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忙
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せわ
ふりがな文庫
“
忙
(
せわ
)” の例文
愛之助が闇の庭に
佇
(
たたず
)
んで、二階に耳をすましながら、頭では
忙
(
せわ
)
しくそんなことを考えていた時、突然びっくりする様な物音が起った。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
手ばしこく針を動かしているお島の傍へ来て、
忙
(
せわ
)
しいなかを出来上りの
納
(
おさめ
)
ものを取りに来た小野田はこくりこくりと居睡をしていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
バタバタと蒲焼を焼く煙の中で
団扇
(
うちわ
)
をたたく音が板場でする。
鰻
(
うなぎ
)
を裂いたり、蒸したり、
忙
(
せわ
)
しげに男達がそこで働いているのだった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ学問のある人はあのような奇妙な素振りをするものか……と思い思い
忙
(
せわ
)
しさに
紛
(
まぎ
)
れて忘れておりましたような事で……ヘイ……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
体はいくらか楽ですけれども種々な東京に残した仕事についての
煩
(
わずら
)
はしい心配や気苦労で少しも休むひまがなく心が
忙
(
せわ
)
しいのです。
九州より:――生田花世氏に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
▼ もっと見る
それは
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、キーシュの狩はその後も成功つづきです。
意気地
(
いくじ
)
のない村人たちは、彼が取った肉を運ぶのに
忙
(
せわ
)
しいという有様でした。
負けない少年
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
……みなさまは、仕事のほうが
忙
(
せわ
)
しくて、健康や日常の細かいことまでとても気をつけていられない。……それは、よくわかりました。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
其の後で鋳掛屋は、
忙
(
せわ
)
しく銅のソース鍋に
被
(
き
)
せ掛けをしました。その鍋の内側をすつかり砂で洗つて、それを火の上に置きました。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
未亡人は余り
忙
(
せわ
)
しくない奉公口をと云って捜して、とうとう小川町
俎橋際
(
まないたばしぎわ
)
の
高家衆
(
こうけしゅう
)
大沢
右京大夫基昭
(
うきょうたいふもとあき
)
が奥に使われることになった。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
貨殖
(
かしよく
)
に
忙
(
せわ
)
しかった彼女が
種々
(
いろいろ
)
な客席へ招かれてゆくので、あらぬ噂さえ立ってそんな事まで黙許しているのかと
蜚語
(
ひご
)
されたほどである。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「今声を立てたのはお前かい。
誰
(
たれ
)
か大声を出して叫んだように聞えたが。」こう言い掛けて、男は
忙
(
せわ
)
しい息を
衝
(
つ
)
いて、こう言い足した。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
ちょっと労働でもして血液中の水素イオン濃度がわずかに一億分一だけ増すとすぐ呼吸が
忙
(
せわ
)
しくなって血液中の炭酸ガスを
洗滌
(
せんじょう
)
させる。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
田川夫人は
忙
(
せわ
)
しく葉子から目を移して、群集に取っときの
笑顔
(
えがお
)
を見せながら、レースで
笹縁
(
ささべり
)
を取ったハンケチを振らねばならなかった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
但東京の屋敷に
頼
(
たの
)
まれて餅を搗く家や、小使取りに
餅舂
(
もちつ
)
きに東京に出る若者はあっても、村其ものには
何処
(
どこ
)
に
師走
(
しわす
)
の
忙
(
せわ
)
しさも無い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「これが友人の家です。一しょに歩いて貰ってほんとうに愉快でした。ええと、今日は火曜日なんだが、あなたは土曜はお
忙
(
せわ
)
しいですか」
フェリシテ
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
併し、嘉三郎は、そのまま何も言わずに、残っている
冷酒
(
ひやざけ
)
を一息にあおると、
忙
(
せわ
)
しく勘定をして、
梅雨
(
ばいう
)
の暗い往来へ出て行った。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
それでははじめから、そうしてあげるのだったんですが、手はなし、こうやって
小児
(
こども
)
に世話が焼けますのに、
入相
(
いりあい
)
で
忙
(
せわ
)
しいもんですから。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
埠頭にはすでに黒山のようなイキトス号見送り人の喚声が湧き起って
眼球
(
めだま
)
の
碧
(
あお
)
い船員たちは
忙
(
せわ
)
しく出帆の準備に立ち働いている。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そこで何かと
忙
(
せわ
)
しい思をしている中に、いつか休暇も
残少
(
のこりすく
)
なになった。新学期の講義の始まるのにも、もうあまり時間はない。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかしそれは、一見変に突き詰めてゐて
忙
(
せわ
)
しく大股に見られるものの、又なにがしの太い気落ちと、ガッカリした何か無限の弛緩が見えた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
裏の銭湯で三助を呼ぶ番台の
拍子木
(
ひょうしぎ
)
が、チョウン! チョウン! と二つばかり、ゆく年の
忙
(
せわ
)
しいなかにも、どこかまだるく音波を伝える。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
オシイツクツクの声は日にまし騒がしく
忙
(
せわ
)
しなく、あたりが全く暗くなってしまうまで、後から後からと追いかけるように鳴きつづけている。
虫の声
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
女房を迎える暇もないような
忙
(
せわ
)
しい
遊蕩
(
ゆうとう
)
——そんな
出鱈目
(
でたらめ
)
な遊びの揚句は、世間並みな最後の幕へ押し流されて来たのです。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その囃子の音を聴きながら柚湯のなかに浸っているのも、歳の暮れの
忙
(
せわ
)
しいあいだに何となく春らしい
暢
(
のび
)
やかな気分を誘い出すものであった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
安達君としては
没計
(
もっけ
)
の幸いだったかも知れない。銀行は大晦日の夜更けまで
忙
(
せわ
)
しいから、年末の活躍を一切封じられている。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
水があらば一口飲ませてやりたいものと、それで
忙
(
せわ
)
しく、四方を見廻したけれども、そこには水のあろうはずがありません。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
第一中隊のシードロフという未だ
生若
(
なまわか
)
い兵が
此方
(
こッち
)
の戦線へ
紛込
(
まぎれこん
)
でいるから⦅
如何
(
どう
)
してだろう?⦆と
忙
(
せわ
)
しい中で
閃
(
ちら
)
と
其様
(
そん
)
な事を疑って見たものだ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
待兼
(
まちか
)
ねたるは妻君よりも客の大原、早く我が頼み事を言出さんと思えども主人の小山
携
(
たずさ
)
え来れる大荷物を
披
(
ひら
)
くに
忙
(
せわ
)
しくて大原にまで手伝いを頼み
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
日曜日になりますとね、あなた、
母親
(
おや
)
が
今日
(
きょう
)
は
忙
(
せわ
)
しいからちっと手伝いでもしなさいと言いましてもね、平気でそのお寺にいっちまいましてね
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
善吉は一層気が
忙
(
せわ
)
しくなッて、寝たくはあり、妙な心持はする、機会を失なッて、まじまじと吉里の寝姿を
眺
(
なが
)
めていた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
往来であるのも打ち忘れ、範之丞と織江とは足を停め、又助が敵でもあるかのように、左右から詰め寄り
忙
(
せわ
)
しく訊いた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
で総理大臣の国王に
遇
(
あ
)
いますと「今日は非常に
忙
(
せわ
)
しい。明日ランボンの
猟宮
(
かりみや
)
へ来てくれ。旅行券を与えるから」という。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
『どうだ。なかなかよく勉強してゐるやうだね。つい始終
忙
(
せわ
)
しいもんだから、聞きもしないが、御親父は御壮健かね』
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
文「また来たか、誠に心にかけて毎度旨い物を持って来てくれて気の毒だ、商売をしていれば
嘸
(
さぞ
)
忙
(
せわ
)
しかろうから
態々
(
わざ/\
)
持って来てくれなくもいゝのに」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
襷
(
たすき
)
がけ
忙
(
せわ
)
しく働いていた下女は二人とも、春日の姿を見ると叮嚀にお辞儀をした、その一人の方へ近づくと優しく
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
だが、わしのトランクに関するかぎり、そのような
純真
(
じゅんしん
)
な算術は成り立たないのだよ。
忙
(
せわ
)
しいから説明をしていられないが、しかしこれは事実なんだ。
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
例のごとく
忙
(
せわ
)
しい正月を迎えた。客の来ない
隙間
(
すきま
)
を見て、仕事をしていると、下女が油紙に包んだ小包を持って来た。どさりと音のする丸い物である。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
忙
(
せわ
)
しない誘導訊問を受け、今にも死ぬほどの痛い目にあわすぞとおどされた人間の口から洩れた告白ではないか。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
老婆が出て往って襖の締る音がすると、お滝は急に頭をあげて茶の間の方を見た後に、くるりと起きあがり、
忙
(
せわ
)
しそうに膳を引き寄せて飯を喫いだした。
狐の手帳
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし口には何事も言わずにただ
身形
(
みなり
)
や
容子
(
ようす
)
で——もう日が暮れて時刻が遅くなるぞ。早くやっつけてしまわねえかと催促するように
忙
(
せわ
)
しげに動き始めた。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その罪の
贖
(
つぐな
)
いをする間は
忙
(
せわ
)
しくてこの世を顧みる暇がなかったのだが、おまえが非常に不幸で、悲しんでいるのを見ると堪えられなくて、海の中を来たり
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
女から見れば、男は
種種
(
いろいろ
)
の事に
関係
(
たずさわ
)
りながらその
忙
(
せわ
)
しい中で断えず醜業婦などに手を出す。世の中の男で女に関係せずに終るという人は殆どありますまい。
産屋物語
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
彼は、瑠璃子には、一言も答えないで、そのいら/\しい気持を示すように、
自棄
(
やけ
)
に
忙
(
せわ
)
しく箸を動かしていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
眼でも悪いのか、しょぼしょぼした目蓋を
忙
(
せわ
)
しなく
顫
(
ふる
)
わせながら、
小鼓
(
つづみ
)
の望月は二三歩先に立って道を拾う。
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
忙
(
せわ
)
しいので、今月はねつから小説を読まずに暮した。谷崎君の『
病蓐
(
びやうじよく
)
の幻想』と中村孤月氏の『人の生活』と、加能君の『醜き影』とこの三つを読んだきりだ。
初冬の記事
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
忙
(
せわ
)
しい結婚準備に追われ、そのまま引き
摺
(
ず
)
られるようにして、とうとう式まですましたので御座います。
秘密の相似
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
ダイヤモンド鉱山の仕事が
忙
(
せわ
)
しすぎるのに違いありませんでした。手紙には、こう書いてありました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
きのうの事は
幕明
(
まくあき
)
の音楽で、
忙
(
せわ
)
しい調子の中へ、あらゆるモチイヴを叩き込んだものに過ぎないので、これからが本当の曲になると云いたいのですが、あなたには
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
十一時近かったけれども、
空風
(
からっかぜ
)
に裾を
捲
(
ま
)
くられながら、
忙
(
せわ
)
しそうに歩き廻っている人で群れていた。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
隣家
(
となり
)
では朝から
餅搗
(
もちつき
)
を始めて、それが壁一重隔てて地響のように聞えて来る。三吉の家でも、
春待宿
(
はるまつやど
)
のいとなみに
忙
(
せわ
)
しかった。門松は入口のところに飾り付けられた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
忙
常用漢字
中学
部首:⼼
6画
“忙”を含む語句
急忙
慌忙
忙々
心忙
気忙
多忙
忙殺
怱忙
繁忙
大忙
息忙
忙敷
連忙
匆忙
御忙
匇忙
忙裏
御多忙
小忙
忙込
...