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寧
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むしろ
ふりがな文庫
“
寧
(
むしろ
)” の例文
わたくしを以て虎威を借る狐にあらずば
晏子
(
あんし
)
の車を駆る
御者
(
ぎょしゃ
)
となすかも知れない。わたくしは
寧
(
むしろ
)
欣然として此の嘲を受けるであろう。
木犀の花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
どうぞ
是非
(
ぜひ
)
一つ
聴
(
き
)
いて
頂
(
いただ
)
きたい、と
云
(
い
)
うのは、
実
(
じつ
)
はそう
云
(
い
)
う
訳
(
わけ
)
であるから、
寧
(
むしろ
)
君
(
きみ
)
は
病院
(
びょういん
)
に
入
(
はい
)
られた
方
(
ほう
)
が
得策
(
とくさく
)
であろうと
考
(
かんが
)
えたのです。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
たれ・いつ・なにが、其の否定文から引き出されて示す肯定法の古い用語例は、
寧
(
むしろ
)
、超経験の空想を対象にして居る様にも見える。
妣が国へ・常世へ
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
今は儂にとりて
着物
(
きもの
)
の如く、
寧
(
むしろ
)
皮膚
(
ひふ
)
の如く、居れば安く、離るれば苦しく、之を失う場合を想像するに
堪
(
た
)
えぬ程愛着を生じて来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
尤
(
もつと
)
も結ばれたと云つても、玉屋の二階で遇ふだけで、互に往来はしなかつたらしい。津藤は酒を一滴も飲まないが、禅超は
寧
(
むしろ
)
、大酒家である。
孤独地獄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
馬鹿馬鹿しいそんなことがあるものかと、一方では
寧
(
むしろ
)
ふき出し度い程
滑稽
(
こっけい
)
な感じもするのだけれど、それがあながち滑稽でない様にも思われる。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
夫
(
そ
)
れほど
別
(
わか
)
れるがお
嫌
(
い
)
やかと
背
(
せ
)
を
撫
(
な
)
せられて
默頭
(
うな
)
づく
可愛
(
かあい
)
さ、三
年目
(
ねんめ
)
の
今日
(
けふ
)
今
(
いま
)
さらに
寧
(
むしろ
)
いつもの
愁
(
つ
)
らきが
増
(
ま
)
しなり。
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
この人達の耳にも、死刑になると云う話がもう聞えたので、中には手を
束
(
つか
)
ねて
刃
(
やいば
)
を受けるよりは、
寧
(
むしろ
)
フランス軍艦に切り込んで死のうと云ったものがある。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自分は
王侯
(
わうこう
)
の
寵愛
(
ちようあい
)
に依ツて馬車に乗ツてゐる
狆
(
ちん
)
よりも、
寧
(
むしろ
)
自由に野をのさばツて歩くむく
犬
(
いぬ
)
になりたい。自分は自分の力によツて自分の存立を保證する。自體自分には親が無い。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
だが、ときどきにもせよ、そういう一室に閉じ籠れるのは
羨
(
うらやま
)
しい。
寧
(
むしろ
)
ろ
嫉
(
ねた
)
ましい。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
土器
(
どき
)
の
形状
(
けいじよう
)
の爲に種々の
意匠
(
いせう
)
を廻らし、土器の紋樣の爲に
幾多
(
いくた
)
の圖案を
工夫
(
くふう
)
せしが
如
(
ごと
)
きは土器
製造者
(
せいざうしや
)
の心中餘裕有りしを知るに足るべく、土器
使用者
(
しやうしや
)
の性質
寧
(
むしろ
)
沈着
(
ちんちやく
)
なりしを察するに足るべし。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
成功し業蹟をたてた人の真の価値は
寧
(
むしろ
)
世間にその価値が認められてから後、その人がどんな態度で周囲から与えられる尊敬や名誉やそれに伴う世間的な利益に処して行くかというところにこそ
キュリー夫人の命の焔
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
否
(
あらず
)
、
寧
(
むしろ
)
われはおほわだの波うちぎはに夢みむ。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
寧
(
むしろ
)
此力が異常にはたらいている為に、ああした遥かなと言っても遥か過ぎる時代に、あれだけの作物が出来たのだと言うことが出来る。
反省の文学源氏物語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
女の言葉遣いはその態度と共に、わたくしの商売が世間を憚るものと推定せられてから、
狎昵
(
こうじつ
)
の
境
(
さかい
)
を越えて
寧
(
むしろ
)
放濫
(
ほうらん
)
に走る嫌いがあった。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
斯う思いながら縁から見て居ると、
頭上
(
ずじょう
)
の日はカン/\照りながら、西の方から涼しいと云うより
寧
(
むしろ
)
冷
(
つめ
)
たい気が
吻々
(
ふつふつ
)
と吹っかけて来る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
何卒
(
どうぞ
)
是非
(
ぜひ
)
一つ
聽
(
き
)
いて
頂
(
いたゞ
)
きたい、と
云
(
い
)
ふのは、
實
(
じつ
)
は
然云
(
さうい
)
ふ
譯
(
わけ
)
であるから、
寧
(
むしろ
)
君
(
きみ
)
は
病院
(
びやうゐん
)
に
入
(
はひ
)
られた
方
(
はう
)
が
得策
(
とくさく
)
であらうと
考
(
かんが
)
へたのです。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
が、痩せてはゐるものの骨組みのしつかりした、
寧
(
むしろ
)
いかついと云ふ体格で、皮のたるんだ手や足にも、どこかまだ老年に抵抗する底力が残つてゐる。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
兎に角私の翻訳はある計画を立てて、それに由って着々実行して行くと云うよりは、
寧
(
むしろ
)
水到り渠成ると云う風に出来るに任せて遣っているのだから、凡例にもなんにもならぬわけである。
訳本ファウストについて
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
なれどもお
厭
(
いや
)
ならばお
厭
(
いや
)
にて、
寧
(
むしろ
)
、
斷然
(
さつぱり
)
、
目通
(
めどほ
)
りも
厭
(
いや
)
やなれば
疾
(
と
)
く
此處
(
こヽ
)
を
去
(
い
)
ねかし、とでも
發言
(
あり
)
て、いよ/\
成
(
な
)
るまじき
事
(
こと
)
と
知
(
し
)
らば
其上
(
そのうへ
)
に
覺悟
(
かくご
)
もあり、
斯
(
か
)
くまでの
思
(
おも
)
ひ
何
(
なん
)
としても
消
(
き
)
ゆる
筈
(
はず
)
なけれど
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
否
(
あらず
)
、
寧
(
むしろ
)
われはおほわだの波うちぎはに夢みむ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
白い
胸掛
(
むねかけ
)
をした鶴子は、
寧
(
むしろ
)
其美しきを
撰
(
えら
)
んで
摘
(
つ
)
み且摘み、小さな手に持ち切れぬ程になったのを母の手に
預
(
あず
)
けて、また盛に摘んで居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
さうして、此等の村が、皆其々分岐の歴史よりも、
寧
(
むしろ
)
互に本氏となり得る様な自由な伝承を伝へた叙事詩を、持つて居たらしいのである。
日本文学の発生
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
わかり切った事に今更らしく理窟をつけ論文を書き
演舌
(
えんぜつ
)
をなす天下泰平の遊戯冗談もここに至って窮状
寧
(
むしろ
)
憐れまずんばあらず。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
従つて、岐阜提灯をヴエランダにぶら下げたのも、先生の好みと云ふよりは、
寧
(
むしろ
)
、奥さんの日本趣味が、一端を現したものと見て、然る可きであらう。
手巾
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
朝夕
(
ちょうせき
)
平穏な時がなくなって、始終興奮している。
苛々
(
いらいら
)
したような
起居振舞
(
たちいふるまい
)
をする。それにいつものような発揚の状態になって、
饒舌
(
おしゃべり
)
をすることは絶えて無い。
寧
(
むしろ
)
沈黙勝だと云っても好い。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
赤彦の死は、次の気運の促しになるのではあるまいか。いや
寧
(
むしろ
)
、それの暗示の、
寂
(
しず
)
かな姿を示したものと見るべきなのだろう。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
翁の街頭に
佇立
(
たたず
)
むのは約束した人の来るのを待つためばかりではない。
寧
(
むしろ
)
これを利用して街上の光景を眺めることを喜んでいたからである。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
是
素
(
もと
)
より予の善く忍び得る所にあらず。予は
寧
(
むしろ
)
、予自身を殺すの、遙に予が精神的破産に
勝
(
まさ
)
れるを信ずるものなり。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「身殲固信百無知。那有浮生一念遺。目下除非存妹姪。奈何歓笑永参差。」わたくしは始て読んで
瞿然
(
くぜん
)
とした。前半は哲学者の口吻と謂はむよりは、
寧
(
むしろ
)
万有学者の口吻と謂ふべきである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
好忠の無知は
寧
(
むしろ
)
、無識といふ方に属すべきものであつた。形式及び、言語の制約、聯想上の特別な約束、さうした物の出来かけた時代であつた。
女房文学から隠者文学へ:後期王朝文学史
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
凡ソ事ハ名実
相副
(
あいそ
)
フヲ貴ブ。
惟
(
これ
)
集ハ則然ラズ。
寧
(
むしろ
)
名ニ反シテ実ニ従フ者ナリ。然リトイヘドモ余コレヲ能クストイフニ非ラズ。願ハクハ学バン矣。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
又信ず。予が殺人の動機なるものは、その発生の当初より、断じて単なる嫉妬の情にあらずして、
寧
(
むしろ
)
不義を
懲
(
こら
)
し不正を除かんとする道徳的憤激に存せし事を。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今より回顧して見れば、奇異の感がするが、汽船に乗るは屈従である、
寧
(
むしろ
)
地位を賭しても乗ることを辞するが好いと、先生も真面目に考へ、わたくし共も真面目にこれに賛同したのである。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そこまで信仰においつめられたと言うよりも
寧
(
むしろ
)
、自ら
霊
(
たま
)
のよるべをつきとめて、そこに立ち到ったのだと言う外はない。
山越しの阿弥陀像の画因
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
自分は今日でも猶、氏の作品を読む機会があると、一字一句の意味よりも、
寧
(
むしろ
)
その流れて尽きない文章のリズムから、半ば生理的な快感を感じる事が度々ある。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この不安と
疑懼
(
ぎく
)
の念は道徳的反省の後に起るのではなくて、
寧
(
むしろ
)
生理的に
因
(
よ
)
るものと見ねばならない。
噂ばなし
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
榛軒は解剖することを非としたのではなく、
寧
(
むしろ
)
屡
(
しば/\
)
解剖することを非とした。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
此伝宣の詔旨——より
寧
(
むしろ
)
、覆奏——は、分化して宣命に進むものと、ある呪言の本縁を詳しく人に聴かせる叙事詩(物語)に向ふものとが出来て来た。
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
それを、実際、あすこの囚人はやつてゐるのですから、自殺をするものゝないのが、
寧
(
むしろ
)
、不思議な位でせう。そこへ行つたのです、私の取押さへた、あの信号兵は。
猿
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
寧
(
むしろ
)
それとなくわたくしの返事を促す為に遣われたもののようにも思われたので、わたくしは「そう……。」と答えかけた言葉さえ飲み込んでしまって、唯
目容
(
まなざし
)
で応答をした。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
寧
(
むしろ
)
、日本紀の事は、古事記の出来た満二年後、和銅七年二月(続日本紀)に「従六位上紀
ノ
朝臣清人・正八位下三宅
ノ
臣藤麻呂に詔して国史を撰らしむ」
日本書と日本紀と
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
徒
(
いたづら
)
に精神的敗残者たるの生涯を送らんよりは、
寧
(
むしろ
)
チヤイルド・ハロルドの一巻を抱いて、遠く万里の孤客となり、骨を異域の土に埋むるの
遙
(
はるか
)
に慰む可きものあるを信ぜしなり。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
近年官吏の
収賄
(
しゅうわい
)
をなして捕縛せらるるもの数うるに
遑
(
いとま
)
あらず。
寧
(
むしろ
)
国法を改正して収賄を罪せざるに如かざるものの如し。道徳は時代と共に変遷するものなり。国の法令亦改めて可ならずや。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私はそんな中から、可なりほんきな正しい態度の批評を、近頃聴くことが出来て、久しぶりの喜びを感じた位である。
寧
(
むしろ
)
、素朴な意味の芸術批評でも試みればよい。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
折角だが御依頼通りになり兼ねると云ふ彼の返事は、
寧
(
むしろ
)
彼としては、
鄭重
(
ていちよう
)
を極めてゐた。すると、折返して来た手紙には、始から仕舞まで猛烈な非難の文句の外に、何一つ書いてない。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
殊にお民は
寧
(
むしろ
)
心やすい様子で、一人一人に其姓名を挙げ
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
万葉集に拠ると称して、俊頼に対抗したが、俊頼の歌風——
寧
(
むしろ
)
情調——が万葉風に感じられるのに、此は万葉の中の題目や名辞、稀には本歌をとり出したに過ぎない。
女房文学から隠者文学へ:後期王朝文学史
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
して見ると、貧病、
迭
(
かたみ
)
に至るのも、
寧
(
むしろ
)
劉にとつては、幸福と云ふべきである。
酒虫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
短歌の固定する毎に、新語を以て其を救はうとする試みが、歴史的にくり返されてゐる。其次には、珍らしい材料——
寧
(
むしろ
)
、名詞——を局部的にとりこむ事が行はれてゐる。
短歌本質成立の時代:万葉集以後の歌風の見わたし
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
寧
常用漢字
中学
部首:⼧
14画
“寧”を含む語句
寧波
安寧
康寧
常寧殿
悪丁寧
寧王
済寧
丁寧
叮寧
鄭寧
寧日
寧子
寧楽
御丁寧
寧馨児
甘寧
建寧
咸寧
土方寧
寧楽朝
...