“もが”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
36.8%
藻掻36.1%
10.1%
悶掻6.6%
3.5%
悶躁1.7%
1.4%
悶踠0.7%
0.7%
百掻0.3%
焦慮0.3%
苦悶0.3%
0.3%
0.3%
踠掻0.3%
0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
盲目的な閃光せんこうが、やたらに、前の空を斬った。ぎりぎりと、歯ぎしりを鳴らして、足と喉の束縛を、ふりほどこうとしてもがくのだった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして警句が出れば出る程、忘れる筈の一件が矢鱈やたら無上むしょうに込み上げて、いくら振り落そうと藻掻もがいても始末に悪い事になるのだ。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのくちびるの上にいつ放すとも知れず自分の脣を押しつけたが、千代子は呼吸をはずませながら、もがきもせずにじっとしていた。
心づくし (新字新仮名) / 永井荷風(著)
与右衛門はそれを見ると背負っていた豆を投げ捨てるなり、河の中へ飛び込んで悶掻もがきながら流れて往く累を荷物ぐるみ水の中へ突きこんだ。
累物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
容体がさも、ものありげで、鶴の一声というおもむきもがき騒いで呼立てない、非凡の見識おのずからあらわれて、うちの面白さが思遣おもいやられる。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「重い泥の中にはまつた心、それはいくら抜け出ようと悶躁もがいても足が動かない。だのに、あの人はたゞ、そこを出て来い、抜け出て来いと叱咜して居る。悲しむで居る。」
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
腕を引っこ抜くいきおいで、もがいて、掻巻をぱっとぐ、と戸棚のおおいは、もとの処にぼうとさがって、何事も別条はない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
威嚇いかくことばと誘惑の手からのがれて、絶望と憤怒に男をいらだたせながら、もとの道へ駈出かけだすまでに、お島は可也かなり悶踠もがき争った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一度でも忘れると、たなそこをめぐらさず、田地田畠、陸は水になる、沼になる、ふちになる。幾万、何千の人の生命いのち——それを思うと死ぬるも死切れぬと、呻吟うめいてもがく。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は私で、父を見附けると、ただ、もう、父の方へ、一本槍に進んで行こうと百掻もがいている。
しかし、荷物の山と人波に遮られ、あがいても、百掻もがいても人の先へは出られない。
平家の人達は以前は今よりも遥かに焦慮もがいていた。夜、漕ぎ行く船のほとりに立ち顕れ、それを沈めようとし、また水泳する人をたえず待ち受けていては、それを引きずり込もうとするのである。
耳無芳一の話 (新字新仮名) / 小泉八雲(著)
おつぎは一ぱいんでひよつとふりかへつたときうしろたけはやしつよ北風きたかぜ首筋くびすぢしつけてはゆきつかんでぱあつとげつけられながらちからかぎりあらそはうとして苦悶もがいてるのをた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さあ、言わないことか、花弁はらびらの中へ迷込んで、あぶめ、もがいても抜出されぬ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『それに、怖ろしい神の法廷で歯がみをしてもがき廻るより、この世にいる内に自分の夫の手で折檻して貰う方がまだましだ。』けれど、下種げす女房め耳も貸しません。
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
涙と水洟をむせばせて、こらえようとすればするほど、戸板の上に俯伏うっぷしている身は、よけいに踠掻もがき苦しむのだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間もなく——一人ふたりと女髪兼安を喰らって白い花を赤く染めて断末魔のもがきに草の根を掴む者、痛手を押さえて退しりぞき、花のあいだに胡坐あぐらを組む者。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)