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其儘
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そのまま
ふりがな文庫
“
其儘
(
そのまま
)” の例文
的の真ただ中に
箭鏃
(
やじり
)
のさきは触れた。女は何とすることも出来無かった。
其儘
(
そのまま
)
に死にでもするように、息を詰めるより外はなかった。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
むらむらと湧いた
肝癪
(
かんしやく
)
から私はまだ
其儘
(
そのまま
)
其處に在つた蠅叩きを取るや否や、ぴしやりとその黒い蟲のかたまりに一撃を喰はした。
樹木とその葉:14 虻と蟻と蝉と
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
閉園
(
へいえん
)
近い時刻になっても園長は帰って来られません。見ると帽子と上衣は
其儘
(
そのまま
)
で、お自宅から届いたお弁当もそっくり其儘です。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分がロダン先生の
曾
(
かつ
)
て製作された夫人の肖像に寸分
違
(
ちが
)
ひのない
方
(
かた
)
だと思つたのは、一つは髪の
結様
(
ゆひやう
)
が
其儘
(
そのまま
)
の形だつたからかも知れない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
飛騨は名に負う山国であるから、山又山の奥深く逃げ
籠
(
こも
)
った以上は、容易に
狩出
(
かりだ
)
すことも
能
(
でき
)
ないので、
余儀
(
よぎ
)
なく
其儘
(
そのまま
)
に
捨置
(
すてお
)
いた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
湯は高い岩壁の下から湧き出して、一部は家の中に導かれ、一部は
其儘
(
そのまま
)
岩の浴槽に湛えられている。湯滝なども作ってある。
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それから親身も及ばぬ介抱をして
呉
(
く
)
れたまでは好かったが、
其儘
(
そのまま
)
一歩も外に踏出させぬには、此上も無い迷惑なので有った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
それ等の文句を取って
其儘
(
そのまま
)
詠んだというのでなく、巻向川(
痛足
(
あなし
)
川)の、白く
激
(
たぎ
)
つ
水泡
(
みなわ
)
に観入して出来た表現なのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
額へ、頬へ、肩へ触った手を、その恐ろしい冷たさにゾッとして引込めると、
其儘
(
そのまま
)
寝室
(
ベッド
)
の側に
寝巻
(
パジャマ
)
の膝を突いて、讃之助は男泣きに泣き入りました。
葬送行進曲
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
だから幼時の記憶として
其儘
(
そのまま
)
を叙述していない「
夷講
(
えびすこう
)
の夜の事であった」に至って
却
(
かえ
)
って失望しようとしたのです。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二三年前には葉鶏頭が沢山出来たのを、余り憎くもない草だと思つて
其儘
(
そのまま
)
にして置くと、それ切り絶えてしまつた。
田楽豆腐
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
此には「演芸画報」に載った源之助晩年の芸談なる「青岳夜話」を
其儘
(
そのまま
)
載せてある。これには又、彼の写真として意味のあるのを相当に択んで出している。
役者の一生
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
すると母は、『お前、昼眠をせんで起きているのか、頭に悪いから
斯様
(
こんな
)
熱いのに外へは出られんから少し眠て起きれ。』といって、また
其儘
(
そのまま
)
眠ってしまった。
感覚の回生
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
踏んでいた床が、崩れ落ちて、
其儘
(
そのまま
)
底知れぬ深い
淵
(
ふち
)
へ、落ち込んで行くような、暗い頼りない心持がした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
経験するというのは事実
其儘
(
そのまま
)
に知るの意である。全く自己の細工を棄てて、事実に従うて知るのである。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
銛は
鋭
(
するど
)
き
尖端
(
せんたん
)
と槍の如き
柄
(
え
)
とより成る物なるが魚の力
強
(
つよ
)
き時は
假令
(
たとへ
)
骨に
刺
(
さ
)
さりたるも
其儘
(
そのまま
)
にて水中深く入る事も有るべく、又漁夫が
誤
(
あやま
)
つて此道具を
流
(
なが
)
す事も有るべし。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
いかで/\我命をば助けよかしと涙おとして
詫
(
わ
)
びけれど(その言語今の世の
詞
(
ことば
)
ならで、
定
(
さだ
)
かには聴取りかねしとぞ)、いといぶかしくや思ひけん、
其儘
(
そのまま
)
里へ
馳
(
は
)
せ還りて
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
例へば、
亜剌比亜
(
アラビア
)
人の形容を
其儘
(
そのまま
)
翻訳して居るのに非常に面白いものがある。男女の
抱擁
(
はうよう
)
を「
釦
(
ボタン
)
が釦の
孔
(
あな
)
に嵌まるやうに
一緒
(
いつしよ
)
になつた」と
叙
(
じよ
)
してある如き其の一つである。
リチャード・バートン訳「一千一夜物語」に就いて
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
然し人間と呼ばれる種族間に於ては、親から子に譲らるべき
其儘
(
そのまま
)
の同じものとては一ツもない。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「そりゃ私の手紙は
言文一致
(
はなし
)
で、
其儘
(
そのまま
)
誰が聞いても分る様に……」と皆まで言わぬ中に
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
久吉に
袖
(
そで
)
を引かれた時に、お幸は郵便配達夫になることを
此処
(
ここ
)
で弟と相談して見ようと思つて居たことを思ひ出しましたが、
其儘
(
そのまま
)
なつかしい母の顔のある家の中に入つて行きました。
月夜
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
随分
性急
(
せつかち
)
に申込んで来て、兎も角も信吾が帰つてからと返事して置いたのが、既に一月、
怎
(
ど
)
うしたのか
其儘
(
そのまま
)
になつて、何の音沙汰もない、自然、家でも忘られた様な
形勢
(
かたち
)
になつてゐた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
河野氏に
懇々
(
こんこん
)
訓
(
さと
)
されたぐらいでは
折角
(
せっかく
)
の思い付を止める
筈
(
はず
)
がない。其夜彼等は脱獄し海上三里を泳ぎ渡り羽田から
陸
(
おか
)
へ上がったが
其儘
(
そのまま
)
何処へ行ったものか
杳
(
よう
)
として知ることが出来なかった。
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其儘
(
そのまま
)
お
化
(
ばけ
)
にも成り兼ねない眼をして
睨
(
にら
)
み付け乍ら、
独語
(
ひとりごと
)
の様に云った。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
と一喝して、いきなり、その髪を
執
(
と
)
つて、
引摺倒
(
ひきずりたふ
)
し、
拳
(
こぶし
)
の痛くなるほど、滅茶苦茶に
撲
(
なぐ
)
つた。そして半死半生になつた女房を尻目にかけて、
其儘
(
そのまま
)
湯田中へと飛んで行つた。そして、酒……酒……酒。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
男は男で、
他
(
ひと
)
の
斯様
(
こん
)
なことには取合いたがらぬものである。匡衡は一応はただ
其儘
(
そのまま
)
に聞流そうとした。しかし右衛門は巧みに物語った。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
所詮駄目だと解つてはゐるものの村ではどうしても
其儘
(
そのまま
)
捨てておくわけにゆかぬ、村の青年會は此頃殆んどその用事のみに働いてゐる位ゐだ
熊野奈智山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
そして今にも泣き出しそうな顔をしている豊乃を
促
(
うなが
)
して、特別麻雀室の入口に立たせ、室内はすべて
其儘
(
そのまま
)
にとどめさせた。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
市郎は医師の
手当
(
てあて
)
に
因
(
よっ
)
て、幸いに蘇生したので、
既
(
すぐ
)
に
麓
(
ふもと
)
へ
舁
(
か
)
き去られていたが、安行とお杉と𤢖との
三個
(
みつ
)
の屍体は、まだ
其儘
(
そのまま
)
に枕を
駢
(
なら
)
べていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そう面白い種をあさってあるく様な閑日月もなかったから、つい
其儘
(
そのまま
)
にして居るうちに子規は死んで
仕舞
(
しま
)
った。
『吾輩は猫である』中篇自序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
半沢良平は
大怪我
(
おおけが
)
をしましたが、幸い生命には別条なく「不慮の災難」で公向きは済みましたが、
昔気質
(
むかしかたぎ
)
の小田切三也の気持は
何
(
ど
)
うも
其儘
(
そのまま
)
では済みません。
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
岩の上に積った落葉などは
其儘
(
そのまま
)
濡れ腐ってはや
半
(
なかば
)
は土に化している。本年はまだ誰も通った人は無いらしい。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
若
(
も
)
し総掛りに軍し給はゞ味方難渋仕り候はんか、今
暫時
(
しばらく
)
敵の様を御覧ありて然るべきかと申しけるに、長政
宣
(
のたま
)
ふ様、横山の城の軍急なれば、
其儘
(
そのまま
)
に見合せがたし。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
たとひ、此が継子の皇子の異図を諷したものと言ふ本文の見解を、
其儘
(
そのまま
)
にうけとつても、観照態度が確立して居なければ、此隠喩を含んだ叙景詩の姿の出来るはずはないと思ふ。
叙景詩の発生
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
併し概して言ふと、
下
(
しも
)
がかつた事も、原文が
無邪気
(
むじやき
)
に堂々と言ひ
放
(
はな
)
つてゐるのを
其儘
(
そのまま
)
訳出してあるから、近代の小説中に現はれる Love scene よりも
婬褻
(
いんせつ
)
の感を与へない。
リチャード・バートン訳「一千一夜物語」に就いて
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
久吉が暗い台所から持ち出して来た盆からは
餓
(
う
)
ゑたお幸に涙を
零
(
こぼ
)
させる程の力のある甘い
匂
(
にほ
)
ひが立つて居ました。お幸は弟の好意を
其儘
(
そのまま
)
受けて物も云はずその焼芋を食べてしまひました。
月夜
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
其儘
(
そのまま
)
消えて無くなって了っても好いと思った。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
余の話の声など立てて妨ぐればこそ、感涙を流して謹み聞けるものを
打擲
(
ちょうちゃく
)
するは、と人々も苦りきって、座もしらけて
其儘
(
そのまま
)
になって
終
(
しま
)
った。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
若
(
も
)
し
彼奴
(
あいつ
)
が不親切な奴で、金を貰いながら
其儘
(
そのまま
)
どこへか行って
了
(
しま
)
ったら
何
(
ど
)
うだろう。いや、
真逆
(
まさか
)
にそんな事もあるまい。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
其儘
(
そのまま
)
その窓を乘り越えて溪端の岩の上にでも立ちたいほどの身體のほてりである。然し、流石に雪解の風は冷たい。
湯槽の朝
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
ここに出ている一頭のニシキヘビの元気が無いことから、
食餌
(
しょくじ
)
の注意などを云って下すって
其儘
(
そのまま
)
出てゆかれたんです
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人から佐久間艇長の遺書の濡れたのを
其儘
(
そのまま
)
写真版にしたのを貰つて、床の上で其名文を読み返して見て「文芸とヒロイツク」と云ふ一篇が書きたくなつた。
文芸とヒロイツク
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
其儘
(
そのまま
)
ブラジルへ行ってしまったか、それともそっと太平洋にでも身を沈めたか、そんな事も考えられない事はありませんが、それよりも確実性のあるのは
奇談クラブ〔戦後版〕:17 白髪の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
珍らしいので
其儘
(
そのまま
)
紙に包んで置いたが、翌日劒沢の岩屋に着いた時ふと気が付いて開けて見ると、干からびて生体も無かったので、残念ながら棄てて
了
(
しま
)
った。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
定基はこれを見て、いやに思った。が、それは半途で止める訳にはゆかぬから、自ら堪えて
其儘
(
そのまま
)
に済ませて終った。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこで今、
伝馬町
(
てんまちょう
)
の薬屋で
瘡毒
(
そうどく
)
一切
(
いっさい
)
の
妙薬
(
みょうやく
)
といふ
赤膏薬
(
あかこうやく
)
を買つて来たのだが、そこで直ぐに貼つてしまへば
好
(
い
)
いのに、極まりを悪がつて
其儘
(
そのまま
)
に持つてゐるのだ。
赤膏薬
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しつかり者のこの老婆の言ふことをば何故だが
其儘
(
そのまま
)
信用したかつた。そして若しもの事のあつた時の用意だけをしておいて山へ逃げるのを暫く見合はすことにした。
樹木とその葉:34 地震日記
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
あまりの騒ぎに
顛倒
(
てんとう
)
して、殺された主人の弟岩三郎の死骸も
其儘
(
そのまま
)
、客の田屋甚左衛門と、浪人篠崎小平が帰っただけで、あとの人数は昨晩のままに残って居ります。
銭形平次捕物控:245 春宵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
九時五分尾根の一角に達して、
其儘
(
そのまま
)
石楠の多い山の背を登って行くと、栂、
樺
(
かんば
)
などの大木が出て来る。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
今入ったばかりの松ヶ谷学士がよろよろと入口へよろめき出て来ると、パタリと
其儘
(
そのまま
)
斃
(
たお
)
れた。
惨劇
(
さんげき
)
の室の前に集った人の中から、マスクをかけた長身の男が飛び出して
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
其
漢検準1級
部首:⼋
8画
儘
漢検準1級
部首:⼈
16画
“其”で始まる語句
其
其処
其方
其處
其様
其許
其奴
其所
其後
其中