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逍遥
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しょうよう
ふりがな文庫
“
逍遥
(
しょうよう
)” の例文
アグリパイナは、ネロの手をひいて孤島の
渚
(
なぎさ
)
を
逍遥
(
しょうよう
)
し、水平線のかなたを指さし、ドミチウスや、ロオマは、きっと、あの辺だよ。
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
不可思議なる神境から
双眸
(
そうぼう
)
の底に
漂
(
ただよ
)
うて、視界に入る万有を
恍惚
(
こうこつ
)
の境に
逍遥
(
しょうよう
)
せしむる。迎えられたる賓客は
陶然
(
とうぜん
)
として園内に入る。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
明治の時代中ある短日月の間、文章と云えば、作に露伴紅葉四迷
篁村
(
こうそん
)
緑雨美妙等があって、評に
逍遥
(
しょうよう
)
鴎外があるなどと云ったことがある。
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼等はことごとく家族を
後
(
あと
)
に、あるいは
道塗
(
どうと
)
に
行吟
(
こうぎん
)
し、あるいは
山沢
(
さんたく
)
に
逍遥
(
しょうよう
)
し、あるいはまた精神病院
裡
(
り
)
に
飽食暖衣
(
ほうしょくだんい
)
するの幸福を得べし。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
むかし、秋田何代かの太守が郊外に
逍遥
(
しょうよう
)
した。小やすみの庄屋が、殿様の歌人なのを知って、家に持伝えた人麿の木像を献じた。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
紅葉
(
こうよう
)
露伴
(
ろはん
)
樗牛
(
ちょぎゅう
)
逍遥
(
しょうよう
)
の諸家初めより一家の見識気品を持して文壇に
臨
(
のぞ
)
みたり。紅葉門下の作者に至りても今名をなす人々皆然り。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
万葉集にある
浦島
(
うらしま
)
の長歌を
愛誦
(
あいしょう
)
し、日夜
低吟
(
ていぎん
)
しながら
逍遥
(
しょうよう
)
していたという小泉八雲は、まさしく
彼
(
かれ
)
自身が浦島の子であった。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
これらみ仏そのままの
風貌
(
ふうぼう
)
で、飛鳥びとはこの辺を
逍遥
(
しょうよう
)
していたのであろうか。そこには永遠の安らいがあったに相違ない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
松林を
徘徊
(
はいかい
)
したり
野逕
(
のみち
)
を
逍遥
(
しょうよう
)
したり、くたびれると帰つて来て頻りに発句を考へる。試験の準備などは手もつけない有様だ。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
彼は毎日、家のまわりを、ひとりで
逍遥
(
しょうよう
)
して、独りでニヤニヤしていた。そういう時の彼の笑い顔は、実に柔和で、明るいかがやきが溢れている。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あくまで
豪毅
(
ごうき
)
、あくまで沈着、さながら
春光影裡
(
しゅんこうえいり
)
に
斑鳩
(
いかるが
)
の里を
逍遥
(
しょうよう
)
し給う聖徳太子の
俤
(
おもかげ
)
が
偲
(
しの
)
ばれんばかりであった。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
その日は春も
弥生
(
やよい
)
半ばで、霞の
罩
(
こ
)
めた遠山のけしき、ところ/″\の谷あいの花の雲などに誘われて、ついうか/\と
逍遥
(
しょうよう
)
してみたくなったのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
県下の大半の人間が衣裳を
著
(
き
)
飾って楽しげに木蔭を
逍遥
(
しょうよう
)
しているが、
煌々
(
こうこう
)
たるこの照明の中では誰にも何ら不思議なものとも怖ろしいものとも思われない。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
美奈子が、廊下から、そっとその庭へ降り立ったとき、西洋人の夫妻が、腕を組合いながら、芝生の小路を、
逍遥
(
しょうよう
)
している外は、人影は更に見えなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
真実に脱俗して栄華の外に
逍遥
(
しょうよう
)
し、天下の高処におりて天下の俗を
睥睨
(
へいげい
)
するが如き人物は、学者中、百に十を見ず、千万中に一、二を得るも難きことならん。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
佐佐木
信綱
(
のぶつな
)
、森鴎外、坪内
逍遥
(
しょうよう
)
、という大先輩の御後援をいただいて、鴎外先生は新たに「
曾我兄弟
(
そがきょうだい
)
」をお書き下さるし、坪内先生は、「浦島」の中之段だけ
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
神
(
しん
)
を凝らし、もってますます妖怪の
蘊奥
(
うんおう
)
を究め、宇宙の玄門を開き、天地の大道を明らかにし、生死の迷雲を払い、広く世人をして歓天楽地の間に
逍遥
(
しょうよう
)
せしめ
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
何百年の昔よりこのかた朝の露さやけしといいては出で夕の雲花やかなりといいてはあこがれ何百人のあわれ知る人や
逍遥
(
しょうよう
)
しつらん相
悪
(
にく
)
む人は相避けて異なる道を
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
……うねったり輪を
描
(
か
)
いたりしながら、幾組もの男女が入り乱れて動いている一方には、ほかの組々が腕を組み合わせて、広間じゅうをぐるぐると
逍遥
(
しょうよう
)
している。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
上陸して
逍遥
(
しょうよう
)
したきは山々なれど雨に
妨
(
さまた
)
げられて舟を出でず。やがてまた吹き来し強き順風に乗じて船此地を発し、暮るる頃
函館
(
はこだて
)
に着き、
直
(
ただ
)
ちに上陸してこの港のキトに宿りぬ。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
大井の野に残った殿上役人が、しるしだけの小鳥を
萩
(
はぎ
)
の枝などへつけてあとを追って来た。杯がたびたび巡ったあとで川べの
逍遥
(
しょうよう
)
を
危
(
あや
)
ぶまれながら源氏は桂の院で遊び暮らした。
源氏物語:18 松風
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
同島南海岸を
逍遥
(
しょうよう
)
中、海浜より七、八メートル離れた
這松
(
はいまつ
)
の根元に、四十五、六歳ぐらいの
鼠
(
ねず
)
背広、
格子縞
(
こうしじま
)
の
外套
(
オーバアー
)
の紳士が
紅
(
くれない
)
に染んで倒れ、さらに北方十二メートルのところに
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
花桐の里方では、彼女を倉の中に閉じ込め、謹しみと罪科とによって庭にも
逍遥
(
しょうよう
)
できぬようにした。倉の中の一室は秋深くうすら寒くすらあって、来る日も彼女は一つの窓から外を眺めた。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この時から、二つにたち割られた場所のなかで、彼の
逍遥
(
しょうよう
)
がはじまった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
秋も
更
(
ふ
)
けて、
暁闇
(
ぎょうあん
)
がすぐに
黄昏
(
たそがれ
)
となり、暮れてゆく年に憂愁をなげかけるころの、おだやかな、むしろ物さびしいある日、わたしはウェストミンスター寺院を
逍遥
(
しょうよう
)
して数時間すごしたことがある。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
水を入れたガラス
函
(
ばこ
)
がいくつも並んでいる。底に少しばかり砂を入れていろいろ
藻
(
も
)
が植えてある。よく見ると小さな魚がその藻草の林間を
逍遥
(
しょうよう
)
している。
瑪瑙
(
めのう
)
で作ったような
三分
(
ぶ
)
ぐらいの魚もある。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
市の中心を
距
(
さ
)
ること遠き公園の人気少き道を男女
逍遥
(
しょうよう
)
す。
最終の午後
(新字新仮名)
/
フェレンツ・モルナール
(著)
今こそ私は、自由な天地に
逍遥
(
しょうよう
)
しているのであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
十一月十七日 金沢市
逍遥
(
しょうよう
)
。
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
之と争って、時われに利あらず、旗を巻いて家を飛び出し、近くの井の頭公園の池畔をひとり
逍遥
(
しょうよう
)
している時の気持の暗さは類が無い。
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
自分はそれを
機
(
しお
)
に拝殿の前面を左右に
逍遥
(
しょうよう
)
した。そうして暑い日を
遮
(
さえぎ
)
る高い
常磐木
(
ときわぎ
)
を見ていた。ところへ兄が不平な顔をして自分に近づいて来た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、供奉の公卿たちも、ここでは山上の
潔斎
(
けっさい
)
も解かれて、俗称“もみじ寺”の今を盛りなもみじの間を
逍遥
(
しょうよう
)
しあった。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「信道知識」即ち同信同行の一類
眷属
(
けんぞく
)
も、現世安穏、来世には生死を
解脱
(
げだつ
)
して三尊に
随
(
したが
)
いまつり、不生不死なる
涅槃
(
ねはん
)
の彼岸に
逍遥
(
しょうよう
)
せられ、しかも尽きざる功徳により
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
昨夕へいげんと両々手を携えて門前を
逍遥
(
しょうよう
)
し、家に帰りて後、始めて秘蔵せし
瑞西
(
スウィッツル
)
製の金時計を遺失せしを
識
(
し
)
りぬ。警察に訴えて捜索を請わんか、可はすなわち可なり。
金時計
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
滑稽
(
こっけい
)
なことは
皆
(
みな
)
が庭園へ出て
逍遥
(
しょうよう
)
した時佐助は春琴を梅花の間に導いてそろりそろり歩かせながら「ほれ、ここにも梅がござります」と一々老木の前に立ち止まり手を
把
(
と
)
って
幹
(
みき
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
文学は伝記にあらず、記実にあらず、文学者の頭脳は四畳半の古机にもたれながらその理想は天地八荒の中に
逍遥
(
しょうよう
)
して
無碍
(
むげ
)
自在に美趣を求む。
羽
(
はね
)
なくして空に
翔
(
かけ
)
るべし、
鰭
(
ひれ
)
なくして海に潜むべし。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
当時もしこの開成校をして幕府の政権を離れ、政治社外に
逍遥
(
しょうよう
)
して真実に無偏・無党の独立学校ならしめ、その教員等をして真実に豪胆独立の学者ならしめなば、東征の騒乱、何ぞ恐るるに足らんや。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
蒲公英
(
たんぽぽ
)
の咲く長堤を
逍遥
(
しょうよう
)
するのは、蕪村の最も好んだリリシズムであるが、しかも都会の
旗亭
(
きてい
)
につとめて、春情学び得たる
浪花風流
(
なにわぶり
)
の少女と道連れになり、
喃々戯語
(
なんなんけご
)
を
交
(
かわ
)
して春光の下を歩いた記憶は
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
小紋の羽織にふところ
手
(
で
)
して
逍遥
(
しょうよう
)
するを見るのみ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
片瀬河畔
逍遥
(
しょうよう
)
。まさを居。
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
淵明、王維の詩境を直接に自然から吸収して、すこしの
間
(
ま
)
でも
非人情
(
ひにんじょう
)
の天地に
逍遥
(
しょうよう
)
したいからの
願
(
ねがい
)
。一つの
酔興
(
すいきょう
)
だ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
松下嘉兵衛
(
まつしたかへえ
)
のやしきを出て、食も宿もなく、山林を
逍遥
(
しょうよう
)
していた時代の自分が——ふと思い出されてきた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「漢陽は、遠いなあ。」いずれが誘うともなく二人ならんで
廟
(
びょう
)
の廊下から出て月下の湖畔を
逍遥
(
しょうよう
)
しながら、「父母
在
(
いま
)
せば遠く遊ばず、遊ぶに必ず方有り、というからねえ。」
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
御歯黒
(
おはぐろ
)
蜻蛉
(
とんぼ
)
が、
鉄漿
(
かね
)
つけた
女房
(
にょうぼ
)
の、
微
(
かすか
)
な夢の影らしく、ひらひらと一つ、葉ばかりの
燕子花
(
かきつばた
)
を伝って飛ぶのが、このあたりの御殿女中の
逍遥
(
しょうよう
)
した昔の幻を、寂しく描いて、都を出た日
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
爽
(
さわ
)
やかな
山麓
(
さんろく
)
の秋の空気を深々と吸い、ときどき湖のほとりの路を
逍遥
(
しょうよう
)
したり、二階の部屋のベッドの上に身を横たえつつ富士の姿を窓越しに
眺
(
なが
)
めたりするだけで、既に十分満足であった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
公務あるものは土曜日曜をかけて田舎廻りを為すも可なり。半日の
間
(
かん
)
を
偸
(
ぬす
)
みて郊外に散歩するも可なり。
已
(
や
)
むなくんば
晩餐
(
ばんさん
)
後の運動に上野、
墨堤
(
ぼくてい
)
を
逍遥
(
しょうよう
)
するも
豈
(
あに
)
二、三の佳句を得るに難からんや。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
おそらく
飛鳥
(
あすか
)
や
天平
(
てんぴょう
)
の人たちも、この道を
逍遥
(
しょうよう
)
したことであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
「夢窓国師や大燈国師になるから、こんな所を
逍遥
(
しょうよう
)
する価値があるんだ。ただ見物したって何になるもんか」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
折ふし、落葉のけむりを仰ぎ、ひとり
逍遥
(
しょうよう
)
しながら、吟じているものがあった。人見又四郎かも知れない。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鷲になって、蔵の窓から翼をひろげて飛びあがり、心ゆくまで大空を
逍遥
(
しょうよう
)
した。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“逍遥”の意味
《名詞》
逍遥(しょうよう)
気ままに歩き回ること。
(出典:Wiktionary)
逍
漢検1級
部首:⾡
11画
遥
漢検準1級
部首:⾡
12画
“逍遥”で始まる語句
逍遥軒
逍遥道路
逍遥津
逍遥派
逍遥馬
逍遥玉面
逍遥生死
逍遥頭巾