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一図
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いちず
ふりがな文庫
“
一図
(
いちず
)” の例文
旧字:
一圖
宗近の言は
真率
(
しんそつ
)
なる彼の、裏表の
見界
(
みさかい
)
なく、母の
口占
(
くちうら
)
を
一図
(
いちず
)
にそれと信じたる反響か。
平生
(
へいぜい
)
のかれこれから
推
(
お
)
して見ると多分そうだろう。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
マアそう
一図
(
いちず
)
に怒らんでもよい。ナニも満が私たちに黙って自分の好きな女を引入れたのでなし、ともかくも東京へ来て本人を
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
この男と一緒に、江戸の
陋巷
(
ろうこう
)
の真ん中へでも、人里離れた山の奥へでもと、
一図
(
いちず
)
に思い込む京姫の望みは、素より遂げられる筈もありません。
奇談クラブ〔戦後版〕:06 夢幻の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あの土人どもの無智な
一図
(
いちず
)
の活動はむしろ峻烈極まったものだった。映画で見る樺太犬の
橇
(
そり
)
引きとたいして違いはなかった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
わたしはまだこの時位、開化を鼻にかける兄を憎んだことはございません。お母さんを
莫迦
(
ばか
)
にしてゐる、——
一図
(
いちず
)
にさう思つたのでございます。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
あの通り組んずほぐれつの中では
覘
(
ねら
)
いは
至極
(
しごく
)
困難致す、足を傷つけて下へ落し、命は助けておきたいと存ずるが、
一図
(
いちず
)
にそうもなり兼ねる、万一
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、それは
固
(
もと
)
より酒の上の冗談に過ぎないのを、世間知らずの山育ちの
青年
(
わかもの
)
は
唯
(
ただ
)
一図
(
いちず
)
に
真実
(
ほんとう
)
と信じて、
此
(
ここ
)
に
飛
(
とん
)
でもない恋の種を
播
(
ま
)
いたのであろう。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『——そういう事とは知らない八雲様は、もう、私は
獄舎
(
ひとや
)
の人間か、死んだ者とお思いになって、
一図
(
いちず
)
に、先へお出でになってしまったのではないか?』
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その気で居れば可いものを、二十四の前厄なり、若気の
一図
(
いちず
)
に
苛々
(
いらいら
)
して、第一その宗山が気に入らない。(的等。)もぐっと
癪
(
しゃく
)
に障れば、妾三人で
赫
(
かっ
)
とした。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
実
(
じつ
)
は
私自身
(
わたくしじしん
)
も、
初
(
はじ
)
めてこちらの
世界
(
せかい
)
に
眼
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ました
当座
(
とうざ
)
は、
只
(
ただ
)
一図
(
いちず
)
に
口惜
(
くや
)
しいやら、
悲
(
かな
)
しいやらで
胸
(
むね
)
が一ぱいで、
自分
(
じぶん
)
の
居
(
お
)
る
場所
(
ばしょ
)
がどんな
所
(
ところ
)
かというような
事
(
こと
)
に
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
意地強く金を
溜
(
た
)
めようなどという風の男ではない。万事控目で踏み切ったことが出来ない。そこで判事試補の月給では妻子は養われないと、
一図
(
いちず
)
に思っていたのだろう。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
……けれども
最早
(
もう
)
、ここまで来た以上は仕方がない。この少年は私が二年前に出した広告をいつまでも……私が息を引き取る間際までも有効だと
一図
(
いちず
)
に信じて来ているらしい。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうかといって他に相当な生活の道を求める手段を講ずる
気振
(
けぶり
)
もなかったから、
一図
(
いちず
)
に我が子の出世に希望を繋ぐ
親心
(
おやごころ
)
からは
歯痒
(
はがゆ
)
くも思い
呆
(
あき
)
れもして不満たらざるを得なかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
青天
(
せいてん
)
の
霹靂
(
へきれき
)
にも
喩
(
たと
)
うべくや、
所詮
(
しょせん
)
は中江先生も栗原氏も深き事情を知り給わずして、
一図
(
いちず
)
に妾と葉石との交情を旧の如しと誤られ、この機を幸いに結婚せしめんとの厚意なるべし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
聞いて、
一図
(
いちず
)
にアヽ悪い事をしたと云って、お前さんのような事を仰しゃるお方も有りますが、其の心持が永く続かないものですから、そんな事を云わなくっても、只アヽ悪い事を
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
学問をしたい、そうしたならばと
一図
(
いちず
)
に思い詰めた少年の杉本がいた、官費の師範学校でさえも(彼はそのさえもに力を入れて考える)知人の好意に泣き
縋
(
すが
)
らねばならぬ家庭であった。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
目鼻立のパラリとした人並以上の器量、純粋の心を未だ世に濁されぬ忠義
一図
(
いちず
)
の立派な若い女であった。然し此女の言葉は主人の
昨日
(
きのう
)
今日
(
きょう
)
を明白にして了った。そして又真正面から見た
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一ツ寝の床に
寐相
(
ねぞう
)
をかまはず
寐言
(
ねごと
)
歯ぎしりに愛想をつかさるるとは知らで、たまたま小言の一も言はるれば、
一図
(
いちず
)
に薄情とわるく気を廻して、これよりいよいよ何かにつけて
悋気
(
りんき
)
の角を現す。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
風流人という文人かたぎの本性においては終始かわらぬものがあったが、ただ
一図
(
いちず
)
に物を思いこむと、それが強い自負心のうちで高揚される。かれが自然主義に熱中したのもそれがためであろう。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
お
母
(
ふくろ
)
が
他人
(
ひと
)
から後ろ指を差されることになっては困る……
一図
(
いちず
)
にそう考えこんだものと見えまして……その後
彼
(
あれ
)
が
他人
(
ひと
)
様のお金に手をかけたのも、つまりそのお金でもってわたしの盗んだ金を返して
情状酌量
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
兄さんが、いつか、お金にもならない小説なんか、つまらぬ、と言っていたが、それは人間の率直な言葉で、それを
一図
(
いちず
)
に、兄さんの堕落として非難しようとした僕は、間違っていたのかも知れない。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その時私はただ
一図
(
いちず
)
に波を見ていました。そうしてその波の中に動く少し紫がかった鯛の色を、面白い現象の一つとして飽かず眺めました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
孫の隼人を初め江原も
縡
(
こと
)
の不思議に驚いて、この上は唯
一図
(
いちず
)
に嘘だとか馬鹿馬鹿しいとか
云
(
いい
)
消して了う訳には往かぬ。
お住の霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
血まようた平家の衆は、源氏のもの憎しの
一図
(
いちず
)
で、およそ、源家の
係累
(
けいるい
)
のものと聞けば、婦女子でも、引っ
縛
(
から
)
げて、なにかの口実をとって必ず斬りまする
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それまでの私の心は、ただ、私の事を、
辱
(
はずかし
)
められた私の事を、
一図
(
いちず
)
にじっと思っていた。それがこの時、夫の事を、あの
内気
(
うちき
)
な夫の事を、——いや、夫の事ではない。
袈裟と盛遠
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
若い内はとかく何事も
一図
(
いちず
)
に物を思い
詰
(
つめ
)
る癖があってそれがために往々正当な判断力を失う。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
平生
(
へいぜい
)
悪人をのみ取り扱うに慣れたる看守どもの、
一図
(
いちず
)
に何か誤解せる有様にて、妾の言葉には耳だも
仮
(
か
)
さず、いよいよ
嘲
(
あざけ
)
り
気味
(
ぎみ
)
に打ち笑いつつ立ち去りたれば、妾は署長の巡廻を待って
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
毫
(
ごう
)
も小生の意志を
眼中
(
がんちゅう
)
に置く事なく、
一図
(
いちず
)
に辞退し得ずと定められたる文部大臣に対し小生は不快の念を抱くものなる事を
茲
(
ここ
)
に言明致します。
博士問題の成行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は理由を
能
(
よ
)
くも
糺
(
ただ
)
さずに、
彼
(
か
)
の怪しき坑夫
体
(
てい
)
の男を母の
仇
(
かたき
)
と
一図
(
いちず
)
に思い定めて、
其
(
その
)
場を去らずに彼を
刺止
(
さしと
)
めた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
脱けて、
一図
(
いちず
)
にお急ぎ遊ばしたお心はよくわかっておりますが、なぜ
一言
(
ひとこと
)
、吉次にお洩らし下さいませんでしたか。吉次如きは、鞍馬の後は、もはやお役に立たぬ人間と、お見限りを
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこで、娘はそれを観音様の
御告
(
おつげ
)
だと、
一図
(
いちず
)
に思いこんでしまいましたげな。
運
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
母の考えでは、夫が
侍
(
さむらい
)
であるから、弓矢の神の
八幡
(
はちまん
)
へ、こうやって是非ない
願
(
がん
)
をかけたら、よもや
聴
(
き
)
かれぬ道理はなかろうと
一図
(
いちず
)
に思いつめている。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
重太郎は
斯
(
こ
)
うも考えた。けれども、自分の姿を見れば
直
(
ただ
)
ちに追跡する警官等が、
其
(
その
)
理屈を
肯
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れるや否やを
危
(
あやぶ
)
んだ。警官等は自分の敵であると彼は
一図
(
いちず
)
に信じていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
けれども妹の
気質
(
きしつ
)
を思えば、一旦篤介を愛し出したが最後、どのくらい情熱に燃えているかはたいてい想像出来るような気がした。辰子は
物故
(
ぶっこ
)
した父のように、何ごとにも
一図
(
いちず
)
になる気質だった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
手を合せる
一図
(
いちず
)
さで
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
年の若い
私
(
わたくし
)
はややともすると
一図
(
いちず
)
になりやすかった。少なくとも先生の眼にはそう映っていたらしい。私には学校の講義よりも先生の談話の方が有益なのであった。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「無邪気なものですね」と兄はむしろ
賛嘆
(
さんたん
)
の
口
(
くち
)
ぶりを見せた。今まで黙っていた客が急に兄に賛成して、「全くのところ無邪気だ」とか「なるほど若いものになるといかにも
一図
(
いちず
)
ですな」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
苔
(
こけ
)
を畳む
煩
(
わずら
)
わしさを避けて、
紫
(
むらさき
)
の
裸身
(
はだかみ
)
に、
撃
(
う
)
ちつけて散る
水沫
(
しぶき
)
を、春寒く腰から浴びて、緑り
崩
(
くず
)
るる真中に、舟こそ来れと待つ。舟は
矢
(
や
)
も
楯
(
たて
)
も物かは。
一図
(
いちず
)
にこの大岩を目懸けて突きかかる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私の同意がKにとってどのくらい有力であったか、それは私も知りません。
一図
(
いちず
)
な彼は、たとい私がいくら反対しようとも、やはり自分の思い通りを貫いたに違いなかろうとは察せられます。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は別れて以来一年近く
経
(
た
)
つ
今日
(
こんにち
)
まで、いまだこの女の記憶を
失
(
な
)
くした
覚
(
おぼえ
)
がなかった。こうして
夜路
(
よみち
)
を馬車に揺られて行くのも、
有体
(
ありてい
)
に云えば、その人の影を
一図
(
いちず
)
に
追
(
おっ
)
かけている
所作
(
しょさ
)
に
違
(
ちがい
)
なかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
図
常用漢字
小2
部首:⼞
7画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥