トップ
>
幻影
>
まぼろし
ふりがな文庫
“
幻影
(
まぼろし
)” の例文
人の形が、そうした霧の
裡
(
なか
)
に薄いと、
可怪
(
あやし
)
や、
掠
(
かす
)
れて、
明
(
あから
)
さまには見えない
筈
(
はず
)
の、
扱
(
しご
)
いて
搦
(
から
)
めた
縺
(
もつ
)
れ糸の、蜘蛛の
囲
(
い
)
の
幻影
(
まぼろし
)
が、幻影が。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『
幻影
(
まぼろし
)
のように
彼女
(
あれ
)
は現われて来てまた
幻影
(
まぼろし
)
のように消えてしまった……しごくもっとものことである。
自分
(
おれ
)
はかねて待ちうけていた。』
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
……お前は僕を
騙
(
だま
)
そうとするんじゃないだろうね? 近づこうとするとすぐ消えてしまうあの
忌々
(
いまいま
)
しい
幻影
(
まぼろし
)
ではないんだろうね?
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
間隔の適度なるがために——高きに失わず、低きに過ぎざる
恰好
(
かっこう
)
の地位にあるために——最後に、一息の短かきに、吐く
幻影
(
まぼろし
)
と
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも、畿内の空の日だと思うと何となく懐かしい、私は日頃の癖のローマンチックの淡い
幻影
(
まぼろし
)
を
行手
(
ゆくて
)
に
趁
(
お
)
いながら辿った。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
▼ もっと見る
幻影
(
まぼろし
)
でも見ているひとのような自信のない眼付きで、穴のあかんばかりにキャラコさんの顔をみつめていたが、とつぜん、ほとばしるような声で
キャラコさん:11 新しき出発
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
尤
(
もつと
)
もこの
幻影
(
まぼろし
)
は長く後まで残らなかつた。
払暁
(
あけがた
)
になると
最早
(
もう
)
忘れて了つて、何の夢を見たかも覚えて居ない位であつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「どこでこの男に会ったんだろう?」としきりに例の記憶を辿っていたが、突然にある考え——というよりはむしろ一つの
幻影
(
まぼろし
)
がさっと胸に閃いた。
誰?
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
『帝国文学』の「
倫敦塔
(
ろんどんとう
)
」『ホトトギス』壱百号の「
幻影
(
まぼろし
)
の
盾
(
たて
)
」などを始めとして多数の作が矢つぎ早に出来た。いずれも批評家が筆を揃えて推賞した。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その祭壇の
神々
(
こうごう
)
しさ! 遥かの奥の
厨子
(
ずし
)
の内には十字架に掛かった
基督
(
キリスト
)
の像と
嬰児
(
おさなご
)
を抱いたマリアの像が
燻
(
く
)
ゆる
香煙
(
けむり
)
を
纏
(
まと
)
いながら
幻影
(
まぼろし
)
のように立っている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
幻影
(
まぼろし
)
を追うて夢の里を歩み、何かに引かれてここまで来たが、気がついてみると、お豊は自分ながら、なんでこんなところへ来たのかわかりませんでした。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お前が想像していた事はみな
幻影
(
まぼろし
)
だ——死んだ人の訪れて来た事の外は。で、一度死んだ人の云う事を聴いた上は、身をその
為
(
す
)
るがままに任したというものだ。
耳無芳一の話
(新字新仮名)
/
小泉八雲
(著)
ただ
俯向
(
うつむ
)
いて
呼吸
(
いき
)
を呑んでいると、貴婦人は
冷
(
ひやや
)
かに笑って又
彼方
(
あなた
)
へ
向直
(
むきなお
)
るかと思う間もなく、室内は再び
闇
(
くら
)
くなって
其
(
そ
)
の姿も消え失せた、夢でない、
幻影
(
まぼろし
)
でない
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……その
幻影
(
まぼろし
)
の最初に見え出したのは、赤茶気た
安全燈
(
ラムプ
)
の光りに照し出された岩壁の一部分であった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
敷布
(
シーツ
)
が落ちた。『イワーシ!』とピドールカが叫んで駈け寄つた。すると
幻影
(
まぼろし
)
は足の先から頭の天辺まで、全身血まみれになつて、家ぢゆうを赤い光りで照らした……。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:04 イワン・クパーラの前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
歌舞伎芝居へ出て来るような時代めかしい
身扮
(
みなり
)
や、政信の絵から抜け出したような、涼しい眼、豊かな頬、紅の唇の
幻影
(
まぼろし
)
が、次第になつかしいものにさえ変って行きます。
新奇談クラブ:03 第三夜 お化け若衆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夕景に成て空が澄み渡ると、金星のかゞやく下に
幻影
(
まぼろし
)
のやうな不二が浮びます。夏の消息に
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
一夜
時頼
(
ときより
)
、
更
(
かう
)
闌
(
た
)
けて尚ほ眠りもせず、意中の
幻影
(
まぼろし
)
を追ひながら、爲す事もなく茫然として机に
憑
(
よ
)
り居しが、越し方、行末の事、
端
(
はし
)
なく胸に浮び、今の我身の有樣に引き
比
(
くら
)
べて
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
自分の眼には
先
(
まづ
)
烟
(
けむり
)
の
籠
(
こも
)
つた、
厭
(
いや
)
に
蒸熱
(
むしあつ
)
い空気を
透
(
とほ
)
して、薄暗い古風な
大洋燈
(
おほランプ
)
の下に、一場の
凄
(
すさま
)
じい光景が
幻影
(
まぼろし
)
の如く映つたので、中央の柱の傍に座を占めて居る一人の
中老漢
(
ちゆうおやぢ
)
に
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
そうして、その時はきっと、あの古びた
街
(
まち
)
の
幻影
(
まぼろし
)
をお泛かべ下さいますよう……。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
其と同時に、土方や職人や商人や百姓や工女や教師や吏員や學生や、または小ツぽけな生徒などが、何れも
憔
(
いぢけ
)
た姿、
惶々
(
くわう/\
)
とした樣子で、
幻影
(
まぼろし
)
のやうに霧の中をうごめいて行くのが眼に映る。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「なに
幻影
(
まぼろし
)
の後尾燈」「なに
幻影
(
まぼろし
)
の戀人を」に通ず。掛ケ詞。
氷島
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「もう一つ
幻影
(
まぼろし
)
を見せて上げるのだ!」と、幽霊は叫んだ。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
ながい時間のあひだ私の見つめてゐた
幻影
(
まぼろし
)
駱駝の瘤にまたがつて
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
幻影
(
まぼろし
)
ふかき
生命
(
いのち
)
の香をたづねよ。
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
人ひとり
幻影
(
まぼろし
)
に殺したる。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
か弱い
幻影
(
まぼろし
)
が眠つてゐる
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
青空に真白く昇る
幻影
(
まぼろし
)
の
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
時候
(
じこう
)
と、
時
(
とき
)
と、
光線
(
くわうせん
)
の、
微妙
(
びめう
)
な
配合
(
はいがふ
)
によつて、しかも、
品行
(
ひんかう
)
の
方正
(
はうせい
)
なるものにのみあらはるゝ
幻影
(
まぼろし
)
だと、
宿
(
やど
)
の
風呂番
(
ふろばん
)
の(
信
(
しん
)
さん)が
言
(
い
)
つた。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……ウィリアムは手に下げたるクララの金毛を三たび盾に向って振りながら「盾! 最後の望は
幻影
(
まぼろし
)
の盾にある」と叫んだ。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
往来
(
ゆきき
)
の人や車が
幻影
(
まぼろし
)
のように現われては
幻影
(
まぼろし
)
のように霧のうちに消えてゆく。自分はこんな晩に
大路
(
おおじ
)
を歩くことが好きで。
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
さまざまな栄耀栄華の
幻影
(
まぼろし
)
が後から後からと頭にちらついた。が、詮じつめると、どれもこれも
欠点
(
あら
)
があって面白くなかった。その度ごとに彼は肩をゆすぶって
幻想
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
何とも形容の出来ない気味の悪い
幻影
(
まぼろし
)
が、アリアリと見えはじめているのに気が付いたのであった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
悩ましいおげんの眼には、何処までが待ちわびた自分を本当に迎えに来てくれたもので、何処までが夢の中に消えていくような親戚の
幻影
(
まぼろし
)
であるのか、その差別もつけかねた。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「そなたも見たのかの、恐ろしい
幻影
(
まぼろし
)
を?」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
幻影
(
まぼろし
)
のように姿を掻き消してしまった。
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
さうしてその碎け飛ぶ
幻影
(
まぼろし
)
駱駝の瘤にまたがつて
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
嗚呼、ここに
幻影
(
まぼろし
)
たえて
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
蒼き火の光なき
幻影
(
まぼろし
)
。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
なに
幻影
(
まぼろし
)
の後尾燈
氷島
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
はや、
幻影
(
まぼろし
)
は
消
(
き
)
えつゝ、
園
(
その
)
は
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に、一
坐
(
ざ
)
、
藤
(
ふじ
)
つゝじを
鏤
(
ちりば
)
めた、
大巌
(
おほいは
)
の
根
(
ね
)
に、
藍
(
あい
)
の
如
(
ごと
)
き
水
(
みづ
)
に
臨
(
のぞ
)
むで、
足
(
あし
)
は、めぐらした
柵
(
さく
)
を
越
(
こ
)
えたのを
見出
(
みいだ
)
した。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そんな時に限って、彼女の意識は何時でも
朦朧
(
もうろう
)
として夢よりも分別がなかった。
瞳孔
(
どうこう
)
が大きく開いていた。外界はただ
幻影
(
まぼろし
)
のように映るらしかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
丘の下で轢き殺されそうになっている男の、おそろしい
幻影
(
まぼろし
)
ばかりが目先にちらついた。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
そうしてその
幻影
(
まぼろし
)
が、福太郎にとって全く、意外千万な、深刻、
悽愴
(
せいそう
)
を極めた光景を描きあらわしつつ、西洋物のフィルムのようにヒッソリと、音もなく移りかわって行くのを
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
半紙程の大きさの紙に、昔の人の眼に映った
幻影
(
まぼろし
)
が極く
粗
(
あら
)
い木版で
刷
(
す
)
ってある。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
幻影
(
まぼろし
)
なれば觸れがたく
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
五年
前
(
ぜん
)
、六月六日の
夜
(
よ
)
であった。明直にいえば、それが、うぐい亭のお藻代が、白い手の
幻影
(
まぼろし
)
になる
首途
(
かどで
)
であった。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中には
緋鯉
(
ひごい
)
の影があちこちと動いた。濁った水の底を
幻影
(
まぼろし
)
のように赤くするその
魚
(
うお
)
を健三は是非捕りたいと思った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その紫色の陰影の中に、手足を
蠢
(
うごめ
)
かして
藻掻
(
もが
)
いている
孩児
(
あかんぼ
)
の
幻影
(
まぼろし
)
を見た。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それを聞くと、私は再び斬首台の
幻影
(
まぼろし
)
に悩まされるようになりました。
自責
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
“幻影”の意味
《名詞》
幻 影(げんえい)
実在しないものが実在するかのように見えるもの。
心の中に描き出される形。
(出典:Wiktionary)
幻
常用漢字
中学
部首:⼳
4画
影
常用漢字
中学
部首:⼺
15画
“幻”で始まる語句
幻
幻象
幻想
幻燈
幻覚
幻滅
幻像
幻術
幻想的
幻術師