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逆上
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のぼ
ふりがな文庫
“
逆上
(
のぼ
)” の例文
ここへ、台所と居間の隔てを開け、茶菓子を運んで、二階から下りたお源という、
小柄
(
こがら
)
の
可
(
い
)
い島田の女中が、
逆上
(
のぼ
)
せたような
顔色
(
かおつき
)
で
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
つまりは感情のゆき違いと云ったようなわけで、
左
(
さ
)
らでも
逆上
(
のぼ
)
せている清吉はいよ/\赫となりました。そうなると男は気が早い。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
スウプと魚とはもう出すばかりになつてゐて、料理番は
逆上
(
のぼ
)
せきつて、身も心も燃えだしさうになりながら、鍋の上に身を
屈
(
かゞ
)
めてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
やがて
洗
(
なが
)
し
場
(
ば
)
に出て洗い
桶
(
おけ
)
を持って来るときは、お湯に
逆上
(
のぼ
)
せてふらふらしたが、額を冷水で冷したり、もじもじしているうちに
癒
(
なお
)
った。
快走
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
カアーッと
逆上
(
のぼ
)
せていた。——気おくれした、意気地のない自分を、紙ッ片れか何かのように、思いッ切り踏みにじってしまいたかった。
不在地主
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
▼ もっと見る
酒を多く飲めば酒乱の
萌
(
きざ
)
しがあり、今も飲んだ酒が醒めたというわけではないのですから、主膳は
赫
(
かっ
)
と怒り、一時に
逆上
(
のぼ
)
せあがりました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
Fは私達を見て泣き出しやしないかと思つたが、そんな風もなく、
逆上
(
のぼ
)
せたやうな赤い、硬張つた顏してゐて、脅えてる風も見せなかつた。
不良児
(旧字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
ついとり
逆上
(
のぼ
)
せ「三両、三両」と叫びながら、駕籠脇に迫ってきた才槌頭の襟首を掴むなり「おのれ」といって、ぬかるみへ取って投げた。
ボニン島物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
私は、その声を聞くと、もう胸がどきどきして、自分の足が地を踏んでいるのさえ分らない程に、
逆上
(
のぼ
)
せてしまったのですよ。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
人を入て
別話
(
わかればなし
)
を持出したから、
私
(
あたし
)
ゃもう踏んだり
蹶
(
け
)
たりの目に逢わされて、
口惜
(
くや
)
しくッて口惜しくッて、何だかもうカッと
逆上
(
のぼ
)
せッ
了
(
ちま
)
って
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
よくも揃った非道な奴らだと、かッと
逆上
(
のぼ
)
せて気も
顛倒
(
てんどう
)
、一生懸命になって幸兵衛が
逆手
(
さかて
)
に持った刄物の
柄
(
つか
)
に手をかけて、
引奪
(
ひったく
)
ろうとするを
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
新しい青い
部屋
(
へや
)
の畳は、
鶯
(
うぐいす
)
でもなき出すかと思われるような
温暖
(
あたたか
)
い空気に
香
(
かお
)
って、夜遊び一つしたことのない半蔵の心を
逆上
(
のぼ
)
せるばかりにした。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
眞つ赤に
逆上
(
のぼ
)
せ、一たいにデリカな性質なのを知つてゐるので、私の方が案じてゐたのだが、彼は考へ深くさう答へた。
四人の兵隊
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私は、あまりの歓喜に、いよいよ
逆上
(
のぼ
)
せて、もっともっと、私の非凡の人物であることを知らせてやりたくなっちゃって、よけいなことを言った。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
前が
開
(
あい
)
て
膝頭
(
ひざがしら
)
が少し出ていても合そうとも仕ない、見ると
逆上
(
のぼ
)
せて顔を赤くして眼は涙に潤み、
頻
(
しき
)
りに啜泣を
為
(
し
)
ている。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
カッと
逆上
(
のぼ
)
せた自分も恥かしかったし、またそのすぐあとで、思い出したように急に親切になった自分も恥かしかった。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
コンナに
逆上
(
のぼ
)
せ上っては駄目だ。気を
急
(
せ
)
かしては駄目だ。一つ
頭髪
(
あたま
)
でも
刈直
(
かりなお
)
して、サッパリとしてからモウ一度、ここへ来て考え直してみるかな。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お庄も少し
逆上
(
のぼ
)
せたようになっていた。そして自分は自分だけの理窟を言った。人中にいるのに、そう
姿振
(
なりふ
)
りにかまわないわけにも行かないと思った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
『うむ、それやあそうだろうが、若い人というものは、一時はかあっと
逆上
(
のぼ
)
せても、
醒
(
さ
)
めるという事があるからな』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先達はかっと
逆上
(
のぼ
)
せた。婦がそんなことをするのも、所詮稼ぎ帰りのよくない彼へのいやがらせに違いなかった。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
子供は眞赤に怒つて妻の胸のあたりを無茶苦茶に掻き
挘
(
むし
)
つた。圭一郎はかつと
逆上
(
のぼ
)
せてあばれる子供を遮二無二おつ取つて地べたの上におつぽり出した。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
大和民族の優勢を論ずるものは
逆上
(
のぼ
)
せぬよう、冷静なる学術上の研究に土台を
据
(
す
)
えてかからねば、
徒
(
いたず
)
らに国の
旧
(
ふる
)
きを誇ると同じように、威張った甲斐なく
民族優勢説の危険
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
忠州屋の門をくぐり酒の座席で本当に童伊に出会わした時にはどうしたはずみでか、かっと
逆上
(
のぼ
)
せてしまった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
彼はそれらの人々といかに縁遠い気がしたことだろう!……彼は
逆上
(
のぼ
)
せていなかったし、精神が自由だったので、ごく
些細
(
ささい
)
なことまでも心に刻み込まれた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「お徳さんかえ、昨日は八五郎が飛んだ世話になつたんだつてねえ、昨夜は寢付けないほどの
逆上
(
のぼ
)
せやうさ」
銭形平次捕物控:045 御落胤殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それはいけぬ。
今宵
(
こよい
)
は、大分温かい、
逆上
(
のぼ
)
せられたのかも知れぬ。では、さ、あちらへ抜けてまいろう。少し夜気にでもお当りになったら、よろしかろう」
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その腹癒せに……というよりも何だか
逆上
(
のぼ
)
せて、今村さんと一緒に一夜過してやれという気になりました。
女と帽子:――「小悪魔の記録」――
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
そして少し
逆上
(
のぼ
)
せ氣味となツた彼は、今度は「手を握りたお房を何うする?」といふことに
就
(
つ
)
いて考へた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
と、底に一物、吉蔵が、敷居を超えて、じりじりと、焚き付けかけた胸の
火
(
ほ
)
に。くわつと
逆上
(
のぼ
)
せて、顫ひ声
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
それから一時間ばかり後、私は馴れない火にすこし
逆上
(
のぼ
)
せたようになって、外気にあたりに小屋を出た。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
御米
(
およね
)
は
何時
(
いつ
)
になく
逆上
(
のぼ
)
せて、
耳
(
みゝ
)
迄
(
まで
)
赤
(
あか
)
くしてゐた。
頭
(
あたま
)
が
熱
(
あつ
)
いかと
聞
(
き
)
くと
苦
(
くる
)
しさうに
熱
(
あつ
)
いと
答
(
こた
)
へた。
宗助
(
そうすけ
)
は
大
(
おほ
)
きな
聲
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
清
(
きよ
)
に
氷嚢
(
こほりぶくろ
)
へ
冷
(
つめ
)
たい
水
(
みづ
)
を
入
(
い
)
れて
來
(
こ
)
いと
命
(
めい
)
じた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
邸
(
やしき
)
では瓦斯が勝手にまで使ってあるのに、奥さんは
逆上
(
のぼ
)
せると云って、炭火に当っているのである。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
省作は胸がおどって少し
逆上
(
のぼ
)
せた。人に怪しまれやしまいかと思うと落ち着いていられなくなった。省作は出たくもない便所へゆく。便所へいってもやはり考えられる。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「これはこれ、百足じゃ。百足を切込みと見誤るなぞ、寺中、常の貴公らしゅうもない。
外
(
はず
)
れつづきに、なんだなすこうし
逆上
(
のぼ
)
せかげんじゃな。笑止はっはっはっはっ。」
寛永相合傘
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
お千代はもう
逆上
(
のぼ
)
せたように顔ばかりか眼の中までを赤くさせ、
函
(
はこ
)
の中から取出す
指環
(
ゆびわ
)
や腕時計を、はめて見たり、抜いて見たりして、そのたびたびに深い
吐息
(
といき
)
をついている。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
照ちやんは赫と
逆上
(
のぼ
)
せて本當にお腹の赤ン坊を殺す積りでは無いかとまで疑つた。これで春三郎の氣狂じみた癇癪が益〻募れば照ちやんのヒステリーは愈〻重くなる許りであつたらう。
続俳諧師:――文太郎の死――
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
これで話を止めて、榮一は横になつて、
挽舂
(
ひきうす
)
の響きを聞きながらうつら/\
假睡
(
うたたね
)
の夢に落ちた。勝代は温か過ぎる炬燵で
逆上
(
のぼ
)
せて頭痛がしてゐたが、それでも座を立たうとはしないで
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
と、いったが、七瀬は、
逆上
(
のぼ
)
せてくるくらいに、何かしら、腹が立ってきた。神にも、仏にも、思いっきり、その無情をなじりたいような気持であった。万作は、すぐ、走って行った。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
面白くも可笑しくも何ともない人といふに、夫れにお前は何うして
逆上
(
のぼ
)
せた、これは聞き處と客は起かへる、大方
逆上性
(
のぼせしやう
)
なのでござんせう、貴君の事をも此頃は夢に見ない夜はござんせぬ
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「せんせいこの頃少し
逆上
(
のぼ
)
せていたようだから、変になったんじゃないかな」
痀女抄録
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
温泉に浸つたつて
逆上
(
のぼ
)
せるばかしだし、風景を見て慰められる質でもなし、散歩は嫌ひだし、また独り芸術的な思索に耽るなんていふ落つきは生れつき持ち合はせなかつたし、まつたく彼は
スプリングコート
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
私はそれを
聴
(
き
)
くと、またかっと
逆上
(
のぼ
)
せて耳が
塞
(
ふさ
)
がったような心地がした。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
私は思はず眼を見開いてその方を見遣つたが、油のやうな闇で何にもわからぬ。と、
暫
(
やが
)
て疊の音がする。此方へ來るのかなと想ふと私は一時にかつと
逆上
(
のぼ
)
せて吾知らず枕を外して布團を
被
(
かつ
)
いだ。
姉妹
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
わしもなかなかずるくてな、いろいろ調べてみたんだ。なるほどきれいで
悧巧
(
りこう
)
な娘だ。
槍騎兵
(
そうきへい
)
の話も
嘘
(
うそ
)
だった。
綿撒糸
(
めんざんし
)
を山のように作ってくれたよ。実にりっぱな娘だ。お前に
逆上
(
のぼ
)
せきってる。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
『まあ、おかみさん、さう
逆上
(
のぼ
)
せてしまつてもしかたがない。芳公もとんだ事をしたもんだが、今おかみさんがこの婆さんを捕へて何を云つてもしかたがない。それで息子さんはどうしました。』
白痴の母
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
逆上
(
のぼ
)
せ易いこの茶人はかっとなってしまった。彼は鷲掴みに茶碗を片手にひっ掴んだかと思うと、いきなりそれを庭石目がけて叩きつけた。茶碗はけたたましい音を立てて、粉微塵に砕け散った。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
新米はこの糊精分が一層多くって味は結構ですけれども消化が悪くってかつ
逆上
(
のぼ
)
せる気味がありますからあまり新しいお米は食べない方がよし。食べるにしても古米と交ぜた方が
身体
(
からだ
)
に
薬
(
くす
)
りです。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
青白く
逆上
(
のぼ
)
せてしまい
唇
(
くちびる
)
をきっとかみながらすぐひどく手をまわして、すなわち一ぺん東京まで手をまわして
風下
(
かざしも
)
にいる
軽便鉄道
(
けいべんてつどう
)
の電信柱に、シグナルとシグナレスの
対話
(
たいわ
)
がいったいなんだったか
シグナルとシグナレス
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
僕あねちねち死ぬことばつかし考へてゐる時は、どうせ死にたくても死にたくない程ビクビクして意気地がないんだけど、いきなりカアッと
逆上
(
のぼ
)
せたら僕にだつて僕のことが分りやしないんだから……
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それに、ちゃんと女中に言いつけといたんじゃが、妓たちはどうしおったんじゃ、気の利かんやつ等じゃのう、——県令の宴会で
逆上
(
のぼ
)
せあがっているわけでもなかじゃろに、どっちにしてもおくれたのはおれが悪か、機嫌を
風蕭々
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
逆
常用漢字
小5
部首:⾡
9画
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
“逆上”で始まる語句
逆上性
逆上気味
逆上返
逆上方
逆上目
逆上薬
逆上引下
逆上氣味