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たお
ふりがな文庫
“
仆
(
たお
)” の例文
村の人は塚穴の口で火を
焼
(
た
)
いて煙をその中へ入れた。野猪は苦しくなったのか外へ出てきた。待ち構えていた村の人はそれを
仆
(
たお
)
した。
殺神記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
血を吐いた余は土俵の上に
仆
(
たお
)
れた相撲と同じ事であった。自活のために戦う勇気は無論、戦わねば死ぬという意識さえ持たなかった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ちょっと聞くといかにも個人的であるが、しからばとて国が
仆
(
たお
)
れても自分の
炉辺
(
ろへん
)
に
差支
(
さしつか
)
えなければ平気でいるかというとそうでない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
政子は、黙ってうなずきながら、露や草の実に
汚
(
まみ
)
れた身を、そのまま、
仆
(
たお
)
れている
朽木
(
くちぎ
)
へ腰かけて、もう明け近い
海面
(
うなづら
)
に向けていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さすがの張献忠もこれには驚いて地に
仆
(
たお
)
れた。その以来、かれは其の居を北の城楼へ移して、ふたたび殿中には立ち入らなかった。
中国怪奇小説集:15 池北偶談(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
楢
(
なら
)
や
櫟
(
くぬぎ
)
を切り
仆
(
たお
)
して椎茸のぼた木を作る。山葵や椎茸にはどんな水や空気や光線が必要か彼らよりよく知っているものはないのだ。
温泉
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
二人は室の中にはいりながら呆然として居ましたが、この時丁度その室の上あたりの二階の座敷で人が
仆
(
たお
)
れたような音がしました。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
熔融炉の側には、松の樹を
仆
(
たお
)
したような
大電纜
(
だいケーブル
)
が、長々と
横
(
よこ
)
わっていたが、これは忘れられたように誰一人ついているものは無かった。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
犬ですか? 犬は何でも、御新造はもとより、私もまだ起きない内に、
鏡台
(
きょうだい
)
の前へ
仆
(
たお
)
れたまま、青い物を吐いて死んでいたんです。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大な
鋤
(
すき
)
を打込んで、身を横にして
仆
(
たお
)
れるばかりに土の塊を鋤起す。気の遠くなるような黒土の
臭気
(
におい
)
は
紛
(
ぷん
)
として、鼻を衝くのでした。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何よりもまず気遣わしい、お雪はと思う
傍
(
そば
)
に、今息を吸取られて
仆
(
たお
)
れたと同じ形になって、
生死
(
しょうじ
)
は知らず、姿ばかりはありました。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見事に二人の男を
仆
(
たお
)
してしまうと、急いで発信機のレシーバーを耳にあて暗号を打って兄を呼び出した。連絡はすぐにとられた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
アンジョーラは兵士らに叫んだ、「出て来るな!」そして一将校がその言に従わなかったので、アンジョーラはその将校を
仆
(
たお
)
してしまった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼は岸の方にむかって氷のなかに鋸で引いて溝をつくり、牝牛どもに牽かせて引き
仆
(
たお
)
し、引きずり、氷の上に引っぱりのせた。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
先
(
ま
)
ず
吾々
(
われわれ
)
は、〔残酷〕なる銃剣の下に
仆
(
たお
)
れたる斎藤内大臣、高橋大蔵大臣、渡辺教育総監に対して、深厚なる弔意を表示すべき義務を感ずる。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
ヘップリコを用いて山キを乗ッとろうとした悪人を
仆
(
たお
)
して妹夫婦をまもるために、彼は魔人の如くに力強く行動したのでした
明治開化 安吾捕物:16 その十五 赤罠
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
大人でも子供でも「クサチュカ、またやって御覧」という度に、犬は翻筋斗をしてくるくる廻って、しまいには皆に笑われながら
仆
(
たお
)
れてしまう。
犬
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
「私は広場に向って左端にいましたから、彼は右側です。そうです、彼は両手で右の脇腹を抱えながら前へ
仆
(
たお
)
れたのです」
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
今迄
半神
(
セミ・ゴッド
)
の如く見えた白人が、彼等の褐色の英雄によって
仆
(
たお
)
されたのだから。タマセセ王は海上に逃亡し、独逸の支持する政府は完全に
潰
(
つい
)
えた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
思わず岩に
躓
(
つまず
)
いてバッタリ
仆
(
たお
)
れた鳰鳥が、身を起こす間もあらばこそ、甚五衛門は追い縋って乱れた黒髪をムズと握り、初めてホッと息を吐いた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
本能的とでもいうべきだろう。
風雪
(
ふうせつ
)
がおそい来る、外敵がやって来る、傷つくものも
仆
(
たお
)
れるものも出来る。その
屍体
(
したい
)
は怪鳥めいた他動物の
餌食
(
えじき
)
になる。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
と、喜び勇んで最先に窓から飛び出したが、出たと思うと、真蒼になって這入って来て、再びそこに
仆
(
たお
)
れて終った。
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
家の吹き
潰
(
つぶ
)
さるるもの、数を知らず、堅固にして
仆
(
たお
)
れざる如き家は家根を吹き飛ばされ、一つも無難なるものなし。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
その男は満洲を渡っているとき、人知れず
苦力
(
クーリー
)
の背に封じ手を使ってみて、後からひそかに
蹤
(
つ
)
いて行くと、やはりぱったりと
仆
(
たお
)
れたまま死んだという。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そしてふらふらとそこを出て来ると
四辺
(
あたり
)
が急に暗くなって、子供の手にも支えきれず、酒屋の露地の石畳のところにぐんなり
仆
(
たお
)
れてしまったのだった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そう思うた刹那、郎女の身は、大浪にうち
仆
(
たお
)
される。浪に漂う身……衣もなく、
裳
(
も
)
もない。抱き持った等身の白玉と一つに、水の上に照り輝く
現
(
うつ
)
し
身
(
み
)
。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
その中には、いつぞや、山ノ宿の出逢いで、
呆気
(
あっけ
)
なく、
当
(
あ
)
て
仆
(
たお
)
された、あの浅草の武術家もいるに相違なかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
刀の
鞘
(
さや
)
を払って走せ向った血気の青侍二三名は、
忽
(
たちま
)
ちその大丸太の
一薙
(
ひとな
)
ぎに遇い、
脳漿
(
のうしょう
)
散乱して
仆
(
たお
)
れ伏します。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
一度咆哮すると百獣皆
懼
(
おそ
)
れるという。それがどうして
仆
(
たお
)
れるかというと体に虫が出来る。するとその猛獣が自然に仆れる。これが獅子身中の虫というのである。
東亜の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
その途端、女房はキャッと叫んだ、見るとその黒髪を
彼方
(
うしろ
)
へ
引張
(
ひっぱ
)
られる様なので、女房は右の手を
差伸
(
さしのば
)
して、自分の髪を抑えたが、その
儘
(
まま
)
其処
(
そこ
)
へ気絶して
仆
(
たお
)
れた。
因果
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
有力者といえどもついにこれを抜くあたわざるべし。もしまずその浅きものを選てこれを
芟艾
(
さんがい
)
せば、深きものも必ず孤立すること能わず。その勢ついに
自
(
おのずか
)
ら
仆
(
たお
)
れん。
教門論疑問
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
尤
(
もっと
)
も湖城、鯖江等〔井伊、間部〕威権を振う間は少し御見合わせ
成
(
な
)
されるべく候。近年の内両権
仆
(
たお
)
るべし。京師も九条公御辞職あらん〔先生
平生
(
へいぜい
)
の
口吻
(
こうふん
)
にあらず〕。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この憎むべき矢に
射貫
(
いぬ
)
かれた美しい暖い紅の胸を、この刺客の手に
仆
(
たお
)
れた
憐
(
あわ
)
れな柔かい小鳥の
骸
(
むくろ
)
を。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
蹌踉
(
よろめ
)
きて
卓子
(
ていぶる
)
に
仆
(
たお
)
れ掛り、唯口の中にて「私しでは有りません、私しでは有りません」と呟くのみ。
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
すると男は、体がどたりと椅子へ
仆
(
たお
)
れる拍子に、額が他愛もなく二度もその肘掛に突きあたった。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「継続された有限性」を継続する放浪者、「悪い無限性」を喜ぶ
悪性者
(
あくしょうもの
)
、「無窮に」追跡して
仆
(
たお
)
れないアキレウス、この種の人間だけが本当の媚態を知っているのである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
だから、戦場で
仆
(
たお
)
れたという死者の数だって、お前は大げさなことを言っているだけだろう。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
高頭君は息を
窒
(
つ
)
められて、ヒョロヒョロと
仆
(
たお
)
れた、避けようとした私はジリッと焦げ臭く
髯
(
ひげ
)
を焼かれた、
堪
(
た
)
まらなくなって天幕の外へ首を出すと、偃松の上は、
吹雨
(
しぶき
)
の柱が
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
中世の感傷は西行を種にして一つの芝居を作ったのであって、いわば
贔屓
(
ひいき
)
の引き
仆
(
たお
)
しである。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
彼れは矢張り私と同じ疾患で
仆
(
たお
)
れたが、病臥の日の中で、私へ斯ういう事を教えて呉れた。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
灰でもよいからとて
笊
(
ざる
)
に盛って帰り、沼にある
鴈
(
がん
)
に向って、「鴈の眼さ灰入れ」と連呼してその灰を蒔くと、たちまち鴈の眼に入ってこれを
仆
(
たお
)
し、爺拾い帰って汁にして食う。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
たちまちにして方々から同級生たちの姿があらわれ、横田君は
仆
(
たお
)
されて、頭を抱えて地上に横たわり、皆がとり囲んで足蹴にした。その中にはいつも柔和な人たちの顔も見えた。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ややありて最前の僧徒三人、上手の坂路より逃げまどえる哀れなる獣等のごとく走せ上り、依志子の
仆
(
たお
)
れたるを見さらに驚けるさまなりしが
怯
(
おび
)
えたる姿にて妙念の上手に立ち——
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
弘独リ走ツテ帰リ泣イテ
家慈
(
かじ
)
ニ訴フ。家慈
嗚咽
(
おえつ
)
シテ
対
(
こた
)
ヘズ。
甫
(
はじ
)
メテ十歳家慈ニ従ツテ吉田ニ至ル。
偕
(
とも
)
ニ
函嶺
(
はこね
)
ヲ
踰
(
こ
)
ユ。
方
(
まさ
)
ニ春寒シ。山雨
衣袂
(
いべい
)
ニ
滴
(
したた
)
ル。
躓
(
つまず
)
キカツ
仆
(
たお
)
ルコトシバ/\ナリ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一つは日射病のようなもので鶏冠が黒くなって
萎
(
しお
)
れて急に弱って半日位で
仆
(
たお
)
れますが何でも夏は平生鶏冠に注意して少しでも色が黒くなりかけたら
唐辛子
(
とうがらし
)
の粉を口へ割り込んで水を
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
姫は
仆
(
たお
)
れながらに、ひらりと
箏
(
こと
)
を持ってそれをうけている、
箏
(
こと
)
は斜めに切れて、
箏柱
(
ことじ
)
が
散々
(
ばらばら
)
にはずれてそこらに飛び乱れ、不思議にもそのきられた十三本の
絃
(
いと
)
の先が皆
小蛇
(
ちいさなへび
)
になって
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
刃
(
やいば
)
の音を聞いて駈けつける者のなかには、よけいなお
節介
(
せっかい
)
が飛び出さんとも限らぬ、この札を立てて、あらかじめ予防線を引いて、一方が一方を片附けるか、双方ともに
仆
(
たお
)
れるかまで
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、たちまち、彼らの一人が銃丸に当って、恐ろしい
呻
(
うめ
)
き声を
揚
(
あ
)
げた。つづいて、もう一人の方も草に
仆
(
たお
)
れた。先にやられたほうは
瀕死
(
ひんし
)
の重傷と見えて、唸り声がだんだん細ってゆく。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
父の病に
仆
(
たお
)
れたのは、それから数日立つか立たないうちだったのである。……
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「四天王の太子を捧げし
窣堵波
(
ストゥーパ
)
の側に遠からず、大なる石柱ありて、上には馬の像を作れり。
無憂
(
アショーカ
)
王の建つるところなり。後に悪竜が
霹靂
(
へきれき
)
せしがためにその柱は中より折れて地に
仆
(
たお
)
れたり」
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
仆
漢検1級
部首:⼈
4画
“仆”を含む語句
横仆
突仆
打仆
蹴仆
諸仆
共仆
射仆
引仆
野仆死
一起一仆
車声轣轆仆家翁
踢仆
費用仆
見得仆
行仆
薙仆
朽木仆
斬仆
双仆
仆木