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餞別
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せんべつ
ふりがな文庫
“
餞別
(
せんべつ
)” の例文
「これは売り買いではなく、わたしからお
餞別
(
せんべつ
)
に差し上げるのです。
呉
(
ご
)
の地方へお持ちになると、きっと良い御商法になりましょう」
中国怪奇小説集:09 稽神録(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
草鞋にくわれたとき付けるといいんですよ、煙草の灰なんですけどね、唾で練って付けるとよく効きますよ、……もっといいお
餞別
(
せんべつ
)
を
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
今度、奥さまが晴れの洋行をなさるに
就
(
つ
)
き、奥さまのあのときのお情けに対してわたくしは何をお礼にお
餞別
(
せんべつ
)
しようかと考えました。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と、彼はうしろを顧みて、かねて用意させてきた路用の金銀を、
餞別
(
せんべつ
)
として、関羽に贈った。が関羽は、容易にうけとらなかった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
腰掛の間の汚れたところへ新聞紙を敷いて座っている鷲尾は、大工の妹婿が
餞別
(
せんべつ
)
した
小瓶
(
こびん
)
の酒を飲みながら、
独
(
ひと
)
り合点に
喋
(
しゃ
)
べった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
▼ もっと見る
「まあよいわ、先刻お前から離縁の申し出があってみれば赤の他人……いや、まだ
餞別
(
せんべつ
)
に申し残しがあったのだ、よく聞いておけ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
まだ青木から
餞別
(
せんべつ
)
でも貰おうという未練があったので、かれを呼び出しに行ったのだが、かれは逃げていて、会えずにしまったらしい。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
旅の荷物の中からは、お雪が母に造って貰った
夏衣
(
なつぎ
)
の類が出て来た。ある懇意な家から
餞別
(
せんべつ
)
に送られたという
円
(
まる
)
みのある包も出て来た。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
禁煙の
餞別
(
せんべつ
)
私は釈興然師に追い出されましたから東京に帰って来ましたが、到底日本に居ったところがチベットの事情はよく分らぬから
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
私は、貴女のお口から、お前を愛していたと、云う言葉だけを聞けば、私はそのお言葉を、何よりの
餞別
(
せんべつ
)
として、江戸を去る積りであります。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「
哥太寛
(
こたいかん
)
も
餞別
(
せんべつ
)
しました、金銀づくりの
脇差
(
わきざし
)
を、片手に、」と、
肱
(
ひじ
)
を張つたが、
撓々
(
たよたよ
)
と成つて、
紫
(
むらさき
)
の
切
(
きれ
)
も乱るゝまゝに、
弛
(
ゆる
)
き博多の
伊達巻
(
だてまき
)
へ。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
尤
(
もっと
)
も十二年前に洋行するとき親戚のものが
餞別
(
せんべつ
)
として一本
呉
(
く
)
れたが、
夫
(
それ
)
はまだ使わないうちに船のなかで器械体操の
真似
(
まね
)
をしてすぐ壊して
仕舞
(
しま
)
った。
余と万年筆
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「恐れながら殿様には
餞別
(
せんべつ
)
としてこの国の
庫
(
くら
)
に積んであるお金を何程でも御礼として差上げたうございますから御入用だけ
仰
(
おほ
)
せ付け下さりますやう。」
蚊帳の釣手
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
色の取持ちをして小遣を
稼
(
かせ
)
いぢや、祖先の惡源太義平に濟まない——見損なつたか畜生、お前が
道行
(
みちゆき
)
と出かける時、
餞別
(
せんべつ
)
をどうして工面したものかと
銭形平次捕物控:231 鍵の穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
見れば一々寶澤へ
餞別
(
せんべつ
)
に
遣
(
つか
)
はしたる品に
相違
(
さうゐ
)
なし依て平野村の者より右の次第を濱奉行に
訴
(
うつた
)
へ私し共
見覺
(
みおぼえ
)
ある次第を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
渋沢男爵などは、
婿
(
むこ
)
の
阪谷男
(
さかたにだん
)
が万国経済会議に出掛ける
餞別
(
せんべつ
)
にポケツト論語を贈つたさうだが、あれなども
何
(
ど
)
ういふ気でした事か一寸考へ及ばれない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今スミス警部は、駆逐艦の
艦橋
(
かんきょう
)
から暗い海面をじっと見やりながら、総監から
餞別
(
せんべつ
)
にもらったこの言葉を、いくども胸のなかにくりかえしひろげていた。
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
校友会からおくる規定の
餞別
(
せんべつ
)
のほかに、特に生徒一人あたり一円ずつを
醵出
(
きょしゅつ
)
して何か記念品をおくること、送別式後、校友会委員を中心に有志の生徒を加え
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
事実、部屋の中は大小五六箇のトランクや、洋服入りのボール箱の数々や、諸方面から贈られた
餞別
(
せんべつ
)
の包や、亜米利加行きの用意の品々で一杯になっていた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
小楽に暮らしている
小父
(
おじ
)
さんがおったが、不断
可愛
(
かわい
)
がられていたので、
暇乞
(
いとまご
)
いに行くと、何がしかの
餞別
(
せんべつ
)
を紙にひねってくれ、お
披露目
(
ひろめ
)
をしたら行ってやるから
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
五千円の金を
工面
(
くめん
)
して送つたが、それは、子供を此の世から消してくれた、さゝやかな祝ひの
餞別
(
せんべつ
)
でもあつた。心の底から、子供をほしいとは思はなかつたのだ。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
戦争
(
いくさ
)
で死ぬかもしれんから
香奠
(
こうでん
)
と思って
餞別
(
せんべつ
)
をくれろ、その代わり
生命
(
いのち
)
があったらきっと
金鵄
(
きんし
)
勲章をとって来るなんかいって、百両ばかり踏んだくって行ったて。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
精縷
(
セル
)
の背広なるもあり、
袴
(
はかま
)
着けたるが一人、
大島紬
(
おほしまつむぎ
)
の長羽織と差向へる人のみぞフロックコオトを着て、待合所にて受けし
餞別
(
せんべつ
)
の
瓶
(
びん
)
、
凾
(
はこ
)
などを
網棚
(
あみだな
)
の上に片附けて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
出立の日の
饗応
(
きょうおう
)
を入道は
派手
(
はで
)
に設けた。全体の人へ
餞別
(
せんべつ
)
にりっぱな旅装一
揃
(
そろ
)
いずつを出すこともした。いつの間にこの用意がされたのであるかと驚くばかりであった。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
黙語氏が一昨年出立の前に秋草の水画の額を一面
餞別
(
せんべつ
)
に持て来てこまごまと別れを叙した時には、自分は再度黙語氏に逢う事が出来るとは夢にも思わなかったのである。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
なにしろ、
二十
(
はたち
)
のぼくが、
餞別
(
せんべつ
)
だけで二百円ばかり、ポケットに入れていたんですから——。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
餞別
(
せんべつ
)
として
詩歌
(
しいか
)
を贈られ
候
(
そろ
)
人々は
烏丸大納言資慶
(
からすまるだいなごんすけよし
)
卿、
裏松宰相資清
(
うらまつさいしょうすけきよ
)
卿、大徳寺清巌和尚、南禅寺、妙心寺、天竜寺、相国寺、建仁寺、東福寺
並
(
なら
)
びに南都興福寺の長老達に候。
興津弥五右衛門の遺書
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
今言ったとおりそんなものは一文だって貰ったことがない。この金は実に、私が郷里を立ってこちらへ来るときに貰い集めた十二、三円の
餞別
(
せんべつ
)
のうちから払わされたのである。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
周の弟が
餞別
(
せんべつ
)
しようと思っていってみると、成はもう出発してかなり時間が経っていた。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
札幌に来る時、母が
餞別
(
せんべつ
)
にくれた小形の銀時計を出してみると四時半近くになっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
二三日すると帰り
新参
(
しんざん
)
の丑之助君が、帰った時の
服装
(
なり
)
で
神妙
(
しんみょう
)
に礼廻りをする。軒別に手拭か半紙。入営に
餞別
(
せんべつ
)
でも貰った家へは、隊名姓名を金文字で入れた盃や
塗盆
(
ぬりぼん
)
を持参する。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
餞別
(
せんべつ
)
に貰つた金を
路銀
(
ろぎん
)
にして、それで江戸へ出て来たが、二十年の間に、何う転んで、何う起きたか、五千といふ金を
攫
(
つか
)
んで帰つて来て、田地を買ふ、
養蚕
(
やうさん
)
を為る、金貸を始める
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
僕の古い友達のスニッギンソン・バン・ピッキンスから
餞別
(
せんべつ
)
にもらった上等のシェリー酒が二壜はいっていたので、僕もいささか冷やりとしたが、給仕は涙も流さず、くさめもせず
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
ところがその後夫人から手紙が来て、立つ時が決まったら知らしてくれ、送別の宴を張ると云えばよろしいが、それは出来ないので、お
餞別
(
せんべつ
)
を上げるつもりだから、とのことであった。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
冗談じゃあありませんよ、友人どもが一つ一つ集めて
餞別
(
せんべつ
)
にくれたんですよ……しかし、シンガポールのイギリス人も食料品をしこたまたくわえておったそうですね、やつらは、
贅沢
(
ぜいたく
)
を
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
今も我があたりにて
老女
(
らうぢよ
)
など
今日
(
けふ
)
は布を市にもてゆけなどやうにいひて
古言
(
こげん
)
ものこれり。
東鑑
(
あづまかゞみ
)
を
案
(
あんず
)
るに、建久三壬子の年
勅使
(
ちよくし
)
皈洛
(
きらく
)
の時、
鎌倉殿
(
かまくらどの
)
より
餞別
(
せんべつ
)
の事をいへる
条
(
くだり
)
に
越布
(
ゑつふ
)
千
端
(
たん
)
とあり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
巴里の下町の隣人たちが
餞別
(
せんべつ
)
にくれたコティの髪油である。彼は顔をしかめ、眼をつぶり、シャワーをねぢつて、降りそゝぐ温かい雨のなかで幻覚とも回想ともつかぬものに取りつかれてゐた。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
出発の日、いくばくかの
餞別
(
せんべつ
)
にそえて大石先生は、かつての日の写真をハガキ大に再製してもらっておくった。もう
原板
(
げんばん
)
はなくなっていた。竹一のほかはみななくしていたので、よろこばれた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
新「旦那様、これが一生のお別れかと思うと、
何
(
ど
)
うも此の身体が……申上げたいことは山々ございますが、何から申上げて宜しいやら……これはお
餞別
(
せんべつ
)
でござります、何うか御受納下さいますよう」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
少し
纏
(
まとま
)
った
餞別
(
せんべつ
)
を
呉
(
く
)
れたりしました。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
誰でも負けてやりさえすれば客にして、幾日でも泊めておき、酒を飲ませたり
餞別
(
せんべつ
)
をくれたりだから、つまりは浪人者のいい食いもの。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
園子の姉とか妹とかいう人達までこの老人に
托
(
たく
)
してそれぞれ
餞別
(
せんべつ
)
なぞを贈って
寄
(
よこ
)
してくれたことを考えても、思わず岸本の頭は下った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「自分が若いくせにこんなことを云う資格はないだろうが、七重さんとは長いつきあいだったし、
餞別
(
せんべつ
)
にさし上げる物もないものだから」
艶書
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お君からのくれぐれもの
餞別
(
せんべつ
)
の言葉でもあり、せっかく仲人に立ってくれた道庵先生への義理でもあると、感心に辛抱しました。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところがその
中
(
うち
)
には何か
餞別
(
せんべつ
)
をしたいということでいろいろ尋ねがありましたから私は、まあ
大酒家
(
おおざけのみ
)
には酒を飲まぬことを餞別にしてくれ
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「
哥太寛
(
こたいくわん
)
も
餞別
(
せんべつ
)
しました、
金銀
(
きんぎん
)
づくりの
脇差
(
わきざし
)
を、
片手
(
かたて
)
に、」と、
肱
(
ひぢ
)
を
張
(
は
)
つたが、
撓々
(
たよ/\
)
と
成
(
な
)
つて、
紫
(
むらさき
)
の
切
(
きれ
)
も
亂
(
みだ
)
るゝまゝに、
弛
(
ゆる
)
き
博多
(
はかた
)
の
伊達卷
(
だてまき
)
へ。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
餞別
(
せんべつ
)
に貰つた小判の百兩を懷中に深く祕め、編笠に面體を隱したまゝ、先づ日頃信心する觀音樣の近くに陣取つて心靜かにうろ
覺
(
おぼ
)
えのお
經
(
きやう
)
を
誦
(
ず
)
し乍ら
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
津田はいきなり懐中から紙入を取り出して、お延と相談の上、
餞別
(
せんべつ
)
の用意に持って来た金を小林の前へ突きつけた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それに対して、貰った方では
餞別
(
せんべつ
)
として心ばかりの金を贈る。ただそれだけのことで遣り取りが済んだのであるが、明治の初年にはこんな空き屋敷を買う者もない。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
懸案になっている井谷への
餞別
(
せんべつ
)
の品を、何は
措
(
お
)
いても
調
(
ととの
)
えてしまわなければと、彼方此方の飾窓を
覗
(
のぞ
)
いて歩きながら、洋行する人にハイカラな物は気が利かないし
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
餞
漢検1級
部首:⾷
17画
別
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
“餞別”で始まる語句
餞別物