中国怪奇小説集:09 稽神録(宋) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と、彼はうしろを顧みて、かねて用意させてきた路用の金銀を、餞別として、関羽に贈った。が関羽は、容易にうけとらなかった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあよいわ、先刻お前から離縁の申し出があってみれば赤の他人……いや、まだ餞別に申し残しがあったのだ、よく聞いておけ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
銭形平次捕物控:231 鍵の穴 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
茶話:02 大正五(一九一六)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今言ったとおりそんなものは一文だって貰ったことがない。この金は実に、私が郷里を立ってこちらへ来るときに貰い集めた十二、三円の餞別のうちから払わされたのである。
何が私をこうさせたか:――獄中手記―― (新字新仮名) / 金子ふみ子(著)
僕の古い友達のスニッギンソン・バン・ピッキンスから餞別にもらった上等のシェリー酒が二壜はいっていたので、僕もいささか冷やりとしたが、給仕は涙も流さず、くさめもせず
世界怪談名作集:13 上床 (新字新仮名) / フランシス・マリオン・クラウフォード(著)
ところがその後夫人から手紙が来て、立つ時が決まったら知らしてくれ、送別の宴を張ると云えばよろしいが、それは出来ないので、お餞別を上げるつもりだから、とのことであった。
北越雪譜:03 北越雪譜初編 (新字旧仮名) / 鈴木牧之、山東京山(著)
巴里の下町の隣人たちが餞別にくれたコティの髪油である。彼は顔をしかめ、眼をつぶり、シャワーをねぢつて、降りそゝぐ温かい雨のなかで幻覚とも回想ともつかぬものに取りつかれてゐた。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話―― (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お君からのくれぐれもの餞別の言葉でもあり、せっかく仲人に立ってくれた道庵先生への義理でもあると、感心に辛抱しました。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
銭形平次捕物控:023 血潮と糠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)