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逸早
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いちはや
ふりがな文庫
“
逸早
(
いちはや
)” の例文
本紙の
逸早
(
いちはや
)
く報道したる処なるが果然、同校長は昨三日早朝、大阪市北区中之島付近の往来に泥塗れの乱れたるフロック姿を現わし
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして川岸から三十間ばかり上の方まで来た時、右手の岩の上の大きな
樫
(
かし
)
の枝が、ザワ/\と動くのが
逸早
(
いちはや
)
く与兵衛の
眼
(
め
)
に映りました。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
信孝の方でも、
逸早
(
いちはや
)
く救援を勝家に乞うたけれども、
生憎
(
あいにく
)
の雪である。勝家、猿面冠者に出し抜かれたと地駄太踏むが及ばない。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして、私のそのかすかな身ぶるいのなかを氏の作品の「羅生門」の
凄惨
(
せいさん
)
や「地獄変」の怪美や「奉教人の死」の幻想が
逸早
(
いちはや
)
く横切った。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それを嫂さまは
逸早
(
いちはや
)
く嗅知つて、一文も金は要らぬから敏雄だけは貰つて行くと言つて敏雄を連れていきなり實家に歸つてしまつたのです。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
▼ もっと見る
「ありますよ。ちょいと、乗りかえ。
本所
(
ほんじょ
)
は乗り換えじゃないんですか。」髪を切り下げにした隠居風の
老婆
(
ろうば
)
が
逸早
(
いちはや
)
く叫んだ。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
……これでは不作はまぬかれまい、そういう不安が拡まりだしたとき、
逸早
(
いちはや
)
く、今年は年貢半減だそうな、という
噂
(
うわさ
)
が口から口へ伝わった。
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そしてそのまま、見返りお綱、
燕
(
つばくろ
)
の飛ぶかとばかり
逸早
(
いちはや
)
く走って、あッと思うまに、宏壮な屋敷
塀
(
べい
)
の角を曲って、ヒラリと姿を隠しかけた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この闇にまぎれて
逸早
(
いちはや
)
くここを立ち退いてしまえば、相手は殺され損で、誰にも詮議はかかるまいと思うと、実雅は俄にあとさきが見られて
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
逸早
(
いちはや
)
くお志保は聞きつけて、一寸耳を澄まして居ると、『あれ、姉さん、呼んでやすよ。』と省吾も姉の顔を見上げた。復た呼ぶ声が聞える。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
或る人の最初の最も鮮かな記憶といふものは、その人の暗い一生のもとに、暗く
使役
(
しえき
)
された暗い感情の、
逸早
(
いちはや
)
く現はれたものであるかも知れぬ。
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
待ち構えたように、それを
逸早
(
いちはや
)
く認めた川波大尉だった。彼は軍医の話をそちのけにして、スックリ其の場に立ち上った。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこで、
逸早
(
いちはや
)
く彼を取っつかまえて、泥を吐かせようと、かけ出してみたのですが、足に物を言わせることにかけては、こいつに
敵
(
かな
)
いっこはない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
羅馬
(
ローマ
)
の来電によると、イゾンゾ河沿線の
伊太利
(
イタリー
)
兵は、独逸勢が攻め寄せたと聞くと、俳人其角のやうに
逸早
(
いちはや
)
く逃げ出したといふ事だ。悧巧な事だ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それを
逸早
(
いちはや
)
く
嗅
(
か
)
ぎつけたのは感心だが、後が悪い。角町を筆頭に六ヵ村が反対運動を起して、折角の鉄道を○○町へ寄進についてしまったんだからね
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
とも、おもてのサンパンも、赤
毛布
(
げっと
)
で作られた
厚司
(
あつし
)
を着た、囚人のような船頭さんによって、
漕
(
こ
)
ぎつけられた。沖売ろうの娘も
逸早
(
いちはや
)
く上がって来た。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
そのとき
逸早
(
いちはや
)
く信長の天下を見抜いたのが官兵衛(如水)で、小寺家の大勢は毛利に就くことを自然としてゐたが、官兵衛は主人を説いて屈服させる。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
通し物は
逸早
(
いちはや
)
く満枝が好きに計ひて、
少頃
(
しばし
)
は
言
(
ことば
)
無き二人が中に置れたる
莨盆
(
たばこぼん
)
は子細らしう一
炷
(
ちゆう
)
の
百和香
(
ひやつかこう
)
を
燻
(
くゆ
)
らせぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
もうそろ/\春先きで、
逸早
(
いちはや
)
く這ひ出した蟻が、黒光りになつた臺所の大黒柱の
根方
(
ねかた
)
の穴へ歸つて行くのを見て
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それを
逸早
(
いちはや
)
く、
銜
(
くわ
)
えあげたものから、ぽっかりぽっかりと海面に首を出し、ぷうっと口々に水を
吐
(
は
)
きながら、片手で水を
叩
(
たた
)
き、片手に金をかざしてみせる。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
露西亜
(
ロシヤ
)
人はどの国よりも
逸早
(
いちはや
)
くこの点に覚醒して平和の解決を望んだので、その目的は極めて善いのですが、惜しいことに適当な指導者を持たなかったために
三面一体の生活へ
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
汽車がくると、どれが叔父だか
一寸
(
ちょっと
)
見分
(
みわけ
)
がつかない位の人々が、汽車の窓から首を出していた。
逸早
(
いちはや
)
く見つけた叔母は、窓にしがみついて、叔父と
談
(
はなし
)
していた。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
大船
(
おほふな
)
に
着
(
つ
)
くや
老夫婦
(
としよりふうふ
)
が
逸早
(
いちはや
)
く
押
(
おし
)
ずしと
辨當
(
べんたう
)
を
買
(
か
)
ひこんだのを
見
(
み
)
て
自分
(
じぶん
)
も
其
(
その
)
眞似
(
まね
)
をして
同
(
おな
)
じものを
求
(
もと
)
めた。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこで例の原稿を
筐底
(
きょうてい
)
から取出して見てもらうと、
差当
(
さしあた
)
りそれを出そうということになったが、
逸早
(
いちはや
)
くもこうした美本となって世に出るようになったことに
就
(
つ
)
いては
「古琉球」改版に際して
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
辰弥も今は
相対
(
あいむか
)
う
風色
(
ふうしょく
)
に見入りて、心は早やそこにあらず。折しも障子はさっと開きて、中なる人は立ち出でたるがごとし。辰弥の耳は
逸早
(
いちはや
)
く聞きつけて振り返りぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
「あれもつまらん。香を嗅ぎわけるほどの鼻があったら、めしのこげるのを
逸早
(
いちはや
)
く嗅ぎ出し、下女に
釜
(
かま
)
の下の
薪
(
まき
)
をひかせたら少しは家の仕末のたしになるでしょう。」
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
矢崎は明治十九年の十月には処女作『
守銭奴
(
しゅせんど
)
の
肚
(
はら
)
』を公けにし、続いて同じ年の暮れに『ひとよぎり』を出版し、二葉亭に先んじて
逸早
(
いちはや
)
く
嵯峨
(
さが
)
の
屋
(
や
)
お
室
(
むろ
)
の文名を成した。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
さつきその町を電車で
逸早
(
いちはや
)
くかすめて通る時にも、母親はその蕎麦屋を指してそれと教へて呉れたけれども、しかも多喜子には何等の記憶をも呼び起すことが出来なかつた。
父親
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
早や奥に入んとするを目科は
逸早
(
いちはや
)
く引留めて自ら其店に
上
(
のぼ
)
り、無遠慮に奥の間に進み入る
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ああした大家の奥向を取締っている
女
(
ひと
)
だけに、まことに上品で、私はどこかいいところの奥様かと思いました。先方でも
逸早
(
いちはや
)
く私を見ると直ぐ傍へ来て、丁寧に頭を下げました。
蛇性の執念
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
笠井が
逸早
(
いちはや
)
く仁右衛門を見付けてこういうと、仁右衛門の妻は恐れるように
怨
(
うら
)
むように訴えるように夫を見返って、黙ったまま泣き出した。仁右衛門はすぐ赤坊の所に行って見た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「よくねえ、」と声を懸けて、
逸早
(
いちはや
)
く今欄干に
立顕
(
たちあらわ
)
れたその女中が出迎えた。帳場の
灯
(
あかり
)
と御神燈の影で、ここに美しく照らし出されたのは、
下谷
(
したや
)
数寄屋町
大和屋
(
やまとや
)
が
分
(
わけ
)
の蝶吉である。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
れいの浮浪者は
逸早
(
いちはや
)
く、草履を自分の足に——彼ははだしだつたので、ひつかけた。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
寝もやらず待ちうけていた老職多井格之進が、
逸早
(
いちはや
)
く気配を知って、寒げに老いた姿を見せ乍ら手をつくと、愁い顔の主君をじいっと仰ぎ見守り乍ら、
丹田
(
たんでん
)
に力の潜んだ声で言った。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
吉三郎は長老の身を守らうとして
逸早
(
いちはや
)
くそのわきに来て立つてゐた。併し彼がその「二つの眼」と長老との間に立ち塞がつたやうに吉三郎とその二つの眼との間に裕佐は割り込んだ。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
その返書は、松太郎が
逸早
(
いちはや
)
く信者を得た事を祝して其伝道の前途を励まし、この村に寄留したいといふ希望を
聴許
(
ゆる
)
した上に、今後伝道費として毎月金五円宛送る旨を書き添へてあつた。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
同じく東洋に国を為している日本が
逸早
(
いちはや
)
く世界的文明の潮流に
棹
(
さお
)
さして、
彼
(
かれ
)
の長を採ると共に
我
(
われ
)
の短を補い、およそ世界の善を見てこれに移った結果、今日の新文明を産み出したのを見ると
日支親善策如何:――我輩の日支親善論
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
所が、杉江の眼が
逸早
(
いちはや
)
く飛んだのは、一番上段にある
内裏雛
(
だいりびな
)
に注がれた。そのうち女雛の方が、一本の
長笄
(
ながこうがい
)
——それは、白鼈甲に紅は鎌形の紋が頭飾りになっているのを、抱いていたからである。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
夜明けに
逸早
(
いちはや
)
く起きて叫び
噪
(
さわ
)
ぐは日本の猴もしかり。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それを、
逸早
(
いちはや
)
く、神尾喬之助も飲みこんで
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それとも
逸早
(
いちはや
)
く逃亡したのであろうか。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
逸早
(
いちはや
)
く昇降口から姿を消してしまった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
それはもうこの時既に、
逸早
(
いちはや
)
く私の心理に
蔽
(
おお
)
いかかっていた、
片輪者
(
かたわもの
)
らしいヒガミ根性のせいであったかも知れないけれども……。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
清盛は、足音に、
逸早
(
いちはや
)
く、とび起きていたので、さしても驚かなかったが、弟の経盛は、歯の根も合わず、あたふたいう。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのとき妾はその黒布の下に、また別な紅いリボンがヒラヒラしているのを
逸早
(
いちはや
)
く見てとったものだから、たちまち大変気色を悪くしてしまった。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのとき
逸早
(
いちはや
)
く信長の天下を見抜いたのが官兵衛(如水)で、小寺家の大勢は毛利に就くことを自然としてゐたが、官兵衛は主人を説いて屈服させる。
黒田如水
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それから清澄の茂太郎が、
逸早
(
いちはや
)
くメイン・マストの
頂辺
(
てっぺん
)
に打ちのぼって、本船を離れて行く船長と白雲の一行を、視覚の及ぶ限り監視の役をつとめている。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この計画が発表されると、同時に、ボースンと、今の大工、三上の三人は
逸早
(
いちはや
)
く隠謀をたくらんでしまった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
席上は入乱れて、ここを
先途
(
せんど
)
と
激
(
はげし
)
き勝負の最中なれば、彼等の
来
(
きた
)
れるに心着きしは
稀
(
まれ
)
なりけれど、片隅に物語れる二人は
逸早
(
いちはや
)
く目を
側
(
そば
)
めて紳士の
風采
(
ふうさい
)
を
視
(
み
)
たり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
そこで電灯を消して撮影の邪魔をしたが、それと気づいて山川少将に扮装していた軍事探偵は、撮影したフィルムと文子を
掠
(
さら
)
って、
逸早
(
いちはや
)
くも逃亡したのである。
危し‼ 潜水艦の秘密
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
逸
常用漢字
中学
部首:⾡
11画
早
常用漢字
小1
部首:⽇
6画
“逸”で始まる語句
逸
逸物
逸見
逸話
逸品
逸足
逸楽
逸散
逸事
逸人