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風靡
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ふうび
ふりがな文庫
“
風靡
(
ふうび
)” の例文
十年二十年ほど前には、やくざ小説がはやり、明治の初年には、義賊小説や泥棒芝居が恐ろしい勢いで、創作演劇の世界を
風靡
(
ふうび
)
した。
随筆銭形平次:17 捕物小説というもの
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
でも、当時を
風靡
(
ふうび
)
した官員さんの細君になったので、また縁がつながったものと見える。思うに私の母はちと
癪
(
しゃく
)
だったに違いない。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
悪党楠木の聞えは、かつて河内野を
風靡
(
ふうび
)
した時代もある。それは藤房も知っていた。けれど“悪党”の称は、悪人の意味ではない。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上書してすこぶる政府を
威嚇
(
いかく
)
するの意を含めたものもある。旗勢をさかんにし
風靡
(
ふうび
)
するの徒が辞表を奉呈するものは続きに続いた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
第一 病気の敵 今や
我邦
(
わがくに
)
は
露西亜
(
ろしあ
)
に向って
膺懲
(
ようちょう
)
の
師
(
いくさ
)
を起しました。我が海陸軍は連戦連勝の勢いで
頻
(
しきり
)
に北亜の天地を
風靡
(
ふうび
)
します。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
▼ もっと見る
伊太利
(
イタリー
)
乾物屋の店先の棒鱈のように寝そべっているのは、当時
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
を
風靡
(
ふうび
)
している
裸体主義
(
ニュディズム
)
の流行に迎合しているのではない。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ことに十九世紀末から今世紀の初めにかけてオマル・ハイヤーム熱は一種の流行となって英米を
風靡
(
ふうび
)
し、その余波は大陸諸国にも及んだ。
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
メモランダムケースによる「好ましからざる人物」の折紙をつけられる
筈
(
はず
)
もなく、名君吉良上野の令名は日本全国を
風靡
(
ふうび
)
していたであろう。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
その真価を判断するだけの眼識のない
輩
(
やから
)
はたちまちこれに雷同して、一時はその説が天下を
風靡
(
ふうび
)
するというありさまになる。
民種改善学の実際価値
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
日本が勝ち、ロシヤが負けたという意味の唄がまだ大阪を
風靡
(
ふうび
)
していたときのことだった。その年、軽部は五円昇給した。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「国定忠次を初めとして、日本国中を
風靡
(
ふうび
)
したる長脇差を見よ。彼等は皆上州の産だ。上州長脇差という言葉さえ出来ている。静岡県の比でない」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
社交界と知識階級との一部を
風靡
(
ふうび
)
しかけてるカトリック教の新たな潮流に、ジョルジュとオーロラとはとらわれていた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
十五の時に、
袴
(
はかま
)
をひもで
締
(
し
)
める代わりに
尾錠
(
びじょう
)
で締めるくふうをして、一時女学生界の流行を
風靡
(
ふうび
)
したのも彼女である。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この固形の飴が始まってから、急に小児の食物が変化し、町の小商人の才覚が農村を
風靡
(
ふうび
)
したことも想像し得られる。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私
(
わたくし
)
は
斷言
(
だんげん
)
する、
鷲
(
わし
)
の
如
(
ごと
)
く
猛
(
たけ
)
く、
獅子
(
しゝ
)
の
如
(
ごと
)
く
勇
(
いさ
)
ましき
列國
(
れつこく
)
の
艦隊
(
かんたい
)
が
百千舳艫
(
ひやくせんじくろ
)
を
並
(
なら
)
べて
來
(
きた
)
るとも、
日章旗
(
につしようき
)
の
向
(
むか
)
ふ
處
(
ところ
)
、
恐
(
おそ
)
らくば
風靡
(
ふうび
)
せざる
處
(
ところ
)
はあるまいと。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
そのころ大阪ですばらしい人気を呼んだ大衆劇の
沢正
(
さわしょう
)
が、東京の劇壇へ乗り出し、断然劇壇を
風靡
(
ふうび
)
していたが、一つは
水際
(
みずぎわ
)
だった
早斬
(
はやぎ
)
りの離れ
業
(
わざ
)
が
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのころは第一次大戦は終り、ロシア革命などの影響もあってデモクラシーが思想界を
風靡
(
ふうび
)
した時代で、大正七年暮には東大に“新人会”が生まれた。
私の履歴書
(新字新仮名)
/
浅沼稲次郎
、
日本経済新聞社
(著)
経済においても哲学においても文学においても個人主義に
許
(
もと
)
づいた自由主義がすべてを
風靡
(
ふうび
)
する概がありました。
民芸の性質
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
たとえば近代物理学の領域を
風靡
(
ふうび
)
した「波動力学」のごときもその最初の骨組みはフランスの一貴族学者ド・ブローリーがすっかり組み立ててしまった。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この人の父が、大阪中を
風靡
(
ふうび
)
した、東西屋(チンドン屋)の元祖九里丸で、大阪奇人伝中の一人である。夜になると、
囃子
(
はやし
)
の稽古をするので、私達子供は
死までを語る
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
ベンサムの博学宏才をもって心を法典編纂に
委
(
ゆだ
)
ぬること五十有余年、当時彼の著書は既に各国語に翻訳せられ、彼の学説は既に一世を
風靡
(
ふうび
)
し、雷名
轟々
(
ごうごう
)
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
「幟の画」とある以上、如何に鯉幟が天下を
風靡
(
ふうび
)
したところで、鯉の顔と解釈される
虞
(
おそれ
)
はなさそうに思うが、念のために蛇足的説明を加えることにした。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
逍遙子が沒理想論出でゝ、その勢ほと/\我國の文學界を
風靡
(
ふうび
)
せむとするを見て、われはハルトマンが現世紀の有理想論を鈔して世の文學者に示しゝなり。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
大正十年前後から
俄
(
にわか
)
に勃興して一世を
風靡
(
ふうび
)
し、映画女優と並んで遂に演劇女優の流行を奪い去るに至った。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
伝うるところによると、近来、武州八王子あたりから天狗小僧なるものが出現して、遠く美濃尾張あたりまでの聯珠界を
風靡
(
ふうび
)
しているということだが、それだ!
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
イギリス年刊文学集が出だした頃のことで、後にバイロンふうが男を
風靡
(
ふうび
)
したように
憂鬱
(
ゆううつ
)
が女の流行となり初め、女性の髪は悲しげに装うことが初まっていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
オオバネルは、ミストラル、ルウマニユ等と相結で、十九世紀の前半に近代プロヴァンス語を文芸に用ゐ、南欧の地を
風靡
(
ふうび
)
したるフェリイブル詩社の
翹楚
(
ぎようそ
)
なり。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
日本国の威力が東半球を
風靡
(
ふうび
)
し、つい四五年前までの国民には架空の夢でしかなかった偉大なる事業が、いま彼等の眼前に実現されつつある時、前線の勇士達は
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
若
(
も
)
し一
度
(
ど
)
知
(
し
)
つたとすれば、「しるこ」も
亦
(
また
)
或
(
あるひ
)
は
麻雀戲
(
マージヤン
)
のやうに
世界
(
せかい
)
を
風靡
(
ふうび
)
しないとも
限
(
かぎ
)
らないのである。
しるこ
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いまもなお、報知新聞社は丸の内の一角に、毅然として栄華を示しているけれど、往年全国の読書界を
風靡
(
ふうび
)
した時代に比べれば、いささか下り坂だけは争えない。
春宵因縁談
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
しかし海がなければ波が立たないと同じやうに、根本にしつかり触れた時代精神でなければ、決して一代を
風靡
(
ふうび
)
するやうなすぐれた奇観を呈することは出来ない。
現代と旋廻軸
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
新体詩人の
推敲
(
すゐかう
)
百端、未だ世間に知られずして、堕落書生の舌に任じて発する者即ち早く都門を
風靡
(
ふうび
)
す、然る所以の者は何ぞや、亦唯耳を
尚
(
たふと
)
ぶと目を尚ぶとに因る
耳
(
のみ
)
。
詩人論
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
剣を取って江戸を
風靡
(
ふうび
)
する弓削法外先生のひとり娘である。夜みちを怖いとは思わないが——。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
嘗
(
かつ
)
てあるフランスの作家のものが某名家の訳で一世を
風靡
(
ふうび
)
し、いわゆる新興芸術派の一部に浅ましい亜流を輩出したとき、わが
畏友
(
いゆう
)
吉村鉄太郎がひそかに
歎
(
なげ
)
いたことがある
翻訳遅疑の説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
僕を商売人と見たので、また厭気がしたが、他日わが国を
風靡
(
ふうび
)
する大文学者だなどといばったところで、かの
女
(
じょ
)
の分ろうはずもないから、茶化すつもりでわざと顔をしかめ
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
紫式部、清少納言、和泉式部などがその
絢爛
(
けんらん
)
たる才気によって
一世
(
いっせい
)
を
風靡
(
ふうび
)
したあの時期だ。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
また……ああ惜しいかな、前記の
閨秀
(
けいしゅう
)
小説が出て世評一代を
風靡
(
ふうび
)
した、その年の末。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無論史家である貴方は、中世ウェールスを
風靡
(
ふうび
)
したバルダス信経を御存じでしょう。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この「ジャック」なる人物も狂医師の
類
(
たぐい
)
ではあるまいかという当然の結論が生まれ、それが最高の権威をもって警視庁内外の専門家を
風靡
(
ふうび
)
したのだが、その問題の腎臓は該事件の二日後
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
一ころ
露西亜
(
ロシヤ
)
をバイロニズムが
風靡
(
ふうび
)
した。そういう時代の世相をえがいたものである。うぶな少年にはその反社会的な行動が深刻に見なされて、矯激な思想の発揚に一種の魅惑を感じた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
こういう風に東京彫工会の成立が予期以上に盛大でありましたので、形勢全く一変し、東京の彫刻界を
風靡
(
ふうび
)
するという有様で、会員は渦を巻いて集まって来て、三百人以上と称されました。
幕末維新懐古談:49 発会当時およびその後のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
共産主義の運動への情熱が日本の青年層を
風靡
(
ふうび
)
し、犠牲的な行動にまで刺衝したのは、同主義の唯物的必然論にもかかわらず、依然として包蔵している人道主義的思想のためであったのだ。
学生と教養:――教養と倫理学――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
まだ私が銀座でシルクハットのうえ、チャルストンを踊っていたころ、友達の横田は
亜米利加
(
アメリカ
)
の流行女達の間に東洋人を情夫に持つことが
紐育
(
ニューヨーク
)
の社交界に
風靡
(
ふうび
)
しだすと
忽
(
たちま
)
ち渡米してしまった。
恋の一杯売
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
そして事実千里眼は
正
(
まさ
)
に我が国の朝野を
風靡
(
ふうび
)
する勢いとなった始末である。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼れ英邁の資を以て、親藩の威望を擁し、その
直截
(
ちょくせつ
)
的哲理を
鼓吹
(
こすい
)
す、天下
焉
(
いずく
)
んぞ
風靡
(
ふうび
)
せざらんや。尊王の大義は、
元和
(
げんな
)
偃武
(
えんぶ
)
未
(
いま
)
だ五十年ならざるに、徳川幕府創業者の孫なる彼の口より宣伝せられぬ。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
江戸に芭蕉起りて幽玄なる禅道の妙機を
闡
(
ひら
)
きて、主として平民を
済度
(
さいど
)
しつゝありし間に、難波には近松巣林子出でゝ艶麗なる情筆を
揮
(
ふる
)
ひて、一世の趣味を
風靡
(
ふうび
)
したり、次いで西鶴、
其磧
(
きせき
)
の一流立ちて
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
翁の歿後、右の言葉は直訳的に福岡の同流を
風靡
(
ふうび
)
した傾向がある。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
この象徴派の運動は、一時
殆
(
ほとん
)
ど欧洲の全詩壇を
風靡
(
ふうび
)
してしまった。いやしくも象徴派でないものは、新時代の詩人でないように考えられた。しかしながら反動は、必然の避けがたい法則で起って来た。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
スポーツアルピニズムは登山界を
風靡
(
ふうび
)
している。
ピークハンティングに帰れ
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
風靡
(
ふうび
)
するであろう
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
“風靡”の意味
《名詞》
風 靡(ふうび)
靡き(なびき)従わせること。また、靡き従うこと。
(出典:Wiktionary)
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
靡
漢検1級
部首:⾮
19画
“風”で始まる語句
風
風情
風邪
風采
風呂
風体
風呂敷
風貌
風呂敷包
風説