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拙
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まづ
ふりがな文庫
“
拙
(
まづ
)” の例文
手紙の文句はプツリときれてをりますが、その意味は邪念に充ちて、
拙
(
まづ
)
い假名文字までが、
呪
(
のろ
)
ひと怨みに引き
歪
(
ゆが
)
められてゐるのです。
銭形平次捕物控:230 艶妻伝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お引請になるのは、何も神様の手並が
拙
(
まづ
)
くて、
醜女
(
すべた
)
の方が丁度手頃なからでは更々ない。神様は女に哲学を教へようとなさるからだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「あ、
拙
(
まづ
)
い
手付
(
てつき
)
……ああ
零
(
こぼ
)
れる、零れる! これは恐入つた。これだからつい
余所
(
よそ
)
で飲む気にもなりますと
謂
(
い
)
つて可い位のものだ」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
繁代が好んで読んでゐる書物は、大方彼は未だ読んでゐなかつたので、たゞでさへ話の
拙
(
まづ
)
い彼は、一層面喰ふことが多かつた。
眠い一日
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
そのうち
霜島正一郎
(
しもじましよういちろう
)
先生
(
せんせい
)
の
手
(
て
)
になつたものもありますが、
便宜上
(
べんぎじよう
)
私
(
わたし
)
の
描
(
か
)
いた
拙
(
まづ
)
い
素人畫
(
しろうとが
)
もたくさんあるのは、おゆるしを
願
(
ねが
)
ふほかはありません。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
▼ もっと見る
拙
(
まづ
)
く行つたとては、喝采し、やれ管が
何
(
ど
)
うしたの、やれ誰さんがずぶ
濡
(
ぬ
)
れになつたのと頻りに批評を加へるのであつた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
少し
容色
(
きりやう
)
の劣つた姉の方が
頻
(
しき
)
りに
拙
(
まづ
)
い
仏蘭西
(
フランス
)
語で僕に話し掛けて「日本は
我
(
わが
)
英国と兄弟の国だ」とか「ゼネラル乃木が
何
(
ど
)
うだ」とか
愛嬌
(
あいけう
)
を
撒
(
ま
)
いた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
天道様が智慧といふものを
我
(
おれ
)
には
賜
(
くだ
)
さらない故仕方が無いと諦めて諦めても、
拙
(
まづ
)
い奴等が宮を作り堂を受負ひ
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
はゝツ。
国王
(
こくわう
)
の作つた詩といふから、
結構
(
けつこう
)
な物だらうと
存
(
ぞん
)
じて、手に取り上げますると、王「どうぢやな、
自製
(
じせい
)
であるが、
巧
(
うま
)
いか
拙
(
まづ
)
いか、
遠慮
(
ゑんりよ
)
なしに
申
(
まう
)
せ。シ ...
詩好の王様と棒縛の旅人
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「舞臺の上が
拙
(
まづ
)
くつてみつともなければ、僕はもう決して社へは出ないからな、君の遣りかた一とつで何も彼も失つてしまうんだからそのつもりでゐたまへ。」
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
變なかたちをすると、「
拙
(
まづ
)
い」と叫ぶ、實に
生
(
き
)
まじめなもので、その聲は自分の聲とはしないのでした。
鏡二題
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そして、
紙箒
(
はたき
)
を持つて兄の机の上の埃を拂ひながら、書物の間に插んである洋紙を
覘
(
のぞ
)
いて、
拙
(
まづ
)
い手蹟で根氣よく英字を書き留めてゐるのに、感心もし、冷笑を浮べもした。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
まづいと云ふ点から見れば双方ともに
下手
(
まづ
)
いに違ない。けれども佐久間大尉のは
已
(
やむ
)
を得ずして
拙
(
まづ
)
く出来たのである。呼吸が苦しくなる。部屋が暗くなる。鼓膜が破れさうになる。
艇長の遺書と中佐の詩
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私も仕方なしに承知して、親子はしたゝか
拙
(
まづ
)
いゲームをやつてボーイを笑はせたりした。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
歌は字と共に寧ろ
拙
(
まづ
)
かつた。又その歌つてある事の特に珍らしい爲でもなかつた。私を不思議に思はせたのは、脱字の多い事である。誤字や假名違ひは何百といふ投書家の中に隨分やる人がある。
歌のいろ/\
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
いや、
拙
(
まづ
)
い!何といふ
劣惡
(
れつあく
)
なもんだえ。何んだツて此様な作を描き上げやうとして
踠
(
あが
)
いてゐるんだ………
骨折損
(
ほねをりぞん
)
じやないか。俺は馬鹿だ、
確
(
たしか
)
に頭が
痺
(
しび
)
れてゐる。何處に一ツ
好
(
い
)
い
點
(
とこ
)
がありやしない。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
伴左衞 どうもおれが些と
拙
(
まづ
)
かつたな。千島の奴め。おれの前でも平氣であんなことを云ふやうでは、お千代にも何を云つて聞かせたか判らないぞ。念のためによく詮議して置かなければならない。
正雪の二代目
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分の心持を人に伝へる方法がひどく
拙
(
まづ
)
くなつたといふことです。
日本文化の特質:――力としての文化 第二話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「あー俺の作つてやつた
拙
(
まづ
)
い歌を
皆
(
みん
)
なで歌つてるやうだね。」
突貫
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「ちよつと
拙
(
まづ
)
かつたね。」
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
「矢張り親分の仰しやつた通り、百兩出せと言つて手紙が來ましたよ、少し
手跡
(
て
)
が違ふやうでしたが相變らず鼻紙へ書いた
拙
(
まづ
)
い字で」
銭形平次捕物控:043 和蘭カルタ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
だが、高木氏の考へは少し
拙
(
まづ
)
かつた。そんな事を教へて今の紳士達がすつかり達者になつて、
長生
(
ながいき
)
でもしたら
何
(
ど
)
うする
積
(
つもり
)
だらう。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
文部省の留学生某の彼を推讃した
拙
(
まづ
)
い歌やで一ぱいに成つた厚い手帳を出して見せ、
莞爾
(
にこ/\
)
として得意
相
(
さう
)
である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
拙
(
まづ
)
い
巧
(
うま
)
いと
申
(
まう
)
すは二の
段
(
だん
)
にいたしまして、
是
(
これ
)
は第一に詩といふものになつて
居
(
を
)
りません、
御承知
(
ごしようち
)
の
通
(
とほ
)
り、詩と
申
(
まう
)
しまするものは、必らず
韻
(
ゐん
)
をふまなければならず
詩好の王様と棒縛の旅人
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『ドストイエフスキーの文章の
拙
(
まづ
)
いのは、文章は何うでも好い人の議論の弁護にはならない。ドストイエフスキーにして文章が上手ならば、一層すぐれた作者になる』
尾崎紅葉とその作品
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
明日
(
あした
)
は用が有つて行かなければならんのだから、持つて行かんと
拙
(
まづ
)
いて。未だ有つたね、無い? そりや可かん。一枚も無いんか、そりや可かん。それぢや、
明後日
(
あさつて
)
写しに行かう。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
前
(
まへ
)
には
日本製
(
につぽんせい
)
の
鏡
(
かゞみ
)
は
支那製
(
しなせい
)
に
比
(
くら
)
べて
非常
(
ひじよう
)
に
拙
(
まづ
)
かつたのが、この
平安朝
(
へいあんちよう
)
から
足利時代
(
あしかゞじだい
)
になつて、
支那
(
しな
)
の
同時代
(
どうじだい
)
の
鏡
(
かゞみ
)
と
比
(
くら
)
べて、かへって
巧
(
うま
)
く
出來
(
でき
)
、なか/\
優
(
すぐ
)
れたところがあるのであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
まあ、みつともない、自分が作つた取るに足りない
拙
(
まづ
)
い歌などを、それを
青白き公園
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
『僕なら、さうだね。——假に言ふとすると、まあさうだね、兎に角「大きい手」とは言はないね。——冷い鐵の玉を欲しいね、僕なら。——「玉」は
拙
(
まづ
)
いな。「鐵の如く冷い心」とでも言ふか。』
我等の一団と彼
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
東菊
(
あづまぎく
)
によつて代表された子規の畫は、
拙
(
まづ
)
くて
且
(
かつ
)
眞面目である。
子規の画
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
拙
(
まづ
)
い字だなア、よし/\、その拙いところがいゝんだよ、——ところで、その手紙を、金座の石井の店へ投り込むんだ、
序
(
ついで
)
にやつてくれ」
銭形平次捕物控:043 和蘭カルタ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
出品をじろりと一
瞥
(
べつ
)
して「
拙
(
まづ
)
いな」と顔を
顰
(
しか
)
めて吐き出すやうに言ふが、さういふ口の下から、落款の「石井柏亭」といふ文字が目につくと
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一体に
他
(
た
)
国人の話す
仏蘭西
(
フランス
)
語は僕等に
仏蘭西
(
フランス
)
人のよりも
聞取
(
きゝとり
)
よい。
此方
(
こちら
)
も
先方
(
さき
)
に劣らず
拙
(
まづ
)
いのだが、双方で動詞の変化などを間違へ
乍
(
なが
)
ら意思が通じ合ふから面白い。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
私
(
わたし
)
の通された
室
(
へや
)
は、奥の風通しの
好
(
い
)
い二階であつた。八畳の座敷に六畳の副室があつた。
衣桁
(
えかう
)
には手拭が一
筋
(
すぢ
)
風に吹かれて、
拙
(
まづ
)
い
山水
(
さんすゐ
)
の
幅
(
ふく
)
が床の間に
懸
(
か
)
けられてあつた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
模樣
(
もよう
)
は
拙
(
まづ
)
く
意匠
(
いしよう
)
のまづいものになつてしまつたのは、
不思議
(
ふしぎ
)
なことであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
滝は、自分の説明の仕方が
拙
(
まづ
)
いからかしら、などゝも思つた。
昔の歌留多
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
拙
(
まづ
)
い
処
(
ところ
)
は
幾重
(
いくへ
)
にもお
詫
(
わび
)
をいたして
弁
(
べん
)
じまする。
西洋の丁稚
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
踊つて歌つて、下手な俳諧を
捻
(
ひね
)
つて、
拙
(
まづ
)
い席畫を描いて、お月樣が顏負けのする程騷いで、宴を閉ぢたのは十三夜の月が中天に昇つた
亥刻
(
よつ
)
(十時)頃。
銭形平次捕物控:209 浮世絵の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
拙
(
まづ
)
い洒落だが、それでも納得出来れば無いよりは
愈
(
まし
)
だ。丁度田舎者の
腹痛
(
はらいた
)
が
買薬
(
かひぐすり
)
で間に合ふやうなものだから。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
しかし表現の仕方が
拙
(
まづ
)
いから、寓言にしかなつてゐないと言ふなら、それも
致方
(
いたしかた
)
がない。
或新年の小説評
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「毒酒を入れた徳利はその
拙
(
まづ
)
い觀世縒で縛つてあつたんです。それと入れ替へた本物の徳利は河へ捨てたんでせう」
銭形平次捕物控:108 がらツ八手柄話
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
どんな
拙
(
まづ
)
いものをでも板に
上
(
のぼ
)
せてゐるので、一つ二つ自分の作が演ぜられると、もういつぱしの劇作家か何ぞのやうに気取つたものの言ひ様をする新作家が
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一体が美術家には思ひ切つた悪食をする
輩
(
てあひ
)
が少くない。少々位技術は
拙
(
まづ
)
くとも、づば抜けた悪食の出来る男なら、先づ美術家としての資格には欠けない筈だ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
うまい細工だが、自分だけが淺川團七郎を知つて居ると言つちや
拙
(
まづ
)
いから、田舍からポツと出のお米をだまして、矢張り淺川團七郎を見たと言はせた、——それが拙かつた
銭形平次捕物控:104 活き仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
中野氏はその時分、英語の会話こそ
拙
(
まづ
)
かつたが、自分は国士を以て任じてゐたのでアメリカまで来て、女に耳を引張られようなどとは少しも思ひがけなかつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
拙
(
まづ
)
い物を彫つて居りましたので、伜の
銘
(
めい
)
で私の作を、三年越世間に出したので御座います。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
銅像は彫塑家の手際で
何
(
ど
)
うかすると、
拙
(
まづ
)
いものが出来上るが、樹木はどんな場合にも傑作となるものだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
あれは本當の惡黨さ、——自分で
謎
(
なぞ
)
の
呪文
(
じゆもん
)
を書いて置きながら、用人に、
耶馬臺
(
やばだい
)
の
詩
(
し
)
みたいだ——つて言つたさうだ。誰かに讀んで貰はなきや困るが、自分で讀んぢや
拙
(
まづ
)
かつたのさ。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
附近
(
あたり
)
に立聴きをする神様は居ないし、幾らお説教が
拙
(
まづ
)
かつたところで、
聴衆
(
ききて
)
は耳に手をやつて、波のなかに飛び込む訳にも往かないしするから、牧師は落つき払つて
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
平次は伊太松から渡された半紙一枚の手紙を開くと、相變ずの
拙
(
まづ
)
い假名文字で
銭形平次捕物控:230 艶妻伝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“拙”の意味
《名詞・形容動詞》
(セツ)得意でない事、苦手。
《代名詞》
(セツ・セチ:古風、しばしば滑稽。明治期以降は職人・芸人・幇間の自称や遊里における用語)自称に用いる。
(出典:Wiktionary)
拙
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“拙”を含む語句
拙者
拙劣
拙僧
気拙
巧拙
下拙
拙者方
拙作
拙宅
古拙
拙老
稚拙
迂拙
拙堂
拙陋
穉拙
拙夫
稚拙味
拙筆
氣拙
...