きそ
)
いたくなる。五日は
檞餅
(
かしわもち
)
の節句だ。目もさむる若葉の緑から、黒い赤い紙の
鯉
(
こい
)
がぬうと出てほら/\
跳
(
おど
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お里の今の婿の英三は、一向に
栄
(
は
)
えない田舎医者。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「よしよし、道庵が入るならば芝居が
栄
(
は
)
える」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
栄
(
は
)
えあかる思より
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
秀吉の風采が
栄
(
は
)
えないといっても、或いは、こういう人々の中だけに、よけい見劣るのかもしれない。何といっても、その日の清洲会議に列した程の者は、時代の一流級ぞろいである。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
栄
常用漢字
小4
部首:⽊
9画
“栄”を含む語句
光栄
栄光
栄耀
夕栄
見栄
栄華
栄耀栄華
栄誉
虚栄
栄燿
御栄
栄螺
出来栄
見栄坊
繁栄
仕栄
栄花
栄西禅師
白栄
昌栄
...