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藻掻
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もが
ふりがな文庫
“
藻掻
(
もが
)” の例文
煩悶の内容こそ違え、二葉亭はあの文三と同じように疑いから疑いへ、
苦
(
くるし
)
みから苦みへ、悶えから悶えへと絶間なく
藻掻
(
もが
)
き通していた。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そして警句が出れば出る程、忘れる筈の一件が
矢鱈
(
やたら
)
無上
(
むしょう
)
に込み上げて、いくら振り落そうと
藻掻
(
もが
)
いても始末に悪い事になるのだ。
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
女の子は、こういうと烈しく咳をして、からだを
藻掻
(
もが
)
くようにした。
昂奮
(
こうふん
)
しすぎたせいか、こんどは反対にうとうと睡り出した。
音楽時計
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
あの時、兄は事務室のテーブルにいたが、庭さきに
閃光
(
せんこう
)
が走ると間もなく、一間あまり跳ね飛ばされ、家屋の下敷になって暫く
藻掻
(
もが
)
いた。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
と三好は夢中になって
藻掻
(
もが
)
いたが、白坊主の力は意外に強く、肩先を羽がい締めにして来るので
呼吸
(
いき
)
が詰まりそうになって来た。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
まず甲羅の裾の柔らかいところを掴んで俎上に運び、腹の甲を上向けにするとすっぽんは四肢を
藻掻
(
もが
)
いて自然のままに起き上がろうとする。
すっぽん
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
いつか、人混の中へ織り込まれていたかの女は、前後の動きの中に入って
却
(
かえ
)
って落着いた。「
藻掻
(
もが
)
いてもしようがない。
随
(
つ
)
いて行くまでだ」
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私なども……覚えが有るが、村の人々に一度信用せられぬとなると、もう何んなに
藻掻
(
もが
)
いても、とても其村では何うする事も出来なくなる。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
翌朝、
蒲団
(
ふとん
)
の上に坐って薄暗い壁を
見詰
(
みつ
)
めていた吉は、昨夜夢の中で逃げようとして
藻掻
(
もが
)
いたときの汗を、まだかいていた。
笑われた子
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そうして検屍の証明では、「生前、水に落ちて水底に
藻掻
(
もが
)
いたから、十本の
指甲
(
つめ
)
の中には皆河底の泥が食い込んでいる」と。
白光
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
さながら蠅取り紙に足を取られた銀蠅の、
藻掻
(
もが
)
けば藻掻くほど深みに引き込まるる、
退
(
の
)
くも引くも意に任せず、ここに全く進退
谷
(
きわ
)
まった様子。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
藻掻
(
もが
)
いてゐるところを、後から跟けて來た曲者が、塀の下に置いてある刀を拜借して、力任せに尻から突つ立てた——といふことになりませう
銭形平次捕物控:238 恋患ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
これはむしろ、小心者の、何事をも躊躇ばかりしていて、結局は何事も決断の出来ないような、
藻掻
(
もが
)
くような焦燥に起因している病状であった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
然し彼女は葛城が堕落に向いつゝあるものと考えた。何ともして葛城を救わねばならぬと身を
藻掻
(
もが
)
いた。彼女は立っても居ても居られなくなった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
首を
掉
(
ふ
)
って見るが、
其様
(
そん
)
な事では中々取れない。果は前足で口の
端
(
はた
)
を
引掻
(
ひッか
)
くような真似をして、
大藻掻
(
おおもが
)
きに
藻掻
(
もが
)
く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
現在の「きたない絵」を描く人達は古い伝統を離れようとして新しい伝統の穴に陥って
藻掻
(
もが
)
いているようである。
二科展院展急行瞥見
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして、
藻掻
(
もが
)
く手足を押込んでしまうと、袋の口を
麻縄
(
ロープ
)
で厳重に
結
(
ゆわ
)
いてしまった。ああ、僕は、こんどこそ海底の
藻屑
(
もくず
)
と消え失せなければならないのか。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
しかしそれらは軽い方で、重いのになるとその奇怪の症状を幾日も続けているうちに、とうとう病み疲れて
藻掻
(
もが
)
き死にの浅ましい終りを遂げる者もあった。
半七捕物帳:30 あま酒売
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それは、最早や
藻掻
(
もが
)
くことを止めて、ぐったりと死人の様に横わっていた、T氏の口から
洩
(
も
)
れるらしく感じられた。氷の様な戦慄が私の背中を這い上った。
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そんなことでは
縦令
(
たとい
)
お前がどれ程
齷齪
(
あくせく
)
して進んで行こうとも、急流を
遡
(
さかのぼ
)
ろうとする
下手
(
へた
)
な泳手のように、無益に
藻掻
(
もが
)
いてしかも一歩も進んではいないのだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ト大様に
視
(
なが
)
めて、出刃を
逆手
(
さかて
)
に、面倒臭い、一度に間に合わしょう、と狙って、ずるりと後脚を
擡
(
もた
)
げる、
藻掻
(
もが
)
いた形の、
水掻
(
みずかき
)
の中に、
空
(
くう
)
を
掴
(
つか
)
んだ爪がある。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
露月はアッと叫びざま、虚空をつかんで
呻
(
うめ
)
いたが、呉羽之介は
猿臂
(
えんぴ
)
を伸して
藻掻
(
もが
)
く相手を組伏せたまま、小刀
逆手
(
さかて
)
にズバズバと細首を
掻
(
か
)
き切って了いました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
しまったと足を抜こうとするとまたずるりと吸い入れられる。はや腰までは沼の中だ。
藻掻
(
もが
)
く、引っ掻く、だが沼は腰から腹、腹から胸へと上って来る一方だ。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
思うさま叫んでくれ! 虚空さえ
掴
(
つか
)
み損ねて
呻吟
(
しんぎん
)
しているおれのために!……——そうして彼は彼自身の心臓を虚空へ掴み出して投げ捨てたかのように
藻掻
(
もが
)
いた。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
しかし何分にもかゆくて
藻掻
(
もが
)
きだす。そこであの近所にある一軒の薬屋を叩き起して、かゆみ止めの薬を売って貰う。——どうだ、この先はどこへ続いていると思う
地獄街道
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
此處
(
ここ
)
はどこなのかしら——
彼女
(
かのぢよ
)
は
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
らうと
意識
(
いしき
)
の
中
(
なか
)
では
藻掻
(
もが
)
いたが、
體
(
からだ
)
は
自由
(
じいう
)
にならなかつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
匝
(
まわ
)
れば
匝
(
まわ
)
られるものを、恐しさに度を失って、
刺々
(
とげとげ
)
の枝の中へ片足
踏込
(
ふんごん
)
で
躁
(
あせ
)
って
藻掻
(
もが
)
いているところを、ヤッと
一撃
(
ひとうち
)
に銃を叩落して、やたら
突
(
づき
)
に銃劔をグサと
突刺
(
つッさ
)
すと
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
島田は狂気のように叫びながら自由のきかぬ手をしきりにふりほどこうとして
藻掻
(
もが
)
きました。
祭の夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
しかし、そういう無自覚の間にも、絶えず物を考えようとする力が、
藻掻
(
もが
)
き出てくるのだったが、それはほんの瞬間であって、再び鈍い、無意識の中に沈んでしまうのだった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「ああ既ういけない。
迚
(
とて
)
も堪らない」彼の心は泣き叫んだ。
躯
(
からだ
)
を
藻掻
(
もが
)
く様に振動させた。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
あゝ、
天
(
てん
)
は
飽迄
(
あくまで
)
我等
(
われら
)
に
祟
(
たゝ
)
るのかと、
心
(
こゝろ
)
を
焦立
(
いらだ
)
て、
身
(
み
)
を
藻掻
(
もが
)
いたが、
如何
(
いかん
)
とも
詮方
(
せんかた
)
が
無
(
な
)
い。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
幸雄が
藻掻
(
もが
)
けば藻掻くほど、腕を捉えている手に力が入ると見え、彼は顔を
顰
(
しか
)
め全身の力で振りもぎろうとしつつ手塚と医員とを蹴り始めた。朝日を捨てて、詰襟の男が近よった。
牡丹
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
袋は厭いやをしたり
藻掻
(
もが
)
いたり、
痙攣
(
けいれん
)
したり縮まったり、ぐっと伸びたり跳ね上ったりした、彼は汗みずくになって格闘した結果ようやくそいつを捻伏せたが、栄之助は不作法にも
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
つい義理で判を
捺
(
つ
)
いて
遣
(
や
)
ったのが
本
(
もと
)
で、立派な腕を
有
(
も
)
ちながら、生涯社会の底に沈んだまま、
藻掻
(
もが
)
き通しに藻掻いている人の話は、いくら
迂闊
(
うかつ
)
な彼の耳にもしばしば伝えられていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
怪しい男に抱えられて、
藻掻
(
もが
)
きつづけながら運ばれて行った子供の姿が、
瞼
(
まぶた
)
の裏に浮上って来た。私はいよいよ固くなりながら、前の方を絶えず透し見てはスキーの跡をつけて行った。
寒の夜晴れ
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
逃げ足が遅いだけならまだしも、わずかな紙の重みの下で、あたかも
梁
(
はり
)
に押えられたように、
仰向
(
あおむ
)
けになったりして
藻掻
(
もが
)
かなければならないのだった。私には彼らを殺す意志がなかった。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
時々、取られた両腕を振りはなさうと
藻掻
(
もが
)
いてゐる様子であつた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
伸子は激しく身を
藻掻
(
もが
)
きながら振り返った。友木の顔を見ると
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
どこまで
藻掻
(
もが
)
いても同じことだ——
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
すると、そのうちに、こうして
藻掻
(
もが
)
いている私のすぐ背後で、誰だかわかりませんが
微
(
かす
)
かに、
歎
(
た
)
め
息
(
いき
)
をしたような気はいが感ぜられました。
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
遠山の雪のひっ切れた
藻掻
(
もが
)
き苦しむ純白の一塊に見えて、動かぬ沼の水面はますます鮮かな静けさを増して来る夕暮どき——
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
藻掻
(
もが
)
いて居るところを、後から
跟
(
つ
)
けて来た
曲者
(
くせもの
)
が、塀の下に置いてある刀を拝借して、力任せに尻から突っ立てた——ということになりましょう
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
藻掻
(
もが
)
きたくても体は一寸も動かぬ。そのうちに自分のからだは深い深い地の底へ静かに何処までもと運ばれて行く。もう苦しくはないが、ただ非常に心細い。
枯菊の影
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
扉
(
ドア
)
を開閉する音も静かに、珠子の身体は軽々と車の外へ運び出され、一人は頭部を、一人は足を、二人の男手にしっかと支えられて、
藻掻
(
もが
)
くにも藻掻かれず
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
仰向
(
あおむ
)
けになって
鋼線
(
はりがね
)
のような脚を伸したり縮めたりして
藻掻
(
もが
)
く
様
(
さま
)
は命の薄れるもののように見えた。
暫
(
しばら
)
くするとしかしそれはまた器用に
翅
(
はね
)
を使って起きかえった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
少なくともおれの感情……おれの最も
麗
(
うる
)
わしい感情を、おれがおれの胸の奥底へおし隠してこのかた、おれはその感情を汲み出そう汲み出そうと
藻掻
(
もが
)
きつづけた。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
「世なおしだ! 世なおしだ!」と人間の渦は苦しげに叫びあって押合い
犇
(
ひし
)
めいている。人間の渦は
藻掻
(
もが
)
きあいながら、みんな天の方へ絶壁を
這
(
は
)
いのぼろうとする。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そしてゴロリと
上向
(
うわむ
)
きになると、ビクビクと宙に
藻掻
(
もが
)
いていた六本の脚が、パンタグラフのような
恰好
(
かっこう
)
になったまま動かなくなってしまった。私はほっと溜息をついた。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まだまだと云ってる
中
(
うち
)
にいつしか此世の
隙
(
ひま
)
が明いて、もうおさらばという時節が来る。其時になって幾ら
足掻
(
あが
)
いたって
藻掻
(
もが
)
いたって
追付
(
おッつ
)
かない。覚悟をするなら今の
中
(
うち
)
だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
左の中指と右の人さし指の爪が少し欠けけている。それらを綜合して考えると、主人は
他人
(
ひと
)
に絞められて、その絞め縄を取りのけようとして
藻掻
(
もが
)
きながら死んだのである。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
藻
常用漢字
中学
部首:⾋
19画
掻
漢検準1級
部首:⼿
11画
“藻”で始まる語句
藻
藻屑
藻草
藻抜
藻脱
藻塩草
藻蝦
藻魚
藻拔
藻絵