“下卑:げび” の例文
“下卑:げび”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石7
林不忘3
岡本かの子2
中里介山2
海野十三2
“下卑:げび”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.3%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
かねさんの態度は明瞭めいりょうで落ちついて、どこにも下卑げびた家庭に育ったという面影おもかげは見えなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少しく下卑げびた話であるが、その時にわたしが劇場のなかで食わされた物をかんがえて見ると、まず餅菓子のようなものが出た。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なぜならば立派なことをいやしくも口外した以上、そう下卑げびた行の出来るはずはないから、まあ幾分か恕してやるべきである。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
新妻の友達に下卑げびていながら妙に女の気に入る医者があって主人をば精神病の患者と診断し新妻は以後主人を狂人扱いにする。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こう云う下卑げびた所に直覚の二字を濫用らんようしては済まんが、ほかに言葉がないから、やむを得ず高尚な術語を使った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母親は時々こくりこくりと居睡いねむりをしながら、鼻をつまらせて、下卑げびたその文句にれていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
真中どころにごろごろして竹の皮包みのあんころかなにかを頬張りながら、下卑げびた話をしてゲラゲラ笑っているのもあります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下足場の人ごみの中で、おそろしく下卑げびた太い声でわめき出したのが、キッカケで、そこから大混乱が起ったところです。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
角帯の人たちは、おりおり下卑げびたことを言って、みんなを笑わせようとしたが、村人たちは顔を見合わせて、かえってにがい顔をした。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
お隣の綿わたの師匠のお鶴は、平次と八五郎の顏を見ると、下卑げびしなを作り乍ら、恐ろしい勢ひで捲くし立てました。
この人の立居振舞にはどことなく下卑げびた肉感がともなうので、素子は谷村が足繁く訪ふことに好感を持たなかつた。
女体 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
支那人の呉清輝は、部屋の入口の天鵞絨びろうどのカーテンのかげから罪を犯した常習犯のように下卑げびた顔を深沢にむけてのぞかした。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
こう云う下卑げびた料簡を起さずに、一生を暮す事のできる人は、経験の足りない人かも知れないが、幸な人である。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こおろぎと蟻の話を聞いた時にも私は何ともなく蟻が下卑げびて、憎々しく、こおろぎが詩的で、美しい気がした。
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
好意的に両家の便宜を計るというよりも、ずっと下卑げびた利害心に駆られて、結婚問題を私に向けたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
津田は極端な場合のほか、自分の細君にそうした下卑げび真似まねをさせたくなかった。お延は弁解した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっさりした何々よりも今少し下卑げびて悪性のものにして下手さも深刻である場合にこの言葉が適用される。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
そう言っている母の言葉や、アクセントは、平生いつもの母とは思えないほど、下卑げびていて娼婦しょうふか何かのようになまめかしかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
みだらな仕草しぐさは平気、下卑げびた戯談はおかまひなしで、あたくしなぞ、そばにゐたたまれないやうなことが、しよつちゆうでございます。
緑の星 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
今ごろ髪を七三などに結って、下卑げび笑談口じょうだんぐちなどきいてっくりかえっているそこらのお神なぞも、鼻持ちのならないものであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
上品、下品の対立は、人事関係に基づいて更に人間の趣味そのものの性質を表明するようになり、上品とは高雅なこと、下品とは下卑げびたことを意味するようになる。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
金と性慾、何んと下卑げびたものではあるが、しかし彼は常に暗い旧家らしい奥座敷のとうむしろの上に机を据えて、毎日朝のうちは金の勘定をする事にきめていた。
下卑げびた言い草である。二、三の者は笑い声を立てたが、戸部近江之介は明白あきらかに嫌な顔をして、一そう憎悪に燃えるように、立ったまま喬之助を見下ろしている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、あざけったが、急に、乱暴な、ぞんざいな、下卑げび切ッた口調になって、
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
後は芝居の噂やら弟子共が行状みもちの噂、真に罪無き雑話を下物さかなに酒も過ぎぬほど心よく飲んで、下卑げび体裁さまではあれどとり膳睦まじく飯を喫了をは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
おいらはおまえのような下卑げびたやつとは心のみがきかたがちがっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おれはおまえのような下卑げびたやつはきらいだ」と巌がしゃもじにいった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
下卑げびた言い草だった。二、三の者は笑い声を立てたが、戸部近江は、明白あきらかに厭な顔をした。一層憎悪に燃えるように突っ起ったまま、喬之助を見下ろしていたっけ……。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは和歌と俳句とを比較して、和歌は堂上人のごとく優にやさしきもの、俳句は町人のごとく下卑げびいやしきもの、とそういう感じを抱いておったといった言葉であります。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
話があんまり下卑げびてゐるので、平次の女房のお靜も、さすがに恐れをなしたものか、熱い番茶を一杯、そつと八五郎の膝の側に滑らせて、默つてお勝手に逃げ込んでしまひました。
が、夫はその下卑げびた同僚たちに、存外親しみを持つてゐるらしかつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
眼もうだが、顏にも姿にも下町したまちにほいがあツて、語調ことばつきにしろ取廻とりまはしにしろ身ごなしにしろ表情にしろ、氣は利いてゐるが下卑げびでゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
後は芝居の噂やら弟子どもが行状みもちの噂、真に罪なき雑話を下物さかなに酒も過ぎぬほど心よく飲んで、下卑げび体裁さまではあれどとり膳むつまじく飯を喫了おわ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「人聞の悪い事を云うな、失敬な。君は実際自分でいう通りの無頼漢ぶらいかんだね。観察の下卑げびて皮肉なところから云っても、言動の無遠慮で、粗野そやなところから云っても」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勝は外を通ってる人の声を聞いても時々気疎けうといことがありますぞな。ようあんな下卑げびたことを大きな声で喋舌しゃべってげらげら笑っておられると愛想がきてしまう。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
六条子爵の場合よりも、もっともっと露骨ろこつ下卑げびている。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
唐桟たうざん揃ひの淡泊あつさりづくりに住吉張の銀煙管おとなしきは、職人らしき侠気きほひの風の言語ものいひ挙動そぶりに見えながら毫末すこし下卑げびぬ上品だち
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
——「だってあなたは、……あなたは財産のある人じゃありませんか。それをなんだってあなたは、こんな——第一こんな翼屋の、しかもこんな下卑げびた環境のところにおられるんです?」
「男の癖にお料理がうまいなんて、ずいぶん下卑げびた天才だわよ」
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その下卑げびた騎士道、偽善的なもったい振り、好んでおのれを賛美しおのれを愛する我利冷酷な徳操の化身とも言うべき、恐怖も知らないが人情も知らないその英雄、それを彼は憎みきらった。
「なんたる下卑げびた言いぐさ! うん、なんたる低劣な……」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
が、そのときですらなお和歌と俳句とをくらべますと堂上人どうじょうびとと町人のような区別があって和歌は優にやさしきもの、俳句は下卑げびいやしきものとそう考えておりました。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
新聞が下卑げびた商売であれば大学も下卑た商売である。
入社の辞 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、喚き立てる子供達の当てこすりの下卑げびた荒々しい言葉が、あの緊密そうな男の子の神経にかなり深刻に響いて、彼をいかに焦立いらだたせるかとはらはらしてたまらない気もした。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
と、主水正、だんだん下卑げびたことを言いだす。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やや下卑げびていたこともたしかだった。
下卑げびていたこともいなまれなかった。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかしきわめて下卑げびている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女の話になるとこの爺さんは夢中になる癖があり、しかもそれを下卑げびた百姓言葉でまくし立てるので、さすがの「浮浪人」ゴーリキイもこれには閉口したらしいが、ましてやチェーホフの迷惑に至っては察するに余りがある。
それはすこし下卑げびた話だ。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何故なら頑丈な先生は少し下卑げびてゐたし、黒い毛の先生はひどく恐ろしかつたし、外國人の先生はガラ/\で變挺へんてこであつたし、ミラア先生は、可愛想に! 紫色でやつれ果てゝ、過勞くわらうで打ちのめされたやうな顏をしてゐたから。
それを受け取って、小女に注がせながら、小森さん、君は民政党にたてついて、碌なことはないよ、と云って、馬鹿にしたような、脅迫するような、獲物えものを前にして舌なめずりするような、下卑げびた薄笑いを湛えて、じっと彦太郎を見た。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
高貴の姫君に相違ないのに、駕籠の中の女のそういった声の、なんとすさんでいることぞ! そうしてそういった言葉つきの、なんとはしたなく下卑げびていることぞ! たたずんで見ていた山県紋也は驚きと一緒にいわれぬ憎悪を胸に持たざるを得なかった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「たむら」も随分変つたぢやないかと懐旧の念にたへがたさうにすると、調子づいて、ええ、ほんとにねえ、すつかり下卑げびて了つたでせう、もとの方がいいんだけど、何だかかうしなければ、大衆的にしないと人が寄りつかないんですつて、だから、お父つあんの頃とは方針
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
「いいえ、あのむすめは、そんな下卑げび子供こどもではありません。きっと、あのおとうとのために、こうして苦労くろうをしているのです。」と、さっきからだまって、じっとむすめおどるのをていたおんなひとがいいました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
かへりたいだらう。なまぬるい、あをんぶくれのやうな人間にんげんどもが、年中ねんぢう指先ゆびさきでも、なかでも算盤そろばんはじいて、下卑げびたことばかりかんがへてゐるこの土地とちに、まことの人間にんげんらしい人間にんげんはとてもられないね。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「たべられるものか、下卑げびなさんな。」「なぜ、うして?」「いちじくとはちがふ。いくらひしんばうでも、その黄色きいろくならなくつては。」「へい。」とまるくして、かざしたところは、もち借家しやくかやまかみだ、が、つゆもこぼるゝ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「折れても何でも剥くのさ。奇麗な顔をして、下卑げびた事ばかりやってる。それも金がない奴だと、自分だけで済むのだが、身分がいいと困る。下卑た根性こんじょうを社会全体に蔓延まんえんさせるからね。大変な害毒だ。しかも身分がよかったり、金があったりするものに、よくこう云う性根しょうねの悪い奴があるものだ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)