しぎ)” の例文
さかしげなひからしてつた。しぎはとも、——此處こゝもののかずさへおもつたのは、車夫しやふとき言葉ことば記憶きおくである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大草原パンパスしぎばんでも撃って、保養してこようではないかと二人で話し合って、御覧のごとく、猟装で銃なぞを携えてまいった次第であります。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
パテーの通りでモット大きく拵えてその中へしぎの肉だの鴨だの、鳥のササ身だののお料理を詰めたのが先刻申したオロアンという上等の肉料理です
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
稀には何処から迷い込んだか洋服ゲートルの猟者が銃先つつさきしぎひよのけたゝましく鳴いて飛び立つこともあるが、また直ぐともとの寂しさに返える。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
別役べっちゃくの姉上が来て西のあがはなで話していたら要太郎が台所の方から自分を呼んで裏へしぎを取りに行かぬかと云う。
鴫つき (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その肉を喰ふて見たらばしぎのやうな味がしてそれで余りうまくなかつたが、その肉の油で揚物をこしらへて見たらこれはまた非常に旨かつたといふ事である。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
れて林をひと廻りしてくる。しぎを追い立てるんだ。いいか、ピイピイって声がしたら、耳を立てろ。それから眼をいっぱいにけろ。鴫が頭の上を通るからな
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
加波山で猟れた鹿らしく鹿島の猟で採れたあわび新治にいばりの野で猟れた、しぎ、那珂の川でとれたという、蜆貝しじみがい
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
林を縫って細流が蛇行し、板塀いたべいの外へと流れ出ている。板塀の外は「沼」と呼ばれる湿地で、蘆荻ろてきがまが密生してい、冬になるとかもがんしぎばんなどが集まって来る。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はるまけてものがなしきにさけてぶきしぎにかむ 〔巻十九・四一四一〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
なが素人連中しろうとれんぢうにも上手じやうずの人々は我も/\とこゑ自慢じまんもあれば又ふし自慢じまんもあり最もにぎはふ其が中に今宵城富は國姓爺合戰こくせんやかつせんしぎはまぐりだんを語りけるに生得しやうとく美音びおんの事なれば座中ざちうなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
東北地方の多くの宇田という地名には注意せられぬまでも、しぎわな張ると大昔の歌にもある大和の菟田県うたのあがたなどは、田の字にウを添えた一つの種別とはどうして決められたか。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
土産みやげといえば、浪さん、あれは……うんこれだ、これだ」と浪子がさし出す盆を取り次ぎて、母の前に差し置く。盆には雉子きじひとつがい、しぎうずらなどうずたかく積み上げたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
なにしろ秋口あきぐちからふゆけてしぎなぞをちにくと、どうしてもこしからしたなかつかつて、二時間じかんも三時間じかんらさなければならないんですから、まつた身體からだにはくないやうです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
田圃たんぼしぎなにおどろいたかきゝといて、刈株かりかぶかすめるやうにしてあわてゝとんいつた。さうしてのちしろとざしたこほり時々ときどきぴり/\となつてしやり/\とこはれるのみでたゞしづかであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しぎ立つ澤の秋の夕ぐれ」などといふ歌をよむと、昔の厭世主義者の詩境がよくわかる。
そして、この絵に対して、ひょうびょうとしてくるうちには、千二百年前の漁村に身をひきもどされて、しぎの声を耳に寒々と夕がたの飯など思う天平の庶民の一人にいつか自分がなっている。
正倉院展を観る (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ボートのところまで下りて行かれようか? 私を真先に見つけた奴がしぎの首でもひねるように私をひねり殺しはしないだろうか? 私が姿を見せないそのことが彼等には私が彼等を恐れていることの
暮近き日あしり来て田のへりてゐるしぎ此方こちら向けるは
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あわただしく飛びゆくはしぎ、かの葦間あしまよりや立ちけん。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
にあかぬしぎの鳴く音も絶えにけり。
しぎがゆふべ啼いた
別後 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
声を掛けようかと思ったが鳥を驚かしてはならぬと思うて控えていると果然しぎは立った。要太郎は舌打ちをしたと云う風であったが此方こっちを見て高く笑うた。
鴫つき (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その日の宰領をしたのは物頭の和泉五郎兵衛という者で、獲物は鴨六百羽、しぎその他が八十羽ということであった。それから、獲物を料理りょうった膳が配られて、小酒宴が催された。
若き日の摂津守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
何しろ秋口から冬へ掛けてしぎなぞを打ちに行くと、どうしても腰から下は田の中へつかって、二時間も三時間も暮らさなければならないんですから、全く身体からだには好くないようです
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
シチューの方は小鳥類でも水禽みずとりでも獣でも何の肉でも適当しないものはありません。鳩でも鶉でもしぎでも鴨でも猪、鹿、熊、猿に至るまでシチューにすると大層美味おいしくなります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ある店では、紋のついた油障子の蔭から、赤いかにや大粒のはまぐりを表に見せていた。ある店では、ショウウィンドーの中に、焼串やきぐししぎを刺して赤蕪あかかぶ和蘭芹オランダぜりと一しょに皿に並べてあった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大草原パンパスに程近きボカス・デルトーロの村へ招かれたのを幸い、しぎばんでも撃つつもりであったとみえて、これも州当局によって招かれた同じく交換教授として来朝中の海洋学の権威
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
天平勝宝二年三月一日、大伴家持が、「かけしぎを見て」作った歌である。一首の意は、春になって何となく憂愁をおぼえるのに、この夜更よふけに羽ばたきをしながら鴫が一羽鳴いて行った。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
年ごとの秋の出水でみずに、この界隈かいわいは、やたらに池や小川ができ、かせぐ親たちから目のかたきにされている子の餓鬼がきたちが、しぎにわなをかけたり、釣をしているかと見れば、疫痢えきりの病人を家にもつ女が
「ああ、銃猟に——しぎかい、かもかい。」
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しぎ遠くくはすゝぐ水のうねりかな
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
しぎLa Bécasse
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
しぎがゆふべ啼いた
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
... ロースにすれば林檎のソースはりません」猟天狗「鶉やしぎの腹へ雁の肝を ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
もはや、しぎばんどころではありませぬ。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
しぎ遠くくわすゝぐ水のうねりかな
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しぎが来て啼く
野口雨情民謡叢書 第一篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
最初のしぎ
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
しぎの鳥ならば
野口雨情民謡叢書 第一篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)