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頗
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すこぶ
ふりがな文庫
“
頗
(
すこぶ
)” の例文
昔の
儘
(
まま
)
に現在までも続いていると云う住家は
殆
(
ほとん
)
んどなく、極めて
稀
(
まれ
)
に昔の美しさのある物を発見するのが
頗
(
すこぶ
)
る難しいことなのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
柳の葉くらいの鮎を二匹、釣り上げて得意顔で宿に持って帰ったところ、宿の人たちに大いに笑われて、
頗
(
すこぶ
)
るまごついたそうである。
令嬢アユ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
こんな有様で、昼夜を分たず、ろくろく寝ることもなければ、起きるというでもなく、我在りと自覚するに
頗
(
すこぶ
)
る
朦朧
(
もうろう
)
の状態にあった。
おばけずきのいわれ少々と処女作
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
甲の見た子爵は乙の見た子爵よりも眼が一つ多かつたなどと云ふことはない。それだけに
頗
(
すこぶ
)
る正確である。同時に又頗る窮屈である。
僻見
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今聞くと極めて珍妙な名称であるが、その頃は
頗
(
すこぶ
)
るハイカラに響いたので、当日はいわゆる文明開化の新らしがりがギシと詰掛けた。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
「本のままじゃあ、どうなるもんですか。
河竹
(
かわたけ
)
なんぞは何をいっているのか
判
(
わか
)
りゃしません。」などと、
頗
(
すこぶ
)
る得意そうに語っていた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
春と秋で情景は全く異るけれども、夜の客に対して掻餅を持出すところ、相手が二人であるところなども
頗
(
すこぶ
)
る趣を同じゅうしている。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
その生涯を日本美術の研究及びその分類の事業に費したる人にしてその個人としての所蔵品中には
頗
(
すこぶ
)
る貴重なるもの多かりしといふ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
拝啓昨今御病床六尺の記二、三寸に
過
(
すぎ
)
ず
頗
(
すこぶ
)
る不穏に
存候間
(
ぞんじそうろうあいだ
)
御見舞申上候
達磨儀
(
だるまぎ
)
も盆頃より
引籠
(
ひきこも
)
り
縄鉢巻
(
なわはちまき
)
にて
筧
(
かけい
)
の滝に
荒行中
(
あらぎょうちゅう
)
御無音
(
ごぶいん
)
致候
(
いたしそうろう
)
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
話の筋道は
頗
(
すこぶ
)
る簡単だがね。ほかの事件と違って何だか、こう考えさせられる深刻な、シンミリしたところがあるように思うんだ。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
わが文壇でも此のロシヤを手本としつつあるものが
頗
(
すこぶ
)
る多い。けれども是等群小ソフィストには、現実味の足りない所がありはせぬか。
第四階級の文学
(新字新仮名)
/
中野秀人
(著)
蓋
(
けだ
)
し彼は其生涯の後年に於てこそ所謂閑雲野鶴、
頗
(
すこぶ
)
る不覊自由の人とはなりたるなれ当時に在りては猶純乎たる封建武士の子たりし也。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
しかし蓄妾の久しく行われて来た
余弊
(
よへい
)
を受けて、我が国でも明治の初めに民法を制定し、親族法を設くるに当りては
頗
(
すこぶ
)
る苦心を要した。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
高本家は祖父の弟が養子に行った当時は、
頗
(
すこぶ
)
る盛大だったが、その後間もなく家産が傾き始め、長男の代にはもういけなくなった。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そして或る重要な要件であって、しかも自分にとっては
頗
(
すこぶ
)
る興味がないといった場面においては、必ずこの連中は出演に及ぶのである。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
拝啓昨今御病床六尺の記二、三寸に
過
(
すぎ
)
ず
頗
(
すこぶ
)
る不穏に
存候間
(
ぞんじそうろうあいだ
)
御見舞申上候
達磨
(
だるま
)
儀も盆頃より引籠り
縄鉢巻
(
なわはちまき
)
にて
筧
(
かけひ
)
の滝に荒行中
御無音致候
(
ごぶいんいたしそうろう
)
。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
此ふたりは世に名をひゞかせたれど今はなき人なり。我は幸に世にありて名もまた
頗
(
すこぶ
)
る
聞
(
きこ
)
えたり(中略)今日小川
破笠老
(
はりつらう
)
まゐらる。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
僕は霽波に馬鹿にせられるのが不愉快なのである。この負けじ魂は人をいかなる罪悪の深みへも落しかねない、
頗
(
すこぶ
)
る危険なものである。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
唯
(
たゞ
)
大地震直後
(
だいぢしんちよくご
)
はそれが
頗
(
すこぶ
)
る
頻々
(
ひんぴん
)
に
起
(
おこ
)
り、しかも
間々
(
まゝ
)
膽
(
きも
)
を
冷
(
ひや
)
す
程
(
ほど
)
のものも
來
(
く
)
るから、
氣味惡
(
きみわる
)
くないとはいひ
難
(
にく
)
いことであるけれども。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
性慾本能一つに生きているような犬ですから身を摺り付けてその挑み方も
頗
(
すこぶ
)
る露骨に執拗を極めたものであろうと想像せられます。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
団長などは外出中に無断で
室
(
へや
)
を取り代えられましたのでね。御機嫌
頗
(
すこぶ
)
る斜めです。我々観光団の面目に関するというので、困りました。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
官僚式に出来上った彼の眼には、健三の態度が最初から
頗
(
すこぶ
)
る横着に見えた。超えてはならない階段を
無躾
(
ぶしつけ
)
に飛び越すようにも思われた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ウィインで
頗
(
すこぶ
)
る勢力のある一大銀行に、
先
(
ま
)
ずいてもいなくても
差支
(
さしつかえ
)
のない小役人があった。名をチルナウエルと
云
(
い
)
う小男である。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
両親は
頗
(
すこぶ
)
る喜んで早速この
由
(
よし
)
を
先方
(
さき
)
へ通ずる、そこで、かたの如く
月下氷人
(
なこうど
)
を入れて、
芽出度
(
めでた
)
く三々九度も終ったというわけだ。
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
この様な哀れな
状
(
さま
)
をした愚鈍そうな老爺がとんでもない喰わせものであろうとは、南洋へ来てまだ間も無い私にとって
頗
(
すこぶ
)
る意外であった。
南島譚:03 雞
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
夕暮が迫って来て、そうした観察をするには
頗
(
すこぶ
)
る好都合の時期となった。朝井刑事は警部の命によって、先ず鬼頭を応接室に導かしめた。
呪われの家
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
この硬い球は、原子核の
頗
(
すこぶ
)
る大きいものだと思えばよろしい、わしが五年かかって特製したものだ。硬いこと重いことに於て正に世界一。
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
とにかくこの物語は
頗
(
すこぶ
)
る長くて、しかも華々しい大団円に近づくに随い、いよいよますます大規模になって行くものとご承知ねがいたい。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
其の
容体
(
ようだい
)
が
頗
(
すこぶ
)
る
大柄
(
おおへい
)
ですから、長二は
此様
(
こん
)
な人に話でもしかけられては面倒だ、此の間に帰ろうと思いまして
暇乞
(
いとまごい
)
を致しますと
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
史に記す。道衍
晩
(
ばん
)
に道余録を著し、
頗
(
すこぶ
)
る先儒を
毀
(
そし
)
る、識者これを
鄙
(
いや
)
しむ。
其
(
そ
)
の故郷の
長州
(
ちょうしゅう
)
に至るや、同産の姉を
候
(
こう
)
す、姉
納
(
い
)
れず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ナニ
頗
(
すこぶ
)
る妙だと、妙に違いない。手製の珍物だもの。それはね先日僕のワイフがお登和さんに教わった薩摩芋料理の一層進化したものだ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
土志と変わって非常に大きな声で物にもよるだろうが唄い振り、節回しが
頗
(
すこぶ
)
る粋だ。聞く人によっては鈴の方が好きだというかも知れない。
美音会
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
近頃この人の自伝が二冊本になって出た。この本の中に今の
所謂
(
いわゆる
)
頗
(
すこぶ
)
る怪めいた話が出ている。それがしかも
頗
(
すこぶ
)
る熱心に真面目に説いてある。
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
その状
恰
(
あた
)
かも仏教累世の仇敵たる史学が一朝その方向を転じて我が味方となりたるが如く感ぜられ、仏教家なるもの
頗
(
すこぶ
)
る得意の色を現はし
仏教史家に一言す
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
、
小竹主
(著)
従って、本間久雄君のように、此の方面からのみしかも極くまずく民衆芸術を説くとなると、
頗
(
すこぶ
)
る妙なものが出来上るわけだ。
新しき世界の為めの新しき芸術
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
寛永時代の小唄だから
頗
(
すこぶ
)
る悠長な、間のびのした半謡曲染みたものであろう。酒も大してのまないのに、孫右衛門店先でゆらゆら唄出した。
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
しかし之はいつものことらしく、青楓氏も夫人も別に之を制止するでもなかった。そればかりか、夫人の態度も
頗
(
すこぶ
)
る之に似たものがあった。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
一行
始
(
はじ
)
めて
団結
(
だんけつ
)
し
猛然
(
もうぜん
)
奮進に
决
(
けつ
)
す又足を水中に
投
(
とう
)
ずれば水勢
益
(
ます/\
)
急
(
きう
)
となり、両岸の岩壁
愈
(
いよ/\
)
嶮
(
けん
)
となり、之に従つて河幅は
頗
(
すこぶ
)
る
縮
(
ちぢま
)
り
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
頗
(
すこぶ
)
る商才に
長
(
た
)
けた男で、鳥居甲斐守と結托して悪質の貨幣を鋳造し、物価を釣り上げて、一代に暴富を積んだしたたか者です。
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
然
(
さ
)
して
紙数
(
しすう
)
は無かつたけれど、
素人
(
しろうと
)
の
手拵
(
てごしらえ
)
にした物としては、
頗
(
すこぶ
)
る
上出来
(
じやうでき
)
で、
好雑誌
(
こうざつし
)
と
云
(
い
)
ふ
評
(
ひやう
)
が有つたので、
是
(
これ
)
が
我楽多文庫
(
がらくたぶんこ
)
の第四期です
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
頗
(
すこぶ
)
る道化たもので「腰付がうまいや。」と志田君が呟やいて居たが、私は、「若し芸妓の演芸会でもあつたら
此
(
この
)
妓
(
こ
)
を賞めて書いてやらう。」
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その書面は
頗
(
すこぶ
)
る長文であって、ここにその全文を引用することは出来ないが、今その首尾を訳載して、氏の熱心の一斑を示すこととしよう。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
『そんなものは
無
(
な
)
くッてよ!』と
愛
(
あい
)
ちやんは
頗
(
すこぶ
)
る
腹立
(
はらだた
)
しげに
云
(
い
)
ひました、
帽子屋
(
ばうしや
)
と三
月兎
(
ぐわつうさぎ
)
とは、『
叱
(
し
)
ッ!
叱
(
し
)
ッ!』と
續
(
つゞ
)
けさまに
叫
(
さけ
)
びました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
小石川
(
こいしかわ
)
竹早町
(
たけはやちょう
)
なる
同人社
(
どうにんしゃ
)
の講師として
頗
(
すこぶ
)
る
尽瘁
(
じんすい
)
する所ありしに、不幸にして校主
敬宇
(
けいう
)
先生の
遠逝
(
えんせい
)
に
遭
(
あ
)
い閉校の
止
(
や
)
むなき有様となりたるなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
故にもし昴宿の各星は永久に結ばれ、参宿の各星は次第に分離しつつありとすれば、この言の意味は
頗
(
すこぶ
)
る的確になるのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「そればかりでなく、迂闊に恋人なんかの手にかかると、
頗
(
すこぶ
)
る危険なのは、覚醒しないでそれっきりになることがあります」
麻酔剤
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ここで、話を進める前に是非とも触れて置かなければならないと思うのは、彼の抱いていた
頗
(
すこぶ
)
る独得なリアリズム観である。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
意気
頗
(
すこぶ
)
る軒昂であった。自分を
安石
(
あんせき
)
に譬えたりした。二十歳代に人を斬った、その李白の真骨頭が、この時躍如としておどり出たのであった。
岷山の隠士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
頗
(
すこぶ
)
る
曖昧
(
あいまい
)
なる返答であるが、現在旅人が通るのを見ると行けるに相違ない。何にせよ行ける処まで行こうという事になった。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
とまれ彼は、息を殺して見つめていると、その人影は
頗
(
すこぶ
)
るゆっくりした足運びで、すぐ二人の目と鼻の先を通りかかります。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頗
漢検準1級
部首:⾴
14画
“頗”を含む語句
偏頗
廉頗
偏頗不正
偏頗心
偏頗放縦
偏頗論
御偏頗
頗付
頗棃
頗色
頗長
頗類西洋畫