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もが
ふりがな文庫
“
踠
(
もが
)” の例文
其
(
それ
)
が
三聲
(
みこゑ
)
めに
成
(
な
)
ると、
泣
(
な
)
くやうな、
怨
(
うら
)
むやうな、
呻吟
(
うめ
)
くやうな、
苦
(
くるし
)
み
踠
(
もが
)
くかと
思
(
おも
)
ふ
意味
(
いみ
)
が
明
(
あきら
)
かに
籠
(
こも
)
つて
來
(
き
)
て、
新
(
あた
)
らしく
又
(
また
)
耳
(
みゝ
)
を
劈
(
つんざ
)
く……
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
盲目的な
閃光
(
せんこう
)
が、やたらに、前の空を斬った。ぎりぎりと、歯ぎしりを鳴らして、足と喉の束縛を、ふり
解
(
ほど
)
こうとして
踠
(
もが
)
くのだった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ヒユウムは人生問題の研究も、何もかも忘れてしまつて、
身体
(
からだ
)
ぢゆう泥だらけになつて
踠
(
もが
)
いたが、さて
何
(
ど
)
うする事も出来なかつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
静子は一生懸命に身を
踠
(
もが
)
いた。然しそれは
畢竟
(
ひっきょう
)
猫に捕えられた鼠の悲しい無駄な努力だった。浅田はジリ/\と彼女を羽交締めにした。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
かの女は自分を虚無の殻に押し込め
乍
(
なが
)
ら、まだまだ其処から陽の目を見よう見ようと
踠
(
もが
)
いている規矩男の情熱の赤黒い
蔓
(
つる
)
を感じる。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
はじめアリスは冗談と思ったのだが、
良人
(
おっと
)
の手に力が加わって、
真気
(
ほんき
)
に沈めようとかかっているので、急に
狼狽
(
ろうばい
)
して
踠
(
もが
)
き始めた。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そして劇しく咳上げはぢめ胸を叩いて
踠
(
もが
)
き苦しむものだから僕が慌てて介抱したら、博士は胸に痙攣を起して見ぐるしく地団太踏み乍らも
霓博士の廃頽
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
その翌日、老女は、途方に暮れながらも、どうかして彼女に着物を
著
(
き
)
せようとした。けれども、狂女は身を
踠
(
もが
)
いて泣きわめくばかりだった。
狂女
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
が、私は、今日までもそうした哀れな死刑囚どもの
儚
(
はかな
)
く
踠
(
もが
)
いた文書の上に、いかに大いなる軽蔑と嘲笑とを投げ与えていたものであろうか。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私は悪夢の中で夢を意識し、目ざめようとして努力しながら、必死に
踠
(
もが
)
いている人のように、おそろしい予感の中で焦燥した。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
唯
(
た
)
だ手探りに
踠
(
もが
)
き廻ってよろけた方へ足を運んで行く、誰が何処へ行ったか夫さえ分らない、体が頭から足の先まで汗でびっしょりになる。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
踠
(
もが
)
き疲れた
腕
(
かいな
)
なりが見えて来ないかと待ち侘びるけれど、その甲斐もなく、さっき顔を見せたのが最後のおさらばだったのだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
しかし、その中には妙に
小児
(
こども
)
っぽい示威があるように思われて、そこに、絶望から
踠
(
もが
)
き上ろうとする、凄惨な努力が、透し見えるのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
不均衡な二つの力であり、また心の中で不同に発言する二人の敵手がそこにいる。一方は命令し抑圧する。他方は
踠
(
もが
)
き呻く。
ベートーヴェンの生涯:06 付録 ベートーヴェンへの感謝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
樺太へ出征している長男が、帰れるものやら、奥の陸地へ連れて行かれたものやら、噂は二つで、頭も二つの間に挟まれ
踠
(
もが
)
いてはいるのだが。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
悲嘆の苦しみに
踠
(
もが
)
き返り、滅茶苦茶に虚空を
掴
(
つか
)
んでいる人物だけが素面で、
確
(
しか
)
とは見定めもつかなかったが、やはり正銘な万豊の面影だった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
彼女は今まで狭い一室の中で
踠
(
もが
)
いていたので、外部の変化は想像もし得なかったのであるが、その時始めて棚の上に立って
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
敬二郎は
踠
(
もが
)
くようにして
悶
(
もだ
)
え悩みながらただその後を追うだけで、もはや機械のようにして動いている紀久子を抱き止めようとはしなかった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
廣大無邊の
旋渦
(
おほうづ
)
の爲、朦朧として絶えず輪轉する波の上、
窠
(
あな
)
を脱け飛んだ眼球や燐の光を放つ
木
(
こ
)
の
實
(
み
)
の殼が浚はれて浮きつ、沈みつ
踠
(
もが
)
いてゐる。
さしあげた腕
(旧字旧仮名)
/
レミ・ドゥ・グルモン
(著)
死ぬ時にはさぞ
踠
(
もが
)
いたろう,さぞ死ぬまいと歯をくいしばッたろう。血は流れて草の色を変えている。魂もまた身体から居どころを変えている。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
社会の破壊力の裡へ堕落しそうになった一箇の才能の
踠
(
もが
)
きは、私達に最も厳粛な同情と真面目な省察とを促すのである。
マクシム・ゴーリキイの伝記:幼年時代・少年時代・青年時代
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
... いくら
踠
(
もが
)
いても、どうにもならないことを悟りました。諦めます。一生懸命諦めます。」そして彼は歯をくいしばった。
変な男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
信徒は恐怖に
麻痺
(
しび
)
れながら、尚遁がれようと
踠
(
もが
)
いたものの、それほんの一瞬で、見る見るうちにグッタリとなった。完全に
捕虜
(
とりこ
)
とされたのである。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
花子がまだ時々身を
踠
(
もが
)
くたびに藁屑の上で夜光虫が青い光を放つた。
暫
(
しばら
)
くすると二人は河底の深い泥の中に再び沈み込んで夜通し
其処
(
そこ
)
でぢつとしてゐた。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
この狭い廊下で、鯨のような武右衛門が生への本能に促されて何ものかと格闘した。相当暴れた——ものと想像していい。大男が、死ぬまえの
踠
(
もが
)
きである。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
師父ブラウンは今更どうする事も出来ずに、舟が上流の方へ
踠
(
もが
)
き行くのを眺めつつ、ただ老人が早く例の村へ急を告げてくれるようにと祈るばかりだった。
サレーダイン公爵の罪業
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
「その辺は想像に委せる。僕だって乗りかけた舟だ。然う簡単には手を引かない。しかし
踠
(
もが
)
いている君には毒だから、詳しい
経緯
(
いきさつ
)
は差控える。ハッハヽヽ」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
弟は起き上りさま口惜しさに力を
籠
(
こ
)
めて橋をうごかせば兄はたちまち水に落ち、苦しみ
踠
(
もが
)
いて洲に達せしが
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は、それからドンナに叫び立てながら、ドンナに苦しみ
踠
(
もが
)
いて雪の道を掻き分けて行ったか記憶しない。
眼を開く
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
紳士は、女の手を振り離そうとして威厳のうちに
踠
(
もが
)
いていました。見物人は夫婦喧嘩を見るような眼で立っていました。そこを分けて「23」が前へ出ました。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
二三度両手で
邪慳
(
じゃけん
)
に砂を
掻廻
(
かきまわ
)
していた、——とすると、それは砂いたずらではなくて、既に胸に匕首を受けた苦しみから、夢中で
踠
(
もが
)
いていたのかも知れない……。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
遮二無二
(
しゃにむに
)
に
噛
(
かじ
)
り付いてくる少年の
前額
(
おでこ
)
に
掌
(
て
)
をかけて、力任せに
押除
(
おしの
)
けようと
踠
(
もが
)
いているうちに、浅田の夢は破れて、
蚊帳
(
かや
)
を外した八畳の間にぽっかりと目を
覚
(
さま
)
した。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
振り放さんと
踠
(
もが
)
くを力をきわめて欄干より引き放し、「まずまず待たれよ死ぬ事はいつでもなる」
詞
(
ことば
)
せわしくなだむるところへ早足に巡査の来りてともに詞を添え
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
瞬きする間もないうちに、のっぽのジョンは
踠
(
もが
)
いているメリーにピストルの二つの銃身から発射した。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
「フム、フム」と黒幕の中で
鷹揚
(
おうやう
)
に鼻の先の軽い一笑を演じる一つの心が其れに次ぐ。
後
(
あと
)
は気の乗らない沈黙。
其間
(
そのあひだ
)
に
踠
(
もが
)
いて居た首と手とは
漸
(
やつ
)
とのことで
釦
(
ブトン
)
を入れ終つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
実在の
苦境
(
くぎょう
)
の外に文三が別に
妄念
(
もうねん
)
から一
苦界
(
くがい
)
を産み出して、求めてその
中
(
うち
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
して、あせッて
踠
(
もが
)
いて
極大
(
ごくだい
)
苦悩を
甞
(
な
)
めている今日この頃、我慢
勝他
(
しょうた
)
が
性質
(
もちまえ
)
の叔母のお政が
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
吉野君と話してみると、文壇に出ようと
踠
(
もが
)
いている者は、決して俺一人でないことを知って少しは安心した。吉野辰三! 以前、俺はあの人をどんなに崇拝したか分からない。
無名作家の日記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
正太は、あの深い屋根の下に
踠
(
もが
)
き
悶
(
あが
)
いていた母の生涯を思わずにいられなかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこで
踠
(
もが
)
きながら慾望を満たそうとするのは、手のつけようのないものである。
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
踠
(
もが
)
くだけ無駄で、童伊がいけねえっと近よってきた時には、早くも数間流されていた。着物ごとぬれると、犬ころよりもみじめだった。童伊は水の中で
易々
(
やすやす
)
と大人をおぶることが出来た。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
男の力で、大声を立てさせまいと思い、口を押えてグックと押すから、お園はお止しよ/\と身体を
踠
(
もが
)
くので、着物の上からゾク/\
肋
(
あばら
)
へかけて切り込みましたから、お園は七転八倒の苦しみ
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
我々は誤まった国権の発動に連座して精神的にも、物質的にも絶大な苦難に
踠
(
もが
)
いているのが現状であります。併し我々は今更これが為めに何人をも怨みませぬ。何ずれの国にも反感を抱きませぬ。
新憲法に関する演説草稿
(新字新仮名)
/
幣原喜重郎
(著)
何ものか私の心の中で
踠
(
もが
)
いていた。何ものか私の心の中に生れていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
何んとかしてそれに形体を与えようと随分苦しみ
踠
(
もが
)
いたものだ。
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
なげき
踠
(
もが
)
いた苦悶の子といふことが
歴々
(
あり/\
)
と解る。
文壇一夕話
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
佐伯は尚も、のがれようとして
踠
(
もが
)
いた。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
草むらに子供は
踠
(
もが
)
く小鳥を見つけた。
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
黙つて
唯
(
た
)
だうろうろと
踠
(
もが
)
くのは
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
彼は
踠
(
もが
)
く様にして立上った。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
悲しそうに身を
踠
(
もが
)
きながら
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
踠
部首:⾜
15画
“踠”を含む語句
悪踠
悶踠
惡踠
振踠
足踠
踠打
踠掻
踠死