悶躁もが)” の例文
それでも一生懸命女を捉へようと悶躁もがいて居たが、身體はブルブル顫へて居て、左の手をかけた卓子の上の、硝子瓶が二つ三つ、相觸れてカチカチと音を立てて居た。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「重い泥の中にはまつた心、それはいくら抜け出ようと悶躁もがいても足が動かない。だのに、あの人はたゞ、そこを出て来い、抜け出て来いと叱咜して居る。悲しむで居る。」
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
主人しゆじんからあたへられた穀物こくもつかれの一あたゝめた。かれ近來きんらいにないこころ餘裕よゆうかんじた。しかしさういふわづかかれさいはひした事柄ことがらでもいくらか他人たにん嫉妬しつとまねいた。百姓ひやくしやうにも悶躁もがいてものいくらもある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それを堰き止めようとした広河内岳は、頭から大波を被って前へのめりながら、頼りなげに悶躁もがいている。白峰山脈は真白だ。然し荒川岳は一層白い。蝙蝠岳が此処でも南のはずれにまるい頭を見せる。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それでも一生懸命女を捉へようと悶躁もがいて居たが、身体はブルブル顫へて居て、左の手をかけた卓子の上の、硝子瓶が二つ三つ、相触れてカチカチと音を立てて居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)