じょう)” の例文
旧字:
午後五時ごろ、一同は岩壁がんぺきの南のほう、一マイルのところまでくると、そこに一じょうの細いたきが、岩のあいだから落ちているのを見た。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
民をい、じょう(教えの個条)にたがい、法を犯した罪によって、かの牡丹燈を焼き捨てて、かれらを九泉きゅうせんの獄屋へ送るというのであった。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
当人に云わせると、学問しただけに、鹿爪しかつめらしい理窟りくつなんじょうも並べるけれども。つまり過去と現在の中間を結びつけて安心したいのさ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、けよりざま、雷喝らいかつせい、闇からうなりをよんだ一じょう鉄杖てつじょうが、ブーンと釣瓶もろとも、影武者のひとりをただ一げきにはね飛ばした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秘密結社とはいいじょう、別段悪事をたくらむ訳ではありませんから、会のことは、会員の細君達にも、云わず語らずの間に知れ渡っている訳です。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「さあ、そう言われると少し困りますね。実はそこは、つまり諏訪村はですね、私の原籍地とは言いじょう、今までに二年とはいなかったんですから」
まったく、その中に、白くあらわされた天の川の左のきし沿って一じょう鉄道線路てつどうせんろが、南へ南へとたどって行くのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
妹婿とはいいじょう、局外者には違いなく、然もこの問題は、こっそり二人だけでしんみりと語りあう必要があったからだ。
ところで、あなたは案のじょうあたしの考え通り、あの娘のために元気を恢復なさったわね。あなた何か希望を持ちだしたように顔の表情まで生々して来たわ。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
たけは七八すんかたにはれい透明とうめい羽根はねをはやしてりましたが、しかしよくよくればかおは七十あまりの老人ろうじんかおで、そしてに一じょうつえをついてりました。
貰う方としても、ちゃんと現主婦が達者で働いている所へ、言わばその王座をゆさぶる者がくるのだから、めでたいとは言いじょう、一方には不安でないこともない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
吾妻川べりに付いて村上山むらかみやまを横に見て、市城村青山村あおやまむらに出まして、伊勢町いせまちよりなかじょうというとこに掛った時はもう二時少々廻った頃、木村屋きむらやと申す中食ちゅうじき場所がございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
前章市内の閑地あきちを記したるじょうに述べたさめはしの如き、即ちその前後には寺町てらまち須賀町すがちょうの坂が向合いになっている。また小石川茗荷谷みょうがだににも両方の高地こうちが坂になっている。
昔なら殿様に隠居を願いでて楽にくつろぐ時分だが、時世とはいいじょう……また、清逸の奴がどういうつもりなのか、あの年になっていて、見さかいのなさ加減はない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
といいじょう発見みつけた以上は役目柄叱らない訳にもいかず、そんなことをしていては日もまた足らずなので、そこで歴代の大目附が、経験と必要にそくして案出したのがこの咳払いである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
然し思いかけない折に、新聞が相識る人のを伝えたのも二三に止まりません。すべてが戦時気分でした。そうです。世界戦に日本はずさわるとは云うじょう、本舞台には出ませんでした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし弟の言いじょうを立てて、これから直ぐに帰る気にもなれなかった。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
... ただに実用に益なきのみならず、かえつて害を招かんも、また計るべからず」という立場から、「英亜えいあ開版の歴史地理誌数書をけみし中にいて西洋列国のじょうを抄約し、毎条必ずその要を掲げて、史記、政治、 ...
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
及びしじょう、其身の懈怠おこたりるものなりとて
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
蘆の湖は波一じょう、銀河を流す気勢けはいがした。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「心得ぬ軍師ぐんしのいいじょう、では、みすみす間道門かんどうもんをやぶられて、ここにおおくの手負ておいをだすとも、大事ないといいはらるるか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はその後「即興詩人」を読み返して、彼の隧道トンネルじょうに至る毎に、当時を回想し、戦慄を新たにしないではいられぬのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「モコウだ、かれはボートをこぐことが名人だ、地図で見ると六、七マイルのむこうに一じょうの川がある。この川は東の海にそそぐことになっている」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
最初さいしょは、なにやら濛気もやでもかかっているようで、もののけじめもわかりかねましたが、そのうち不図ふと何所どこからともなしに、一じょう光明あかりんでると同時どうじに、自分じぶんかれているところ
……とは言いじょう、自源流とよりはむしろ蒲生流といったほうが当たっているくらい、流祖自源坊の剣風をわが物としきっている侠勇きょうゆう蒲生先生、とっさに付け入るとにおわせて、誘い掛け声——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
調べものとはじょう、半分は写しものである。大して注意を払う必要もないので、少しったら、また首をげて画の方を見た。やはり口元に何かいわくがある。けれども非常に落ちついている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「——では、かみじょう五郎ごろうどのの手の者か。それとも、庄司予十郎しょうじよじゅうろうどのの手下か。飯村典膳いいむらてんぜんどのか、小森小十郎どのの手飼か」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
練兵場とはいいじょう、その辺は昼間でもまるで人の通らぬ淋しい場所で、殊に今は冬のことですから一層淋しく、秘密の会合場所には持って来いなのです。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いまは、一日のゆうよすべきばあいでない、富士男は毎日、丘にのぼって、四方を展望てんぼうした。ある日かれは、森のかなたに、ほのめく一じょうのうす青い影を発見した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
一あって一の用をなさず、二にて初めて一の文言を綴る——つまり水のじょうと火のくだりと二枚の紙に別れておるのじゃが、それがじゃ、紙は二枚になっておっても、文句は両方につづいている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
朝廷の親衛軍しんえいぐん興良おきなが親王の御陣地や、四じょう隆資たかすけのほうへも、いちいち軍議が報じられ、また、御意見をうかがい、使者が走るという有様だった。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は素人探偵とは云いじょう、看板を出してそれで生活しているわけではないのだから、いやだと思えば、別に差出さしでがましく警察の御手伝いをする義務もない訳だが
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが、はっきりそうわかってみれば、思う女の生みの母御ははごなら、この源十郎にとっても義理ある母だ。こりゃ粗略そりゃくには扱われぬ。知らぬこととは言いじょう、いままでの非礼の段々ひらにおゆるしありたい
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、前後の対手あいて二息ふたいきかけると、たちまち、かれのすがたは一じょう水気すいきとなって、あるがごとくなきがごとく乱打の武器もむなしく風を斬るばかり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さびしいとはいいじょう、旅館には数組の客がいますし、夏の用意にやとれた女中共も十人近くいるのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「どなた様か存じませぬが、こ、ここを、どうぞ出して……。でなければ、二じょう千本屋敷せんぼんやしきの松平様へ、わたくしがここにいることを急いでお知らせ下さいまし」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つけて会計から支出することになっています。株式会社と云いじょう、実は個人商店みたいなものですから
近江国地志略おうみのくにちしりゃく」の橡谷とちだにじょうに、著者寒川辰清さむかわたつきよは、彼の芳魂ほうこんとむらって、その生い立ちをこうしるしている。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幽霊話とは云いじょう、少くとも十数人の精神健全な人々が、日を違え場所を変えて、確かにその黄金仮面の人物に出会っている。このお伽噺とぎばなしには、打消すことの出来ない実在性があるのだ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その常磐は近頃、獄から下げられて、七じょう朱雀すざくあたりの小館に、母や子どもらと共に無事にいる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのじょう、いわれなしっ」ごうごうと大衆は沸いて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『云いじょうは、それか』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)