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しさい
ふりがな文庫
“
仔細
(
しさい
)” の例文
「今朝の
味噌汁
(
みそしる
)
が惡うございました。飯にも香の物にも
仔細
(
しさい
)
はなかつた樣子で、味噌汁を食はないものは何ともございませんが——」
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
改められ、死罪となりましたに就き、どのような
仔細
(
しさい
)
がございましたものか、また……死に際のことなどお伺い申したいと存じまして
城中の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あの小笛には
仔細
(
しさい
)
があって、余人にはただの小笛にすぎないが、私にとっては、すべての宝とかえることも敢て辞さないものなのだ。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
だから文学者の仕事もこの分化発展につれてだんだんと、
朦朧
(
もうろう
)
たるものを明暸に意識し、意識したるものを
仔細
(
しさい
)
に区別して行きます。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうして時々
仔細
(
しさい
)
らしく頭を動かしてあちらを向いたりこちらを向いたり、
仰向
(
あおむ
)
いたり
俯向
(
うつむ
)
いたりするのが実に可愛い見物である。
鴉と唱歌
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
(笠を取る。)
仔細
(
しさい
)
もなしに喧嘩を売る、おのれ等のやうなならずものが八百八町にはびこればこそ、
公方様
(
くばうさま
)
お膝元が騒がしいのぢや。
番町皿屋敷
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その頃
村山龍平
(
むらやまりゅうへい
)
の『国会新聞』てのがあって、幸田露伴と
石橋忍月
(
いしばしにんげつ
)
とが文芸部を担任していたが、
仔細
(
しさい
)
あって忍月が退社するので
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ふりかえって主人に掛軸の因縁などを、にやにや笑ったりせず、
仔細
(
しさい
)
らしい顔をして尋ねると、主人はさらに大いに喜ぶのである。
不審庵
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
どう思ったか
毛利
(
もうり
)
先生が、その古物の
山高帽
(
やまたかぼう
)
を頂いて、例の紫の
襟飾
(
ネクタイ
)
へ
仔細
(
しさい
)
らしく手をやったまま、悠然として小さな体を現した。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
……お前さんに漕げるかい、と
覚束
(
おぼつか
)
なさに念を押すと、浅くて棹が届くのだから
仔細
(
しさい
)
ない。ただ、一ケ所底の知れない
深水
(
ふかみず
)
の穴がある。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして
仔細
(
しさい
)
にその
錯綜
(
さくそう
)
の跡を検すれば、二語は久しく併存し、その択一は単なる小区域の流行であったことが知れるからである。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「まあ、何がどうしたことやら、
仔細
(
しさい
)
も聞かずに去状もらいましたと
親許
(
おやもと
)
へ戻る女がありましょうか、お戯れにも程がありまする」
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「微行も微行、一切、人目を怖れる
密
(
ひそ
)
かな途中だ。わけてここは諸国の者の出入りの
繁
(
はげ
)
しい港町。はやくせい。
仔細
(
しさい
)
はあとで話すから」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
源「黙れ左様な無礼な事を申して、
若
(
も
)
し用があったらどう致す、イヤサ御主人がお留守でも用の足りる
仔細
(
しさい
)
があったら
何
(
ど
)
うする積りだ」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
仔細
(
しさい
)
を
訊
(
たず
)
ねている余裕はない。ともかく助け出さなければならぬ。四人の書生が手分けをして、一郎救い出しの作業がはじまった。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
したが、こゝな
浮氣者
(
うはきもの
)
、ま、
予
(
わし
)
と一しょに
來
(
き
)
やれ、
仔細
(
しさい
)
あって
助力
(
ぢょりき
)
せう、……
此
(
この
)
縁組
(
えんぐみ
)
が
原
(
もと
)
で
兩家
(
りゃうけ
)
の
確執
(
かくしつ
)
を
和睦
(
わぼく
)
に
變
(
か
)
へまいものでもない。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
たしかに河の出口にある古びた街であったけれども、
仔細
(
しさい
)
に見れば海からは少からず逆のぼって、
鮭
(
さけ
)
や
鱒
(
ます
)
の漁場から川上になっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そして事務長がはいって来た時途切らした話の糸口をみごとに忘れずに拾い上げて、東京を
発
(
た
)
った時の模様をまた
仔細
(
しさい
)
に話しつづけた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
勿論一人一人を
仔細
(
しさい
)
に観るなら
各
(
おの/\
)
の身分や趣味が
異
(
ちが
)
ふ
儘
(
まゝ
)
に優劣はあらうが、概して
瀟洒
(
あつさり
)
と
都雅
(
みやび
)
であることは
他
(
た
)
国人の及ぶ所で無からう。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
これには何か深い
仔細
(
しさい
)
がなくてはかなわぬと先刻から眼惹き袖引き聴耳立てていた
周囲
(
まわり
)
の一同、ここぞとばかりに
犇々
(
ひしひし
)
と取り巻いてくる。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
母は十分に口が
利
(
き
)
けなくなッたので仕方なく手真似で
仔細
(
しさい
)
を告げ知らせた。告げ知らせると平太の顔はたちまちに色が変わッた。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
今
(
いま
)
此
(
この
)
新造巡洋艦
(
しんざうじゆんやうかん
)
に
君
(
きみ
)
の
愛兒
(
あいじ
)
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
の
名
(
な
)
と
何
(
なに
)
かの
因縁
(
ゐんねん
)
ある
如
(
ごと
)
く「
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
」と
命名
(
めいめい
)
されて
居
(
を
)
るのは
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
い
仔細
(
しさい
)
のあるではありませんか。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
貫一は知らざる如く、
彼方
(
あなた
)
を向きて答へず。
仔細
(
しさい
)
こそあれとは覚ゆれど、例のこの人の無愛想よ、と満枝は
傍
(
よそ
)
に見つつも
憫
(
あはれ
)
に
可笑
(
をかし
)
かりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼女は、幸福そのものの顔になって、いまはなんの臆するところもなく、そのひとつひとつの男の顔を、つぎつぎと
仔細
(
しさい
)
にみつめつづけた。
箱の中のあなた
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
教誨師が
仔細
(
しさい
)
らしくうなずいて帰ったあとで、
掃除夫
(
そうじふ
)
の仕事をここでやっている、同じ病人の三十番が太田に
訊
(
き
)
くのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
久野は何だか自分の艇も誰れかに
偵察
(
ていさつ
)
されてるような気がして、
仔細
(
しさい
)
に両岸を望遠鏡で調べた。しかしそれらしいものは誰れもいなかった。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
「ちと
仔細
(
しさい
)
あって、宮内殿に我々夫婦がきたということは知らせたくない。それに訪れるとしても帰途でござるから、沙汰なしに願いたい」
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
信一郎は、群衆を擦り
脱
(
ぬ
)
けて、馬車の止まった方へ近づいた。次ぎ/\に、馬車を降りる一門の人々を、
仔細
(
しさい
)
に注視しようとしたのである。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
なお
仔細
(
しさい
)
に観察すると、チベット政府部内でも真実にロシアに対して心を寄せて居るのは法王と長官宰相シャーター二人くらいの者である。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
これが私の最初の弟子で、弟子中では最も古参であります。国吉は後に
仔細
(
しさい
)
あって旧姓山本に復し山本瑞雲と号したのです。
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
禽獣
(
きんじゅう
)
魚介木石の生活をも蔑視してはならぬ、これらのものが各自それぞれの生活をいとなむありさまを
仔細
(
しさい
)
に観察するのは
『グリム童話集』序
(新字新仮名)
/
金田鬼一
(著)
もっとしかつめらしい顔をして、
仔細
(
しさい
)
らしい事を言おうとするのである。だから、書かぬ先から、余計な事だと言われそうな気おくれがする。
山越しの阿弥陀像の画因
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
どうしたのかと
仔細
(
しさい
)
に博士の身体を見れば、ネクタイが跳ねあがったようにソフトカラーから飛びだして
頸部
(
けいぶ
)
にいたいたしく喰い入っている。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その顔に
仔細
(
しさい
)
らしい表情を浮かべて、上唇を下唇でかくしたまま、勝負がつづいている間じゅう、その
容子
(
ようす
)
を変えなかった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
願ひ候といふに常樂院は兩人の
言葉
(
ことば
)
を聞て
打笑乍
(
うちゑみなが
)
ら申けるは成程
仔細
(
しさい
)
を
知
(
しら
)
ねば
驚
(
おどろ
)
くも無理ならず
然
(
され
)
ども
御表札
(
ごへうさつ
)
と
御紋付
(
ごもんつき
)
の幕を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
無断退去は不都合とは申せ、それにも
仔細
(
しさい
)
のござること、しかし
細々
(
こまごま
)
申さずともそこは賢明の地丸殿のこと、ご推量くださるでござりましょう
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ええ、そんな恐ろしい眼の色をせぬものよ——最前からまだ話もしなかったが、この鐘には、
仔細
(
しさい
)
あって悪蛇の執念が久遠にかかっているのだ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
これも
仔細
(
しさい
)
に眺めていると、種族の知性と論理の国際性との分別し難い暗黒面から立ち昇っている
濛濛
(
もうもう
)
とした煙であった。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そしてミツちやんが、わあんと泣き出しても、みむきもせず、弓の
工合
(
ぐあひ
)
が悪くなりはしなかつたかどうか、
仔細
(
しさい
)
に調べた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
幸子をテラスの明るい所へ引っ張り出して疾患部を
仔細
(
しさい
)
に見、ふん、これは蚋やないで、
南京虫
(
ナンキンむし
)
やで、と云うのであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
たとへ人の偶然事のみとして雲煙看過するの事件も、
仔細
(
しさい
)
に観来れば奥底必ず不動の
磐坐
(
ばんざ
)
のあるありて、未だかの長汀波上の
蜃気楼台
(
しんきろうだい
)
の
如
(
し
)
からず。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
片足を水に入れては躊躇し、また片足を水につけては首をひねり、何やらすこぶる煩悶の
体
(
てい
)
に見えるのは、実に次のような
仔細
(
しさい
)
のある事であった。
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
野性に圧された重たい麻衣の上に少しばかりの
柔靭
(
じゅうじん
)
さが加わったとすれば、あの不思議な縫糸と自然な運針とを
仔細
(
しさい
)
にあらためて見ねばならない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
一週間ほど経って、
誂
(
あつら
)
えた靴が届けられた。と、父はその靴を手に取って、
仔細
(
しさい
)
にその出来をながめながら賢に言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「別に
仔細
(
しさい
)
はなかろうとは思いますがそう申せば大分お帰りがお遅いようだ。事によったらお屋敷で
御酒
(
ごしゅ
)
でも召上ってるのでは
御
(
ご
)
ざいますまいか。」
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
要は、料理のために料理のことを知る、それよりほかに手はない。そうしてほかの先生を
仔細
(
しさい
)
に検討してみるといい。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
その細かな白い花を
仔細
(
しさい
)
に見ていたが、しまいには、なんということもなしに、そのふっさりと垂れた一と塊りを掌のうえに載せたりしてみていた。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
殊
(
こと
)
に俳句というものが起ってからは歳時記というものが段々発達して来て、四季の現れを
仔細
(
しさい
)
に記録しております。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
はにかんで目を見合せぬようにしたり、返事を手間取らせたりすることは最初にもあったが、今晩なんぞの素振には何か特別な
仔細
(
しさい
)
がありそうである。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
また課長殿に物など言懸けられた時は、まず忙わしく席を離れ、
仔細
(
しさい
)
らしく小首を傾けて
謹
(
つつしん
)
で承り、承り終ッてさて
莞爾
(
にっこり
)
微笑して
恭
(
うやうや
)
しく御返答申上る。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
仔
漢検準1級
部首:⼈
5画
細
常用漢字
小2
部首:⽷
11画
“仔細”で始まる語句
仔細無之