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誦
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ず
ふりがな文庫
“
誦
(
ず
)” の例文
阿闍梨
(
あざり
)
は、白地の錦の
縁
(
ふち
)
をとった
円座
(
わらふだ
)
の上に座をしめながら、式部の眼のさめるのを
憚
(
はばか
)
るように、
中音
(
ちゅうおん
)
で静かに法華経を
誦
(
ず
)
しはじめた。
道祖問答
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わざと経文を声高く
誦
(
ず
)
してみたところで、それは、またあらぬ人の怪しみを買うばかりで、お松の耳に届こうわけもないのであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、行者心蓮は、子供のいる家の前に立つと子の功徳を説き、地蔵愛を
誦
(
ず
)
し、わけて子を亡くしたという家を聞くと、必ず訪ねて慰めた。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かう言つて、信者の
男女
(
なんによ
)
はやつて来た。現に、かの女の行つた時にも、若い老いた女や男が五六人庫裡に集つて経を
誦
(
ず
)
してゐるのを見た。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
終夜
(
よもすがら
)
供養
(
くやう
)
したてまつらばやと、御墓の前のたひらなる石の上に座をしめて、
経文
(
きやうもん
)
徐
(
しづ
)
かに
誦
(
ず
)
しつつも、かつ歌よみてたてまつる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
▼ もっと見る
我友はこれより我にさきの詩を
誦
(
ず
)
せしめて聞き、頗妙なり、
羅馬日記
(
ヂアリオ、ロオマ
)
に刻するに足ると稱へき。我等二人は杯を擧げてアヌンチヤタが
壽
(
ことほぎ
)
をなしたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
○
斯
(
かく
)
てその
黄昏
(
たそがれ
)
にいたり、
源教
(
げんけう
)
は常より心して仏に
供養
(
くやう
)
し、そこら
清
(
きよ
)
らになし
経
(
きやう
)
を
誦
(
ず
)
し
居
(
ゐ
)
たり。七兵衛はやきたりぬ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
私
達
(
たち
)
は長い間、汽車に
揺
(
ゆ
)
られて
退屈
(
たいくつ
)
していた、母は、私がバナナを
食
(
は
)
んでいる傍で経文を
誦
(
ず
)
しながら、
泪
(
なみだ
)
していた。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
餞別
(
せんべつ
)
に貰つた小判の百兩を懷中に深く祕め、編笠に面體を隱したまゝ、先づ日頃信心する觀音樣の近くに陣取つて心靜かにうろ
覺
(
おぼ
)
えのお
經
(
きやう
)
を
誦
(
ず
)
し乍ら
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
晝の間は我等祈る毎に恰も祈りの後の唱和の如く清貧仁惠の例を
誦
(
ず
)
し夜到ればこれに代へて貪慾の罰の例を誦す
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
彼は、今度は少し大きな声で経を
誦
(
ず
)
し続けた。だが、まばたき一つで、また娘達のまぼろしがかへつて来た。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼女は千枝松が毎晩誘いに来るのを楽しんで待っていた。千枝松もきっと約束の時刻をたがえずに来て、二人は聞き覚えの
普門品
(
ふもんぼん
)
を
誦
(
ず
)
しながら清水へかよった。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
レオ・アフリカヌスはアフリカのセネガ人馬を得れば塗香の呪言
誦
(
ず
)
しながらその馬の全身に塗ると書いた。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
仏典を
誦
(
ず
)
し、彼の心は卑下するところなく高められ、遍在し、その心は香気の如く無にも帰し、岩の如くにそびえもし、滝の如くに一途に祈りもするのであつた。
道鏡
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
面當
(
つらあて
)
がましく
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
らしい、
我勝手
(
われがつて
)
の
凡夫
(
ぼんぷ
)
の
淺
(
あさ
)
ましさにも、
人知
(
ひとし
)
れず、
面
(
おもて
)
を
合
(
あ
)
はせて、
私
(
わたし
)
たちは
恥入
(
はぢい
)
つた。が、
藥王品
(
やくわうぼん
)
を
誦
(
ず
)
しつゝも、
鯖
(
さば
)
くつた
法師
(
ほふし
)
の
口
(
くち
)
は
臭
(
くさ
)
いもの。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
観音経を覚えて、上野の暗いところを通る時にはそれを
誦
(
ず
)
しながら歩くと恐くないと語っていた。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
「オーッ」という声が聞こえて来たが、すぐその後から妖精にとっては何より恐ろしい破邪顕正経、すなわち真言の孔雀経を音吐朗々と
誦
(
ず
)
する声が力強く聞こえて来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いろいろ繕われてあるのはことに移ろい方のおそい中にどうしたのか一本だけきれいに紫になっているのを宮はお折らせになり「
花中偏愛菊
(
はなのなかにひとへにきくをあいす
)
」と
誦
(
ず
)
しておいでになったが
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
君は、ジュムゲジュムゲ、イモクテネなどの気ちがいの
呪文
(
じゅもん
)
の言葉をはたして
誦
(
ず
)
したかどうか。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
参詣人が来ると殊勝な顔をしてムニャムニャムニャと出放題なお経を
誦
(
ず
)
しつつお
蝋
(
ろう
)
を上げ、帰ると直ぐ吹消してしまう本然坊主のケロリとした顔は随分人を喰ったもんだが
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
満廷の朝臣たちが
戦
(
おのゝ
)
き恐れ、或は板敷の下に
這
(
は
)
い入り、或は
唐櫃
(
からびつ
)
の底に隠れ、或は畳を
担
(
かつ
)
いで泣き、或は
普門品
(
ふもんぼん
)
を
誦
(
ず
)
しなどする中で、時平がひとり
毅然
(
きぜん
)
として剣を抜き放ち
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「人に気づかれるな」とか「外に気をつけろ花世」などと
囁
(
ささや
)
くこえを聞きながら、しかし俊恵はそっと口のうちで経文を
誦
(
ず
)
していた、ともすればあの経蔵の中で感じたような
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
暫時にしてその棒の前端互いに相接し、ついに相合するに至る。その合するときに当たりて、さらに他の呪文を
誦
(
ず
)
するときは、前端次第に相開きて、最初の位置に復するを見る。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
母はまた、観音様信仰で、毎晩お灯明をあげては、口の中で観音経か何かを
誦
(
ず
)
しながら拝んでいた。そして毎月十七日の晩には、必ず錦町の観音堂に参った。私も必ずそのお供をした。
私の母
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
二三遍全体を読んで見て、今度は目を
瞑
(
つぶ
)
つて今書いた三行を心で
誦
(
ず
)
し出した。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その祖母なる人はものの記憶よかりし人にて「八犬傳」など芳柳閣の邊迄
暗誦
(
そら
)
んじ居て、求むれば何時も高らかに
誦
(
ず
)
して聞かせ給ひぬ。「平家物語」の幾章も亦かくしてわれは聞き覺えしなり。
貝殻追放:008 「その春の頃」の序
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そして
呪言
(
じゅごん
)
のようにこの問答を繰り返し口に
誦
(
ず
)
している。こんな問答のうちにも、栂尾上人の夢の種がこぼれてひこばえているのかと、そう思ってみて、鶴見はいつまでもうっとりとしていた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「おお、シダテネオム、ミリノス、プロバリンテよ、エアンチデの三女神よ! ああたれかわれをして、ラウリオムやエダプテオンのギリシャ人のごとくに、ホメロスの詩を
誦
(
ず
)
せしむる者があるか!」
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その歌を
誦
(
ず
)
します声にさめし朝なでよの櫛の人はづかしき
みだれ髪
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
目見
(
まみ
)
青きドミニカびとは
陀羅尼
(
だらに
)
誦
(
ず
)
し夢にも語る
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
一、
誦
(
ず
)
するはこれ極楽浄土の歌。
ノンシャラン道中記:03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
かなしき調を口に
誦
(
ず
)
して
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
師の慈円をはじめ弟子僧たちは、誰からともなく、
経文
(
きょうもん
)
を口に
誦
(
ず
)
して、それが、音吐高々と、雪と闘いながら踏みのぼってゆくのであった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それでゐて、葬式が行くと、どんな貧乏なものでも、
乃至
(
ないし
)
は富豪でも、同じやうな古い
僧衣
(
ころも
)
を着て、
袈裟
(
けさ
)
をかけて、そして長い長い経を
誦
(
ず
)
した。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
さきにはタツソオの詩を
誦
(
ず
)
して聞せ給ひしが、その句は今も我
懷
(
おもひ
)
に
往來
(
ゆきき
)
して、時ありては獨り涙を
墮
(
おと
)
すことあり。そはわが泣蟲なるためにはあらず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
餞別
(
せんべつ
)
に貰った小判の百両を懐中に深く秘め、編笠に
面体
(
めんてい
)
を隠したまま、まず日頃信心する観音様の近くに陣取って心静かにうろ覚えのお経を
誦
(
ず
)
しながら
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがてその
寂寞
(
じやくまく
)
たるあたりをふるはせて、「ろおれんぞ」の上に高く手をかざしながら、伴天連の御経を
誦
(
ず
)
せられる声が、おごそかに悲しく耳にはいつた。
奉教人の死
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
与八が東妙和尚からお経を教えられて、しきりにそれを
誦
(
ず
)
しているのは、今に始まったことではありません。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
誦
(
ず
)
しをはりて七兵衛に物などくはせ、さて日もくれければ
仏壇
(
ぶつだん
)
の下の
戸棚
(
とだな
)
にかくれをらせ、
覗
(
のぞ
)
くべき
節孔
(
ふしあな
)
もあり、さて
仏
(
ほとけ
)
のともし火も家のもわざと
幽
(
かすか
)
になし
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
かくて相共に第七圈に達すれば色慾の罪を淨むる一群の魂焔に包まれつゝ聖歌をうたひ且つ貞節の例を
誦
(
ず
)
す
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
仏典を
誦
(
ず
)
し、彼の心は
卑下
(
ひげ
)
するところなく高められ、
遍在
(
へんざい
)
し、その心は香気の如く無にも帰し、岩の如くにそびえもし、滝の如くに一途に祈りもするのであった。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼はいつものように観音経を
誦
(
ず
)
し出そうとしたが、不思議に
喉
(
のど
)
が押し詰まったようで、唱え馴れた経文がどうしても口に出なかった。胸は怪しくとどろいてきた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一は
牝馬
(
ひんば
)
春を思う際身分より出づる粘液を採り、呪を
誦
(
ず
)
しながら諸霊草と和し薬となすものだ。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と、行手の
草叢
(
くさむら
)
から真っ白いものが飛び出した。他ならぬ野性の兎である。その時忽然遥か行手から読経の声が聞こえて来た。数十人の男女の者が声を合わせて
誦
(
ず
)
しているらしい。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
支那
(
しな
)
の人に見せて批評をさせてみたいほどの詩ばかりであると言われた。源氏のはむろん傑作であった。子を思う親の情がよく現われているといって、列席者は皆涙をこぼしながら
誦
(
ず
)
した。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
食事が済む、と探訪員は、
渠
(
かれ
)
自から経典と称する
阿夏品
(
おなつぼん
)
を
誦
(
ず
)
しはじめた。これよりさき金之助は、事故あって、訪問の客に面会を謝する意を、附添の看護婦に含ませたことはいうまでもない。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二三遍全體を讀んで見て、今度は目を瞑つて今書いた三行を心で
誦
(
ず
)
した。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
悲しともなく
誦
(
ず
)
しゆけど、
響
(
ひび
)
らぐ
声
(
こゑ
)
は
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
御經
(
みきやう
)
をも
誦
(
ず
)
んずるわが身
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
ばばは、眼をつぶって、小声に経を
誦
(
ず
)
し始めた。経を誦している間は、
苛責
(
かしゃく
)
も忘れ、
恐
(
こわ
)
さもまぎれた。幾刻もそうしていた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
誦
漢検1級
部首:⾔
14画
“誦”を含む語句
暗誦
口誦
読誦
誦経
復誦
諷誦
念誦
諳誦
朗誦
一誦
黙誦
讀誦
大誦
誦念
諷誦文
誦読
愛誦
吟誦
拝誦
伝誦
...