“文庫(ぶんこ)” の例文
土(つち)の上(うへ)に散(ち)らばつてゐる書類(しよるゐ)を一纏(ひとまとめ)にして、文庫(ぶんこ)の中(なか)へ入(い)れて、霜(しも)と泥(どろ)に汚(よご)れた儘(まゝ)宗助(そうすけ)は勝手口(かつてぐち)迄(まで)持(も)つて來(き)た。腰障子(こししやうじ)を開(あ)けて、清(きよ)に
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
文庫(ぶんこ)のなかを捜(さが)しても無(なか)つた。鏡台(きやうだい)にも針箱(はりばこ)にも箪笥(たんす)の抽斗(ひきだし)にも無(なか)つた。大方(おほかた)焼棄(やきす)てるか如何(どう)かしたのであらう。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
本心(ほんしん)には成(な)るまじき文(ふみ)の趣向(しゆかう)、案外(あんぐわい)のことにて拍子(へうし)よく行(ゆ)き、文庫(ぶんこ)に納(をさ)め給(たま)ひしとは最(も)う我(わ)がもの、と一度(たび)は勇(いさ)みけるが、夫(それ)より後(のち)の幾度(いくど)幾通(いくつう)かき送(おく)りし文(ふみ)に一度(たび)の返事(へんじ)もなく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
半年前からわたしは城内(じょうない)の文庫(ぶんこ)にこもって、わたしの長い少年時代の思い出を、せっせと書きつづっていた。わたしたちはちょうど長男のマチアのために洗礼式(せんれいしき)を上げようとしている。
此(この)人は我楽多文庫(がらくたぶんこ)の第(だい)二期(き)の頃(ころ)既(すで)に入社して居(ゐ)たのであるが、文庫(ぶんこ)には書いた物を出さなかつた、俳諧(はいかい)は社中(しやちう)の先輩(せんぱい)であつたから、戯(たはむれ)に宗匠(そうせう)と呼(よ)んで居(ゐ)た、神田(かんだ)の五十稲荷(ごとふいなり)の裏(うら)に住(す)んで
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大ぶりな文庫(ぶんこ)をそばへ取りよせさせ、そのふたを開いてみせた。新しい銭札(せんさつ)の楮幣(ちょへい)がいっぱいにつまっていた。……しかし彼女たちは、顔見合せたきりで、何の昂奮もあらわさなかった。
さうして、それが偶然(ぐうぜん)、私(わたし)の先生(せんせい)でもあり、またあなた方(がた)のこの文庫(ぶんこ)におけるおなじみでもある、柳田國男先生(やなぎだくにをせんせい)がお書(か)きの諺(ことわざ)の成(な)り立(た)ちとも、原因(げんいん)が竝行(へいかう)してゐるのは、不思議(ふしぎ)な御縁(ごえん)だとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
改め來るべしと申付られしにより彌太夫は直樣(すぐさま)原澤村(はらさはむら)名主用右衞門同道にて甲州原澤村なる文藏の宅に到(いた)り番頭(ばんとう)忠兵衞を呼出して家内土藏の封印(ふういん)を切解(きりとき)箪笥(たんす)長持(ながもち)等一々改むる時忠兵衞は文庫(ぶんこ)藏の長持(ながもち)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下女(げぢよ)は「左樣(さやう)で御座(ござ)いましたか、どうも」と簡單(かんたん)に禮(れい)を述(の)べて、文庫(ぶんこ)を持(も)つた儘(まゝ)、板(いた)の間(ま)の仕切(しきり)迄(まで)行(い)つて、仲働(なかばたらき)らしい女(をんな)を呼(よ)び出(だ)した。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此樣(このやう)な人形(にんぎやう)を取(と)りしと誇(ほこ)り顏(かほ)に來(き)て見(み)すれば、姉樣(ねえさま)は彼(あ)の歌(うた)を御覽(ごらん)なされしや、して何(なん)と仰(おつ)しやりしと問(と)へば、何(なん)とも言(い)はずに文庫(ぶんこ)に入(いれ)てお仕舞(しまひ)なされしが、今度(こんど)も又(また)あの樣(やう)な歌(うた)を詠(よ)みて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すると金港堂(きんかうどう)一件(けん)の話が有つて、硯友社(けんいうしや)との関係を絶(た)ちたいやうな口吻(くちぶり)、其(それ)は宜(よろし)いけれど、文庫(ぶんこ)に連載(れんさい)してある小説の続稿(ぞくかう)だけは送つてもらひたいと頼(たの)んだ、承諾(しようだく)した、然(しか)るに一向(いつかう)寄来(よこ)さん
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今(いま)裏(うら)へ回(まは)つて見(み)たら、此(この)文庫(ぶんこ)が落(お)ちてゐて、中(なか)に這入(はい)つてゐた手紙(てがみ)なんぞが、無茶苦茶(むちやくちや)に放(はふ)り出(だ)してあつた。御負(おまけ)に御馳走(ごちそう)迄(まで)置(お)いて行(い)つた
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから一時(いちじ)中絶(ちうぜつ)した我楽多文庫(がらくたぶんこ)です、吉岡書籍店(よしをかしよじやくてん)が引受(ひきう)けて見たいと云(い)ふので、直(ぢき)に再興(さいこう)させて、文庫(ぶんこ)と改題(かいだい)して、形(かた)を菊版(きくばん)に直(なほ)しました、是(これ)は新著百種(しんちよひやくしゆ)の壱号(いちがう)が出ると間(ま)も無く発行(はつかう)したので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)